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探査機「SLIM」月面着陸成功!JAXA宇宙研・獲得した技術の供与による産業貢献へも積極的な姿勢示す【宇宙ビジネスニュース】

【2024年1月22日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。

1月20日、JAXAは小型月着陸実証機(SLIM)の月面への降下を実施し、軟着陸に成功したことを確認したと発表しました。これにより、日本は旧ソ連、アメリカ、中国、インドに続いて史上5カ国目の無人月面着陸の達成国となりました。

記者会見の様子

太陽電池は機能していないものの、復旧の可能性も

SLIMは着陸後の通信は確立したものの、1月20日時点では太陽電池による電力の発生は確認できていません。そのため、バッテリーの電力のみで動作するためSLIMの稼働可能な時間は着陸後から数時間に限られる見込みであることが発表されました。

SLIMは月へのピンポイント着陸技術の実証と軽量な月惑星探査機システムの実現を目指して開発された探査機です。JAXAは、SLIMのヒーター機能を使わずバッテリー電力を温存しながら、着陸の際の軌道を再現するために必要な探査機が移動中に撮影したデータを優先的に地上に送信する方針です。さらには、SLIMに搭載された月のマントル物質を調査するためのマルチバンド分光カメラを優先して動作させる方針も説明されました。

SLIMの太陽電池は、今後太陽の向きが変化していくことで、復旧する可能性もあるということです。

なお、SLIMに搭載されていた小型プローブ「LEV-1」は、SLIMの着陸直前に放出され、電波の受信が確認されました。同時に放出された「LEV-2(愛称:SORA-Q)」にもカメラが搭載されており、LEV-1を通じてデータが送信される設計です。LEV-1とLEV-2が撮影したデータによって、SLIMの状況が確認できるのではないかと期待が寄せられています。

技術供与による産業育成

今回の着陸成功を受けてJAXA宇宙科学研究所の國中均所長は、産業育成についても言及しました。

「JAXA宇宙科学研究所は技術研究開発を主体とした研究所ですので、世界の月着陸に向けた活動、特にアメリカのNASAが進めるCLPS(商業月面輸送サービス)などの分野で活動を求める研究所ではありません。(SLIMを通じて)獲得した技術を使いたいというお申し出があった場合には積極的にこの技術(ピンポイント着陸技術等)を供与していきたいという立場です。産業育成として貢献していくモチベーションはあります」

JAXAは今後さらなる分析を行ったあとに、ピンポイント着陸の成否やLEV-1とLEV-2の動作結果などを発表する予定です。

月面着陸までの様々なデータがオープンに

月面着陸までのライブ配信では、JAXA職員がSLIMを運用する際に確認するデータとほぼ同じデータが視聴者にもオープンになっていました。JAXA宇宙科学研究所の藤本正樹副所長によると、主に若手メンバーが2年ほどかけて準備をしていたとのこと。テレメトリデータをもとに、今回の月面着陸について様々な人がX(旧Twitter)で思い思いの考察を投稿していたことも、新しいライブ配信の形を実感できました。

左下の加速度データを見ると、月面の重力の値になっていることから、SLIMが月面にいると分かります

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参考

小型月着陸実証機(SLIM)の月面着陸の結果について