Axiom、ISSに滞在する民間宇宙飛行士4名を発表。2022年に打ち上げへ【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/1/25〜1/31】
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Axiom Space ISSに滞在する民間宇宙飛行士4名を発表
1月26日、米国のベンチャー企業であるAxiom Space(アクシアム・スペース)は、民間人4名による、ISS滞在ミッション「Ax-1」を実施することを発表しました。
Axiom Spaceは商用の宇宙ステーションの構築や宇宙旅行サービスの提供を目指し、2016年に設立。2017年に宇宙飛行士の訓練を開始する予定であることが報道されていました。
同社は2020年3月にSpaceXと、ファルコン9での打ち上げ契約を締結しました。その際には、クルーはAxiom Spaceの船長1名を含む民間宇宙飛行士4名で、ISS滞在期間は8日間。2021年後半から年2回程度打ち上げるといった計画を明らかにしていましたが、今回の発表では打ち上げ時期は2022年1月以降とされています。
以下、今回発表されたAx-1に搭乗する4名のプロフィールと役割をまとめました。
Michael Lopez-Alegria(マイケル・ロペズ-アレグリア)氏
元NASAの宇宙飛行士で、4回の宇宙飛行経験がある。NASAを退職後、2017年にAxiom Spaceに入社。
Larry Connor(ラリー・コナー)氏
米国出身の起業家兼投資家。戦闘機のF-5をはじめとする16種類の航空機の操縦経験を持つプライベートパイロットで、Ax-1ではクルー・ドラゴンのパイロットを務める。医学関連の研究プロジェクトや学生向けの教育活動を行う予定。
Mark Pathy(マーク・パシー)氏
カナダ出身の投資家兼慈善家。Ax-1ではミッションスペシャリストを務める。カナダ宇宙庁とモントリオール小児病院と連携し、健康関連の研究プロジェクトを行う予定。
Eytan Stibbe(エイタン・スティベ)氏
イスラエル出身の投資家兼慈善家。元イスラエル空軍のパイロット。Ax-1ではミッションスペシャリストを務める。イスラエルの科学技術省および宇宙庁と連携して、科学実験やイスラエルの若者や教育者向けの教育活動を行う予定。
民間人によるISS滞在に関しては、米国のSpace Adventure(スペース・アドベンチャー)がロシアのソユーズロケットを利用したプログラムを提供しているほか、ロシアのグラブコスモスが2023年までにソユーズの座席を民間宇宙飛行士向けに販売する計画を発表しています。
輸送を含め、完全に民間企業で行われるのは、Ax-1が史上初。併せて、民間によるISSの商用利用がより広がっていくのではないかと考えられます。
星出宇宙飛行士が搭乗のCrew-2、4月20日以降に打ち上げへ
1月29日、NASAとSpaceXは、クルー・ドラゴンによるISSへの有人輸送ミッション「Crew-2」の打ち上げを4月20日以降に計画していることを発表しました。
Crew-2には、NASAの宇宙飛行士2名とヨーロッパ宇宙機関(ESA)の宇宙飛行士1名、そしてJAXAの星出彰彦宇宙飛行士の計4名が搭乗予定です。
2020年11月に打ち上げられた、野口聡一宇宙飛行士らCrew-1のメンバーは4月下旬から5月上旬に地球へ帰還する予定です。また、NASAとSpaceXは、今年秋に打ち上げ予定のCrew-3についても準備を進めているとのことです。
インターステラ、放出機能を備えた次号期を夏に打ち上げ
1月26日、小型ロケットによる輸送サービスの提供を目指すインターステラテクノロジズ(IST)とアダルトグッズを販売するTENGAが共同で、ロケットを打ち上げる計画を発表しました。
ISTは2019年5月に打ち上げられた「宇宙品質にシフトMOMO3号機」を宇宙空間に到達させて以来、2019年7月打ち上げの4号機、2020年6月打ち上げの5号機は不具合による飛行の中断、2020年7月にはMOMO7号機が着火直前に自動停止するといった状況が続いていました。
今回発表された「TENGAロケット」はMOMOシリーズの6号機にあたります。2020年に打ち上げ予定だったのが、新型コロナウイルスのパンデミックを受けて、スケジュールを後ろ倒したとのことです。
TENGAロケットでは新たに、ペイロードの放出と回収ミッションが行われます。TENGAの公式キャラクターを催したペイロードをフェアリング(ロケットの先端)から放出し、パラシュートを展開して、減速しながら海に着水したものを、搭載されているシーマーカーによる着色を目印に回収する計画です。
ペイロードの重さは公表されていませんが、堀江氏は記者会見で「プラスティック製で軽いため、着水時の衝撃は比較的小さいのではないか」と語っています。
MOMOロケットによるペイロードの放出および回収が実証されれば、観測ロケットとしてのサービスの幅拡大につながるのではないかと考えられます。
キヤノン電子がスペースワンに増資。2021年度中の事業化へ
キヤノン電子は、1月27日に決算短信を公開し、小型ロケット開発を進めるスペースワンへの増資を決定したことを明らかにしました。
スペースワンのコンセプトは「契約から打ち上げまでの『世界最短』と、打ち上げの『世界最高頻度』を目指す、小型ロケットによる打ち上げサービス」。2018年7月に、キヤノン電子、IHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行(DBJ)の共同出資によって設立された企業です。
同社のロケットは、太陽同期軌道(SSO)へは150kg、地球低軌道(LEO)へは250kgの衛星投入が可能となる予定です。この打ち上げ可能重量は、国内の宇宙ベンチャーが製造する衛星もカバーしていることでも注目されています。
宙畑メモ 太陽同期軌道と地球低軌道
衛星と太陽の位置関係が常に同じになる太陽同期軌道は、日当たりが揃いやすく、地球観測衛星の運用に好まれています。
地球低軌道(LEO)は、地表から2,000km以下の高度を指します。これまで多くの通信衛星は、高度約3.6万kmの静止軌道で運用されていましたが、送受信にかかる時差が少なく、地上側の受信機が安く小さくできるメリットがあることから、LEO上にコンステレーションを構築する企業も増えてきました。分解能が高くなるため、地球観測衛星の運用にも利用されます。
さらに、スペースワンは、2019年3月には、射場の建設予定地を和歌山県串本町に選定したことを発表しています。2021年度中に射場の工事完了と事業化、2020年代半ばまでには、年間20機の打ち上げを目指す計画です。
今回の増資によりキヤノン電子の出資額は、出資比率約60%にあたる34億円となりました。この資金は、年度中の事業化に向けて、事業開発や財務基盤の強化に充てられるとのことです。
また、キヤノン電子は同日に、超小型衛星の受注を開始したことも発表しています。わずか3カ月で納品が可能とのことで、契約から打ち上げまでのスピーディーさを売りにするスペースワンと連携が図れれば、より便利なものになるのではないかと考えられます。
H3ロケット、運搬中にトラブル発生。JAXAが調査へ
1月31日、H3ロケットを運搬するトレーラーのコンテナが、種子島宇宙センター内の公道を移動している最中に傾くトラブルが発生しました。
H3ロケットは、2021年1月26日に製造元である三菱重工業株式会社の飛鳥工場を出発し、種子島宇宙センターに向かっていました。トラブルは種子島宇宙センター敷地内を移動している最中に起こったようです。
路上で約5時間立ち往生し、当初よりもスケジュールが遅れたものの、搬入は無事に完了し、けが人は出ていないとのことです。これに対して、JAXAは詳しい状況や原因について調査を行なっているとのことです。
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参考
Axiom Space reveals historic first private crew to visit International Space Station
NASA, SpaceX to Launch Second Commercial Crew Rotation Mission to International Space Station
小型ロケット打上げ事業の実施に向けた事業会社化について(2018年7月2日)