【2023年5月】衛星データ利活用に関する論文とニュースをピックアップ!
2023年5月に公開された衛星データの利活用に関する論文の中でも宙畑編集部が気になったものをピックアップしました。
宙畑の新連載「#MonthlySatDataNews」では、前月に公開された衛星データの利活用に関する論文やニュースをピックアップして紹介します。
実は、本記事を制作するために、これは!と思った論文やニュースをTwitter上で「#MonthlySatDataNews」をつけて備忘録として宙畑編集部メンバーが投稿していました。宙畑読者のみなさまも是非ご参加いただけますと幸いです。
2023年5月の「#MonthlySatDataNews」を投稿いただいたのは4人でした!
Machine learning-based country-level annual air pollutants exploration using Sentinel-5P and Google Earth Engine | Scientific Reports #MonthlySatDataNews
2018年から2021年の大気汚染物質とAODを明らかにするために、Sentinel-5PとMODISのデータを使用 https://t.co/gFdyGsRcHV
— たなこう (@octobersky_031) May 22, 2023
過去10年間におけるリモートセンシング画像を用いた変化検出手法をまとめた論文。
データ(SAR、マルチスペクトル、ハイパースペクトル、異種データ、3次元データ)ごとに、アルゴリズムや学習方法、学習フレームワークの3つの観点からまとめています。https://t.co/RPj6JiMZqe#MonthlySatDataNews— ぴっかりん (@ra0kley) May 18, 2023
建物変化検出におけるデータ不足を補うため、ペア画像の生成を行うGANを作成。まずラベル画像から建物画像を生成するよう訓練し、その後ラベル画像と旧画像から変化後画像を生成するよう訓練。multi-scale lossとperceptual lossにて生成品質を担保。https://t.co/d1rS3Gkben
#MonthlySatDataNews— まぬある (@lTlanual) May 10, 2023
海洋ゴミの検知ベースライン#MonthlySatDataNewshttps://t.co/fO7ZBHOOZf
— emmyeil (@emmyeil) May 9, 2023
それではさっそく2023年5月の論文を紹介します。
Simulating satellite urban land surface temperatures: sensitivity to sensor view angle and assumed landscape complexity
【どういう論文?】
・都市形状、地表温度データ、衛星観測データを用いて、都市部における熱異方性の調査手法を提案
【先行研究と比べてどこがすごい?】
・サブファセット機能 (勾配屋根や3次元植生キャノピーなど、建物や都市環境の中で特定の部分や要素を細かく分割してモデル化する機能)を組み込んだリアルな都市形状のモデルを利用
【技術や方法のポイントはどこ?】
・3次元の都市形状と熱放射伝達プロセスをモデル化するために、DARTモデル(不均質な景観における長波赤外線(LWIR)の放射と散乱を説明する放射伝達モデル)を使用
・異なる3パターンの建物形状で比較:
・[LOD0]:建物の外観や形状の詳細は考慮しない単純な幾何学的な形状として表現したデータ
・[LOD1]平面的な屋根/壁データ
・[LOD2]リアルな建物データ
・各要素(屋根、壁、地面)ごとの熱異方性への影響度を調査
・植生密度と葉面積密度が熱異方性に及ぼす影響を評価
・熱異方性のシミュレーションと地上での観測結果を比較し、熱異方性の観点からLOD間の一致度合いを評価することで結果を検証
【議論の内容・結果は?】
・熱異方性は建物形状のレベルが増すにつれて増加し、LOD1はLOD0と比較してLOD2により一致する
・ LOD2は、LOD1やLOD0と比較してシャドウイング効果(建物や地形などの微小な特徴や構造によって引き起こされる影の効果)により、温度が低かった
・植生があると異方性が低下するが、葉面積密度のばらつきは全体の異方性にほとんど影響しない
・建物の表面形状、表面温度、植生のすべてが都市部の熱異方性に寄与している
GNSS-based long-term deformation at Mount Etna volcano (Italy)
【どういう論文?】
・エトナ火山の地盤変動のモニタリングにGNSS(全球測位衛星システム)を活用することを提案
・GNSSデータを用いてエトナ火山の水平・垂直速度(水平方向や垂直方向の速度分布)を推定し、長期的な地殻変動と地震活動の研究に焦点を当てる
【先行研究と比べてどこがすごい?】
・ 2004年から2018年にわたる幅広いデータを活用し、長期的な変形パターンを包括的に解析
・ GNSSデータと地震活動の相関を幅広く調査しており、両者の関係について詳細な知見を提供
【技術や方法のポイントはどこ?】
・エトナ山の様々な斜面や断層域をカバーする測量用ベンチマーク(地表面上に設置された固定されたポイントまたはマーカー)と連続観測点(GNSS受信機を使用して連続的に衛星信号を受信し、そのデータを定期的に記録する地点)を用いたGNSSネットワークを構築
・GNSSデータは、正確な衛星の軌道情報、地球方位パラメータ、電離層/対流圏補正を考慮し、GAMIT/GLOBKソフトウェアで処理
・ローカルリファレンスフレーム(エトナ火山周辺の地域で使用される特定の位置情報の基準フレーム)を用いて、観測地点の角速度を推定
・電離層を除去したGNSS位相観測値にダブルディファレンシング技術を適用し、衛星と受信機のクロックドリフトによるバイアスを除去
・速度勾配から最小二乗法を用いてひずみ速度場(地表の変形パターンを定量化した数値)を求め、現在の変形度合いを可視化
【議論の内容・結果は?】
・エトナ火山の水平速度は、火山の東側の海進運動が最も顕著なパターンとして観察できた(北側の境界部分で約60mm/年、南側の境界部分で約29mm/年)
・垂直速度は一般的に負の値であり、南東側断層で約15 mm/年、東側中央部で約10 mm/年を観測した
・火山の周辺では非常に小さな隆起(1-3 mm/年)が発見され、地域のテクトニクス(地殻の変動等)や長期的なマグマドーム(地下マグマ)の成長などが影響をしているという示唆を獲得
・また、各断層でひずみ率を詳細に観測できた。その中で、東側では大きな変形が見られ、西側では小さな変形があることなどがわかった
Impact of precipitation on the prevalence of schistosomiasis mekongi in Lao PDR: Structural equation modelling using Earth observation satellite data
【どういう論文?】
・疫学データ、地球観測衛星データ、構造方程式モデリング(SEM)などの高度な統計解析技術を組み合わせ、気候変動がメコン川流域の住血吸虫症に与える影響を包括的かつ多角的に分析する手法を提案
【先行研究と比べてどこがすごい?】
・先行研究では気温のみを考慮した研究が主だった中で、疫学データと衛星データ(降水量データ)を組み合わせて分析し、降水量とメコン川住血吸虫症の発生率との関連性を包括的に評価
・構造方程式モデリング(SEM)を使用し、疫学データと衛星データを統合的に分析することで、メコン川住血吸虫症患者数に寄与する要因を特定
【技術や方法のポイントはどこ?】
・ラオス保健省が収集した2002年から2012年までメコン川住血吸虫症の疫学データ、JAXAの公衆衛生モニターおよび分析プラットフォーム(JPMAP)から取得された降水量と地表面温度(LST)のデータ、GSMaPによる降水量データとNASA/USGSによるMOD11およびMYD11に基づくLSTデータを使用
【議論の内容・結果は?】
・年間降水量が増加すると、住血吸虫症患者数が有意に減少することがわかった
・上記は、水分が多く蓄積している状況では、セルカリア(吸虫の幼虫形態。水生環境で発生し、最終宿主[ヒトや動物]に感染する)の密度が低下するためと考えられる
・乾季の降水量の増加は、カタツムリ(吸虫の中間宿主)の生息地の変化や気温がセルカリアの生存にポジティブな影響を与え、住血吸虫症患者の増加と関連している可能性を示唆
・降水量データや衛星画像などの地球観測衛星データは、住血吸虫症患者数の増加を予測し、感染リスクのある地域を特定することで、的を絞った調査・検証に利用することができる
Unified building change detection pre-training method with masked semantic annotations
【どういう論文?】
・不均衡なサンプル分布、異なる時間の画像重ね合わせ、限られたラベル付きデータなどの課題への新たな建物の変化検出手法を提案
【先行研究と比べてどこがすごい?】
・従来のアプローチで起こっていたラベリング作業の手間と時間、正負のサンプルの分布の不均衡などを克服するために、セマンティックセグメンテーションデータセットに基づいて擬似ラベルを生成
・事前学習フェーズで疑似ラベルのみを使用して変化情報を学習することで、ラベル付きデータが限られている場合でもモデルを学習でき、異なる地域やデータセットにおいても適用が可能
・ファインチューニングでは地上データの一部を使用してモデルを調整することで、異なるデータセットや領域(地域)においても優れた転移性能を発揮することが可能
・異なる時間の少数の画像だけでも、従来の教師あり学習法より高い精度を達成
【技術や方法のポイントはどこ?】
・建物をマスキングし、マスキングした部分の割合を制御(調整)して、多様な擬似ラベルを生成
・擬似ラベルのデータは、変化検出の事前学習に使用
・ファインチューニンングは、大量の建物変化情報を含む事前学習済みの重みを用いて実施
【議論の内容・結果は?】
・半教師付き学習法、従来の教師付き学習法よりも優れた建物変化検出精度を達成
・事前に学習された重みを用いることで、モデルの訓練済みの重みやパラメータを使用して、特定のタスクに対してモデルを調整する際に、収束速度が向上し学習時間の短縮につながった
・関連研究との比較から、今回の手法は変化検出のために特定の意味情報を効果的に学習できるため、ピクセルレベルの半教師付き学習法よりも高い成果を出せることが判明した
・移植可能性や異なるデータセットへの適応能力が利点として示された
Arctic sea ice drift fields extraction based on feature tracking to MODIS imagery
【どういう論文?】
・北極の融解期にMODIS画像から海氷の流氷ベクトル(海氷の移動パターンを示すベクトル)を抽出する手法を提案
【先行研究と比べてどこがすごい?】
・MODIS画像の質感とコントラストを向上させる画像処理技術を取り入れ、雲による干渉や海氷の質感不足による制約(特徴や模様の乏しさ)に対処
・MODISのバンド選択及びA-KAZEパラメータを最適化することで、抽出された流氷ベクトルの精度とカバー率を向上
【技術や方法のポイントはどこ?】
・一般的に流氷追跡に用いるマイクロ波放射計や散乱計と比較して高い空間分解能(最大250m)を有するMODIS画像を利用し、海氷の動きをより正確に追跡
・海氷域の累積分布関数(CDF)に基づくヒストグラム等化により、MODIS画像の質感とコントラストを向上
・ラプラシアン強調を用いて、海氷のテクスチャを強調することで抽出結果をさらに向上
・A-KAZE特徴追跡アルゴリズムをラプラシアン強調が行われた画像から海氷の流氷ベクトルを抽出するために使用
・導出された海氷流氷ベクトルをIABP(国際北極圏ブイ計画)のブイの観測値と比較することで検証
・抽出されたベクトルとブイの観測値との間の平均絶対誤差と二乗平均平方根誤差を計算し、手法の精度を評価
【議論の内容・結果は?】
・海氷流氷追跡のための異なるMODISバンドの性能を評価した結果、バンド1、2、4が適しており、海氷流氷ベクトルの抽出に関して他のバンドよりも優れていることがわかった
・提案手法では、バンド1、2、4を選択して以降の処理を行うが、7バンド全てを組み合わせることで、処理効率を大幅に向上させながら、抽出されるベクトル数(海氷の移動や漂流パターンを表すベクトル)をわずかに減らすことができた
※バンド1 (620〜670 nm):VIR(赤色)、バンド2 (841〜876 nm):NIR、バンド3 (459〜479 nm):VIR(青色)、バンド4 (545〜565 nm):VIR(緑色)、バンド5 (1230〜1250 nm):NIR、バンド6 (1628〜1652 nm):SWIR、バンド7 (2105〜2155 nm):SWIR
・ラプラシアン強調は海氷流氷ベクトルの抽出をさらに向上させ、ヒストグラム均等化のみと比較して、数とカバーエリアを増加させる
・マッチング前(画像のコントラストの調整やノイズの除去、特徴点の検出等)に曇り空の特徴点を削除すると海氷の流氷ベクトルが失われる可能性があるため注意が必要
・本手法をIABPブイの観測結果を用いて検証した結果、速度の平均絶対誤差(MAE)は707m/d、方向のMAEは6.4°であった
Integrating low-cost sensor monitoring, satellite mapping, and geospatial artificial intelligence for intra-urban air pollution predictions
【どういう論文?】
・微小粒子状物質(PM2.5)濃度の推定、都市部・郊外・農村部間における大気汚染格差の分析手法を提案
【先行研究と比べてどこがすごい?】
・低コストセンサー(手頃な価格で入手可能な大気質センサー)とマルチソースデータ(衛星AODデータ等)を活用し、PM2.5濃度推定のためのディープラーニングモデルにおける、データの不足と品質の問題を解決
・XAI技術(特徴重要度の評価、CNNのアーキテクチャを可視化等の技術)を取り入れ、環境科学において比較的研究が遅れているモデルの解釈可能性を向上
・過去のKriging手法の予測精度を凌駕
【技術や方法のポイントはどこ?】
・テキサス州デントン郡で、100個の低コストセンサーをを配置(比較的低価格で入手可能なセンサーを使用して、広範囲にわたるデータ収集を行うネットワークを構築)
・PM2.5濃度の予測モデルは、センサーデータ、衛星からのAODデータ、交通量、土地利用データ、LiDARデータなどの複数の予測因子を統合するためのマルチスケール、アノテーション強化型の畳み込みニューラルネットワークを使用
・センサーデータの前処理とキャリブレーションを行い、特徴量の重要性を順列検定によって評価
・モデルのパフォーマンスは、MAE、RMSE、R2などの指標に基づいて評価
【議論の内容・結果は?】
・予測モデルの特徴量の重要性を順列検定によって評価し、交通量、土地利用データ、センサーデータなどが予測に重要な役割を果たしていることがわかった
・ニューラルネットワークに基づくセンサー校正法(低コストのセンサーデータの精度向上と補正手法)は、R2値0.94、RMSE1.34μg/m3を達成し、低コストのセンサー計測の精度向上に有効であることが示された
・マルチスケールでアテンションを高めた畳み込みニューラルネットワークモデル(PM2.5濃度の予測精度向上モデル)は、Kriging手法を上回り、PM2.5濃度予測においてMAE1.15 μg/m3、RMSE 1.74 μg/m3、R2値 0.792 を達成
・交通変数、LULCデータ、校正されたセンサー測定値がPM2.5濃度の予測に最も有益であることが判明し、AODとLiDAR由来の建物の高さはあまり影響がないことがわかった
Estimation of Instantaneous Air Temperature under All-Weather Conditions Based on MODIS Products in North and Southwest China
【どういう論文?】
・複雑な自然環境にある地域にて、観測地点が限られ気象データも乏しい中で、地表面温度から瞬時に気温を推定する手法を提案
【先行研究と比べてどこがすごい?】
・従来の研究では、主に日最低気温や日最高気温、あるいは一定期間の平均気温に焦点を当てており、瞬時の気温(Ta)の推定についてはほとんど取り扱われていなかった
・本研究では、MODIS、DEMデータ、観測データを組み合わせた線形回帰モデルを使用して、様々な気象条件下で瞬時の気温を高精度に推定する方法を提案
・多変量回帰分析による推定手法を用いることで、気温の推定に影響を与える多くの要素を組み込むことができ、従来の手法よりも高い推定精度を実現
【技術や方法のポイントはどこ?】
・地表面温度(LST)、正規化差分植生指数(NDVI)、太陽天頂角(SZA)、標高などの独立変数を組み込んだ多重線形回帰モデルを作成
・大気プロファイル外挿法(MODIS得られる大気温度・水蒸気情報を使用)と平均法(複数の観測ステーションを使用)で観測された気温データの2つを使用して、瞬時の気温(Ta)を推定
・モデルの精度は、相関係数、バイアス、平均絶対誤差、二乗平均平方根誤差などの指標を用いて評価
【議論の内容・結果は?】
・重回帰モデルは、全天候にてTa推定の高い精度を示した
・標高の低い平野部や盆地にある気象観測所では、標高の高い台地にある気象観測所と比較して、モデルの性能が高かった
・気温推定の寄与度分析に関しては、関しては以下の各結果を示した
中国北部の晴天条件下:
-𝑇𝑎(気温)推定への寄与度の降順: 標高、𝑇𝑎1,𝑐𝑙𝑒𝑎𝑟、LST、SZA、NDVI
-その他の晴天条件での寄与度の降順: 標高、𝑇𝑎1,𝑐𝑙𝑒𝑎𝑟、SZA、LST、NDVI
曇り空の条件下:
-Terraデータセットからの寄与度の降順: 標高、LST、SZA、NDVI
-Aquaデータセットからの寄与度の降順: LST、標高、SZA、NDVI
全体:
-𝑇𝑎(気温)推定への寄与度の降順: 標高、LST、𝑇𝑎1,𝑐𝑙𝑒𝑎𝑟、SZA
-𝑇𝑎(気温)推定への寄与度の比較的小さい要素: NDVI
-中国南西部における標高、SZA、NDVIの寄与度が華北地域よりも大きい
-華北地域におけるLSTの寄与度が華南地域よりも高い
・全天候でTaの推定が可能であることを示し、先行研究と比較して重回帰アプローチの利点を明らかにした
Estimating natural disaster loss using improved daily night-time light data
【どういう論文?】
・プエルトリコのハリケーン「マリア」後の電力供給動態の分析とGDP損失の推定において、衛星の夜間光データを用いた手法を提案
【先行研究と比べてどこがすごい?】
・日次の夜間光データを利用しており、月次データと比較して電力変化や災害後の復旧作業に関してより正確でタイムリーな情報を提供
・時系列夜間照明データから角度効果を除去する角度正規化アルゴリズムを利用し、電力供給の評価精度を向上
【技術や方法のポイントはどこ?】
・夜間照明の時系列データから角度効果(夜間光の観測データにおいて、光の放射強度が視野の角度によって異なる現象)を除去するために、角度正規化アルゴリズムを使用し、観測された夜間照明の放射輝度の異方性特性に対処
・上記アルゴリズムには、天頂角(VZA)と放射輝度の関係を推定するZRQモデルが組み込まれており、データの正確な正規化が可能
・角度正規化アルゴリズムは、地域IR(屈折率、角度効果の除去効果を示す指標)の低減率やZRQモデルの平均R2など、様々な指標を用いて検証
・電力復旧の推定結果を公式報告データと比較し、相関係数とKLダイバージェンスを用いて、改善後の日次データと公式データとの整合性を評価
夜間光量損失と産業・サービス業のGDP損失推計値との関係を分析し、強い相関と低いRMSEを実証
【議論の内容・結果は?】
・角度正規化アルゴリズムにより、時系列夜間照明データの揺らぎを効果的に低減し、ハリケーン後の電力供給動態をより正確に評価することができた
・ハリケーンの上陸地点までの距離が電力喪失に与える影響が明らかになった
・JPSS-1やJPSS-2など複数の衛星からの夜間光データを統合することで、夜間光リモートセンシングの質を高めることができた
・夜間光損失と推定GDP損失の分析により、夜間光データを用いた経済的影響の推定の可能性が示された
Detection and mapping of artillery craters with very high spatial resolution satellite imagery and deep learning
【どういう論文?】
・インフラや環境に深刻な被害が出ているウクライナ東部の農地において、砲撃跡の特定とマッピングに深層学習アプローチを適用した手法の提案
【先行研究と比べてどこがすごい?】
・Maxar社のWorldView-2 (WV-2)の0.5m空間分解能で取得したマルチスペクトルVHR画像を利用することで、先行研究と比較して高い空間解像度を実現
・農地における砲撃クレーターの検出とマッピングに、サブメーター衛星画像と深層学習技術を使用することが新しい
・RFなどのこれまでの方法論の限界を明らかにし、U-netモデルの優れた性能を実証
【技術や方法のポイントはどこ?】
・SLIC + RFとU-netの2つの手法を比較
・U-netによって生成されたクレーターマップは、土地被覆の検証において推奨されるサンプリングベースのアプローチで検証
・パフォーマンス指標(PA、UA、Fスコア)は、クレーターの面積と数に関してそれぞれ検証
【議論の内容・結果は?】
・RFベースのモデルは、クレーター識別能力が限られていたのに対し、U-netモデルは著しく優れた性能を達成
・U-netモデルは、異なるスペクトルバンドの入力に対して、精度、再現性、Fスコアの点でRFベースのモデルを上回った
・クレーターのサイズが大きくなるほどモデルの性能は向上し、高い精度と再現性を示した
・U-netモデルはコミッションエラー(誤った情報を含む)よりもオミッションエラー(
正しい情報を欠落させる)を最小化することを優先し、クレーター(被災箇所)の見落としを回避した
・本研究には、クレーターの形状や位置に関する独立した検証データがないこと、樹木に覆われた地域や不均一な表面でクレーターを特定することが困難であることなどの制約がある
Land Use Land Cover Classification with U-Net: Advantages of Combining Sentinel-1 and Sentinel-2 Imagery
【どういう論文?】
・深層学習アルゴリズム、特にU-netアーキテクチャを用いた土地利用/土地被覆(LULC)分類手法を提案
・正確なLULCマッピングのためのマルチスペクトル(MS)および合成開口レーダー(SAR)画像の統合に焦点を当てている
【先行研究と比べてどこがすごい?】
・従来のランダムフォレストなどの従来の機械学習手法と比較して、U-netという深層学習アルゴリズムを使用することで、より高精度な土地利用/土地被覆 (LULC) の分類を実現
・マルチスペクトルの光学とSAR(合成開口レーダー)の画像を組み合わせることで、森林のクラス分類において光学単独やSAR単独よりも優れた識別能力を実現
【技術や方法のポイントはどこ?】
・U-netアーキテクチャの使用
・光学(MS)画像と合成開口レーダー(SAR)画像の組み合わせを使用
・ハイパーパラメーターの探索と最適化(レイヤー数・バッチサイズ・フィルタ数・ドロップアウト率)
・LULC分類の精度は、検証用データセットを用いて評価してランダムフォレストから得られた結果と比較
・精度評価では、総合精度、平均F1スコア、クラス別F1スコアを使用
【議論の内容・結果は?】
・MS + SAR U-netは、検証データセットで総合精度(0.76)および平均F1スコア(0.58)を達成した
・MS + SAR U-netは、MS U-netおよびSAR U-netよりも、森林のあるクラス間の識別で優れていた
・U-netは、総合的な精度とF1-スコアの点でランダムフォレストを凌駕した
・比較的新しく植えられた若い樹木地域や道路などの特定のクラスは、スペクトルや空間的な混乱(錯乱)により、F1スコアが低くなった
Machine learning-based country-level annual air pollutants exploration using Sentinel-5P and Google Earth Engine
【どういう論文?】
・二酸化窒素(NO2)、一酸化炭素(CO)、二酸化硫黄(SO2)、オゾン(O3)、エアロゾル(AOD)などの大気汚染物質のそれぞれを衛星データおよび地上での測定結果を用いて分析し、大気汚染とその環境への影響を計測する手法を提案
【先行研究と比べてどこがすごい?】
・Sentinel-5P衛星データ、MODISデータ、地上モニタリングステーションなどの複数のデータセットを統合することで、4年間(2018-2021年)のスパンで大気汚染物質とAODの影響を評価
・COVID-19のロックダウンや規制が大気汚染レベルに与える影響を明らかにし、人間活動と大気質の関係に対する貴重な洞察を提供
【技術や方法のポイントはどこ?】
・Sentinel-5PとMODISの衛星データ、およびGoogle Earth Engine(GEE)プラットフォームを利用して、大気汚染物質の解析とAODを測定
・NO2、CO、SO2、O3などのパラメータは、GEEで処理されたSentinel-5Pデータを用いて計算、AODはMODISデータから算出
・衛星由来の大気汚染物質測定値を検証するために、地上のモニタリングステーションが使用
【議論の内容・結果は?】
・インドの都市部(デリー、コルカタ、ムンバイ、チェンナイ、バンガロール、ハイデラバード、ラクナウ)は産業地域であり、インド国内の他の地域と比べて空気汚染物質がより高いレベルで観測された
・衛星データに基づく大気汚染物質の計測結果は、地上のモニタリングデータと整合性があり、研究手法の信頼性が示された
・インド全体でAODの値が算出され、特定の地域で高いAOD値が観測された
・特にウッタル・プラデーシュ、ビハール、西ベンガル、ジャールカンド、パンジャーブ州などが高いAODを示した
・COVID-19のロックダウンにより、交通量や産業活動の減少があり、一時的に大気汚染物質の濃度が低下したことが示された
・しかし、ロックダウン解除後は再び大気汚染物質の濃度が上昇した
Spectral separability of bark beetle infestation stages: A single-tree time-series analysis using Planet imagery
【どういう論文?】
・キクイムシの樹木への侵入ステージ検出をするために、高解像度の衛星画像を利用するという新しいアプローチを提案
【先行研究と比べてどこがすごい?】
・高解像度の衛星画像(Planet社が提供するDove衛星の画像データセット)を使用して樹木のスペクトルシグネチャを分析することで、従来の方法よりもより詳細な情報を取得
・被害の段階に基づいた正確な分類を実現
・異なる健康状態クラスの分離性を客観的に評価
・加重サポートベクターマシン(wSVM)分類を使用して、自動的な検出と分類を行うことで、効率的なキクイムシ被害のモニタリングが可能
【技術や方法のポイントはどこ?】
・衛星データを利用して、キクイムシの侵入によって影響を受けた樹木のスペクトルシグネチャーを分析
・健全な樹木と異なる侵入段階にある樹木を区別するために、特定のバンド(B1・ B2・ B6・ B8)と植生指標(GNDVI・NDVI・NRVI・MCARI・NDRE)を選択
・統計的検定(Kruskal-Wallis検定)と距離測定法(Jeffries-Matusita距離)を適用して、異なる健康状態クラス間の分離可能性を評価
・侵入ステージの自動検出と分類のための重み付けサポートベクターマシン(wSVM)分類の実装
・現場観察およびキクイムシ侵入検知に関する既存文献との結果と比較し検証
【議論の内容・結果は?】
・衛星画像を用いてキクイムシの発生ステージを検出・区別する可能性を示すことに成功
・健全な樹木と赤色ステージ(植物が害虫や病害によって深刻な損傷を受け、健康状態が著しく悪化している段階)の樹木の分離性は一貫して高く、緑色攻撃ステージ(植物がまだ比較的健康で、害虫や病害による被害が軽微な段階)と健全な樹木の分離性は時間の経過とともに向上
・特定のバンド(例:NIRバンド)は、異なる健康状態クラスの区別にあまり意味を持たず、クロロフィル吸収(B1、B6)や特定の植生指数(GNDVI、NDVI、NRVI)に関連するバンドは高い分離性を示した
・加重サポートベクターマシン(wSVM)分類では、ほとんどの健康状態クラスで高い分類精度を達成し、レッドステージ(R)クラスでは、時間の経過とともに精度が向上できた
・本研究により、侵入ステージのタイミングに関する知見が得られ、夏の終わりに緑色攻撃ステージを早期発見することで、秋から冬にかけて感染した木を除去し、さらなる拡散を防ぐといった管理行動を容易にする可能性が示された
Multi-Temporal SamplePair Generation for Building Change Detection Promotion in Optical Remote Sensing Domain Based on Generative Adversarial Network
【どういう論文?】
・建物変化検出データセットにおけるデータ不足とクラス不均衡(データセット内の異なるクラスサンプル数の大きな偏り)の問題に対処するための、画像レベルのサンプルペア生成(ISPG)という新しいアプローチを提案
【先行研究と比べてどこがすごい?】
・LT-GAN(生成されるイメージに特定の制約や要件を加えることが可能なGAN手法)を用いて、異なる前後の時間点での建物の位置や形状の変化等のサンプルペアを効果的に生成
・変化検出のための平易なモデルや限られたデータでも、高い性能を達成
【技術や方法のポイントはどこ?】
・LT-GANを使用して、多様な建物の変化と背景の擬似的な変化を伴うリモートセンシング画像を生成
・マルチスケール敵対的損失(MAL)と特徴一致損失(FML)を用いて、生成された画像ペアの品質を向上
・データセットにおける不均衡率は、ISPGの異なるハイパーパラメータ(N)を用いて分析
【議論の内容・結果は?】
・LEVIR-CDデータセットの場合、IOUスコアは0.834、F1スコアは0.871だったのが、ISPGを用いてデータセットを拡張することで、IOUスコアは0.901、F1スコアは0.915に向上した
・WHU-CDデータセットの場合、IOUスコアは0.813、F1スコアは0.825だったのが、ISPGを用いてデータセットを拡張することで、IOUスコアは0.872、F1スコアは0.883に向上した
・データ増強のための多時間のサンプルペアの生成に成功した
・単純な変化検出モデルとSOTA変化検出モデルの両方で高い性能を達成した
・ハイパーパラメータ(N)を増やすことで、クラスの不均衡を軽減し、モデルの性能を向上させた
・本手法は汎用性が高くあらゆる変化検出モデルに使用することができる
以上、2023年5月に公開された論文をピックアップして紹介しました。
皆様の業務や趣味を考えた時に、ピンとくる衛星データ利活用に関する話題はありましたか?
最後に、#MonthlySatDataNewsのタグをつけてTwitterに投稿された全ての論文をご紹介します。
Towards the Automatic Detection of Military Activity Using Satellite Radar Time Series
Change Detection Methods for Remote Sensing in the Last Decade: A Comprehensive Review
Earth Observations for Sustainable Development Goals
MARIDA: A benchmark for Marine Debris detection from Sentinel-2 remote sensing data
来月以降も「#MonthlySatDataNews」を続けていきますので、お楽しみに!