宙畑 Sorabatake

衛星データ

【2023年4月】衛星データ利活用に関する論文とニュースをピックアップ!

2023年4月に公開された衛星データの利活用に関する論文の中でも宙畑編集部が気になったものをピックアップしました。

宙畑の新連載「#MonthlySatDataNews」では、前月に公開された衛星データの利活用に関する論文やニュースをピックアップして紹介します。

実は、本記事を制作するために、これは!と思った論文やニュースをTwitter上で「#MonthlySatDataNews」をつけて備忘録として宙畑編集部メンバーが投稿していました。宙畑読者のみなさまも是非ご参加いただけますと幸いです。

2023年4月の「#MonthlySatDataNews」を投稿いただいたのは4人でした!

それではさっそく2023年4月の論文を紹介します。

The Transmission Effect and Influencing Factors of Land Pressure in the Yangtze River Delta Region from 1995–2020

【どういう論文?】
・長江デルタ地域における地圧の空間相関ネットワーク(SCN)の構造特性を調査し、地圧の転送効果と影響要因を分析することを目的とする
・長江デルタ地域は、中国の最も経済的に発展した地域の1つであり、都市化や産業発展によって地圧が高まっている
・本研究では、1995年から2020年までの6つの時点で、改良された重力モデルを用いて、地圧のSCNを構築し、ネットワーク特性を分析した
・さらに、地圧の転送効果と影響要因を分析するために、Gravity-GTWR-Modelを開発し、25年間の時系列データを用いて分析を行った

【先行研究と比べてどこがすごい?】
・従来の研究では、単一の土地利用タイプや社会経済的指標を用いて地圧を分析した
・本研究では改良された重力モデルを用いて複数の土地利用タイプや社会経済的指標を組み合わせて分析を行った
・さらに、Gravity-GTWR-Modelを用いて、空間的・時系列的な変化を分析することで、より詳細な理解が可能となった

【技術や方法のポイントはどこ?】
・改良された重力モデルを用いた地圧のSCNの構築と分析
・Gravity-GTWR-Modelを用いた地圧の影響要因の空間的・時系列的な分析

【議論の内容・結果は?】
・地圧の伝播効果:長江デルタ地域の地圧は、地理的境界を越えて伝播し、中心都市から周辺都市へと伝播する傾向がある。また、産業の移転や農業用地の圧力などが地圧の伝播に影響を与えることが分かった
・影響要因の時空間的差異:長江デルタ地域の地圧に影響する要因には、土地利用構造、人口の都市化率、都市と農村の所得比率、正規化植生指数などがある。これらの要因は、地域的および時間的な差異があり、各都市の地圧に対する影響力も異なることが示された

Deep Machine Learning Based Possible Atmospheric and Ionospheric Precursors of the 2021 Mw 7.1 Japan Earthquake

【どういう論文?】
・日本のマグニチュード7.1の大規模地震に関連する大気と電離圏の異常分析を目的とする

【先行研究と比べてどこがすごい?】
・従来の地震予知研究では、地震発生前に観測される地震前兆現象や物理量のみを解析していたため、地震と大気の相互作用に関する理解が不十分であった
・地震と大気の相互作用メカニズムであるLAIC仮説に基づいて、地震前の大気変動を詳細に分析することにより、地震予知に貢献する可能性があることを示した
・機械学習を用いたデータ解析手法を導入しており、従来の手法に加え、より高度で精度の高い解析が可能となった

【技術や方法のポイントはどこ?】
・海面水温(SST)、気温(AT)、相対湿度(RH)、外向き長波放射(OLR)、全電子量(TEC)という指標が、地震と大気の関係を解明するための重要な指標として使用された
・本研究で用いられた技術と方法は、ウェーブレット変換、統計学的手法、機械学習アルゴリズム(NARXとLSTM)である
・これらの手法を用いることで、地震前の異常な大気変動をより詳細に分析することができた
・また、複数の衛星や地上観測によって、地球の大気と電離圏の異常を同期して検出することができた

【議論・結果の内容は?】
・LAIC仮説が地震と大気の関係メカニズム(地震前の地殻変動によって発生する正孔とラドンが大気中に放出され、大気イオン化によって電気伝導率が増加することで地震と大気が結合するというもの)を正しく表現していることを示した
・しかし、地震予兆の検出には依然として課題が残っている。地震の発生は複雑なメカニズムによって引き起こされるため、地震予兆となる大気変動のパターンやタイミングを正確に捉えることが困難である。また、大気変動の原因が地震以外の要因によって引き起こされる場合もあるため、大気変動を地震予兆として扱う際には注意が必要である

Remote exploration and monitoring of geothermal sources: A novel method for foliar element mapping using hyperspectral (VNIR-SWIR) remote sensing

【どういう論文?】
・ニュージーランドの温泉地帯において、ハイパースペクトルリモートセンシング(VNIR / SWIR)を用いて、カヌカの葉を地熱活動の指標として利用することを目的とする

【先行研究と比べてどこがすごい?】
・従来の地熱活動の監視手法では、地熱温泉や地熱発電所の建設や運営時に発生する地盤変動や地震などを監視することが一般的であり、地盤の温度分布を推定する手法は限定的であった
・本研究では、地熱活動の指標としてカヌカの葉を用い、VNIR / SWIRのハイパースペクトルリモートセンシングを用いて、元素濃度の変化をマッピングすることで、地熱活動を監視する手法を提案した

【技術や方法のポイントはどこ?】
・カヌカの葉の元素濃度変化を調べるために、AisaFENIXとPRISMAのVNIR / SWIRのハイパースペクトルリモートセンシングを用いて、カーネル部分最小二乗回帰およびランダムフォレスト分類モデルを使用して元素濃度範囲をマッピング
・研究対象の元素は、地熱活動の理解や監視に重要な銀(Ag)、ヒ素(As)、バリウム(Ba)およびアンチモン(Sb)

【議論・結果の内容は?】
・熱水活動によって放出される元素の濃度分布を特定することにより、地熱地帯の資源マップを作成することができた
・この方法が、他の植物種に対しても有効であるかどうか、および他の地域における有効性がどの程度であるか、さらなる研究が必要である

Hyperspectral Denoising Using Asymmetric Noise Modeling Deep Image Prior

【どういう論文?】
・非対称かつ重尾分布を持つハイパースペクトル画像(HSI)ノイズの特性を考慮し、非対称ラプラス分布ノイズモデルとDeep Image Prior組み合わせてHSIのノイズ除去を行う手法を提案する

【先行研究と比べてどこがすごい?】
・従来のHSIノイズ除去手法では、非対称性や重尾分布などの複雑なノイズ特性を考慮していなかった
・本論文では、非対称ラプラス分布ノイズモデルとDeep Image Priorを組み合わせることで、非対称性や重尾分布などの複雑なノイズ特性を考慮しながら、高精度のHSIノイズ除去を実現した

【技術や方法のポイントはどこ?】
・非対称ラプラス分布ノイズモデルとDeep Image Priorの組み合わせ
・非対称ラプラス分布ノイズモデルは、非対称性と重尾分布の特性を持つノイズを表現するために使用され、Deep Image Priorは、高品質の画像を生成するために使用される。ALDIPとALDIP-SSTVは、これら2つの手法を組み合わせたものであり、ALDIP-SSTVでは、Deep Image Priorにスペクトル空間全変動(SSTV)正則化を追加している

【議論・結果の内容は?】
・ALDIP-SSTVにおけるTV正則化の導入が、ノイズの非対称性や重尾性に対処する上で非常に有効であることを確認した
・さらに、ALDIPとALDIP-SSTVは教師なし学習に基づく手法であり、大量のペアデータを必要とせずに、HSIのノイズリダクションを実現できることが示された

SAR and InSAR data linked to soil moisture changes on a temperate raised peatland subjected to a wildfire

【どういう論文?】
・土壌湿度や地下水位などのエコヒドロロジカル(生物学と水文学の統合分野)なパラメーターの短期変動を監視するために、SAR(InSAR)を用いた方法を提案する

【先行研究と比べてどこがすごい?】
・従来の研究では、InSARによって推定された表土変動が季節変動するエコヒドロロジカルなパラメーターと相関することが明らかにされていなかった
・本論文では、土壌湿度と地下水位の変動が表土変動と同期していることを示し、短期変動を監視するためにInSARが有用であることを示した

【技術や方法のポイントはどこ?】
・SAR(InSAR)を用いた土壌湿度や地下水位の短期変動の監視
・具体的には、CバンドのSentinel-1 合成開口レーダー画像を使用し、地形補正とフィルタリングを行い、InSARによって推定された表土変動を解析
・同時に、InSARによって推定された表土変動と土壌湿度および地下水位のデータを比較することで、それらの相関関係を評価

【議論・結果の内容は?】
・InSAR技術を用いて、複数の時期の土壌湿度や地下水位を観測し、その変化を調べることにより、湿地生態系における短期変動を捉えることができることを示した
・これは、地球温暖化の影響がますます顕著になる中で、湿地の生態系に影響を与えるさまざまな要因に関する知識を得る上で重要な貢献となる
・また、火災による湿地の荒廃に対するInSARの応用に関する知見も獲得
・湿度が大幅に変化する場合、InSARの信頼性が低下する傾向があることが示された。このことから、InSAR解析の際には、観測時期や条件を適切に選択することが重要であることが示唆された

Spatial patterns of biomass change across Finland in 2009–2015

【どういう論文?】
・フィンランドの森林における生物量の推定において、画像セグメンテーションという新しい手法を利用する提案
・この手法により、土壌種類ごとに木のバイオマスやその変化を高精度かつ高解像度でマッピングできるようになり、森林の土地利用に関する意思決定に役立つ情報を提供することを目的とする

【先行研究と比べてどこがすごい?】
・従来の手法であるk-NN法による森林バイオマスの推定では、個々の画素レベルでのRMSEが高く、分析結果にノイズが混入しやすいという欠点があった
・また、3Dリモートセンシングデータの活用による生物量の推定は、精度は高いもののコストや入手の困難さが問題であった
・本研究では、画像セグメンテーションにより、k-NN法に比べてRMSEが若干改善した上、大規模かつ高解像度での生物量のマッピングが可能となった

【技術や方法のポイントはどこ?】
・森林生物量のマッピングに画像セグメンテーションを使用
・画像セグメンテーションには、森林伐採の痕跡や土地利用などに基づいて、森林をセグメント化する手法を採用
・NFI (National Forest Inventory)調査に基づく実測データと比較することで、画像セグメンテーションによる森林バイオマスのマッピングの精度を検証

【議論・結果の内容は?】
・森林バイオマスの画像セグメンテーションによるマッピングを行うことで、森林の土壌タイプによる違いを考慮したマネジメントユニットの作成や、森林の温室効果ガス排出量を評価するための入力データの提供などが可能であることが示された
・また、森林の経営や管理においては、実際の森林区画(スタンド)単位での情報が必要であるため、本研究で提供されるマップ情報は、森林の温室効果ガスの排出量の推定や、マネジメントの意思決定に有用であることが示唆された
・3Dリモートセンシングデータをセグメンテーションに統合することで、マッピングの精度がさらに向上できることが示唆された
・セグメントレベルでのRMSEは、森林の成長速度を正確に反映していないことが示唆された
・今後は、複数の時間点での森林生物量マップの時間系列解析により、森林の成長や変化をより正確に把握することが期待される

A systematic evaluation of multi-resolution ICESat-2 ATL08 terrain and canopy heights in boreal forests

【どういう論文?】
・高分解能な地形データセットATL08を用いた森林のマッピングおよびモニタリングの可能性を探ることを目的とする

【先行研究と比べてどこがすごい?】
・従来のICESat-2の樹冠高測定にはATL03データが用いられてきたが、その空間分解能は500 m程度であった
・一方、本研究では、ATL08を用いることで30 m x 11 mの高分解能な地形データセットを用いることで、樹冠高の推定精度が大幅に向上した
・また、ATL08による樹冠高測定は、地表面の凹凸による誤差が少なく、またATL03に比べてシーズンや天候の影響を受けにくいという利点がある

【技術や方法のポイントはどこ?】
・ATL08の空間分解能30 m x 11 mと、100 m x 11 mの2つの解像度で比較し、またLVIS-Facilityデータを用いて検証を行った
・さらに、季節や雪の影響を調べるため、昼夜・雪期・非雪期などの条件下で検証を行った

【議論・結果の内容は?】
・本研究の議論では、ATL08データセットが森林のマッピングとモニタリングにおいて広く活用される可能性があることが示された
・また、ATL08の空間分解能を30 m x 11 mにダウンスケーリングすることで、樹冠高の推定精度が若干低下することが分かった
・夜間に取得された強いビームからのデータが最も精度が高いことが分かり、雪が地形や樹冠高の推定精度に与える影響は限定的であることも明らかになった
・ただし、高緯度地域で深い雪が存在する場合は、観測された森林高を低く見積もる可能性があるため、冬季後半に取得されたデータを使用する際には注意が必要である
・RMSEやバイアスは、基準高度や土地被覆の勾配に対して比較的一定であったが、短い植生が存在する場合にはRMSEやバイアスが高くなることが観察された

PRISMA and Sentinel-2 spectral response to the nutrient composition of grains

【どういう論文?】
・PRISMAおよびSentinel-2衛星画像を用いたスペクトルデータを用いて、4種類の穀物の微量栄養素およびマクロ栄養素の濃度を予測する手法について提案

【先行研究と比べてどこがすごい?】
・従来の研究では、作物の栄養素濃度を推定するために、植物のリーフスペクトルを取得することが多かった
・本研究では、衛星画像から得られる高次元分光波長帯を数百に分割したスペクトルデータを利用し、効率的な方法で取得することに成功した

【技術や方法のポイントはどこ?】
・本研究では、PRISMA衛星画像とSentinel-2衛星画像のスペクトルデータを、PLSRとTBVIという分析手法を使用して処理
・また、衛星画像の波長領域に基づいて、各栄養素濃度の予測に対する重要性を評価することができる「特徴量の重要度分析」を行った
・4つの異なる穀物(トウモロコシ、米、小麦、大豆)を対象とし、各作物の成長段階ごとに収集された土壌サンプルと植物サンプルのデータセットを使用して、モデルのトレーニングおよび検証を行った
・モデルの評価は、決定係数(R2)および平均二乗誤差(MSE)に基づいて行った

【議論・結果の内容は?】
・PRISMA衛星画像とSentinel-2衛星画像のスペクトルデータを使用した、穀物の微量栄養素およびマクロ栄養素の濃度予測において、一部の栄養素については有望な予測結果が得られたが、他の栄養素については予測精度が低かった
・特に、カルシウム濃度の予測においては精度が低かったことが示された。また、米の栄養素濃度の予測精度も低かった
・なお、PRISMAのSWIRは、穀物栄養予測において最も有用なバンドであった
・また、Sentinel-2のレッドエッジ(可視光線と近赤外線の波長領域の間にある狭い波長範囲)とNIRは、SWIRよりも有用だった
・今後の研究では、多様な栽培条件下での植物の成長に対する栄養素濃度の影響をより良く理解し、さらに予測精度を向上させる必要がある

Denoising Diffusion Probabilistic Feature-Based Network for Cloud Removal in Sentinel-2 Imagery

【どういう論文?】
・衛星画像の雲除去タスクに対する、データ駆動型深層学習モデルの提案

【先行研究と比べてどこがすごい?】
・従来の雲除去手法として広く用いられてきた物理モデルに基づく手法に加え、深層学習による手法を提案
・また、提案手法において、従来の手法では利用されてこなかったSARデータを導入し、多層特徴を抽出するために DDPMモデル を活用

【技術や方法のポイントはどこ?】
・DDPMモデルを用いた多層特徴抽出
・SARデータの補助的な利用
・クラウド除去ヘッド を使用した欠損情報の回復
・雲と非雲領域の情報回復をバランス良く行うためのクラウド指向損失関数
・mMAE 損失関数の調整

【議論・結果の内容は?】
・従来手法や他の深層学習モデルに比べて優れたクラウド除去結果を示すことができた一方で、厚い雲領域において画像品質が低下することが示された
・ 地上物が支配的である武漢市エリアや、複雑な地上物分布を持つエリアでの比較的薄い雲条件下において、DDPM-CRが優れたパフォーマンスを発揮した
・ただし、厚い雲が覆われた領域では、ぼやけた結果が得られることがあり、改善の余地がある

Backscattering Characteristics of SAR Images in Damaged Buildings Due to the 2016 Kumamoto Earthquake

【どういう論文?】
・SAR画像を用いて、地震による建物の被害状況を詳細に評価するための手法を提案
・具体的には、ALOS-2 PALSAR-2衛星によって撮影されたSAR画像から、建物の被害状況を表す指標である相関係数Rと相関差分値γdifを算出し、それらの値と現地調査に基づく被害分類との関連性を調査

【先行研究と比べてどこがすごい?】
・今までは被災地に現地調査員を派遣し、被害状況を視覚的に評価する方法が一般的
・この方法では、大規模な災害が発生した場合、調査員を派遣することが困難であったり、調査の結果が主観的になる可能性がある
・本論文では、SAR画像から得られる相関係数と相関差分値を用いた評価手法を提案しており、被害状況をより詳細に評価できる点が先行研究との違いである

【技術や方法のポイントはどこ?】
・建物の被害特性を詳細に評価するために、熊本県益城町から1469棟、熊本県宇城市から251棟の大破に分類された建物を、現地写真と被害調査票に基づいて新たに5つの被害区分に分類
・建物の大きさや性質の違いが分析結果に与える影響を最小限にするため、被害状況調査が実施された住宅のうち、木造建築物のみを対象
・分類された損傷クラスごとにSAR画像の後方散乱特性を解析

【議論・結果の内容は?】
・相関係数は、倒壊した建物などの大きな変形に対して減少する傾向があった
・相関差分値は、倒壊した建物だけでなく、歪みや傾きなど比較的小さな変形の被害にも敏感である可能性が高かった。
・地震断層付近の地盤変位がコヒーレンス値に影響することが示唆された
・相関係数の値が、同じ被害特性を持つ建物でも、益城町の建物の方が低く、非相関的であった。理由は、益城町においては、大きな被害を受けた建物の集中度合いが高かったことにより、隣接する建物の崩落やその瓦礫によって、対象建物の後方散乱特性が変化したためと考えられる

Semi-supervised learning-based satellite remote sensing object detection method for power transmission towers

【どういう論文?】】
・ リモセン画像からの物体検出における暗い環境下での送電塔検出、かつ、疑似ラベリングに基づく半教師あり学習手法を適用することによる、精度の高い検出方法を提案

【先行研究と比べてどこがすごい?】
・リモセン画像からの物体検出のために、大量の教師データを必要とし、その構築に膨大な時間と費用がかかることが多かった
・本論文では、疑似ラベリングに基づく半教師あり学習手法を提案することで、データセットのラベリングに要するコストと時間を大幅に削減

【技術や方法のポイントはどこ?】
・DarkChannelPrioriに基づく画像強調手法を使用して、可視性が低い環境下でも高い精度で送電塔を検出
・疑似ラベリングに基づく半教師あり学習手法を用いて、教師データのコストと時間を大幅に削減
・COCO評価基準を使用し、IoUの閾値を変更しながら検出精度を評価

【議論・結果の内容は?】
・DarkChannelPrioriに基づく画像強調手法と疑似ラベリングに基づく半教師あり学習手法を組み合わせた提案手法によって、リモート物体検出の精度を向上させることができた
・疑似ラベリングによる半教師あり学習手法は、手動ラベリングによるデータ収集の手間を減らすことができる上に、モデルの汎化性能を向上させることができる
・画像強調手法は、IoUの閾値が高い場合において検出精度を向上させることができる。
・データセットのダウンサンプリングによって、物体検出精度が低下することが明らかになった

Landsat 8 and ALOS DEM geological mapping reveals the architecture of the giant Mesoproterozoic Kunene Complex anorthosite suite (Angola/Namibia)

【どういう論文?】
・南西アンゴラと北西ナミビアにあるアノルトサイトから構成されるマグマ岩石群の内部構造を分析するため、リモートセンシング技術を使用した研究提案

【先行研究と比べてどこがすごい?】
・リモートセンシング技術を用いた緻密な分析により、世界最大のAMCG complex(幅広い岩石種を含む大規模な地殻内岩石体)の内部構造を解明
・4つの異なるプルートン(地殻内部に存在する岩石体で、マグマが冷え固まってできたもの)が存在することを明らかにした点で、先行研究と比べて画期的な成果を上げた

【技術や方法のポイントはどこ?】
・Landsat 8 OLI multispectral processed imagesを用いたフォルスカラー合成(バンド6/4/1)、band ratio (4/2, 6/5 and 6/7)、 Landsat 8 OLIバンド2/3/4データ、PCA手法の利用
・Landsat 8 OLI panchromatic imageとAW3D(ALOSALOSのPRISMによって作成されたデジタル高度モデル)を用いたsemi-automatic lineament analysisによる内部構造の解明

【議論・結果の内容は?】
・アノルトサイトの内部構造を詳細に解明し、その組成やマグマ層などの微細な変化を分析することができた
・リモートセンシング技術の適用可能性を示し、類似したアノルソサイト地帯での応用が可能であることを示唆した

Sentinel-3 SLSTR active fire (AF) detection and FRP daytime product - Algorithm description and global intercomparison to MODIS, VIIRS and landsat AF data

【どういう論文?】
・Sentinel-3衛星に搭載されているSea and Land Surface Temperature Radiometer (SLSTR)を用いた昼間の森林火災検出アルゴリズムおよび性能評価の提案

【先行研究と比べてどこがすごい?】
・SLSTRを用いた昼間の森林火災検出アルゴリズムとその性能評価について、初めて報告されている
・先行研究である夜間の森林火災検出アルゴリズムを基盤として昼間のアルゴリズムを開発し、夜間と同様の有効性を示した

【技術や方法のポイントはどこ?】
・SLSTRには、森林火災検出および火の輻射力火災規模(FRP)の推定に必要なMIR(中赤外線およびLWIR(長波赤外線)チャンネルが備わっている
・本研究では、MIRチャンネルの飽和現象に対処するために、昼間のSLSTRアルゴリズムではより低いゲインのMIRチャンネル(F1)を使用し、より高い閾値を設定した
・さらに、MODIS Terra、VIIRS、Landsat OLIなどの他の衛星データとの比較を通じて、アルゴリズムの有効性を検証した

【議論・結果の内容は?】
・MODIS Terra、VIIRS、Landsat OLIなどの他の衛星データとの比較を通じて、SLSTRを用いた昼間の森林火災検出アルゴリズムの有効性を検証した
・SLSTRの検出能力はMODIS Terraよりも劣るため、MODIS Terraが検出できる低FRPの火災でもSLSTRでは検出できないことがあることが示された
・VIIRSとの比較では、VIIRSのピクセルサイズが小さいため、より多くの火災が検出されたが、時間帯によってはSLSTRの検出能力が高いことが示された
・Landsat OLIとの比較では、OLIの火災検出率が150ピクセルを超えるような場合には、SLSTRでも検出率ほぼ100%に達する(OLIと同じクオリティになる)ことが示された
・MODIS Terraが寿命を迎えるにつれ、SLSTRによるAF検出とFRP算出が今後ますます重要になると考えられる

Potentiality of SDGSAT-1 glimmer imagery to investigate the spatial variability in nighttime lights

【どういう論文?】
・中国の首都北京市を対象に、新しい衛星観測データであるSDGSAT-1による夜間光画像を用いた分析に関する提案

【先行研究と比べてどこがすごい?】
・従来の夜間光データに比べて40 m (可視光帯)及び10 m (パンクロマティック帯)40メートルという高い空間分解能を持つSDGSAT-1を用い、より詳細な土地利用別の夜間光の解析を行った
・また、本データセットの有効性を、他の夜間光データセットとの比較やランダムフォレスト回帰分析による夜間光強度の説明要因の特定など、様々な角度から検証した

【技術や方法のポイントはどこ?】
・SDGSAT-1の品質をVIIRS-DNB、LJ1-01、ISS-Pなどの他の夜間光データと比較することで確認し、その妥当性を示した
・ANOVA法により、土地利用による夜間光の強度およびスペクトルの違いを分析し、夜間光スペクトル指数による土地利用の対比を評価した
・ランダムフォレスト回帰分析により、NTL強度の説明要因を9つの土地利用特性から特定した

【議論・結果の内容は?】
・SDGSAT-1の夜間光データが、従来の夜間光データよりも高い解像度を持ち、より詳細な土地利用別の夜間光解析が可能であることを示した
・土地利用別の夜間光解析により、SDGSAT-1が都市内での灯りの空間的変動を反映することが可能であることを示した
・ランダムフォレスト回帰分析により、HPSとLEDランプの分布に関連して、RDとPPOIDが赤緑および青バンドにおける夜間光の強度変動の最も重要な要因であることを示した
・SDGSAT-1 夜間光データを使用することで、土地利用のマッピングや都市の人工照明汚染および青色照明の環境への影響分析をより詳細に行うことができ、持続可能な都市開発を促進することができると期待できる

Aligning semantic distribution in fusing optical and SAR images for land use classification

【どういう論文?】
・光学画像と合成開口レーダー(SAR)画像を統合することで、土地利用分類における精度向上を図る手法を提案

【先行研究と比べてどこがすごい?】
・従来の光学画像やSAR画像を単独で用いた手法と比較して、光学画像とSAR画像を組み合わせた新しい方法を採用

【技術や方法のポイントはどこ?】
・光学画像とSAR画像を統合するために、Spatial-aware Circular Module (SCM) というモジュールを導入
・SCMは、光学画像とSAR画像の相互作用をより効果的にモデル化するために、両方の画像についての畳み込みを循環的に行うことで、相互に影響し合う特徴量を抽出することができる
・光学画像とSAR画像が共通の意味的表現を持つことを利用し、Semantic Distribution Alignment Loss (SDAL) という損失関数を利用
・SDALは、光学画像とSAR画像の意味的な分布を一致させることで、両者の相補的な情報を引き出すことができる

【議論・結果の内容は?】
・提案手法と従来手法を比較した実験の結果、提案手法は従来手法よりも高い精度での土地利用分類を実現した
また、提案手法はSAR画像の情報が不十分な場合にも高い分類精度を維持できることを示した
・ただし、本研究の手法にはいくつかの限界があることが指摘されている。例えば、異なる土地利用区分が隣接している場合、それらの関連性を考慮することができていないことが挙げられる。このような場合には、複数の土地利用クラスを同時に考慮する必要があり、本研究の手法に改良を加えることでより高い精度が実現できる可能性がある
・また、本研究はUC Merced Land Use Datasetを用いて実験を行ったが、このデータセットは比較的小規模なものであるため、より大規模なデータセットに対する本手法の有効性を検証することが今後の課題となる

Density Invariant Contrast Maximization for Neuromorphic Earth Observations

【どういう論文?】
・国際宇宙ステーション(ISS)のイベントカメラを用いて、地球観測画像のモーション補正(地球上の物体や景色を撮影した画像に含まれる動き)における問題点を解決する手法を提案

【先行研究と比べてどこがすごい?】
・従来の手法では、ノイズが多く、正確なモーション補正ができない問題があった
・今回の手法では、撮影対象を幾何学的な形状を持つ固体として捉え、その形状に基づいた解析的手法を用いることで、モーション補正におけるノイズの影響を排除、ノイズに強く正確なモーション補正を実現することに成功した

【技術や方法のポイントはどこ?】
・イベントカメラによって得られた観測データを、幾何学的な形状を持つ固体として捉え、その形状に基づいた解析的手法を用いることで、モーション補正におけるノイズの影響を排除することができる
・具体的には、1次元の場合は長方形、2次元の場合は直方体として、固体の形状と各種パラメータを定義し、それに基づいた統計的な処理を行っている

【議論・結果の内容は?】
・従来の手法であるCMaxと本手法を比較し、RMS誤差と収束率(RoC)を評価指標としたが、どのデータでもRMS誤差とRoCの両方で優れた性能を発揮した
・本手法は、イベントカメラに限定されず、異なるセンサータイプでも応用が可能であると考えられる
・今回はNelder-Mead Optimisation (NMO)アルゴリズムを用いたが、より高速なアルゴリズムの開発が重要である

以上、2023年4月に公開された論文をピックアップして紹介しました。
皆様の業務や趣味を考えた時に、ピンとくる衛星データ利活用に関する話題はありましたか?

来月以降も「#MonthlySatDataNews」を続けていきますので、お楽しみに!

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