宙畑 Sorabatake

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着実に進むアルテミス計画。Dyneticsが着陸船のモックアップを公開【週刊宇宙ビジネスニュース 9/14〜9/20】

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アルテミス計画の月面着陸船のモックアップをDyneticsが発表

米国が進める月面計画アルテミス計画における、月面有人着陸システム(Human Landing Systems,通称HLS)に新たな進展がありました。

宙畑メモ
「アルテミス計画」とは、NASAが2024年までに再び月面に人類を送る月面開発計画の名称です。アルテミスは月の女神で、アポロの双子であることが命名の由来です。

本計画の目的は月面に人を送るだけではなく、月とその周囲に長期にわたり人間を滞在させることで、火星の探査ミッションへの準備を行う目的もあります。月の無人周回飛行・月の有人周回飛行を経て、男女2名の宇宙飛行士の月面着陸を予定しています。

アルテミス計画の詳細については、以下の記事をご覧ください。

今年の5月にHLSを開発する企業として採択された3社のひとつ、Dyneticsが、自身が開発する有人着陸船(DHLS)の実寸大のモックアップをAIAA(アメリカ航空宇宙学会)と共同開催した同社のウェビナーにて発表しました。

着陸船のモックアップは、主にNASAの宇宙飛行士やエンジニアが、着陸船の主要なシステムの配置などを評価し、機器の最適な位置を決定することを目的として開発されました。

下記画像のように、非常に大きな着陸船となるようです。

Dyneticsが公開したモックアップの様子 Credit : Dynetics

また、DHLSは、月面での燃料補給を必要とする着陸システムであることを明かしました。数年のうちに、Dyneticsは宇宙空間での極低温推進剤補給技術を実際に運用可能なレベルまで成熟させる計画であり、今後の着陸船の有人飛行に先立ち軌道上でのテストを予定しています。

Dyneticsは今回の着陸船モックアップの発表に加えて、ランダーのシステム要件レビューと技術ベースラインレビューを完了したことも発表しました。これらは、NASAからの2億5300万ドルのHLS契約の初期のマイルストーンの一つでした。

同じくHLSの開発企業として採択されているBlue Originも9月14日に開発中の月面着陸船について同様のレビューを完了し、多数の設計・製造基準についてNASAと合意したと発表しました。もう一方の採択企業のSpaceXは同様のレビューについての情報を一切公開していません。

採択された3社は、2021年2月までの10ヶ月間で着陸機のコンセプトを練り上げ、最終的にNASAが1社を採択します。複数の民間企業がお互いに競争しながら開発を進めるアルテミス計画に、引き続き注目です。

Dyneticsがウェビナーで説明した今後のキーテクノロジー Credit : Dynetics

PLD Spaceが700万ユーロの資金調達を発表

再使用可能な小型ロケットを開発するスペインの宇宙ベンチャーPLD SpaceがシリーズBの資金調達を実施し、700万ユーロ(約820万ドル)の資金を新たに獲得したことを発表しました。PLD Spaceのこれまでの調達額は合計2710万ユーロ(約3200万ドル)となりました。

PLD Spaceは今回獲得した資金を、2021年後半から2022年初頭に打ち上げる同社のサブオービタルロケットMiura 1の開発資金及び、10人の追加人件費に充てる予定です。

今回の資金調達のリードインベスターであるArcano Partnersは、マドリードに拠点を置く投資銀行です。Arcano Partnersはスペインの企業の研究開発を後押しするために、2003年の設立以降、約67億ユーロにのぼるテックベンチャーへの投資(融資を含む)を実行しています。

PLD Spaceは、フロリダのEmbry-Riddle Aeronautical Universityの学生チームと、University of BremenのチームからMiura 1のサブオービタル打ち上げの契約を既に獲得しています。しかし、当初2019年に打ち上げ予定だったMiura 1のスケジュールは約2年半~3年遅れています。

競合も多い小型ロケット市場の中で、スペイン発のロケットベンチャーPLD Spaceがいかに存在感を発揮できるか、今後に注目です。

今年8月に成功した同社のTeprel-Bエンジンの燃焼試験の様子 Credit : PLD Space

中国が2回目の海上商業打ち上げに成功

続いては、躍進を遂げる中国のニュースです。

9月15日に、中国は長征11号の海上打ち上げを実施しました。搭載されていたのは、中国のベンチャー企業の長光衛星技術有限公司(Chang Guang Satellite Technology Co. Ltd. 以下、Chang Guang)の地球観測衛星「吉林1号 高文03衛星」9基です。

吉林1号は土地や資源の監視、都市計画、災害管理に利用されるとのことです。また、Chang Guangは、今後数年間で138基の地球観測衛星を打ち上げる計画を明らかにしています。

今回採用された海上打ち上げは、中国では2019年6月に続いて2度目です。

黄海から打ち上げられた長征11号 Credit : Xinhua

海上打ち上げは、射場を移動できるという大きなメリットがある一方で、海上での作業はハードルが高いと言われています。

1995年に、米国とロシアを中心とした共同会社Sea Launchが海上発射システムを利用した商用打ち上げサービスを提供していましたが、打ち上げの失敗が影響し、2009年に経営破産しています。

日本国内では、ベンチャー企業のAstroOceanが海上からの小型ロケット打ち上げを目指し、千葉工業大学および大林組と研究開発を行っています。同社は2019年に2度の打ち上げ実験を成功させているほか、大型ロケットの打ち上げに対応する射場開発も進めており、サービスの提供開始に期待している関係者も多いのではと思います。

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