宇宙ロボ開発のGITAIが18億円を調達。米国市場進出に意欲【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/3/1〜3/7】
一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!
NASAがISSの商業利用価格が大幅に引き上げへ
NASAは2019年6月に公表していた、機材の輸送費用や作業を担当する宇宙飛行士の作業料など、ISSの商業利用にかかる費用を改定しました。
地上からISSへの輸送は、1kgあたり3,000ドル(約33万円)から20,000ドル(約220万円)、ISSから地上へは、1kgあたり6,000ドル(約65万円)から40,000ドル(約430万円)に。宇宙飛行士の1時間あたりの作業料は、1万7,500ドル(約190万円)から13万ドル(約1,410万円)に引き上げられました。
NASAは、以前の価格はISSの商業利用を促進するための補助金付きのもので、市場が成長していることやサービスを提供できる民間企業の状況を鑑みて、今回の価格改定に踏み切ったとのだと説明しています。
野口宇宙飛行士、6時間に及ぶ船外活動を実施
3月5日、ISSに滞在中の野口 聡一宇宙飛行士は、船外活動を行いました。野口宇宙飛行士は、2005年のISS滞在時にも3回船外活動を経験していて、今回が4度目。日本人宇宙飛行士の中では最多です。
約6時間にわたって行われた船外活動。メインの作業は、新型の太陽光電池アレイを取り付ける架台の設置でした。ISSには大型の太陽光電池アレイが8枚取り付けられていて、打ち上げ当初は合計160kWの発電能力がありました。時間の経過とともに徐々に劣化が進んでいて、今後の運用継続に備えて、高性能の太陽光電池アレイが追加で設置されることになりました。
新型の太陽光電池アレイは、6月に打ち上げ予定のSpaceXのカーゴドラゴンによって輸送される予定です。JAXAによると、4月20日以降にISSに向かう予定の星出宇宙飛行士は、新型の太陽光電池アレイを取り付ける訓練を行っていて、実際の取り付け作業にアサインされる可能性があるとのことです。
ISSは本格的に運用されるようになってから、すでに20年が経過しています。今回のように、ISSの運用に欠かせないインフラのアップデートや修理が必要になる機会は増えていくのかもしれません。
宇宙ロボット開発ベンチャーのGITAIが資金調達18億円。
宇宙用作業ロボットを開発するスタートアップ企業のGITAIは、シリーズBラウンドで総額18億円を調達しました。出資企業の一社であるセイコーエプソンは、同社のエンジニアをGITAIに派遣し、人材交流によるオープンイノベーションを推進する予定を発表しています。
GITAIが開発しているのは、宇宙ステーション船内外の作業や、軌道上の衛星のメンテナンス、月面探査と基地開発などの作業を安全かつ安価に行うロボット。2021年には、単腕型作業ロボットの「S1」の技術実証をISS船内で実施する予定です。
ISS船内に機材を持ち込むためには、NASAの厳格な安全審査に合格する必要があります。GITAIによると、S1の安全審査は順調に進んでいて、現在は最終フェーズにあたる審査が行われています。
今回調達した資金は、開発費および人件費、2023年に実施予定の軌道上船外技術実証の実験費、米国市場進出のための人件費に充てられます。
CEOの中ノ瀬 翔氏に米国市場進出に向けた展望を聞くと、
「直近では米国の軌道上サービス提供企業から、衛星への寿命延長・修理・メンテナンスを行う汎用ロボットアームハンドの開発を受注していきたいと考えています。そのために、さらに米国宇宙機関・民間宇宙企業への提案営業を強化し、必要に応じて米国での拠点設立と現地採用を進めていく予定です」
と具体的な注力領域と米国市場進出に向けた意気込みを語っていただきました。今後は熱や放射線など船外対策の経験がある宇宙機エンジニア、システムエンジニア、プロジェクトマネージャー、米国市場への進出に向けた事業開発担当者を採用する計画です。
劣化が進むISSのメンテナンスや商業運用に向けた利用価格の高騰、衛星の打ち上げ機数の増加といった背景を前に、宇宙作業ロボットの需要の高まりは確実なものだと言えるでしょう。2021年と2023年に予定されている実証実験の動向に、引き続き注目していきます。
宙畑編集部のおすすめ関連記事
Axiom、ISSに滞在する民間宇宙飛行士4名を発表。2022年に打ち上げへ【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/1/25〜1/31】
13年ぶりに日本人宇宙飛行士募集へ、各国の動向は【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/10/19〜10/25】
今週の宇宙ニュース
Rocket LabとSpire Globalが、SPACを活用して上場企業へ【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/03/01〜03/07】
衛星データでパイプラインから漏出するメタンを検出。点検作業の効率化を実現【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/3/1〜3/7】
参考
NASA Updates Pricing Policy to Full Value for Commercial Activities on Space Station
Commercial and Marketing Pricing Policy(2021年3月6日参照)
NASA hikes prices for commercial ISS users
宇宙ロボットスタートアップのGITAI、総額18億円の資金調達を実施