有人月面探査の推進に向けて、大きな非宇宙企業の参入のニュースが発表されました。

GMがLockheed Martinと共同で月面ローバー開発へ

自動車メーカーのGeneral Motors Co.(以下GM)が、米国の大手航空宇宙企業のLockheed Martinと共同で月面ローバーを開発する計画を発表しました。本計画で開発が進められる次世代月面ローバーには、米国が2024年に実施予定の有人月面探査であるアルテミス計画にて宇宙飛行士が乗車する予定です。

アポロ計画15~17にて使用されたBoeingが開発した月面探査ローバー(LRV)ですが、車輪とバッテリーはGMが開発し納品した実績があります。

今回Lockheed Martinと共同で開発するローバーは、より遠くまでの移動が可能で、アルテミス計画で探査予定の月の南極付近の探査をサポートする車両となります。

具体的な今回のローバーのポイントとして、GMの自律走行技術が投入された自動走行月面ローバーとなる点があげられます。宇宙飛行士が月面に着陸する前に月面にローバーを着陸させ、軌道上の月面ゲートウェイの宇宙飛行士がローバーに指示を出すことで、科学調査を行うことができます。

また、今回のローバーには、暗闇や寒さの中で険しい地形を走行するため装備を備えています。地球や火星とは異なり、月の昼と夜の長さは14日弱ととても長く、夜間は約摂氏マイナス173℃、日中は約摂氏127℃という過酷な環境でも活動できるように設計されています。今回2社が共同開発するローバーのイメージ動画が以下になります。

GMはこれまで開発してきた最先端のバッテリー技術と推進システムを、今回の月面ローバーに提供します。月面ローバー用のバッテリーと電源システムの開発から得られた研究成果は、地球上の電気自動車の進歩にもつながる可能性があるようです。

Lockheed Martinのプレスリリースにて、GMの Global Research & Development GroupのマネージャーであるMadhu Raghavan氏のコメントが掲載されています。

Because the operating conditions are so extreme in space, our work on this project will help us make safer and better batteries back on Earth. The Moon and Mars are, of course, totally unstructured, unlined roads. Designing for that environment will ultimately just make our EV capabilities on Earth that much stronger.
（訳：宇宙では動作条件が非常に厳しいため、今回のプロジェクトの成果は、地球上でより安全で優れたバッテリーを作るのに役立ちます。月や火星は、まったく舗装されておらず道路の線も描かれていない環境です。そのような環境に合わせて設計することで、最終的には地球上での電気自動車の性能がより強固なものになります。）

日本では、JAXAとトヨタ自動車が、ルナクルーザーと呼ばれる月面ローバーを共同開発しています。

世界をけん引してきた自動車メーカーが宇宙開発における探査ローバーの開発に乗り出すことが今後も増えていくかもしれません。

宙畑編集部のおすすめ関連記事

今週の週間宇宙ビジネスニュース

参考記事

Lockheed Martin, General Motors Team Up to Develop Next-Generation Lunar Rover for NASA Artemis Astronauts to Explore the Moon

Lockheed Martin, General Motors Team to Further Lunar Exploration with Autonomous Moon Rover