特集

人工衛星「革新的衛星技術実証1号機」は何が革新的なのか

1月18日、イプシロンロケット4号機で宇宙へと打ちあがる「革新的衛星技術実証1号機」。 実はこの衛星、「ぜんぶのせラーメン」とも言うべく様々な「具」が載った盛りだくさんの衛星です。

1月18日、イプシロンロケット4号機で宇宙へと打ちあがった「革新的衛星技術実証1号機」。
衛星も無事に分離したことが確認され、今後衛星の運用が始まります。

実はこの衛星、「ぜんぶのせラーメン」とも言うべく様々な「具」が載った盛りだくさんの衛星です。
そして名前の通り、この衛星は、高い信頼性が求められる人工衛星にとって大切な「宇宙実証」を行います。

この記事では「革新的衛星技術実証1号機」として打ち上げられた7つの機器、3つの小型衛星、3つのキューブサットについて、そしてこのプログラムの意義について紹介します。

(1) 革新的衛星技術実証プログラムとは?

今回打ち上げられた「革新的衛星技術実証1号機」は、宇宙実証を目指す7つの実証テーマを搭載した小型実証衛星1号機「RAPIS-1(RAPid Innovative payload demonstration Satellite-1)」と3つの小型衛星、3つのキューブサットで構成されています。

イプシロンロケットに取り付けられた小型実証衛星1号機。最上段に取り付けられたのがRAPIS-1。その下には3つの小型衛星と3つのキューブサットが取り付けられている。 Credit : JAXA

本記事におけるキューブサットとは、大学機関やスタートアップ等が科学やビジネスを目的に開発を手掛ける数kg程度の超小型人工衛星のこと。
国家プロジェクトとして位置づけられるような数トン〜数百kgのものを大型衛星、数十kg程度のものを小型衛星と合わせて分類されることが多いです。

では、今回の「革新的衛星技術実証1号機」についてその背景から紹介します

まず、人工衛星などの宇宙で使われる部品や機器は打ち上げ後修理ができないため、高い信頼性が求められます。
そのため、その機器を宇宙で使用した実績がない場合、新たな衛星プロジェクトの際に採用されにくい傾向にあるのです。

つまり、新しいプレーヤーの参入や既存の企業が新しい機器を導入することが難しく、革新的な技術が生まれにくい構造がありました。
そのような技術を導入する際の第一歩「宇宙実証」のハードルをJAXAが取り払い、そのための衛星や機会を設けたのが今回の「革新的衛星技術実証1号機」です。

さらに、このような機会を提供するのには民間企業などのプレーヤーに積極的に宇宙分野へ参入してもらうことで、国内の宇宙ビジネスを促進し従来の国家主導の産業構造を変革させたいという狙いもあります。

後述する各実証テーマや小型衛星、キューブサットについても、いずれも製品化や事業化の足掛かりを狙うものが多いです。

このような取り組み以外にも、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の民間利用を促進するプログラム、また民間事業者へ「きぼう」の運用事業を移行するなどの取り組みがあります。

他にも宇宙ベンチャーの支援パッケージやJAXAと協働で事業を推進していくプログラムなど、民間の事業をさらに活性化させようという試みが増えてきており、国内の民間宇宙ビジネスはさらに活発な動きがありそうです。

(2) 小型実証衛星1号機「RAPIS-1」

まずは、RAPIS-1に搭載された7つの実証テーマを並べてみました。

前述の通り、いずれのテーマも未来を見据えた新しいものになっており、製品化などへの足掛かりとするテーマもあるようです。

RAPIS-1に搭載される実証テーマ。JAXAの情報を元に宙畑が作成。 Credit : sorabatake

また、RAPIS-1で特筆すべき点として、実証テーマの機器へ給電したり、機器の状態や地上からのコマンドを地球と通信したりする衛星の基本的なベースとなる機能「バス部」の製造を日本の宇宙ベンチャー アクセルスペースが担当したことが挙げられます。

従来JAXAの衛星プロジェクトは三菱電機やNECなどの大企業がプライムメーカーとなり、製造を請け負ってきましたが、2008年創業の宇宙ベンチャーがJAXAの衛星プロジェクトを受注し製造するというのは初の試みです。

アメリカなど諸外国へ遅れは取っているものの、日本でも力をつけた宇宙ベンチャーが徐々に台頭しつつあるようです。

(3) 3つの小型衛星と3つのキューブサット

7つの部品や機器を搭載したRAPIS-1以外にも、今回3つの小型衛星と3つのキューブサットが打ち上げられました。

それぞれの担当機関と目的を以下の表にまとめています。
人工流れ星として国内の宇宙ベンチャーとして各所で見かける株式会社ALEの実証衛星も今回打ちあがりました。

ユニーク、かつ、これからの宇宙ビジネスの足掛かりとして、各機関・企業がこの機会を捉えていることがわかります。

革新的衛星技術実証1号機で打ち上げられた6つの衛星。JAXAの情報を元に宙畑が作成。 Credit : sorabatake

(4) まとめ

この「革新的衛星技術実証プログラム」は2年に一度、計4回の打ち上げ実証を計画しており、実証テーマは通年で応募受付中。

2号機の選定はすでに終了しており、既存の大企業や大学など様々な機関が革新的なテーマへ取り組んでいます。

また、本プログラムでJAXAは以下の実現を目指しています。

1.国や産業界の課題に対応しつつ、将来を先読みして、新たな利用を拓くミッションや産業競争力のあるシステム/サブシステムの創出に繋がる技術やアイデアの実証を行う。

2.リスクは高いが、日本の宇宙技術の発展と宇宙産業の国際競争力の確保に高い成果が期待される「革新的」な技術を優先的に取り上げ、実証を行う。

宇宙ビジネスの中でも特に機器分野に関しては「実績」が問われます。
機器や部品単位で宇宙での実証ができる機会としては国内唯一となっており、貴重な機会。
「革新的衛星技術実証プログラム」発の新たな宇宙ビジネスが現れる日が楽しみですね。