宙畑 Sorabatake

ビジネス事例

気象データ活用で購入数20%アップ! 使い方は無限大、ウェザーニューズ社の最新ビジネス事例と展望

ビジネスの場で気象情報を活用するケースが増えています。ウェザーニューズに最新の利用事例をうかがいました。

災害から人々の暮らしを守るために生まれた天気予報。ピンポイントで高精度の気象情報が得られるようになり、さらには別のデータとも比較的容易に組み合わせられるようになったことで、ビジネスの場での新しい使い方が増えています

本記事では、ウェザーニューズの広報を担当する安井百合愛さんと中村好江さんに、最新の利用事例をうかがいました。

社員の約3割がリスクコミュニケーター、その役割は?

世界最大級の気象情報会社ウェザーニューズが持つ観測網は、1万3,000箇所に及びます。そして、その収集したデータをサービスに活用するうえで鍵となるのは分析です。

ウェザーニューズには、約300名のリスクコミュニケーターが在籍していて、雨量や風速などの数値情報に留まらず、より具体的な対応策の提案を行っています。

「気象庁は災害から国民の命を守るための広域な情報を発信しているのに対し、お客様が当社に求めているのは、よりピンポイントな情報です。そして、予測モデルはある程度自動で出てくるようになっているのですが、その情報をお客様に必要な情報に翻訳して伝えられるかに重きを置いています。」(安井さん)

お客様が本当に必要とする情報を伝えるために、航海気象のリスクオペレーターはもともと船会社出身だったり、その道のプロの方がいらっしゃるそう。具体的なアドバイスの内容についても教えていただきました。

「航海気象の場合は、『どの航路が、早くて安くて安全なのか』を支援します。ただ、船は大きく分けて4種類あり、船によって、風の影響の受けやすさに違いがあったり、エンジンの回転数、燃料の量も違います。それらを把握したうえで、最適な航路を伝えるのが仕事です。

また、航空会社には、『機内の揺れが少ないこの時間帯に食事や飲み物を提供した方がいい』『天候が悪く時間通りに着陸できない可能性があるため、燃料は多めに積んでおいたほうが安心』といった提案を行っています。」(安井さん)

急速に広がるDXの波を受けて、気象情報のAPIをリリース

また、直近数年でデータのオープン化にも力を入れ始め、2020年6月にリリースして、すでに100社以上の企業で導入されているというのが、気象データをAPIなどで提供する「WxTech®︎(ウェザーテック)」です。

WxTech®︎が提供するのは、全国1kmメッシュ/1時間単位の気象情報。都道府県ごとの気象情報を提供する一般のAPIと比較して、ピンポイントな情報であるのが最大の特徴です。そんなWxTech®︎を活用したプロダクトやサービスがリリース以来、続々と誕生しています。

パナソニックが2021年4月に発売した、戸建住宅向けの燃料電池「エネファーム」には、WxTech®︎の停電リスク予測データが活用されています。

燃料電池は災害時の活用が期待されていますが、起動させるのに電力が必要です。そのため停電の可能性がある場合は、あらかじめ自家発電モードに切り替えて備えておく必要があり、その判断にWxTech®︎を使っているというわけです。

天気予報を活用したマーケティング施策でクリック率が最大50%向上

さらに、WxTech®︎をマーケティング施策の策定に活用する企業も増えています。

防虫剤「ムシューダ」などで知られる日用雑貨メーカーのエステーは、防虫剤の需要がピークを迎える衣替えの時期を予測するのにWxTech®︎を活用しています。消費税増税やパンデミックなど想定される特殊要因と天気予報から売り上げを推測し、(需要ピークから逆算して、)販売店にチラシ配布や特設売り場を作るタイミングを伝えているといいます。

また、日本コカ・コーラはWxTech®︎を活用して、消費者向けのスマートフォンアプリで天気予報に応じた施策を行なっています。

気温が高く熱中症の危険が心配される日には、「熱中症に注意」という通知とともに、該当日時にドリンクを購入すると2倍のスタンプがもらえるキャンペーンを打ち出しました。その結果、通知が届かなかった地域と比べて20%多いユーザーがコカ・コーラの製品を購入したそうです。

「Webサイトの訪問者の情報を保存するCookieが規制される動きがあるなか、デジタルマーケティングのターゲティングをどうしていくべきか悩んでいらっしゃる方が多くいます。天気予報は個人情報ではないので、規制の懸念はなく、行動や意思決定に最も影響する要因の一つであるため、画期的だと評価をいただいています。広告のクリック率は20〜50%向上するという結果が出ていて、市場の反応もいいです」(中村さん)

「これまでは、大手企業を中心にシステム開発を行ってきましたが、WxTech®︎をリリースしたことで、ベンチャーや中小企業までサービス提供の幅が広がりました。今も多くの問合せをいただいていて、『APIのニーズってこんなにあったんだな』と思っています」(安井さん)

世界展開も積極的に。日本初のSnowflakeデータ出品企業に

また、ウェザーニューズ社は海外展開にも積極的です。現在、国外には20以上の販売拠点および運営拠点を置いています。売上もアジアと欧州の合計で、国内売り上げの半分程度。今後、まずはアジアからさらに展開しようとしているそうです。

また、世界展開において、今年の6月にウェザーニューズ社は日本初の取り組みを発表しています。

それが、アメリカのDX推進を担う有力企業のひとつSnowflake社が提供する、様々な企業のデータをクラウドで取り扱うマーケットプレイス「snowflakeデータマーケットプレイス」とのデータプロバイダ契約の発表です。

この取り組みにより、国内外の様々な企業が気象データを自社事業とかけ合わせて、さらなる事業拡大につなげられることでしょう。すでに問い合わせも増えているとのこと、今後ますますの気象データを用いた事例創出が期待されます。

<編集後記>
ウェザーニューズの気象情報がビジネスの場で活用されている最新の事例をうかがいました。APIとして提供されるようになってからは、企業が持つデータやシステムと気象情報を手軽に組合せられるようになり、アイデア次第で使い方は無限大です。

ウェザーニューズは、売上データやメディアのPV数やGoogleトレンドの検索数の変動と天気の相関関係を簡易的に分析できるサービスを公開しています。まずは自社のビジネスと天気との関係を調べてみると面白いのではないでしょうか。

ウェザーニューズ社の創業の経緯やアプリの最新機能を見る

参考

ビジネス分析・予測に活用可能な高解像度/高精度な気象データAPIを提供

【WxTech】家庭用燃料電池「エネファーム」の戸建住宅向け新製品を発売

導入事例(エステー)

導入事例(日本コカ・コーラ)