宙畑 Sorabatake

宇宙ビジネス

【少子高齢化の原因と対策】日本と海外の現状と今後をデータと合わせて分かりやすく解説

世界人口は80億人に達した一方、日本の出生数は初めて80万人を下回り、少子高齢化が急速に進行しています。各国の現状と政策を整理し、解決策となるヒントをまとめました。

2022年11月、国連によると世界の人口は80億人に達しました。一方、日本は2022年の出生数が初めて80万人を下まわる見通しで少子高齢化が一気に加速しています。

日本が目を背けてはいけない大きな課題である少子高齢化とは何が問題なの?その打開策は見いだせるのか?日本が進めている政策は?など、ひとつずつ紐解いていきましょう。

まず少子高齢化という言葉から考えます。
少子高齢化とは、2つの言葉「少子化」と「高齢化」を合わせたものです。はじめに各々の言葉を定義していきましょう。

「少子化」とは、出生率が低下し、子どもの数が減少することです。具体的には人口に対する0〜14歳の子どもの割合が少なくなることです。「少子化」という言葉は「1992(平成4)年度の国民生活白書で使われた語」として広辞苑に登場しています。

「高齢化」とは高齢者人口(65歳以上の人々)の割合(高齢化率)が7%以上になることです。さらに、高齢化率が14%以上の社会を高齢社会、21%以上を超高齢社会と呼びます。

「少子高齢化」とは、現代の日本を表す言葉、子どもが少なく高齢者が多い社会です。

定義が分かったところで、少子高齢化の現状を確認していきましょう。

(1)少子高齢化の原因と現状のデータ、世界との比較

日本の現状

人口ピラミッド、いわゆる「つぼ型」と呼ばれるようになった日本の現状をみていきましょう。

総務省統計局の人口推計によると、日本の人口は2023年(令和5年)1月1日現在、概算値で1億2477万人で、前年同月に比べ53万人減少しています。

年齢別にみると以下の通りです。
15歳未満、いわゆる子どもは1456万3000人で前年同月に比べ26万6000人減少。15~64歳7426万3000人で、前年同月に比べ35万2000人減少、65歳以上、いわゆる高齢者は3625万6000人で、前年同月に比べ6万7000人増加しました。65歳以上人口は総人口の29.0%です。

日本の65歳以上人口の推移に注目してみましょう。1950(昭和25)年頃は高齢者は総人口の5%程度で、若者が多かった日本!

その後高齢化率は1970(昭和45)年は7%、1994(平成6)年は14%を超え、2021(令和3)年10月28.9%に達しています。1950年当時と今では全く異なる景色です。

少子化についても数字を確認しましょう。

厚生労働省の人口動態統計速報(2022年10月分)によると、2022年1月から10月の出生数は66万9,871人で、前年同期より3万3,827人減少し過去最少の水準となりました。このまま推移すると、2022年の出生数は初めて80万人を割り込む見通しです。

80万人を下まわるのは時間の問題と言われていましたが、新型コロナウィルスの感染拡大は思わぬ形で私たちに大きな影響をもたらし一気に80万人を下まわる結果となりました。
2022年の合計特殊出生率は1.30を割り込む見込みです。

合計特殊出生率は、15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計した値で「女性1人が一生に産むとされる子供の数」に相当します。国によって異なる年齢構造の影響を除いた出生率を表しやすいです。

■世界の中の日本

くり返しになりますが、世界の人口が2022年11月に80億人を超えて増加している一方で、日本は総務省によると13年連続で総人口が減少中。世界銀行が公表したデータによると合計特殊出生率の世界ランキング(2020年)で日本は191位(208カ国中)と世界の中でかなり低い水準にあります。

ただし、国連が2022年7月に発表した「世界人口推計2022年版」によれば、少子化が起きているのは日本だけではなく、多くの国で(女性が生涯に産む子どもの推計人数)合計特殊出生率が低下していることが分かります。

同時に、平均寿命が世界的に延びたことで、世界人口に占める65歳以上の割合は年々増加し、世界的に少子高齢化が進んでいるのです。

なお「世界人口推計2022年版」によると合計特殊出生率の世界平均は1950年は約5でしたが、2021年は2.3です。50年には世界平均2.1に下がると予測されています。

(2)少子高齢化の問題点や影響は? 今後、日本はどうなる?

次は、人口減少と少子高齢化の問題点や影響を大きく3つに分けて紹介します。

1.労働力の減少による経済成長の鈍化

最も分かりやすい少子高齢化の問題点は経済成長の鈍化でしょう。
経済活動は労働力人口に大きく左右されます。言い換えれば「経済」を支える1番の存在は人口です。

労働力人口は2014年6,587万人でしたが2030年には5,683万人、2060年は3,795万人へと急激に減少していくことが予測されています。

働く人よりも支えられる人が多くなる社会です。

労働力の担い手である働く世代が人口減少のために少なくなることで、生産が減少するだけでなく、消費する人も同様に落ち込みます。

少子高齢化は、国内市場の縮小、投資先としての日本の価値や魅力が減少し、国として成長が厳しくなる可能性があります。

2.社会保障制度の維持・継続の難しさ:可能性と将来の負担

2025年には後期高齢者(原則75歳以上)の数が2200万人となります。

少子高齢化による労働人口の減少は、現在の社会保障制度にどのような影響を与えるのでしょうか。

平均寿命が伸び続けていることはひとりの人間としては良いことのように思えますが、国全体を考えると手放しに喜べるという状態ではありません。

現在の日本は、 労働人口が納めたお金を高齢者が「年金」として受け取る仕組みです。
自分で働いて稼いだお金を積み立てるのではなく、 今、働いている人たちが高齢者へ必要なお金を年金という形で渡しています。

現在、働いている人たちが高齢者となった場合は、現在の子供たちが働く世代になり、彼ら現役世代が稼いだお金に応じて決まる年金が支払われる仕組みです。

一言であらわすならば、働ける人たちが(政府を通して)退職した高齢者を支える仕組みです。

ここまでの話を整理してみましょう。このまま少子化が進んで出生数が減少した場合、高齢化が進んでいる日本は、どのようになるでしょうか。

容易に想像出来る方も多いと思います。

1960年は11.2人で高齢者1人、その後加速していく少子高齢化により、1980年は7.4人で1人、2014年は2.4人で1人を支えています。

この少子高齢化が続く場合、2060年現役世代と高齢者が1対1となります。

これは「2040年問題」としても認識されています。2040年問題とは、2025年から2040年の間に20~64歳現役世代が約1,000万人も減少するという問題です。

3.人口減少による地方都市の消滅危機

2040年までに900近い市区町村が消滅可能性都市に該当するとされています。

消滅可能性都市とは、2010年から2040年にかけて20~39歳の若年女性人口が50%以下に減少する都市です。

人口が少ない市区町村では学校の選択肢や働く場所が限られ、利便性を求めて都市へ移住する人が多く、現在でも地方自治体が存続する難しさが指摘されています。

若い人たちが都市へ移り住むことが取り上げられがちですが、地方に住む高齢者も、福祉や交通、買い物などの利便性等を考慮して都市へ転居をする方が増えています。

地方都市の存続に厳しい現状が突きつけられています。

(3)日本における少子高齢化対策と海外の具体策事例

これらの課題に対して、日本はどのような対策をしているのでしょうか?

少子化、高齢化対策をそれぞれ確認します。

■少子化対策

内閣府は新しい令和の時代にふさわしい少子化対策としてまずは、結婚・子育て世代が将来にわたる展望を描ける環境をつくること、多様化する子育て家庭の様々なニーズに応えること、)結婚、妊娠・出産、子供・子育てに温かい社会をつくることなどを掲げています。

さらに、結婚前・結婚・妊娠・出産・子育てなど各々のライフステージにおける施策の方向性も考慮し結婚しても、子どもがいても働きやすい環境づくりを各々の自治体で進めようと試みています。

現内閣では、個性と多様性を尊重する社会を目指して、少子化対策、全国各地で男女共同参画で好循環を生み出していくことを目指して「女性の経済的な自立」「女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現」「、男性の活躍の場を家庭や地域社会にも広げる」「第5次男女共同参画基本計画に掲げた目標の達成に向けた取組」の4点を掲げています。

■高齢化対策

基本的な考え方として「年齢による画一化を見直し、全ての年代の人々が希望に応じて意欲・能力をいかして活躍できるエイジレス社会を目指すこと」「地域における生活基盤を整備し、人生のどの段階でも高齢期の暮らしを具体的に描ける地域コミュニティを作ること」「技術革新の成果が可能にする新しい高齢社会対策を志向すること」の3点を内閣府が掲げています。

前述を踏まえて、エイジレスに働ける社会の実現に向けた環境整備など就業・所得にかんすること、健康・福祉、学習・社会参加など6つの詳細項目があります。

以上が国内における少子化対策、高齢化対策の方針ですが、いずれも現時点で抜本的な具体策が出てきておらず、上述の通り2022年の出生数は初めて80万人を割り込む見通しで少子高齢化は加速の一途を辿っています。

では、海外で少子高齢化対策が機能している国はあるのでしょうか?
以下は、世界銀行のデータで、一人当たりのGNIが高い国における合計特殊出生率のランキングです。

データを見ると日本と同程度の一人当たり国民総生産がある国であっても、イスラエルのように合計特殊出生率が3.0に近い国もあるようです。

(4)衛星データを始めとした宇宙システムが少子高齢化社会で貢献できること

また、少子高齢化が進む日本において、対策を検討し、実行することと同時に、人口減少が進むなかで発生する問題を解決することも重要です。以前のように人もお金もかけられなくなっていく時代、これまで人が担っていた仕事はテクノロジーでカバーすることが期待されています。

宙畑では、少子高齢化社会における宇宙システムの活用可能性を検討して整理しました。

衛星データの利用

衛星データは、広範囲で過去と現在の変化や未来予測を様々な種類のデータを用いて把握することができます。そして、利活用が期待されるのは「一次産業」「インフラの点検・防災」「災害発生後の保険金の支払い迅速化」などです。

それぞれ、利活用の可能性と少子高齢化の世界でどのように寄与するのか解説します。

■一次産業

衛星データを活用した一次産業の効率化は農業、漁業ですでに社会実装が進んでいます。

例えば、農業では稲や野菜の生育状況を衛星データから把握し、見回りコストの削減や収穫時期をコントロールすることによる一定の品質の担保、ベテラン農家の知見をデータと合わせてみることによる円滑な技術継承に役立っています。

漁業においても衛星データから海面水温やクロロフィル濃度が把握できることから漁場の選定に役立てられている他、農業と同様にベテラン漁師の技術継承にも役立てられています。

一次産業における衛星データの利活用は以下をご覧ください。

■インフラの点検・防災

具体的な事例としてEUで点検インフラのメンテナンスコストを80%削減できたケースもあります。

例えば高速道路では、ある一区間の維持管理費だけで約2,000億円と言われていますが、そのコスト削減に衛星データが使えます。

現在、点検は目視で行われ、人件費、長距離を点検するための期間がかかり大きな負担です。

衛星データで広範囲に変異点を観測し、前もってどこを重点的に点検するか確認出来ていれば、大幅なコスト削減を実現できる可能性があります。

また、インフラの点検は防災の観点でも重要であることは言わずもがなでしょう。地震や洪水が発生するような大雨など、大規模な自然災害が発生した場合に危険な場所を補足するために人がすべてのポイントを見回ることは現実的ではありません。

ある程度危ないと考えられる箇所を衛星データで判別することで、人が見回る必要のある場所とタイミングを絞ることができます。

国内でも衛星データの利用検討が進んでおり、以下の記事もぜひご覧ください。

■災害発生後の保険金の支払い迅速化

衛星データは自然災害が起きる前だけでなく、起きた後でも活用される事例が生まれています。

例えば、浸水被害が出るような大雨が発生した際、保険会社は保険金の支払いが必要な世帯を迅速に把握する必要があります。ただし、どこが浸水しているのかを把握するためには気象予報やテレビの情報、現地に近い支社の人が当てをつけて、人を派遣して見回るというのがこれまでのやり方だったそう。

そこで、衛星データから浸水の被害が大きい箇所を把握して、優先度の高いところから保険会社が連絡をして迅速に保険金の支払いを行うという取り組みも始まっています。災害が発生して人が直接行かずとも、宇宙から広範囲の地上の状態を把握できる衛星データならではの事例と言えます。

本事例については以下の記事をご覧ください。

上記で紹介した以外にも、近年、衛星データの利活用は小売や製造、不動産など、活用分野の幅が広がっています。労働人口の減少を少しでも補う手段の1つとして今後も衛星データが活用されることが期待されます。

高精度な位置情報データの利用

衛星データと並ぶ宇宙システムの代表例としてはGoogle Mapやカーナビなどに用いられているGPSに代表されるような位置情報データです。

現在、位置情報データの高精度化のための取り組みが進んでいることをご存知でしょうか?日本では「みちびき」という準天頂衛星の7機体制構築を進めており、4機がすでに打ち上げられています。その誤差はなんと数cmです。

数cm精度の位置情報データがあればどのようなことができるでしょうか?

すでに実用が進んでいるのは、農業における農薬散布ドローンや自動運転農機の活用です。これまで農薬の散布やトラクターなどの農機の運転は必ず人が農地を訪れ作業が必要でした。しかし、ドローンや自動運転農機の登場により、人の移動にかかる時間が圧倒的に短縮されるほか、夜に稼働することで1日に作業できる量も増やすことができるようになっています。

また、自動運転の技術は農機だけでなく、建設業界における建機にも活用されています。鉱山での無人ダンプトラックの活用が国内外ですでに普及しているようです。

今後、公道を自動運転建機の走行が可能となればさらに建設業界における作業の効率化が進むことが容易に想像できます。
みちびきの仕組みと今後の展望については以下の記事をご覧ください。

(5)まとめ

高度成長期、ベビーブームと言われていた時代は失われた30年と共に過ぎ去り課題を先送りした未来に見えるのは少子高齢化先進国です。

労働人口の減少は経済力の衰退に繋りがりますが、そこは日本持ち前の新しい技術力を日本仕様にカスタマイズすることで未来が変えられるかもしれません。

今までベテランの感覚と英知に頼ってきたものは衛生データ×デジタル化することで個人の専用的な感覚から誰もが身につけられる汎用スキルになり得ます。

人口減少、少子高齢化社会が来るのは紛れもない事実です。それを嘆くのではなく、自分自身また自分が関わっている仕事・会社で今までとは異なる新しい一歩を踏み出してみませんか。

1人の100歩より、100人の1歩の方が大きなアクションを起こせる!という気持ちで、思考も行動も新たなステージへ進むきっかけになることを願っています。