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ブロックチェーンベンチャー「ConsenSys」の深宇宙探査ベンチャー買収の意図とは

今回は、ブロックチェーン界隈で注目されているベンチャー企業であるConsenSys社が、深宇宙探査のリードプレイヤーだったPlanetary Resourcesを買収したニュースを紐解きながら、この買収劇の意図と、ブロックチェーンと宇宙ビジネスのシナジーの可能性に迫っていきます。

ここ数年、ビットコインをはじめとする仮想通貨のニュースや、ブロックチェーンを解説する本が書店で多く並んでいますね。ブロックチェーンというのは、技術の名前であり、仮想通貨はあくまでも、1つのユースケースに過ぎません。

記事の本題に入る前に、簡単にブロックチェーンの特徴について解説します。

ブロックチェーンは、「管理者が不在であるものの不正が起きにくい仕組み」です。
ブロックチェーン上に登録された処理結果は、事実上変更できません。

処理結果の内容は、全ての人が確認することができます。つまり、皆が処理結果を監視できる仕組みになっている為、不正が起きにくい仕組み。

ブロックチェーンを仕組みを使わない場合(これまで)は、中央で管理者が不正が行われない様統制をかけています。この管理者不在で不正が起きにくい仕組みが、様々な技術者の注目を集めているのです。

今回は、ブロックチェーン界隈で注目されているベンチャー企業であるConsenSys社が、深宇宙探査のリードプレイヤーだったPlanetary Resourcesを買収したニュース(※1)を紐解きながら、この買収劇の意図と、ブロックチェーンと宇宙ビジネスのシナジーの可能性に迫っていきます。

(1)Planetary Resourcesとは

Planetary Resourcesのこれまでの経緯 Credit : sorabatake

Planetary Resourcesは、”小惑星を無人ロボットが探査し、そこで掘削した貴重な資源を地球に持ち帰る事”を事業内容として掲げ、2009年にシアトルで創業した宇宙ベンチャー。2012年にPlanetary Resourcesに改名しました。

自らが手掛けた技術実証小型衛星を2基打ち上げた実績(※2)もあり、ルクセンブルク政府からの資金調達(※3)にも成功しており業績は順調に見えました。

しかしながら、2018年始めの資金調達ラウンドに失敗した事を皮切りに資金不足に悩まされ、同年10月31日に、ConsenSys社に資産購入取引を通じて買収されました。

では、Planetary Resourcesを買収したConsenSys社とはどのような会社なのでしょうか。

(2)ConsenSysとは

ConsenSysとは、Ethereum Foundation(以下、イーサリアム)の共同創業者、Joseph Lubin氏により2015年に設立されたブロックチェーンベンチャー企業です。ConsenSysは、主にイーサリアム内でのエコシステムをより便利なものにするスタートアップスタジオ(※)です。

※スタートアップスタジオとは、映画製作をプロジェクト単位で実行していくハリウッドの映画スタジオに似たスタートアップを支援する集団の名称(※4)

ConsenSysは、予測市場プラットフォームのGnosisや、音楽ストリーミングサービスのUjo Musicなどの多くのプロジェクトを並行して進めており、スタートアップというよりスタートアップスタジオとしての側面が強いとされています。

このスタートアップスタジオという仕組みですが、起業家やスタートアップを応援する仕組みとしてよく知られているアクセラレータープログラムとは大きな違いがあります。

アクセラレータープログラムでは、専門家によるメンタリングを株式と交換で提供する事が主となっています。しかし、スタートアップスタジオでは、資金だけでなく、人材調達、事業設計、マーケティングまでもサポートするシステムとなっており、リスクを最小限に抑えてスタートアップを支援する事を可能にしています。

ここで、ConsenSysが、Planetary Resourcesを買収した時に発表したコメントを見てみましょう。

2018年10月31日に、ConsenSys, Inc.がPlanetary Resourcesを資産購入取引を通じて買収した事を発表します。

Ethereum Foundationの共同設立者でありConsenSys創業者のJoseph Lubin氏は、今回の買収に対して、「ConsenSysのエコシステムに深宇宙探査能力を持つPlanetary Resourcesを迎える事は、イーサリアムがスマートコントラクトを通し、人類が新しい社会ルールシステムを築く手助けとなる可能性への我々の信念を反映している。」と述べています。

また、「同時に、人類を結びつけ人類の未知の可能性を広げるための宇宙開発の民主化と地方分権化、という我々の信念も反映している。」とも述べています。
このようなスタートアップスタジオ(※)としての側面も持つConsenSysにPlanetary Resourcesが加わったとなると、今後大きく事業を展開させていくと期待できます。買収額などの契約の詳細や株式の所有率なども一切明かされておらず、今後事業が大きく変更してしまう可能性もあるのは事実ですが、今後の動向が非常に楽しみです。

※スマートコントラクトとは、コントラクト(契約)をスマートに行える技術のことです。スマートコントラクトを使うと、契約の条件確認や履行までを自動的に実行させることが可能です。

同社のプレスでは、まだ今後の具体的なプランは明らかになっていません。

今後も宙畑として情報を追いかけてみたいと思いますが、現時点でブロックチェーン×宇宙ビジネスの活用事例がいくつかあるので、紹介します。

(3) ブロックチェーン × 宇宙ビジネス事例

ブロックチェーン技術の宇宙ビジネスでの活用事例 Credit : sorabatake

NASAとの研究事例

NASAは2017年に、ブロックチェーンに基づいた自律的な宇宙船システムの開発を支援するために、アクロン大学で電子情報工学部助教授を務めるジン・ウェイ・コチシュ博士に対して、33万ドルの研究資金を提供しました(※5)。

コチシュ博士の解説によると、このプログラムは、『RNCP(“Resilient Networking and Computing Paradigm”)』と呼ばれ、困難な宇宙環境に適した安全なコンピューティングシステムを開発する上での、イーサリアムベースのブロックチェーンのスマートコントラクトの応用性を調べる研究のようです。

障害物を自動的に素早く発見・回避できる宇宙船を建造するために、RNCPのシステムはスマートコントラクトを活用するそうです。スマートコントラクトを活用する理由は、深宇宙での通信における、信号の減衰による信頼性の悪化という問題を改善できる可能性があるからとの事です。

今のところ具体的な結果は発表されていないようですが、このブロックチェーンソリューションを搭載した宇宙船により、より多くのタスクをこなせる未来が来るかもしれません。

blockstream社

仮想通貨向けにブロックチェーン技術を提供しているblockstream社は2017年に、地球を周回する人工衛星を用い、世界中のどこからでもビットコインが利用できるようになるサービス「Blockstream Satellite」を発表しました。地球上の全ての人にブロックチェーンを送信するのをミッションとしているBlockstream Satelliteプロジェクトは、最初の取引まで行っています(※6)。

宇宙空間ベースのブロックチェーンを運用するため、blockstreamの衛星は、「GALAXY 18」「EUTELSAT 113」「TELSTAR 11N」を使用しており、世界に4つあるアンテナで、南北アメリカ・アフリカ・ヨーロッパで受信可能となっています。

同社の公式HPは、こちら

Spacechain社

2017年に創業されたSpacechain社は、オープンソースのブロックチェーンベースの衛星ネットワークを構築しようとしています。
SpaceChain社の二機目のブロックチェーンノードは、2018年10月25日に、中国の太原衛星打ち上げセンターから低軌道に打ち上げられています(※7)。
同社は、2月2日に、中国のゴビ砂漠のJiuquan衛星打上げセンターから、ブロックチェーンノードを搭載した衛星の地球低軌道への投入に成功しています(※8)。

同社の公式HPはこちら

EXA

Amazonランキング大賞のビジネス書部門で日本1位を受賞した「お金2.0」の著者である佐藤航陽氏が手掛ける株式会社スぺ―スデータも、ブロックチェーンを活用したEXAというプロジェクトを発表しています。公式HPはこちら

同社の公式HPには、以下のように説明されています。

現実地球と仮想地球の比較

現実地球と仮想地球の比較(EXA公式HPより作成) Credit : EXA

EXAが目指しているのは、衛星データとブロックチェーンを活用した「仮想地球」です。人工衛星が取得する地球のデータをブロックチェーン上に記録していき、サイバー空間に仮想の地球を作り出そうとしているのです。しかし、ただ仮想の地球を作ってもユーザーにメリットはありません。佐藤さんによると、現実経済と逆相関するような経済圏を、仮想地球に作る事を考えているそうです。

一般的なマイニング手法である、Proof of Work(PoW)や、Proof of Stake(PoS)と呼ばれるアルゴリズムは採用せず、仮想地球に参加するユーザーの【位置情報】に連動してトークンをマイニング出来るアルゴリズムを、EXAでは採用しています。

PoWのようにマイニングマシンで計算するといったプロセスは必要なく、ユーザーは地球上でただその場所にいればいいのです。そして、経済発展が高い地域ほどマイニングがされにくく、逆に経済発展が低い地域ほどマイニングがされ易いように設計されています。これによって、国家間における経済力の格差を縮める事ができ、現実経済と逆相関の仮想経済圏を作る事が出来るのです。

現在、EXAプロジェクトでは、facebookで非公開グループを作っており、そのユーザーを通して今後具体的な活動をしていくものと期待されています。

(4) ブロックチェーンと宇宙ビジネスの接点と今後の動き

ここまで、ブロックチェーンを持ちいた宇宙産業のプロジェクトを見てみました。現在では、小型人工衛星や仮想通貨との掛け合わせの延長線上のビジネスが多いのが現状です。
その現状と比較しても、ブロックチェーン界のスタートアップスタジオであるConsenSysが、資源探査ビジネスのリードプレイヤーであったPlanetary Resourcesを買収した事は、新たな側面を呈していると思われます。

宇宙ビジネスの中で、資源探査ビジネスは、宇宙圏の内部で経済を回す事が非常に重要になってくると言われています。小惑星や月などで資源を採掘したのち、それを地球に持ち帰るよりも、宇宙空間内で消費者に提供する方が容易だからです。

いわゆる、地産地消です。

現在、小惑星の市場価値は公開されていますが、大きな価格の上下動は少なそうです(※9)。

しかし、小惑星から資源を採掘し、それらをロケットや宇宙線などの輸送体系に提供したり、小惑星資源を使って建築する事がありふれた事になると、その中で、商取引が多く行われるのも近いかもしれません。

宇宙にまだ人が進出していない現状の間から、商取引の仕組みや経済圏の再定義を考えていくのは、新しい考え方であると思います。

地球上では、産業の裾野が拡がり多くの人に使ってもらえるようになってから、取引や決済についてのサービスがローンチする事が多いですが、宇宙ビジネス 特に深宇宙ビジネスでは、事業を勧めながら取引についても注目されたりするのが、地球上でのビジネスとの相違点かもしれませんね。

宇宙産業をより多様で多くの人に価値あるものとするには、技術開発と並行して経済システムの構築も欠かせません。今後は、宇宙経済圏についての動きも見逃せませんね。

(5) まとめ

今回は、Planetary Resourcesの資産買収のニュースを切り口に、ブロックチェーン×宇宙ビジネスというトピックを追いかけてみました。

今後、宇宙空間が、ビジネス圏としての特色を表しだすと、より様々なサービスが登場するとみられています。ブロックチェーン技術は、凄まじい速度で進化しているので、今後の動向が楽しみです!

参考/引用文献

[1]ConsenSys Acquires Planetary Resources

[2]Planetary Resources Launches Latest Spacecraft In Advance Of Space Resource Exploration Mission

[3]Planetary Resources And The Government Of Luxembourg Announce €25 Million Investment And Cooperation Agreement

[4]Why Collaborating With a Startup Studio Can Result in a Scalable Business Impact

[5] The University of Akron :Researcher and NASA work to help spacecraft avoid floating debris

[6]Blockstream :satellite_network-coverage

[7]SpaceChain’s New Space-Based Blockchain Node Launched Successfully

[8]SpaceChain Successfully Launches First Blockchain Node Into Low Earth Orbit

[9]Asterank