1枚5万円の写真撮影サービス「スペースバルーン・フォトサービス」の仕様と展望
2020年10月5日にサービスをリリースした「スペースバルーン・フォトサービス」について、その仕様や今後の展望をCBOの安川さんに伺いました。
2020年10月5日にサービス開始を公表した「スペースバルーン・フォトサービス」をご存知ですか? まずは同サービスを利用して撮影された以下写真をご覧ください。
宇宙空間をさまよっているかのような水戸納豆……とてもシュールですね。
「スペースバルーン・フォトサービス」ではどのようなものが、どのようにして撮影できるのか。また、同サービスを提供するスペース・バルーン社の今後の展望について、宙畑編集部の中村が、同社取締役 CBO 安川 遼さんに伺いました。
(1)スペースバルーン・フォトサービスとは
中村:まず、スペースバルーン・フォトサービスの概要について教えてください。
安川:⾼⾼度気球にカメラと任意の撮影対象物を搭載し、成層圏⾶⾏を行ってお気に入りの画像を撮影できるフォトサービスです。
中村:高高度というとどの程度の高さになるのでしょうか。
安川:高さとしては高度30,000メートル前後になります。プレスリリースで掲載していた水戸納豆は高度20,000メートルのところで撮影されたものになります。
中村:国際航空連盟や米国空軍の定義では宇宙空間というと高度80,000~100,000メートルからと言われますが、貴社サービスの撮影でも充分宇宙空間だ!と思えるような仕上がりですね。
サイトを拝見すると2021年で100組限定での打ち上げとのことですが、現在お問い合わせはどの程度来ているのでしょうか?
安川:現在はすでに多数のお申込みをいただいており、何を打ち上げるのかなど、お客様とすり合わせを行っています。
(2)仕様を深堀り! 打ち上げられるもの・打ち上げられないもの
中村:2021年から本格的な打ち上げとのことですが、最初の打ち上げ日は決まっているのでしょうか?
安川:はい、偏西風の影響を受けると気球が沖に流されてしまうので、偏西風の影響をあまり受けない4月下旬~6月下旬を最初の打ち上げ目標日としては設定しています。ただし、それ以前でもお客様のご希望があれば、上空の気流や風の状況を見ながら検討します。
中村:結婚記念日や子どもの誕生日など「この日に撮影したい」という希望をかなえやすいというのも気球のメリットですね。衛星写真となると希望の日に上空を飛ばすというのは難しいので。
撮影は上空でシャッターを遠隔操作するのでしょうか? また、カメラは市販のカメラを取り付けているのですか?
安川:カメラは市販の小型ビデオカメラを搭載しており、静止画を遠隔操作で撮影するのではなく、ビデオ撮影でバルーンの打ち上げから着水まで撮り続けます。そのなかから良い撮影タイミングの動画の一部とベストフォト10枚をお客様にお渡しするという内容になります。
中村:つまり、1枚5万円のフォトサービスということですね。かなりお高いようにも聞こえますが、プレスリリースにもあった通り、これまで高高度の気球打ち上げだけでも数百万円以上かかっていたことを考えるとお買い得とも言えるような……?
では、大きさや重さなど、実際に打ち上げられるものの規定はありますか?
安川:まず、サイズは100mm×100mm×50mmで、重さは100gまでを規定としています。ただし、これはあくまで目安ですので、お客様のご要望に応じてできる限り柔軟に対応したいと考えています。
中村:縦横10cmで奥行5cmとなると家族の3Dフィギュアを作成して並べて、地球をバックに家族写真とかも面白そうですね。
背景となる方角の制御などもできますか?
安川:そのときの気流や風の状況によって気球や機体の姿勢も変わるので、どの方角でというお約束は難しく、あくまでビデオ撮影したなかでお気に入りのシーンを購入していただくという形になります。
中村:現時点でこれは打ち上げられないなーというものはありますか?
安川:利用規約を現在固めているところなのですが、結婚指輪など万が一なくしたら困る一生ものなどはお断りする可能性があるかなと考えています。
中村:たしかに、世界にひとつしかないものは難しいですものね……。ただ、万が一ということは気球は基本的には回収できるということですか?
安川:はい、様々な要因を総合的に分析しながら気球の落下地点を予測して、船で回収します。実際にプレスリリースで掲載していた水戸納豆も回収して関係者で一粒ずつ味わいました笑
中村:地上では何でもないものでも、打ち上げたら世界にひとつだけの何かになる可能性があるということですね。
(3)今後のスペース・バルーンビジネスの展開
中村:最後に、先の話になってしまいますが、今後のスペースバルーンを用いた事業展開について教えてください。HPを見ると事業内容に「スペースバルーン有人宇宙飛行開発事業」「リモートセンシング事業」とありますね。
この2つについて詳しく教えていただけますか?
安川:まず、スペースバルーン有人宇宙旅行の開発については、その名の通り、有人で高度約25,000メートルの高高度気球旅行サービスになります。
中村:宇宙旅行気分を味わえそうですね。現時点でどれほどのお値段を想定されていますか?
安川:現在検討しているのはサービス開始時で800~1200万円/人を考えており、将来的には100万円/人まで価格を下げたいと考えています。
価格というハードルをできる限り下げて、お子様からお年寄りまで、たくさんの方に青い地球を実際にご自身の目で見て楽しんで頂けるサービスを目指します。
中村:サブオービタル宇宙旅行サービスが2000万円/人ほどで現在販売されていることを考えると約半分ですね。
宙畑メモ
サブオービタル宇宙旅行とは、地球周回飛行に至らない、高度100km超の高高度に達して落下させる「弾道飛行(サブオービタル飛行)」を体験できるサービスのこと。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
中村:また、サブオービタルと比較すると、ゆったりと宇宙旅行気分を味わいたい人にとっては魅力的なサービスになりそうですね。リモートセンシング事業についてはいかがですか?
安川:リモートセンシング事業では主に地球観測や災害時のサービスを検討しています。例えば、災害が起きたときにバルーンを打ち上げて、リアルタイムで被災状況を確認できるなど。
中村:衛星データでも被災地の撮影は国内だと1日後、2日後に発表されることがありますが、即日というのはバルーンの強みですよね。
安川:そうですね、ドローンでも被災状況の確認ができるのですが、バッテリーが長時間持たないといった課題があるので、長時間にわたり、より広範囲のエリアをカバーできるバルーンを利用する価値があるのではないかと考えています。
中村:災害時における早期の情報把握はとても重要かと思いますので今後のサービス拡大を期待してます。本日はありがとうございました!
(4)さいごに
今回、好きなものを打ち上げて地球をバックにお気に入りの写真を撮影できる!というキャッチーなサービスのインタビューを紹介しました。
スペースバルーン社に限らず、宇宙xエンタメという領域は、直近でソニー社が参入を発表し、宙畑でも取材したスペースバジル社の取り組みなど、今後ますますの拡大が期待され、一般の方が宇宙ビジネスをより身近に感じられるきっかけとなっています。
これまでは遊べる場所として想定されることもなかった宇宙空間が一般の方に遊びつくされることで、リモートセンシングサービスにも回りまわって新しい視点が生まれるということも今後出てくるのでしょう。今後も宇宙xエンタメは要チェックです!