宙畑 Sorabatake

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【2023年8月】衛星データ利活用に関する論文とニュースをピックアップ!

2023年8月に公開された衛星データの利活用に関する論文の中でも宙畑編集部が気になったものをピックアップしました。

宙畑の新連載「#MonthlySatDataNews」では、前月に公開された衛星データの利活用に関する論文やニュースをピックアップして紹介します。

実は、本記事を制作するために、これは!と思った論文やニュースをTwitter上で「#MonthlySatDataNews」をつけて備忘録として宙畑編集部メンバーが投稿していました。宙畑読者のみなさまも是非ご参加いただけますと幸いです。

2023年8月の「#MonthlySatDataNews」を投稿いただいたのは4人でした!

それではさっそく2023年8月の論文を紹介します。

Sat2Density: Faithful Density Learning from Satellite-Ground Image Pairs

【どういう論文?】
・衛星と地上の画像ペアから3次元形状を学習する「Sat2Density」と呼ばれる新しいアプローチを用いて、以下の課題を解決する3Dジオメトリを生成する研究
– 空への対処: 衛星画像を地上画像に合成する中で空が重要な要素だが、衛星画像には空が存在せず忠実に表現することが難しい
– 明るさの違いへの対処: 地上画像の明るさの条件は衛星画像とは異なるため、正確な3Dジオメトリを学習/生成することが難しい

【技術や方法のポイントはどこ?】
・Density Field: 地上画像の3D形状情報を学習するために使用(画像内の各オブジェクトの密度を検出/表現できる)
・Volumetric Rendering: 3D形状情報を元に、深度や透明度(opacity)などの情報を合成するための技術
・DensityNet: 密度情報を学習するためのエンコーダーデコーダーネットワーク(訓練データとして提供された衛星画像と、それに対応する密度情報を持つ地上データを使用して学習)
・Sky Histogram Illumination Injection(空領域からRGBヒストグラム情報を抽出してRenderNetに供給することで、地上ビュー画像の照明を制御する手法
・RenderNet: Volumetric Renderingに基づいて深度、不透明度、およびカラー画像を最終合成するネットワークであり、合成した地上ビューを生成する

地上ビューを生成する他の既存手法やグランドトュルースとの比較(eのSat2Densityが今回生成した画像)。既存の手法より優れた結果を示した。 Credit : Qian, M., Xiong, J., Xia, G.-S., & Xue, N. (2023). Sat2Density: Faithful Density Learning from Satellite-Ground Image Pairs. Source : https://arxiv.org/abs/2303.14672

【議論の内容・結果は?】
・オブジェクトの形状を保持しながら、空のヒストグラムに基づいて画像の明るさを制御することに成功
・一時的に存在した物体や明るさ等を取り込んでしまう点に関してはこのアプローチでは効果的に処理できない
・RenderNetに取り込まれるRGBヒストグラム情報、特に空と地面の間の領域に関しは情報が非常に粗い
・ジオメトリの学習には、(衛星画像と地上画像の)位置情報が適切にアライメントされた画像ペアが重要であるが、この方法ではGPS情報の精度が低い市街地のシーンで課題に直面する可能性がある

Automatic Detection and Dynamic Analysis of Urban Heat Islands Based on Landsat Images

【どういう論文?】
・中国南京市における都市ヒートアイランド(UHI)現象の研究に焦点を当てた研究である。

【技術や方法のポイントはどこ?】
・空間自己相関分析をUHIに関連する高いLST(地表面温度)が都市エリアにクラスター化されているかどうかを調査する。Getis-Ord-Gi*(またはホットスポット分析)は、空間自己相関分析のために使用される統計手法の一つ。この手法は、空間的な重み行列を生成し、LSTの高値および低値の空間クラスターを識別できる。
・農地地域の収穫後に露出した裸地が高いLSTの空間クラスターになることがあるため、NDVI(正規化植生指数)の年間標準偏差を計算。NDVIは植生の成長状態と被覆率を評価するために使用される一般的な指標であり、季節変動があるため、年間標準偏差は裸地の地域を都市エリアから区別するのに役立つ
・ポイント密度(単位面積あたりのLSTの値)を用いて、ポイント密度が0.0003よりも大きいピクセルを選択し、UHIの強度が高い領域を特定する。
・選択したピクセルをラスター形式に変換し、最終的なUHIの領域を示す
・最後に、非常に小さな面積を持つポリゴン(9,000,000平方メートル未満)はUHIの抽出から除外し、研究において不要な小さなエリアを除去する

【議論の内容・結果は?】
・a,dがLSTであり、b,eが当時のUHIの分析結果(黄緑色の部分がUHI)、c,fが今回の手法を用いて導出したUHIとなっているが、b,eでは農地/裸地をUHIとして検出しまっていた部分を今回の手法では大幅に削減することができた

都市部は建物や道路が多く存在し大量の熱を発生させているためLSTが高くなるが、今回の実験でも都市部は初期抽出結果(b,e)においてUHIとして示され、農地は作物植え付け前や収穫後の裸地である場合にLSTの空間的クラスターとして示された。データを選択する際は農作物の収穫時期なども考慮する必要がある。 Credit : i Na, Dandan Xu, Wen Fang, Yihan Pu, Yanqing Liu, Haobin Wang. (2023). Automatic Detection and Dynamic Analysis of Urban Heat Islands Based on Landsat Images. Source : https://www.mdpi.com/2072-4292/15/16/4006

A novel fusion framework embedded with zero-shot super-resolution and multivariate autoregression for precipitable water vapor across the continental Europe

【どういう論文?】
・MODISとERA5データセットをフュージョンさせてPWV(Precipitable Water Vapor、大気中の水蒸気の量を表す指標)を予測する研究
・MODISは高分解能(1km)のPWVデータ(MOD05)を提供することができるものの、曇りという天候下での不連続な観測によってしばしば観測データを取得できないため、データフュージョンすることでこの課題を解決することを試みる

【技術や方法のポイントはどこ?】
・本研究で利用されたフレームワークは以下の画像の通り

Credit : Jinhua Wu, Linyuan Xia, Ting On Chan, Joseph Awange, Peng Yuan, Bo Zhong, Qianxia Li.(2023).A novel fusion framework embedded with zero-shot super-resolution and multivariate autoregression for precipitable water vapor across the continental Europe. Source : https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0034425723003346

・まず、ERA5 PWV画像の解像度を高めるために、ZSSR(Zero-Shot Super-Resolution) – ARFフレームワークを採用。ターゲット画像からダウンサンプルされた一連の画像を使用して(外部情報は不要)解像度を高める深層学習アルゴリズムであり、ERA5 PWVの解像度を高めて後フェーズのデータフュージョンのクオリティを高める
・次に、フュージョン精度を向上させるために、画像の類似性に基づいて最適なERA5-MOD05画像ペアを選択
・最後に多変量自己回帰(multivariate autoregression)を用いて、空間的なパターンと時間的な変化を同時に考慮しながら大気中のPWV(水蒸気)を予測する

【議論の内容・結果は?】
・フュージョンして生成したPWVの精度はGPSによる予測値と一致し(r = 0.82-0.95、RMSE = 2.21-4.01mm)、元のMODIS PWVに比べて精度と連続性が向上していることが明らかになった
※RMSE:予測誤差の大きさを評価する指標。実際の観測値とモデルの予測値の間の誤差を測定し、その平均値の平方根を取る。RMSEが小さいほど、モデルの予測が実際の観測値に近いことを示し、モデルの精度が高いことを意味する。
・ZSSR-ARFフュージョンフレームワークは、R2が24%以上改善され、RMSEが0.61mm以上削減され、他の手法を上回った。さらに、融合されたPWVは、信頼性の高いERA5プロダクトと同様の時間的一貫性(平均差0.40mm、DSTD3.22mm)を示し、ヨーロッパ大陸で実質的な増加傾向(平均0.057mm/年、南部と西部の沿岸付近では0.1mm/年以上)が観測された。PWVの精度と連続性が改善されるにつれて、本論文の成果は、陸域-大気循環過程における気候解析に利用できる可能性がある。
※R2:モデルのデータ適合度を評価する指標。0から1の範囲の値を取り、1に近いほどモデルがデータをよく説明できていることを示sy。具体的には、R2はモデルによって説明された変動(実際の観測値とモデルの予測値の間の変動)と、総変動(実際の観測値の変動)の比率を示し、R2が高いほどモデルがデータの変動を良く捉えていることを示し、モデルの適合度が高いことを意味する。
・フュージョンして生成したPWVの精度はGPSによる予測値と一致し(r = 0.82-0.95、RMSE = 2.21-4.01mm)、元のMODIS PWVに比べて精度と連続性が向上していることが明らかになった
・ERA5データのみを使用してZSSR-ARFフレームワークを用いた予測結果は、GPS測定値と最も一致し、RMSEは0.70から2.68 mm、Biasは-0.72から1.90 mmであった
・MOD05のみはGPSとの一致度が最も低く、相関係数は0.22から0.66であった

Building use and mixed-use classification with a transformer-based network fusing satellite images and geospatial textual information

【どういう論文?】
・衛星画像とPOI(Point of Interest)データに基づいて建物用途を分類するために、マルチモーダルTransformerベースのディープラーニングアプローチを活用することに焦点を当ててた研究であり、特に複合用途の建物について、建物用途分類の精度を向上させることを目的としている

【技術や方法のポイントはどこ?】
・まず、衛星画像を用いたLand Use Classification (LUC / 土地利用カテゴリー)の手法は主に3つある
– ピクセルベース
– 個々のピクセルのスペクトル情報を使用して地物のクラス分類を行う(各ピクセルに対してクラスを割り当てる方法)
– 代表的な手法には、サポートベクターマシン、 fuzzy k-meansクラスタリングアルゴリズム、最尤推定分類などが含まれる
– 地物のコンテキスト情報を無視する傾向がある
– オブジェクトベース(特徴ベース)
– 画像をセグメント化し、セグメントされたオブジェクトごとにクラス分類を行う。画像内のオブジェクトのテクスチャ情報も考慮される
– ディープラーニングベース
– 深層学習モデルを使用して画像から特徴を自動的に抽出し、クラス分類を行う
– 主にCNNが使用される
・以下の方法でデータセットを構築
– 建物ポリゴンの結合(同じ建物に属するが複数の部分に分かれている場合、それらを結合)
– 衛星画像のキャプチャ(建物のポリゴンを使用して、建物に関連する衛星画像をパッチして生成。サイズは224×224ピクセルで、建物とその周囲の情報を含む)
– 手動でのPOIデータ設定(ほとんどのPOIは建物のポリゴン内に存在するが、建物の情報を含む一部のPOIは建物の境界外にあることがあるため、
– 各POIを、そのPOIから最も近い建物を5メートルの半径内で探して対応付け)
– 手動でのラベル付け(ほぼすべてのサンプルがPOIデータを含んでいるため、主にPOIデータに基づいてラベル付けを実施。POIデータからラベル付けが難しかったカテゴリは主に衛星画像から判断してラベルを付けた)
・画像分類においてTransformerを使用し、パッチに分割した画像をTransformerの入力として直接利用(画像データをテキストデータと同じように処理)
・DenseNet(密な畳み込みニューラルネットワーク)の使用
– CNNアーキテクチャであり、画像認識タスクにおいて優れた性能を発揮するモデルの一つ
– DenseNetは、畳み込み層の出力を次の層の入力に連結(密結合)する独特の構造を持っている
– 密結合構造(Dense Connectivity): 通常のCNNでは、各層の出力は次の層の入力として使用されますが、DenseNetでは、各層の出力が後続の全ての層の入力として使用されます。これにより、情報が層をまたいで共有され、特徴の再利用が行われる
– バッチ正規化と活性化関数:DenseNetは、各畳み込み層の後にバッチ正規化とReLUが適用されます。これにより、モデルの収束が加速され、勾配消失問題が軽減される
– Bottleneck Layers:DenseNetでは、ボトルネック層と呼ばれる畳み込み層が使用される。ボトルネック層は、計算コストを削減するために1×1の畳み込みフィルタを使用し、特徴マップのチャンネル数を削減し、モデルの効率性が向上させる
– Dense Block:DenseNetは、複数の密結合ブロック(Dense Block)から構成され、各ブロック内で、特徴マップを前の層から受け継ぎ、新しい特徴が追加していく
– Transition Layer:DenseNetの各Dense Blockの後には、トランジション層が配置される。トランジション層は、特徴マップのサイズを削減し、計算効率を向上させる

pretrained BERT and DenseNet are used as the backbone to extract textual features and image feature
Credit : Wen Zhou,Persello. (2023). Building use and mixed-use classification with a transformer-based network fusing satellite images and geospatial textual Source : https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0034425723003188

【議論の内容・結果は?】
・POIデータと衛星画像を組み合わせた場合、単一のモダリティに比べてより詳細な土地利用情報を抽出できることが検証でき、2つのモダリティ(POIと衛星データ)が補完的であることを示した
・(1つの建物に対する)複数の土地使用カテゴリに関しても、POIデータとRS画像を組み合わせた結果は、POIデータ単体またはRS画像単体よりも優れた精度を示した(POIデータが建物の使用に関する詳細な情報を提供し、RS画像が建物の形状や配置情報を提供するため、組み合わせることで総合的な精度が向上することを示唆)
・Decision Fusion手法(各情報源からの結論(決定)を個別に行い、それらを組み合わせて最終的な決定を下す手法)のMIFSとMAFSは、POIデータのみを使用した場合とほぼ同じであることが示されており、RS分類結果を追加しても結果が改善されなかったことを示唆
・TransformerモデルはPOIデータに関してLSTMモデル(RNNの一種)よりも優れた性能を示し、衛星に関しても一部のカテゴリで優れた性能を示した。このことから、Transformerネットワークが建物の利用カテゴリータスクにおいて優れた性能を発揮し、異なるモダリティのデータを統合するのに有効であることが示された

DAFNet: A Novel Change-Detection Model for High-Resolution Remote-Sensing Imagery Based on Feature Difference and Attention Mechanism

【どういう論文?】
・2つの異なる時間点で撮影されたペア衛星画像の変化を検出するためのDAFNet(Differential Feature-Extraction and Attention Fusion Network)と呼ばれる新しいディープラーニングモデルの研究

【技術や方法のポイントはどこ?】
・DAFNetというエンコーダ・デコーダのバックボーンと3つのアシストモジュールを含むエンコーダ・デコーダ構造から構成されるネットワークアーキテクチャを採用
・アシストモジュールは、Difference Feature-Extraction Module(DFEM)、Attention Refinement Module(ARM)、およびCross-Scale Feature-Fusion Module(CSFM)である
・まずはResNetから得られた特徴マップを異なる4つのサイズとチャンネル数の特徴マップに分割
・DFEMを用いて画像(特徴マップ)ペアから差分特徴を抽出する。通常、2つの画像の単純な差分を計算するだけでは不一致領域を正確に特定するのが難しいが、DFEMは、
2つの特徴マップを取り、それらを減算や加算などの演算を行い、不一致注目マップを生成する。単純な差分では捉えきれない微細な変化や、光強度、季節変化などの干渉要因からくるノイズを軽減し、正確な不一致情報を提供する
・ARMを使用して、変更検出タスクにおいて衛星画像の中で変化が発生した領域にネットワークのアテンションを集中させ、一方で変更のない背景領域に過度なアテンションを向けないようにする(データセットのクラスの不均衡や、変化のない領域が多い場合に特に重要)

【議論の内容・結果は?】
・主な実験結果は以下の通りである

Credit : Chong Ma,Hongyang Yin,Liguo Weng,Min Xia,Haifeng Lin.(2023).DAFNet: A Novel Change-Detection Model for High-Resolution Remote-Sensing Imagery Based on Feature Difference and Attention Mechanism. Source : https://www.mdpi.com/2072-4292/15/15/3896

・他の手法と(同様の条件で)比較した結果、比較した様々な変化検出手法の中で、Swin-TransformerはIoU70.29%、F1スコア82.55%などと、最も高い総合評価指標を達成。
DAFNetは精度の点で他のすべての手法を上回り、Swin-Transformerと比較してIoUとF1スコアがそれぞれ1.65%と1.13%高い値を達成した。また、DAFNetはSwin-TransformerやSegformerよりも高速な推論速度を示した。主に検出エラーの低減と境界検出精度の向上におけるDAFNの優位性を示した結果となった。

Sensitivity Evaluation of Time Series InSAR Monitoring Results for Landslide Detection

【どういう論文?】
・これまでの地滑りのモニタリング手法には、D-InSARが使用されてきたが、複雑な地形環境、濃密な植生、大気の影響などが課題となり、精度に影響を及ぼしていた
・SBAS-InSAR(Small Baseline Subset Differential Interferometry)技術(D-InSARに比べて多様なベースライン(観測位置と時間の差)を使用して干渉計測の不連続性に対処し、変形モニタリングの精度を向上させると言われている)を検証し、かつ、GNSSのモニタリング結果と組み合わせた新たな感度指標(TGNSSおよびPGNSS)を定義し、地滑りの信頼性を定量的に評価する方法を提案する

【技術や方法のポイントはどこ?】
・SBAS-InSARを用いたデータ処理
– 全体のプロセスとしては、適切な場所 / 時間のベースライン(異なるSAR画像の時刻または軌道位置の間の幾何学的な差)のしきい値を選択し、SARの画像ペアを結合し、干渉、平坦化、フィルタリング、位相展開を行い、地形および残留位相を推定および補正する
– まずは、衛星が同じ地点を観測する際の空間ベースライン(2つの観測ポイント間の距離および方向の差)が最大で1.5%以下、時間ベースラインは72日以内で画像ペアを確保
– (今回使用するデータセットを提供する)Sentinel-1はテリンオブザベーションバイプログレッシブスキャン(TOPS)アクイジションモードを使用したことで、スクイント角度(SARビームが地表に対してどのような角度で配置されているか)の変動が発生したため、ドップラーセントロイド周波数(SARデータが地表のどの位置を観測しているかを示すパラメータ)とESDアルゴリズムを用いて変動に関する対策を施した
ここまでのプロセスで取得した干渉図は、衛星からの信号の位相情報を含んでいるがノイズやエラーも含んでいるため、Goldstein法と呼ばれるアルゴリズムを使用して、干渉図をフィルタリングし、信頼性の高い位相情報を取得
– 次に地上制御点(地表の変化を正確に計測するために使用される参照ポイント)とDEMデータを組み合わせて、InSARデータの位相を調整する
– 位相展開(位相情報に含まれる波の高低差や地表の変化には不連続な情報が含まれており解読が難しいため本手法で滑らかな連続した情報に変換する)にはMinimum-Cost Flow Methodを使用
– Singular-Value Decomposition Methodを使用して時系列で地表変動を推定し、地表変形と変動率を取得
・衛星と地形情報(GNSS)を組み合わせて感度指数を定義
– 感度指数とは、SARデータを用いて地すべりを監視する際に、どの程度の感度を持つかを示す指標
– SARから得られるLOS(Line of Sight)方向の変形は、通常、斜面の変形を正確に反映しづらいというのが一般的である
– そこで、斜面角(φ)と方位角(α)が地形感度指数に与える影響を数式で表現(チャプター3.1に本指数に関する数式が記載)
– 感度指数が1に近い場合、SARデータを用いた監視が非常に感度が高く、地すべりの変形を正確に捉えやすくなる。一方、感度指数が低い場合、SARデータを用いての監視感度が低く、地すべりの変形を捉える確率が低くなる
– その際、SAR画像内で影が発生し、その領域において地すべりの監視結果が信頼性を持たない場合がある。高精度のDEMデータと衛星の幾何学情報を使用して、事前にレーダーシャドウ領域を特定する必要がある

【議論の内容・結果は?】
・東西方向の斜面のずれが約10mm/year程度であれば、GNSSによる結果とSBAS-InSARによって得られた結果は一致
・東西方向の斜面のずれが約30mm/yearほどの場合は上昇モードでは一致したが、下降モードではややずれが生じた
・東西方向の斜面のずれが約90mm/yearの場合、上昇モードではややずれたが、下降モードでは大幅にずれた
・鉱山の実際の斜面滑り変形に対してInSARの理論的および実用的な感度指数を使用して信頼性を定量的に評価したところ、下降軌道の理論感度指数(平均約96%)が上昇軌道の理論感度指数(平均約15%)よりもはるかに優れていることが計算結果から明らかになり、さらに、実用的な感度指数に関しても下降軌道の実用的な感度指数(平均約40%)が上昇軌道の実用的な感度指数(平均約15%)よりも優れていることが示された

Fusing Social Media, Remote Sensing, and Fire Dynamics to Track Wildland-Urban Interface Fire

【どういう論文?】
・ソーシャルメディアデータと衛星データを含む多様なデータソースを統合したフュージョンフレームワークを用いて火災の追跡を行う研究

【技術や方法のポイントはどこ?】

Credit : Weiqi Zhong,Xin Mei,Fei Niu,Xin Fan,Shengya Ou,Shaobo Zhong.(2023).Fusing Social Media, Remote Sensing, and Fire Dynamics to Track Wildland-Urban Interface Fire. Source : https://www.mdpi.com/2072-4292/15/15/3842

・多様な情報を含むデータリソースを(ソーシャルメディアの投稿、天気予報、位置データ、地形データ、衛星画像など)次のステップである「知識ベースサービス」に提供
・セマンティック(データの意味や関連性をより明確にし、異なるデータソース間で情報を共有しやすくしたもの)に統合したデータをナレッジベースサービスに格納し、クエリと推論のための情報源として使用
・WUIFire Monitoring Moduleというモジュールを用いてWildFireの検出とモニタリングに関連する用語を定義するためのSSN・SORA・GeoSPARQLオントロジというモジュールをインポートする。上記のモジュールによって、異なるデータソースを異なるセンサーとして認識し、例えば、ソーシャルメディアは災害の進行状況のテキストデータを収集するテセンシングセンサーとして定義され、携帯電話の通信データは住民と観光客のリアルタイムの分布を示し、位置センサーとして定義される。気象データは気象センサーとして認識され、DEM(地形データ)は地形センサーとして扱われ、衛星画像は地表センサーとして認識される。
・WUIFire Spread Moduleを用いて、WildFireIの拡散シミュレーションを行う。このモジュールは、Input、Process、およびOutputの3つのコアクラスで構成されている
– Inputクラス:火災拡散モデルに必要な初期プロパティを含みます。これには、地形プロパティ、気象プロパティ、および地表プロパティが含まれます。これらのプロパティは、Monitoring Moduleから取得する。
– Processクラス:火災拡散プロセスに使用される物理的または数学的モデルを含む。例えば、Wang ZhengfeiモデルとRothermelモデルが挙げられる。これらのモデルは火災拡散の速度を定義する
– Outputクラス:火災シミュレーションの結果としての出力パラメータを含む。これらのパラメータは、異なる地理オブジェクトとして扱われる

Credit : Weiqi Zhong,Xin Mei,Fei Niu,Xin Fan,Shengya Ou,Shaobo Zhong.(2023).Fusing Social Media, Remote Sensing, and Fire Dynamics to Track Wildland-Urban Interface Source : https://www.mdpi.com/2072-4292/15/15/3842

【議論の内容・結果は?】
・燕脂山風景区(火災発生地域)に関連する782件のWeibo(中国のソーシャルメディアプラットフォーム)のポストを収集した。火災は人口がまばらな地域で発生したため、最初の火災に関するポストは火災発生から約3時間後に投稿された。
・火災の状態を詳細に追跡するため、火災の拡大シミュレーションから得られた火災周囲の情報を今回のフレームワークに統合して分析を行った。消防署の対応措置が行われたため、それも鑑みてシミュレーションパラメータを調整したところ、火災の拡大を示すシミュレーション結果が、実際の火災と一致していることが確認できた
・本手法にはリアルタイムでの正確なデータ入力が必要であり、また、ソーシャルメディアデータの遅延がある

Validation of the Ocean Wave Spectrum from the Remote Sensing Data of the Chinese–French Oceanography Satellite

【どういう論文?】
・地球全体の海洋波スペクトルを観測するためには、従来はブイなどの観測装置を使用する必要があったが、これらの装置は限られた領域でのデータしか提供できず、地球全体の波情報を得るのは難しいという課題があった。また、衛星高度計によるSignificant Wave Height(波の高さを示す重要な指標)の観測は精度が高いが、波スペクトルの情報は提供できない
・今回の研究は、2018年に打ち上げられたCFOSAT(波スペクトル情報を提供できるSWIM(波長範囲70~500m)装置を搭載しており、波の方向性を含む波スペクトル情報を収集できる)を用いて、波スペクトルデータ(特にSWIM装置からのデータ)の精度を評価し、その信頼性を確認した上で、SARなどの異なる観測装置から得られる波スペクトル情報を、同じ周波数情報に変換して統一の波スペクトルデータにする方法の開発と評価を試みる

【技術や方法のポイントはどこ?】
・CFOSATは、波の方向スペクトルを解析するためにSWIM波散乱計を使用する。SWIM波散乱計は、13.575 GHzの周波数で動作し、海洋表面を6つの入射角(0°、2°、4°、6°、8°、10°)で順次照射する。また、波のスペクトル情報を異なる入射角(6°、8°、10°)によって推定する。波スペクトルは、0°のビーム(つまり、視線の直下ビーム)を用いて、レーダー高度計と同様の方法で波の高さを推定。一方、2°および4°のビームは、波スペクトルを推定するのではなく、入射角の情報を補完するために使用する。
・次に波スペクトルを異なる波システムに分類し、精度を向上させる
– マスク行列の利用: SWIMデータの各観測ポイントに対して3つのマスク行列をあてる。これらのマスク行列は、波スペクトルを異なる波システム(風やうねりなど)に分割するために使用する
– マスク行列を使用して分割された波スペクトルを統合して新しいスペクトルを生成する。これにより、異なる波システムへの寄与が明確になり、より正確な波スペクトルを得ることができる

【議論の内容・結果は?】
・SWH(Significant Wave Height)の精度評価指標として、バイアス、RMS、Std、Rs(スペクトル形状の精度指標であり、異なる入射ビームに対する比較が可能)を使用
・バイアス(SWHの予測値と観測値の平均的な差)は0.23 mであった
・マスクフィルターの使用が、精度向上に寄与し、特にスペクトル形状の精度に影響した
・風速が10 m/s未満の場合にはRsの値はわずかに変化した
・SWHが2 m以上の場合、Rsの値が高くなった
・方向成分の精度においては、CFOSATに波の方向情報における180°の不確実性(波の方向を真逆に捉えてしまうこと)があることが指摘として上がった

以上、2023年8月に公開された論文をピックアップして紹介しました。
皆様の業務や趣味を考えた時に、ピンとくる衛星データ利活用に関する話題はありましたか?

最後に、#MonthlySatDataNewsのタグをつけてTwitterに投稿された全ての論文をご紹介します。

The utility of Sentinel-2 Vegetation Indices (VIs) and Sentinel-1 Synthetic Aperture Radar (SAR) for invasive alien species detection and mapping

Effect of the Synergetic Use of Sentinel-1, Sentinel-2, LiDAR and Derived Data in Land Cover Classification of a Semiarid Mediterranean Area Using Machine Learning Algorithms

Hierarchical Feature Association and Global Correction Network for Change Detection

Land Consumption Monitoring with SAR Data and Multispectral Indices

Accuracy of Sentinel-1 PSI and SBAS InSAR Displacement Velocities against GNSS and Geodetic Leveling Monitoring Data

Time-series analyses of land surface temperature changes with Google Earth Engine in a mountainous region

SE-YOLOv7 Landslide Detection Algorithm Based on Attention Mechanism and Improved Loss Function

来月以降も「#MonthlySatDataNews」を続けていきますので、お楽しみに!