海外で活かされる日本の知見、東京海上グループが衛星データを活用した保険の高度化と海外展開を発表
2022年2月8日に東京海上グループが衛星データを活用した新サービスの開発と海外展開を発表しました。リリースの内容から読み取れる今後の展開について、宙畑の推測含めてご紹介します。
衛星データやAIを活用し、水災の発生から最短数時間で浸水範囲と浸水高を把握することを可能にした東京海上グループ。同社は、衛星データを活用した事業領域を拡大すると発表しました。
本発表は、上述の浸水範囲と浸水高を把握する上でも協業をしていた、SAR衛星コンステレーションを構築するICEYE社との資金提携についてのリリースに記載されていた内容です。ICEYE社は2月3日にシリーズDラウンドで1億3600万ドル(約156.8億円)を調達したと発表しており、東京海上日動が本ラウンドに参加していたということです。
SAR衛星とICEYE社についてはこちらをご覧ください
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ICEYE社が日本に支社を置くことを決めた理由
東京海上グループと協業しているICEYE社が2021年6月に日本に支社を置くと発表しました。なぜ日本に支社を置いたのかについて、明確には言及しておりませんが、当時のリリースを見ると、東京海上グループとの取り組みについても言及されています。
これは宙畑編集部の推測になりますが、日本は災害が多いこと、また、解析アルゴリズムを開発する上で不可欠となる災害の履歴をデータをきちんと保有する東京海上グループと協業できることがICEYE社にとって日本に支社を置くことを決めた大きな理由だったのではないかと考えられます。
特に注目したいのは、今回のICEYE社による資本提携のリリースにあった以下の言葉です。
By combining ICEYE’s vertically integrated satellite solutions and Tokio Marine’s historical data, we strongly believe that we can develop multiple solutions to address serious natural catastrophe risks and support our customers and society throughout the world in their time of need.
つまり、東京海上グループにあるこれまでの災害履歴データとICEYE社の保有する衛星データを組み合わせることで、世界に役立つサービスを開発できると述べられています。
地上で何が起きたかの正確な情報は、衛星データ解析結果から被災地を推定する精度を上げるために重要です。
なお、『世界気候リスク指標2021』によれば、モザンビーク、ジンバブエ、バハマに続き、台風による風災や水災が大きな要因となり、日本の気候変動リスクは世界で4番目に高いと記されています。災害が多いということは、それだけアルゴリズムの推定精度を向上するのに必要となる正解データが豊富にあることを意味します。
つまり、東京海上グループが保有する災害履歴は、ICEYE社にとっても、これからの自然災害に立ち向かわざるをえないだろう世界全体にとっても、非常に価値のあるデータだと考えられます。
日本の知見がどのように海外に活かされるのか
では、東京海上グループと ICEYEは今後どのような取り組みを行うのでしょうか。今回のリリースでは以下3つの新たな取り組みが発表されていました。
①風災発生時の損害サービス高度化
②海外グループ会社における各種サービスの高度化
③衛星データを活用した事故予兆サービスの開発
それぞれの詳細はぜひリリースを見ていただければと思いますが、上述の流れから、本記事では②の海外グループ会社における各種サービスの高度化に注目します。
海外グループ会社における各種サービスの高度化について述べられていた説明をそのまま引用すると以下の通りです。
衛星データを活用し広大な農園における災害被害を把握するなど、海外の農業保険の保険金支払いプロセスを迅速化する取り組みや、自然災害等で観測された指標(インデックス)に基づき定額の保険金をお支払いする保険(インデックス保険)の開発などを、海外グループ会社で進めていきます。また、日本で衛星データを活用してきた知見を活かし、海外グループ会社における自然災害発生時の対応に展開していくことを検討していきます。
つまり、ICEYE社の解析結果に応じて、現地に行かずとも保険金の支払いができる仕組みを整備しており、日本で得た知見も取り入れていくとのこと。日本の知見が世界にも展開されていく、そして世界全体で自然災害に立ち向かえるようになるというのはとても素晴らしいことだと思います。
まずは海外から展開していくことを検討とありますが、本取り組みが日本にも導入されるようになれば、被災した後に保険金がいつ支払われるのだろうか……と待つ時間が大きく短縮されるでしょう。東京海上グループとICEYE社の今後のサービス展開にも注目です。