宙畑 Sorabatake

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ブルーカーボンって何? ENEOSとウミトロンがブルーカーボン事業の共同研究始動と資本業務提携を発表

ENEOSとウミトロンがブルーカーボン事業の共同研究を始め、資本業務提携を行うと発表がありました。そもそもブルーカーボンとは?というところから紹介します。

2022年2月24日、エネルギー事業や石油・天然開発事業を行うENEOSホールディングス株式会社(以下ENEOS)と衛星データ他、様々なテクノロジーを用いて水産養殖業向けのサービスを展開するUMITRON PTE. LTD. (以下ウミトロン)が資本業務提携を行い、カーボンニュートラルの実現に向けた、ブルーカーボン事業の共同研究を開始すると発表しました。

宙畑メモ カーボンニュートラル
カーボンニュートラル(脱炭素社会)は、政府が中心となって温室効果ガスを段階的に削減していこうとする取り組みです。カーボンは炭素を、ニュートラルは中立を意味しています。日本が目指すカーボンニュートラルは、温室効果ガスである、二酸化炭素をはじめとするメタンや一酸化二窒素などの排出を全体としてゼロにすることです。

■ブルーカーボンとは?

ブルーカーボンとは、藻場・浅場等の海洋生態系に取り込まれ、隔離・貯留される炭素のことを指し、植物などの陸上生物の作用により隔離・貯留される炭素のことをグリーンカーボンと呼ぶことと対をなす形で表現されるものです。

Credit : ENEOS Holdings, Inc., ENEOS Corporation All Rights Reserved.

グリーンカーボンをめぐる課題とブルーカーボンのポテンシャル」によれば、浅海域(海岸線から大陸棚の外縁までの間で、大陸棚上の大部分を占める海域)と呼ばれる沿岸域には、海草や海藻が濃密で広く群生している藻場、干潟などがあり、面積あたりのCO2吸収速度が陸域の森林などと比べて5~10倍と大きいそう。

さらに、ブルーカーボンのポテンシャルを試算した研究によると、ブルーカーボンによる日本のCO₂の年間吸収量(2030年)は、既存の吸収源対策による吸収量の最大12%に相当すると試算されているようです。

一方で、グリーンカーボンについては、関心が高まっているものの、課題に直面しています。樹木は成熟期に入るとCO2吸収量が減少することが知られています。しかし、日本では人工林の管理の担い手の減少から、収穫適齢期を超えた樹木の伐採が進まず、森林全体のCO2吸収量が減少しているという問題もあります。

今後、グリーンカーボンの課題解決と合わせて、ブルーカーボンのポテンシャルを最大限活かすという点にも注目が集まることは間違いないでしょう。

■衛星データで海藻類の生育適正域の算出!

では、ブルーカーボン事業に向けて、ENEOSとウミトロンはどのような共同研究を行うのでしょうか。

ウミトロンは、水産養殖という特殊環境下で蓄積してきた水中・水面での解析技術、海上でのデバイスの安定稼働、海洋でのリモートセンシングの活用ノウハウなどの独自の事業基盤を持っています。

本業務提携のきっかけはENEOSが上述のようなウミトロンの持つ独自の技術・事業基盤をブルーカーボン領域に活用することに対して大きな可能性を感じたとのことで、共同研究の内容は、水産養殖分野におけるブルーカーボン事業への技術応用利用に関するものとあります。

一例としてリリースで挙げられていたのが、ウミトロンが提供する水産養殖向け海洋データサービス「UMITRON PULSE」を用いて、海藻や海草をはじめとした主要養殖魚種の生育適正域の算出です。

「UMITRON PULSE」は、全地球の海洋環境データのモニタリングが可能であり、衛星データで取得した海面水温やクロロフィル濃度を水産養殖業者向けに提供しています。

Credit : UMITRON

今後も「UMITRON PULSE」にデータが蓄積されることで、海藻などの生育適性域の算出精度が上がり、ブルーカーボンを効率的に取り入れた社会の実現が期待されます。

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参考

ウミトロン、ENEOSとの資本業務提携を実施。脱炭素社会実現に向け、ブルーカーボン事業の共同研究を始動。