宙畑 Sorabatake

ニュース

H3試験機2号機に相乗りする小型衛星2機が明らかに。だいち3号のミッションの一部を担う【宇宙ビジネスニュース】

【2023年6月28日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。

6月27日、第76回宇宙開発利用部会でH3ロケット試験機2号機に相乗りさせる超小型衛星として、一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構(JSS)とセーレン、ビジョンセンシング、アークエッジ・スペースが共同で開発・運用する3Uサイズのキューブサット衛星 「TIRSAT」とキヤノン電子の50㎏級衛星「CE-SAT-1E」が選定されたことが公表されました。

選定された小型衛星 Credit : JAXA Source : https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/content/20230627-mxt_uchukai01-000030648_2.pdf

H3ロケット試験機2号機のペイロードを巡っては、だいち4号の搭載を見送り、ロケットの性能確認用ペイロードを搭載すること、50kg級衛星1機と3Uサイズのキューブサット衛星1機は相乗り搭載が可能であることが確認されていました。

JAXAが企業や大学などに、超小型衛星相乗りの実現性について確認を進めるための情報提供を要請したところ、50kg級衛星1機、3Uサイズのキューブサット衛星3機の情報提供があったということです。

JAXAは技術的課題とスケジュールリスクの観点で相対評価を行い、CE-SAT-1EとTIRSATが相乗り衛星として選定されました。

キヤノン電子のCE-SAT-1Eは光学センサを搭載しており、災害時緊急観測や地理空間情報整備、3D都市データ作成研究など、だいち3号(ALOS-3)で予定していたミッションの一部を実施することができるとしています。さらに、JSSらのTIRSATには、非冷却小型熱赤外センサが搭載されていて、だいち3号が観測する予定であった熱赤外の観測に対応しています。

JAXAの担当者は宇宙開発利用部会で「奇跡的にALOS3のミッションの一部をカバーできるミッションが得られたというふうに考えております」と述べました。

取り組みの意義 Credit : JAXA Source : https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/content/20230627-mxt_uchukai01-000030648_2.pdf

また、TIRSATは経済産業省の委託事業「サプライチェーンの迅速・柔軟な組換えに資する衛星を活用した状況把握システムの開発・実証」において開発されたものの、ウクライナ情勢の悪化により打ち上げ機会が確保できず事業が中断していた経緯があります。H3ロケット試験機2号機で打ち上げることにより、国の事業の完成に貢献することができます。

宙畑メモ サプライチェーンの迅速・柔軟な組換えに資する衛星を活用した状況把握システムの開発・実証
コロナ禍でサプライチェーンの寸断リスクが顕在化したことを受けて、高い撮像頻度で工場の稼働状況の把握することが可能な小型衛星搭載用の熱赤外センサを複数機開発し打ち上げ、サプライチェーンの状況の迅速な把握を行うことを目指す開発・実証事業です。

今回の相乗り打ち上げの費用は、無償となっています。

そのため、一般的な商業輸送打ち上げとは異なり、衛星の搭載作業でのトラブルや今後の調整により、衛星の引き渡し期限に間に合わない場合には、H3ロケット試験機2号機の打ち上げスケジュールに影響が及ばないようダミーの衛星に載せ替えること、万が一、打ち上げ時に衛星を喪失した場合もJAXAは再打ち上げ機会の提供や衛星の開発経費の補償等の処置を取らないことについて合意をしたうえで進められます。

衛星が無事に打ち上がった場合は、JAXAはキヤノン電子とJSSらに観測データの提供を要望し、データは公開できるよう調整を進めているところだといいます。

宙畑編集部のおすすめ関連記事

参考

宇宙開発利用部会(第76回)会議資料

令和2年度補正サプライチェーン強靭化に資する技術開発・実証事業(サプライチェーンの迅速・柔軟な組換えに資する衛星を活用した状況把握システムの開発・実証)に係る企画競争募集要領

Share

衛生データに無料で触れる Tellusを試してみましょう 登録して使ってみる