宙畑 Sorabatake

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量子暗号化技術を開発するArqitが上場。2023年の実証衛星打ち上げへ 【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/5/10〜5/16】

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量子暗号化技術を開発するArqitがSPACを活用して上場へ

独自の量子暗号化技術を開発しているイギリスのベンチャー企業であるArqit Limitedが5月12日に、Centricus Acquisition Corp.による買収及び経営統合契約を締結したことを発表しました。

既にNASDAQ市場に上場しているCentricus Acquisition Corp.がArqitを買収したのち2社は合併し、Arqitは2021年度第三四半期までに「ARQQ」のティッカーシンボルでNASDAQ市場に上場する予定です。

また、今回の契約と同時に、住友商事株式会社The Heritage GroupVirgin Orbitの3社によるArqitへの出資も発表されました。合併が完了するとArqitは4億ドル(約440億円)を獲得し、企業価値は約10億ドル(約1100億円)と算出されています。

Centricus Acquisition Corp.は特別買収目的会社(SPAC)と呼ばれる、自社では事業を持たずに未上場ベンチャーの買収を目的につくられた企業です。近年、SPACを活用した宇宙ベンチャーの上場が相次いでおり、Arqitで9社目です。

宙畑メモ
SPAC(特別買収目的会社)とは、その企業自体は特定の事業を持たずに、一定期間内に未公開会社・事業を買収することのみを目的として株式市場に上場する企業のことです。SPACを活用すると、資金調達を行いながら上場が果たせるほか、従来の新規株式公開(IPO)よりも簡素なプロセスで上場を果たせるため、近年この方式の上場を採用するベンチャー企業が増加しています。

ニューヨーク証券取引所に2019年に上場したVirgin Galactic・2021年中に上場予定のBlackskySpire GlobalRedwireや、NASDAQに上場したAST & Science LLC・2021年中に上場予定のMomentusAstraRocket LabもSPACを活用しました。

2017年に創業したArqitが開発を進めている量子暗号化技術は、量⼦鍵配送(QKD)と呼ばれるもので、次世代の通信セキュリティ技術として注⽬を浴びている先端技術の一つです。Arqitが開発したソフトウェア”QuantumCloud”は、あらゆるネットワークからのハッキングや、量子コンピュータからの攻撃に対しても有効とのことです。

Arqitは2023年に、量子暗号化技術を検証する実証衛星2機をVirgin OrbitのLauncher Oneで打ち上げる予定です。地上の光通信網で量⼦暗号化技術を利⽤する場合、光信号減衰の影響が大きく出てしまうため、量子暗号化技術の適用事例として衛星通信が最適という声があり、複数の衛星通信事業社が研究を進めています。

当技術は特に英国における研究が盛んであり、2018年から英国政府とシンガポール政府の共同でQKD Cubesat プロジェクトが発足しているほか、Arqit・Cripta LabsNu Quantumと、複数の英国のベンチャー企業が量子暗号化技術の衛星通信への活用に取り組んでいます。
詳細は、国⽴研究開発法⼈ 情報通信研究機構(NICT)のレポートをご参考ください。

まだ研究段階である量子暗号化技術。今回のArqitの上場を皮切りに衛星通信への適用、更なる事業化が進むことに注目です。

これまでにSPACを利用した上場計画を発表した宇宙ベンチャー Credit : sorabatake

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参考記事

CENTRICUS ACQUISITION CORP. TO COMBINE WITH ARQIT LIMITED, A LEADER IN QUANTUM ENCRYPTION TECHNOLOGY

Virgin Orbit to launch quantum encryption satellites for Arqit

欧州における光通信を⽤いた衛星コンステレーション計画の動向調査報告書