宙畑 Sorabatake

宇宙ビジネス

バックグラウンド別!非宇宙人材向け宇宙業界のススメ!

皆さんがお持ちのスキルは、宇宙業界のどんなところで適用可能なのか?バックグラウンド別に様々な宇宙のお仕事をご紹介します!

宇宙ビジネスへの注目度が増す中で、「宇宙と関わりのない仕事をしているけど、実は宇宙業界に興味がある!」という人は多いのではないでしょうか。一方、宇宙産業の市場拡大に伴い、宇宙産業の求人も増えています。

そこで今回は、一見すると宇宙ビジネスとは関わりがなさそうなスキルや経験が、どう宇宙業界に活かせるのかをみていきたいと思います。

ぜひご自身のバッググラウンドを活かした宇宙ビジネスでの職探しのヒントにしてください!

宙畑では2021年末に「宇宙ビジネスゆく年くる年」と題して、様々な宇宙ビジネス企業から、1年の振り返りと新年の抱負をいただいています。その中の1つ “2022年に向けて貴社で採用したい人のイメージ” についてのアンケート回答から、宇宙ビジネスに活かせるスキルとはどのようなものなのかを探っていきたいと思います。

※アンケートに回答いただいた企業・法人合計49社を主なサービス分野として、製造・インフラ部門、利用分門、探査部門、その他部門の4つに分けており、それらを全てまとめた上で項目ごとに分類をしています。

1.日本の宇宙ベンチャーが採用したい人物像とは

宇宙業界全体で目指す社会とは、衛星データや衛星通信、宇宙空間利用などを通じて、私たちの生活をより豊かにしていくこととも言えます。

宇宙業界と聞くと、宇宙空間に限定した私たちの実生活からは遠いものを扱っているように思われるかもしれません。

しかし実際には、日常にある温暖化や大気汚染、災害リスクなど私たちが直面している様々な問題に対して、地上にある技術と宇宙空間での技術を相互に活かしながら解決していこう、という考え方のもと、どなたでも活躍できるチャンスがあります。

身近なものだと、衛星データから天気予報や防災、森林やインフラ、農作物の生育管理などを行っている例があります。宇宙業界では、豊かな社会の実現を一緒に進めてくれる人材を求めています。

まず初めに、宇宙ビジネス企業が共通して求めるものとして、【人物像】【経験】それぞれ下記が挙げられました。

■求める人物像
※多かったワード上位6つ

・挑戦力(15%)
・宇宙ビジネス、事業への情熱(15%)
・自ら考え行動できる(11%)
・チームワーク(11%)
・粘り強さ(9%)
・発想力(9%)

■求める経験
・各ポジションに応じて求める必須スキル(システム開発経験、法人営業経験など)
・グローバル環境での経験

求める人物像では、宇宙ビジネスという先例がなく挑戦ばかりの環境において、自ら考え行動ができ、難しい問題にも熱量を持って真っ直ぐ事業に向き合い続けられる人を重要視しているといえます。

例えば、株式会社アストロスケールでは、スペースデブリ(宇宙ごみ)除去を含む軌道上サービスの提供を目指しています。

アストロスケール社はこれまで誰も取り組んでこなかった、宇宙の環境問題に先陣を切って向き合い、民間世界初デブリ除去衛星を打ち上げました。

除去技術やビジネスモデルが確立されていないところからスタートした企業であり、次々に出てくる課題にメンバーが一丸となり取り組んでいます。

難しい課題に向き合い、その道のりすらも楽しみながら挑戦できる人を求めています。

また、求める経験については、業務ごとに不可欠な必須スキルがあります。ただし、宇宙ビジネスそのものの経験である必要はなく、宇宙以外でも求められる経験やスキルに合致するものがあれば、宇宙ビジネスの場で活かすチャンスがあります。

例えば、ロケットと自動車はエンジンについてみると似ており、車のガソリンエンジンの技術やノウハウはロケットエンジンにもそのまま通じるものがあります。

その他にも、扱うプロダクトは違っても、他業界で積んできた営業スキルが、宇宙ビジネスでも活かすことができるかもしれません。

インターステラテクノロジズでの求人の例。
航空宇宙以外でも求められているスキルや経験が多くある。 Source : https://sorabatake.jp/27379/

さらには、宇宙ビジネスの多くの会社でグローバルな視点やビジネス経験を持っていることも求められています。

宇宙ビジネス企業では、その特性から日本国内にとどまらず世界全体を対象としたビジネス展開を目指すことが多く、様々な国籍やバッググラウンドで構成される企業が多いため、そういった環境に対応できる英語力が求められます。

では、実際にどのようなスキルを持っている人が、宇宙ビジネスで活躍の場があるのでしょうか?

本記事ではご自身のスキルやバックグラウンドから逆引きできるように、ビジネス系スキルと技術系スキルの2つに大分類し、それぞれどのような職種があるかを中分類した上で、各採用ポジションをみていきます。

2.ビジネス系スキル向けお仕事例

まずはビジネス系スキルからみていきたいと思います。

ここでは、ビジネス職とコーポレート職に分けました。

ビジネス職

実際に事業を推し進めるビジネス職の中でも、さらに、営業職、営業企画職、プロジェクトマネージャー、営業事務職に分けて見ていきます。

営業職

営業職では、クライアントが持つ課題やニーズに合わせ、自社のプロダクトをどう活用できるか提案し販売するソリューション営業(B2B)を行います。

宇宙ビジネスでは扱う金額が大きいことから、クライアントの状況を正しく把握した上で、中長期での計画を見据えた提案力や関係構築力が求められます。

また、営業スタイルとしては、まだまだ業界内のプレイヤーが限られているため、不特定多数へのマーケティングというよりも、ある程度絞られている顧客と伴走をしながらいかに必要とされるサービスを提供するか、が求められます。

一言で営業といっても「誰に・何を・どのように売るのか」によって様々ではありますが、商品カタログのように決まった商品があるわけではない商材を法人を対象にして営業したことがある経験を求める企業が多く見られます。

扱うプロダクトの例として、下記のような営業を行います。

・衛星データソリューションの企業の場合
衛星データを活用して、企業の課題に合わせた衛星データの活用を行い、課題解決の提案を行います。

Sidus Space社の例)環境に配慮したヨットの設計をする企業に対して、海流の変化や流出した油のモニタリングのデータ提供を提案することで、環境への影響の課題解決に繋げます。

・衛星データを扱う企業の場合
自社で保有している衛星を活用して、顧客のニーズに合わせた衛星データ提供の提案を行います。

アクセルスペース社の例)広大な農地を保有する企業では、これまで衛星データを使おうとしても、全領域を一度に撮影している衛星データがなく複数のデータを用いる必要があったため、場所によってデータの取得時期がずれてしまい、全体での比較が難しいという課題がありました。

この課題に対して、広範囲を一度に撮影できる衛星を開発しデータ提供を行うことで、課題解決を行っています。

・ロケット打ち上げサービスを提供する企業の場合
自社で開発したロケットを使って、人工衛星を宇宙に運びたい企業のニーズに合わせた輸送の提案を行います。

インターステラテクノロジズ社の例)小型人工衛星をできるだけ低コストで効率よく目的地(宇宙空間)まで運びたい企業に対して、企業のニーズに合わせた打ち上げタイミングや目的地までのアプローチを提案をすることで、目的に合った宇宙空間への輸送を提供します。

これまで宇宙産業の顧客は国や政府であったため、民間企業向けの営業系スキルが求められることはほとんどありませんでした。

しかし、近年では、人工衛星やロケット開発など、官需から民需に移行しつつあり、今後は顧客がもつ課題やニーズに合わせた提案を行うという営業の基本行動が求められるといえます。

また、営業活動において、自社プロダクトの技術的な強みや顧客の技術的なニーズを理解して提案を行う必要があるため、ある程度技術的な内容に踏み込んで咀嚼し議論できる力が必要となるため、営業活動をする上で、入社前後に宇宙ビジネスに関わる知識のインプットが求められます。

情報をインプットする中で、分からないことがあれば宙畑に整理してほしい情報のリクエストをいただけますと幸いです。
※現在宇宙ビジネス企業に入社することを考えられている方向けにジョインガイドとなる記事を制作中です

株式会社SPACE BDでの求人例(募集職種:衛星打ち上げサービス営業)
【業務内容】
事業開発のプロフェッショナルであるCEOと共に、当社の主軸事業である衛星打上げサービスなどの領域での国内・海外ユーザー開拓、需要創出の取り組みを推進いただきます。

【業務詳細】
・衛星打上げサービスの利用者開拓(国内・海外の衛星事業者への提案型営業)
・衛星バリューチェーンにおける商社型事業開発(例:衛星コンポーネントの輸出入、試験設備のパッケージ型輸出プロジェクト立上げ等)
https://recruit.space-bd.com/jobs/378/

営業企画職

営業企画職では、自社のプロダクトの売り上げ向上を目的に、市場分析や自社プロダクトの分析から始まり、営業戦略を立案を行います。

市場やクライアントのニーズを掴み、営業ツールの拡充やイベントの企画を行うこともあります。営業職と連携を行いながら業務を進めることが多く、宇宙業界では営業職と営業企画職の兼任となる場合もあります。

例えば、人工衛星の製造を行う企業の場合、まずは市場調査を行いターゲットを決めます。例えば、衛星で必要な国土に関する情報を収集することを目的に「地上インフラが整っていない国」をターゲットにした場合、この対象となる国の中でどの国に輸出するのが適しているかを選定します。

こちらの場合も、衛星がどのような問題を解決し得るかなど、自社プロダクトへの深い理解が必要であり、実際に営業職のメンバーが営業活動をする中で出てくる顧客の新しいニーズや課題について、定期的に営業職のメンバーにヒアリングを行い、営業ツールの拡充を行います。

株式会社アークエッジ・スペースの求人例(募集職種:事業企画・営業)
【具体的な業務内容】
超小型人工衛星システムを活用した事業の拡大に向けて、事業企画・戦略策定、顧客開拓、サプライチェーン構築、予実管理、発注・在庫管理、契約実務等を中心として、事業面から当社を支えていただく方を募集しています。
https://herp.careers/v1/arkedgespace/e2CxZA-GSbwA

プロジェクトマネージャー職

プロジェクトマネージャーでは、予算や納期を調整し、プロジェクトで設定したゴールを達成するためにプロジェクト全体をマネジメントしていきます。

プロジェクトの成功のために、技術のアップデートだけでなく、プロセスの改良も重要となります。どんなフォーマットでリスク管理を行うのか、どのタイミングでリスクを潰しておくのかなど、自社に適したやり方を日々検討していきます。

リスクを事前に洗い出し、許容できるリスクとできないリスクを柔軟に選別していくこともプロジェクトマネージャーの重要な仕事となります。

株式会社Pale Blueの求人例(募集職種:プロジェクトマネージャー)
小型衛星向け推進システムの開発プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメント業務をお任せ致します。

プロジェクトの計画、実行、コントロール、ステークホルダーへの報告を実施し、プロジェクトの成果物およびサービス、納期、及び報告に責任を持っていただき、エンジニアとともに小型衛星向け推進システム開発プロジェクトに従事いただきます。
https://open.talentio.com/r/1/c/pale-blue/pages/64643

事業開発・プロダクトマネージャー職

事業開発・プロダクトマネージャー職では、プロジェクトのビジョン、開発中のプロダクトの開発要件や、そのほかプロダクトに関係するあらゆるタスクの優先順位を決め、プロジェクトの舵取りを行います。

クライアントの目指す理想像を深く理解することや、クライアントだけでなく、データ分析をする人、PjMを担当する人など関係各所を繋ぎ、 プロジェクトの舵取りを行います。進め方や手段についてもプロダクトマネージャーが率先して決めていくため、今ないものを作りだす、新規事業開発に近い動きが必要になります。

株式会社SpaceBDの求人例(募集職種:事業開発)
事業開発のプロフェッショナルであるCEOと共に、当社の主軸事業である衛星打上げサービスや国際宇宙ステーション施設利活用サービスなどを使用し、新たな宇宙利用の需要創出の取り組みを推進いただきます。
https://recruit.space-bd.com/jobs/31/

営業事務職

営業事務職では、営業担当がクライアントとの商談に集中できるように、事務業務全般をサポートをすることがメインとなります。商談に必要な書類作成や事前準備のサポート、請求書の作成、受発注データの入力などを行います。営業担当とのコミュニケーションが欠かせない業務となります。

宇宙ビジネスでは、政府機関のプロジェクトが多く、指定されたフォーマットでの書類作成など複雑な書類作業が多いため、ミスなく正しく対応できるスキルが重要となりそうです。

株式会社アクセルスペースの求人例(募集職種:営業事務)
国内外営業チームメンバーによる衛星画像ソリューション営業活動の事務的サポートを担って頂きます。
https://axelspace.applytojob.com/apply/2NtwcupVZM/80

コーポレート職

企業の経営基盤と社員を支える仕事として、幅広い職種があります。ここでは、人事、労務、経理、広報、法務に分けています。

人事

人事では、自社の人材に関する全ての業務を行います。

宇宙ビジネス企業では、事業拡大に伴う、社員数の増加や新しい部署新設など社内の大きな変化に対応しながら、採用方針の策定や採用活動、面接の管理や対応など人事に関わる会社全体の管理を行います。また、採用だけでなく社員の管理やフォロー、評価制度や社内制度の整備を行います。

宇宙ビジネスでは、海外の社員の採用も多くあるためその対応や、海外の宇宙企業と比較して選んでもらえる企業になるための魅力的な職場環境作りが必要になります。

インターステラテクノロジズ株式会社の求人例(募集職種:人事)
■お願いしたい業務内容■
以下の業務すべて担当するわけではなく、互いの強みや得意領域を相談しながら、業務を分担します。

【採用】
・採用したい部署と密にコミュニケーションを取りながら採用戦略の立案
・採用業務の実行、及び仕組化

【評価】
・人事評価の改定
・カルチャー(ミッション・ビジョン・バリュー)の構築・浸透
・評価制度運用のオペレーション構築

【教育】
・オンボーディングプログラムの構築
・ミドルマネジメント層の研修など
https://herp.careers/v1/istellartech/nRK1NNNW87-q

労務

労務では、社員が働きやすい環境をつくるため、入社手続きや給与計算、社内規定の作成や福利厚生の管理などを行います。宇宙ビジネス企業では、人事・労務の兼任となる場合もあります。

インターステラテクノロジズ株式会社の例(募集職種:労務)
■お願いしたい業務内容
・勤怠・給与・社会保険の実務
・法改正など、内部・外部環境の変化へ対応するための制度企画
・両立支援、福利厚生制度構築や改善による働きやすい環境作り
https://herp.careers/v1/istellartech/W7VpU5eH8vIR

経理

経理では、会社経営や会社全体のお金の流れに関わる管理を行うため、もちろん一般的な経理の知識や経験が必要となります。

さらに、宇宙業界での経理という意味では、プロジェクトの規模が大きいことから、扱う金額が大きく、開発が年を跨いで長期に亘る中で原価や売上をどのように管理・処理していくのか、政府プロジェクト関係で必要な手続き、海外との金銭のやりとりの発生など、宇宙ビジネス以外でも経験があれば役立てることが出来るかもしれません。

株式会社ispaceの例(募集職種:経理)
– 月次・四半期・年度決算業務
– 連結決算業務
– 開示業務
– 会計監査対応
– 法人税、消費税等申告
– 原価計算、収益認識の会計業務フロー整備
– その他、会社の業容拡大に併せて必要な会計処理を検討
https://jobs.lever.co/ispace-inc/3f9bc3b5-20a7-4627-af76-21d9360bdebf

広報

広報では、社内外に向けた広報活動を行い、その中でもメインは自社の存在意義を社会やマスコミに正しく伝えるための戦略、企画立案から実行までを行います。自社サイトやSNSの管理、関係各所やマスコミなどと連携し、広報PR活動を行います。

自社の取り組みや、プロダクト・サービスがどう役立つのかを、わかりやすく伝えるスキルが必須となります。

宇宙業界では、技術や経営の面で難易度が高い挑戦が多いため、その難しさを双方の面から深く理解した上で、多くの人が理解しやすいように噛み砕き、各媒体やプレスリリースで発信していくことが求められます。

株式会社アストロスケールの求人例(募集職種:マーケティング&コミュニケーション)
・マーケティング・コミュニケーション
– 報告責任者が監督する、ASJPが所有するすべてのメディア活動を計画、実施、管理する。
– ベンダーから配信されるソーシャルメディアの投稿計画と内容のスケジュールを管理し、レビューする。
– 日本語でソーシャルメディアを作成し、投稿し、報告責任者が監督するグローバルソーシャルメディアアカウントと一致させる。
– 日本語による月刊社内報の作成・編集支援する。
– 日刊メールマガジンのテキストを作成し、校正し、ベンダーに配布を依頼する。
– デジタルマーケティングの成果を把握し、定性的・定量的な総合PDCAを展開する。
– 日本PR・コミュニケーションズチームの週次ミーティング、グローバルPR・コミュニケーションズチームの隔週ミーティングに参加する。
https://astroscale.bamboohr.com/careers/214

株式会社SPACE BDの求人例(募集職種:広報・採用)
【業務内容】
CEOおよびコーポレート・ブランドコミュニケーションを担当するCMOと共に、広報活動、または採用活用に企画から実行までを担っていただきます。

弊社は宇宙における総合商社として、「日本発で世界を代表する産業と会社をつくる」ことを目標に事業を展開しています。宇宙産業の拡大にコーポレート・ブランドコミュニケーションの側面から貢献していただきます。

当社は宇宙産業への大きな期待と共に事業が急成長しており、上記ミッションを共有する様々なプロフェッショナルとの出会いを探しています。産業とそれをリードする会社をはじめのフェーズから創っていく、そんな挑戦を一緒に楽しみませんか?

【業務詳細】
・広報に関わる戦略、企画立案、実行。多くの事業活動や会社そのものを社会にコミュニケーションするすべての業務を担当いただきます。
・採用活動におけるすべての業務。コミュニケーションやプロセス確立、オンボードなどのインナーブランディングも担当いただきます。
・経営やコーポレート・ブランドコミュニケーションに関連するさまざまな特命事項への参画
※広報・採用はどちらか一方、双方、どちらのアサインメントも可能です。
https://recruit.space-bd.com/jobs/301/

法務

法務とは、ステークホルダーとの契約締結や自社の活動の法令遵守に関連した業務を扱う仕事です。自社で扱うプロダクトやサービスに合わせて、そのビジネスが法律上問題ないのかの確認や、必要な手続きについてに対応していきます。

特に宇宙ビジネスに関する法律として、宇宙活動法やリモセン法などがあり、内容の理解が求められます。

また、よく関わってくる法令として、衛星との通信に用いる電波について規定している電波法や、海外へ製品を輸出するために外為法や輸出管理令など、関連する法令を理解しておく必要があり、宇宙に関わらずこれらの法令に関わった経験があれば有利かもしれません。

また、海外企業とのやり取りも頻繁に発生するため、英語による契約締結業務などの経験も役に立ちます。

株式会社SPACE WALKERの求人例(募集職種:法務人事)
・契約書レビュー
・法務知財特許権取得への対応
・当社関連法規の整理
・弁護士との連携
・人事業務全般(入社、退社、給与計算、社会保険の処理等)
・取締役会、株主総会運営
・36協定対応等
・社労士との連携
https://space-walker.co.jp/career/mid-career2022

各宇宙ビジネス企業の採用ページをみたところ、想像以上にビジネス系スキルに関する求人が多くみられました。多くの企業の求人で、ビジネス職・コーポレート職で募集をしています。

事業拡大している企業では特に、事業を支えるコーポレート職での採用を強化しているところも多くみられました。

3.技術系スキル向けお仕事例

続いて、技術系スキルについて説明します。

各宇宙関連企業が求める技術系スキルは多岐にわたりますが、大別すると、SE職、技術職、研究職の3つに分けられます。

SE職

宇宙ビジネスの業界にもSE職(システムエンジニア)が求められます。

どのレベルのシステムを組み上げて行くかは企業に依りますが、例えば衛星データを使ったアプリケーション開発の場合、顧客要求を理解し、既存の衛星データの中から最適なものを選択、どのような処理・解析が必要かを検討し、アプリケーションとして、定常的に運用をしていくために、データのパイプラインの全体を設計する必要があります。

広いケースでは、衛星そのものの開発や、衛星からデータを受信する地上システム、衛星データをエンドユーザーに配付する総合システムをビジネス面も含めて多角的に検討する必要があり、衛星、地上システムなどのそれぞれの要素の技術的な理解と、顧客要求のすり合わせが求められます。

宇宙ビジネスの場合、衛星は遠隔での運用になりかつ一つ一つが複雑・大規模で、研究開発要素を含んでいる事が多く、どの技術要素を選択し、組み合わせるのか、システムズエンジニアリングの要素が強く、チャレンジしがいのある領域と言えるかもしれません。

株式会社ElevationSpaceの求人例(募集職種:Manager, Satellite System)
Manager, Satellite Systemとして、ELS-R100及びR1000のリエントリ機の設計開発業務、プロジェクト全体のマネジメントを行っていただきます。
https://troubled-venom-3f2.notion.site/ElevationSpace-c75ef61ef314406695dddc35aa918ea5#123bbecba19c450aa6055156f6d01
2d9

技術職(ハードウェア技術、ソフトウェア開発)

それぞれ個別の技術要素の領域でももちろんエンジニアが求められています。

こちらは、宇宙特有な要素もあるものの、地上における技術領域の知識や能力が活かせるケースも多くあります。

例えば、ハードウェア技術の場合、人工衛星やロケットの構造設計や解析、熱設計や解析などが求められますし、それぞれに組み込まれる電子回路の設計も必要です。このあたりは、家電や自動車などのエンジニアとも通じるところがあるかもしれません。

さらに、人工衛星は通信に無線技術を用いていることから、RF(電波)が分かるエンジニアも必要とされています。

また、ロケットの分野では、自動車や航空機のエンジンなどを設計するような燃焼分野のエンジニアが必要とされています。

ソフトウェア技術の場合、ユーザーが実際にサービスとして触るWebプラットフォーム開発やUI/UXデザイナーが必要です。

近年では衛星データが増加していることから、画像系のデータを取り扱うことが出来る機械学習エンジニアやデータサイエンティストも様々な企業で必要とされています。

今後、各社量産体制に入ってくると、生産管理や品質管理などの分野も求められるスキルになってくるでしょう。

株式会社アクセルスペースの求人例(募集職種:機械設計エンジニア※衛星システム)
超小型人工衛星(重量100kg前後)搭載コンポーネントおよびシステムの開発を機械系エンジニアとして推進頂きます。機械設計には構造、熱、メカトロニクスを含みます。
https://axelspace.applytojob.com/apply/sHrmcgmGDW/11

研究職

自社の技術的な強みを獲得するため、技術的な研究を行っている会社もあります。

宇宙業界の場合、技術職と兼ねていることも多いと思われますが、衛星やロケットの性能を高めるための研究や、数多くの衛星データを効率的に扱うための研究や、これまでは人が目で衛星データを確認していたものを代替するために、AIを用いた衛星データの分析などが行われています。

これらも要素技術としては、材料の研究や、画像データ分析など、突き詰めていくと、非宇宙分野での研究が活かせるものも多いと考えられます。

4.まとめ

今回の記事では、宇宙とは関係がなさそうな今持っているスキルや経験が、宇宙業界でどう役立てることができるのか、職種別にピックアップしました。

宇宙業界が未経験という人でも、今持っているスキルが宇宙ビジネス企業でどのように活かせるのかのヒントがあったのではないでしょうか?

また、本記事ではスキルやバッググラウンドに照らし合わせていただけるように、ビジネス系と技術系に分けて説明してきましたが、ビジネス系スキルを技術系職種に活かせることもあれば、技術系スキルをビジネス系職種に活かせることもあります。多様な活躍の場があるため、あまり凝り固まりすぎず参考にいただけますと幸いです。

本記事を通して、これまで宇宙ビジネス企業に興味はあったけど、なんとなく踏み出しにくかった人へ、宇宙業界でのキャリアを考えるきっかけになればと思います。

「今すぐに宇宙業界へ転職するのは、自信がないしやっぱりハードルが高い・・・」と感じている人へ、宇宙業界への第一歩となるおすすめとして、兼業やプロボノから挑戦してみるという方法があります。

下記は募集の一部となりますが、スキルや経験を活かせるポジションがあるかぜひ参考にしてみてください。

SPACETIDE
ABLab
sorano me
リーマンサット・プロジェクト
・その他、各宇宙企業にプロボノやインターン募集あり
( PDエアロスペース株式会社(宇宙ハウス) など)