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Blue Originが商業宇宙ステーションの開発に着手。着実に進む軌道上サービス【週刊宇宙ビジネスニュース 9/21〜9/27】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

Blue Originが商業宇宙ステーションの開発を促進するべく新規の求人を開始

Amazon.comのCEOであるJeffrey P. Bezos氏が設立した小型ロケットベンチャーのBlue Origin,LLCが、Orbital Habitat Formulation Leadというポジションの求人を開始しました。このポジションでは、LEO(地球低軌道)の商業宇宙ステーションの開発をリードする役割を担うことになります。
こちらのポジションの概要については、以下のように記載されています。

To develop Blue Origin’s vision of millions of people living and working in space, humanity will require places for them to live and work: space destination systems in which value-creating economic activity can occur.LEO (low Earth orbit) habitable stations, learning from but going beyond the ISS (International Space Station), are a first step.
(訳:何百万人もの人々が宇宙で生活し働くというBlue Originのビジョンを実現するために、軌道上で生活するための場所が人類にとって必要です。このような軌道上のシステムでは、新たな価値を創造する経済活動が発生するでしょう。私たちはその実現の第一歩として、ISSを参考にしながら、人類が居住可能なステーションをLEOに建設します。)

当ポジションの説明からは、NASAとのやり取りに特に重点を置いている点が読んでとれます。このポジションは、顧客やパートナーの特定を含め、商業宇宙ステーション開発の技術面やビジネス面をリードし、必要に応じて企業の買収を検討することも担うようです。

また、Blue Originが開発する再利用ロケットNewShepard NS-13が9月24日に打ち上げ予定でしたが、技術的な問題が発生し延期されました。

Blue OriginはこれまでLEO宇宙ステーションの開発について公には触れていませんでしたが、同社の今後の取り組みに注目です。

Gerard K. O’Neill氏のアイデアをベースにBlue Originが作成したスペースコロニーのイメージ図 Credit : Rachel Silverman for Blue Origin

Made In Spaceが開発した新型の3DプリンターがISSへ

宇宙空間での3Dプリンター開発のパイオニアであるMade In Spaceは、9月29日に打ち上げ予定のアンタレスロケットで、新型の3Dプリンターを国際宇宙ステーション(ISS)へ搬入することを発表しました。今回の打ち上げが成功すれば、ISSに運び込まれた同社の3Dプリンターは5個目となります。

今回の機器はセラミック製造モジュール(CMM)と呼ばれ、セラミック樹脂を使用する光造形方式(SLA)の3Dプリンターです。これは、ISS初のセラミック製造機となります。今回のCMMはプロトタイプの位置づけで、ISSでの検証を終えた後地球に戻されます。その後、改良を加えた最終モデルであるCeramic Matrix Composite (CMC)を再度ISSに運搬する予定です。

微小重力環境で製造すると、地上での製造で発生する沈降や組成勾配などの重力による欠陥が減少します。これにより、より高い強度と低い残留応力などの性能を備えた耐熱性の強化セラミック部品を製造することが可能となります。

Made In Spaceは、軌道上3Dプリンターの開発を通して宇宙機器を宇宙空間で製造するだけでなく、地球上で使用される精密機器を軌道上で製造することも検討しているとのことです。

新しい材料を用いた3Dプリンターを開発し、軌道上での地産地消に挑むMade In Spaceの今後の歩みに期待です。

”材料押出堆積法(FDM)”と”光造形方式(SLA)といった軌道上3Dプリンターの製造方法の紹介 Credit : Made In Space

ロシアがISSでの長編映画撮影を発表

ロシア連邦宇宙局(ロスコスモス)は、2021年秋に俳優を乗せたソユーズMS宇宙船を打ち上げ、国際宇宙ステーション(ISS)で長編映画の撮影を行うことを発表しました。現在、シナリオや撮影工程について協議中で、ISSに宇宙飛行する主人公とそのバックアップクルーは公募で選ばれることが明かされています。
映画のタイトルもまだ未定で、ロシアの宇宙開発計画と飛行士の活躍にスポットを当てるとのことです。

また、米国でも宇宙での映画の撮影を計画しています。
2021年10月に実施予定のSpaceXによるISSへの民間人の打ち上げについて、Axiom Space CEOのMike Suffredini氏は、今後数週間で契約内容が明らかになると語っています。SpaceXの有人宇宙船Crew Dragonには民間クルー3名が搭乗予定で、この3名には、俳優のTom Cruise氏と映画監督のDoug Limanが含まれていると見られています。民間クルーの他、元NASA宇宙飛行士のMichael Lopez-Alegriaが有人宇宙船のコマンダーとして搭乗する予定です。

本ミッションにおけるISSの滞在期間は8日間で、打ち上げから帰還までの期間を含めると約10日間です。
Crew DragonでISSを往復する際の費用は、一人当たり約5500万ドルと見られているので、3名のクルーの渡航費のみで約1億6500万ドルという多額の金額にのぼります。制作費がかかりすぎるのではないかと思いますが、2018年に公開されたTom Cruise氏主演のMission: Impossible – Falloutの米国の興行収入は約2億2000万ドル、全世界興行収入は約7億9000万ドルです。したがって、ISSで撮影する映画がヒットすれば、宇宙への渡航費を回収可能という見方もできます。

ロシアやNASAの映画の取り組みをはじめ、宇宙空間でのエンタメ利用の動きに引き続き注目です。

Tom Cruise氏 Credit : Mega Agency

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