JAXAと日立造船がISSで「全固体リチウムイオン電池」の充放電に成功!小型ローバーなどへの搭載が期待【宇宙ビジネスニュース】
【2022年8月8日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
8月5日、JAXAと機械メーカーの日立造船が、ISSの「きぼう」日本実験棟に設置した全固体リチウムイオン電池の実証実験を実施し、世界で初めて宇宙で充放電できたことを確認したと発表しました。
全固体リチウムイオン電池とは、構成するすべての材料に固体物質を使用した電池です。従来のリチウムイオン電池は電解質として液体を利用していたために利用できる温度範囲が限られていた中で、電解質が固体になったことで-40℃~120℃という広い温度範囲で使用できるようになりました。
そのため、従来まではヒータ等を利用することで利用する温度範囲を細かく制御してきましたが、利用温度範囲が広くなることで宇宙空間での電池の管理が簡単になることが期待されています。
また、従来のリチウムイオン電池では可燃性の電解質が利用されることが多かったところ、難燃性の電解質を利用することで安全性が高くなり、破裂発火のリスクが極めて小さいことが特徴です。
さらに、従来宇宙で使用している有機電解液のリチウムイオン電池では難しかった省スペース化が求められる小型機器への適用や、船外実験装置などでの使用が可能になります。将来利用が期待される具体的な用途としては、月面に設置する観測機器や小型のローバなどが挙げられています。
JAXAと日立造船は、宇宙探査イノベーションハブの研究提案公募の枠組みの下、2016年から全固体リチウムイオン電池の共同開発を実施してきました。
宙畑メモ
「宇宙探査イノベーションハブ」は、JAXAの共同研究プログラム制度です。様々な分野の人材・知識を集めた組織を構築し、革新的な技術の開発と、得られた成果を宇宙利用に限らず、地上でも社会実装することを目指しています。
参考:探査ハブについて
そして、従来の全固体リチウムイオン電池の充放電時に必要であった機械的加圧が不必要な全固体リチウムイオン電池を、日立造船の機械加工技術を活かした独自の製造方法で開発しました。
実用化に向けて、今後も宇宙環境下における全固体リチウムイオン電池の特性などの評価が実施される予定です。