H3ロケット1号機、軌道投入ならず。文部科学省「だいち3号の再開発は要否を含めて検討」【宇宙ビジネスニュース】
【2023年3月7日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
3月7日、JAXAはH3ロケット試験機1号機を打ち上げましたが、第2段エンジンが着火せず、所定の軌道に投入できる見込みがないことからロケットに指令破壊信号を送出し、打ち上げに失敗したことを発表しました。
だいち3号、再開発の可能性は?
H3ロケット試験機1号機には、先進光学衛星「だいち3号(ALOS-3)」が搭載されていました。だいち3号は、2006年1月に打ち上げられ、2011年5月まで運用された陸域観測技術衛星「だいち」の光学ミッションを引き継ぐ衛星です。だいち3号には高性能のセンサが搭載されていることや地球観測データの需要が高まっているという背景もあり、だいち3号が取得するデータには期待が寄せられていました。
だいち3号の軌道投入に失敗したことは、日本の宇宙開発計画に対して大きな影響があると、3月7日に開催された記者会見でJAXAの山川 宏理事長は話しました。
「ALOS-2(だいち2号)については当初の予定を超えて、運用しているところでございまして。できるだけ早くそれ(だいちシリーズ)を引き継いでくれる衛星があることは我々としては望ましいと思っております。そういった意味で今回のALOS-3の軌道投入の失敗には非常に大きな影響があり、どうやって挽回していくかは、様々な観点からこれから検討していく必要があると考えております」(※編集部注:だいち2号はSARセンサを搭載した衛星です)
だいち3号と同等の性能を持った衛星を開発する計画はあるのでしょうか。文部科学省 大臣官房審議官の原 克彦さんは記者会見で
「ALOS-3(だいち3号)の今後につきましては再開発の要否も含めまして。今後の衛星開発につきましては関係府省、それから民間企業等と対応を進めながら検討するということが必要だと考えているところでございます」
と説明しました。
試験機2号機には、だいち2号の後継となる先進レーダ衛星「だいち4号(ALOS-4)」が搭載される予定です。だいち4号の打ち上げのスケジュールについては、試験機1号機が失敗した要因の分析を踏まえて検討するということです。
早期の打ち上げ再開で信頼性の高さをアピール
H3ロケットは「国際競争力の確保」という役割を担う新型の基幹ロケットです。試験機1号機は衛星の軌道投入に失敗したものの、早期の打ち上げ再開を目指すことで信頼性の回復を努める考えです。JAXA理事兼打上げ実施責任者の布野 泰広さんは、このように説明しました。
「1号機が予定通りにならなかったということで、少なからずの影響はあるかと思います。我々としては、早期に原因究明を行い、リターン・トゥ・フライト(打ち上げ再開)を果たす、まずはそういう形でH3の信頼性の高さをアピールしていくという中で、影響を極力ないような形で進めていけるように全力を尽くしてやっていきたいというふうに今考えているところでございます」
一方、新たに開発したLE-9エンジンを含む第一段エンジンは、現時点では問題なく動作したと見られています。早期の打ち上げ再開が望まれます。