ispaceとMIT発の研究所、NASAの実験機器を月面輸送する提案が採択。売上は97億円【宇宙ビジネスニュース】
【2022年8月1日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
7月25日、月面探査を計画する日本のベンチャーispaceの子会社であるispace technologies U.S., inc. (以下ispace U.S.)が、アメリカのチャールズ・スターク・ドレイパー研究所(以下ドレイパー研究所)らとともに、NASAへ 商業月面輸送サービス(以下 CLPS)の提案を⾏い、採択されたことを発表しました。
今回提案が採択されたことにより、ドレイパー研究所のチームは総額7300万ドル(約97億円)の売上を獲得しました。
月着陸船(ランダー)はispace U.S.が設計を担当。2022年11月以降に打ち上げられるミッション1のランダーの開発経験などを活かして、ペイロード容量を増加し、月面と月周回軌道のどちらにもペイロードを輸送することが可能な設計となります。
ランダーは2025年に打ち上げ、リレー衛星2機の月周回軌道投入および科学実験機器を含むペイロードの月面輸送を実施する予定です。
ドレイパー研究所は、マサチューセッツ工科大学の器械工学研究所として創設され、1973年に独立した非営利の研究開発組織です。NASAのアポロ計画では、月着陸船の誘導・航法・制御システムを担当した実績があります。
ispaceは2018年10月にドレイパー研究所らのチームに参画したこととCLPSの公募プログラムに提案したことを発表していました。
また、7月29日には、三井住友銀行を主幹事(アレンジャー)、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、商工組合中央金庫を副幹事(コアレンジャー)、静岡銀行を参加金融機関とした、総額50億円のシンジケートローン契約を締結し、融資を行ったことを発表しました。
宙畑メモ シンジケートローン
資金調達ニーズに対し複数の金融機関が協調してシンジケート団を組成し、一つの融資契約書に基づき同一条件で融資を行う資金調達手法のことです。
引用:シンジケートローンとは
今回の調達により、ispaceの総調達額は約268億円となりました。ispaceはシンジケートローン契約を締結した理由について「社会情勢が大きく変化する中、機動的かつ安定的な資金調達を実現し、適時に必要な先行開発投資を着実に実行していくことを企図して」とのことだと説明しています。
本格的な民間による月面探査や月面開発を前に、事業が加速していっている様子がうかがえます。
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参考
ispace、金融機関各行より総額50億円の新規資金調達(累計調達額268億円に)