【2024年1月】衛星データ利活用に関する論文とニュースをピックアップ!
2024年1月に公開された衛星データの利活用に関する論文の中でも宙畑編集部が気になったものをピックアップしました。
宙畑の新連載「#MonthlySatDataNews」では、前月に公開された衛星データの利活用に関する論文やニュースをピックアップして紹介します。
実は、本記事を制作するために、これは!と思った論文やニュースをTwitter上で「#MonthlySatDataNews」をつけて備忘録として宙畑編集部メンバーが投稿していました。宙畑読者のみなさまも是非ご参加いただけますと幸いです。
2024年1月の「#MonthlySatDataNews」を投稿いただいたのは1人でした。引き続き投稿をお待ちしておりますので、ぜひ面白い論文がありましたら投稿をいただけますと幸いです。
※編集部メンバーもあらためてインプットの時間を増やし、投稿を行ってまいります!
Remotely sensing potential climate change tipping points across scales | Nature Communications #MonthlySatDataNews
衛星データを分析するこので気候変動によるTipping points(不可逆な変化が生じる場所)の検出を試みてる https://t.co/LYOW3eSAPd— たなこう (@octobersky_031) January 8, 2024
それではさっそく2024年1月の論文を紹介します。
Automatically Detect Crosswalks from Satellite View Images – A Deep Learning Approach with Ground Truth Verification
【どういう論文?】
・本論文は、衛星画像から自動的に横断歩道を検出するための深層学習に基づく新しいアプローチを提案する
・異なる地理的地域におけるモデルの汎用性を高めることを目指した
【技術や方法のポイントはどこ?】
・地上(グランドトゥルース)データに関しては、OpenStreetMap(OSM)とBing Mapsから取得した航空およびストリートレベルの画像を組み合わせて取得する
・画像アノテーションに人間の確認を取り入れるためのユーザーインターフェースをデータ取得パイプラインに統合する
・同じ対象を含む近隣の位置から抽出された衛星画像の重複を避けるために、知覚的ハッシュアルゴリズムを使用して類似または重複する画像を除去する
・ストリートビュー画像取得時には、OSMのPOI(横断歩道の位置)に最も近いストリートレベルのパノラマの画像メタデータをクエリし、POIを描写するパノラマの領域のみを抽出するアルゴリズムを利用する
・モデルは、VGG16アーキテクチャに基づく畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を仕様する
・ネットワークへの入力は、224×224ピクセル(3チャンネルRGB)の「横断歩道あり」または「横断歩道なし」とラベル付けされた画像を用いる
【議論の内容・結果は?】
・ローカルテストでは衛星画像の横断歩道検出器が98.43%の高い精度、98.45%の適合率、そして96.66%の再現率を達成した
(ローカルテストとは、モデルが訓練されたのと同じデータセットまたは地域から得られたデータを使用してモデルを評価することであ理、モデルが既知のデータにどれだけ適応しているかを測定するために使用する)
・外部テストでは、衛星画像の精度がグラウンドトゥルースチェックなしで55.59%に低下したが、グラウンドトゥルースチェックを使用することで83.02%に改善した
(外部テストとは、モデルが訓練されたデータセットや地域とは異なる新しいデータセットを使用してモデルを評価するものであり、モデルの一般化能力や未知のデータに対する性能を測定するために使用する)
・また、適合率は89.82%に、再現率は大幅に74.42%に向上した
Satellite-derived bathymetry from correlation of Sentinel-2 spectral bands to derive wave kinematics: Qualification of Sentinel-2 S2Shores estimates with hydrographic standards
【どういう論文?】
・本研究は、Sentinel-2データを利用して、沿岸域の水深(バソメトリー)を推定する新しい手法(S2Shores空間相関法)を提案する
・この手法は、Sentinel-2の異なるバンド間のわずかな時間遅延を使用して波の特性を推定し、波の線形分散理論を用いて深度を計算する方法である
【技術や方法のポイントはどこ?】
・Sentinel-2は、10メートル解像度のバンド(青:B02、近赤外:B08、緑:B03、赤:B04)において、青と赤のバンド間に最大1.005秒の遅延がある
・海の波は、海の深さによって形や速さが変わるため、本研究では、Sentinel-2が撮影した異なるバンドの画像間におけるわずかな時間差を見て、波の動きを分析し、そこから海の底の深さを推測していく
・なお、S2Shoresは、時系列情報が少ない衛星光学データを使用して波の特性を導出し、バソメトリーを推定するためのPythonライブラリである
・プロセスの始めとして、ポーラー・ラドン変換という画像処理の技術を利用し、画像内の波の方向や形状を明確にする
・次に、ポーラー・ラドン変換を通じて得られた波の情報を基に、波の移動距離(空間オフセット)や波の速さを推定し、水深を逆算するための最終的なデータが得る
・最後に、S2Shoresでは、水深によって変化する波の速さ(セレリティ)と波長を解析することで特定の場所の水深を推定する
【議論の内容・結果は?】
・RMSE(平均二乗誤差)は12.37mから16.36mと比較的大きい
・水深が深くなるにつれてバイアスが増加し、中間水域の推定が深水域よりも良好である一方で、最も浅い水域では水深を過大評価する傾向がある
The evidentiary challenges of using satellite technologies to enforce ship-source marine pollution standards on the high seas
【どういう論文?】
・本論文は、衛星技術と自動船舶識別システム(AIS)を組み合わせた海域での船舶による汚染行為の監視結果に関して、海洋汚染の証拠として法的にどのように活用できるか、具体的な司法的課題に言及する
【衛星画像のポテンシャルは?】
・海洋汚染に関して、合成開口レーダー(SAR)を含む多数のリモートセンシング技術と手法が開発/利用されてきた
・海面に存在する油膜が、SARの後方散乱の強度を減少させることにより、周囲の海面と比較して顕著な信号の低下を生じさせることによって海洋汚染を特定することができる
・大規模な藻類の増殖や上昇流・下降流、グリースアイス、低風速帯などの自然現象は、SARによる分析結果に悪影響を生じさせるが、近年の分析ツールによってそれらの悪影響を除外することができるようになってきた
【衛星画像の証拠としての利用可能性は?】
・環境執行行動(環境汚染に関する罰則の適用)を開始するためには、規制機関は十分な証拠を提出する必要があり、現場調査レポート、汚染サンプリングと実験室の結果、現場の証言など、大量かつ多様な証拠を必要とする
・衛星画像(データ)の法的受容性は進行中の議論の対象であり、衛星画像(データ)は海洋汚染の証拠として裁判所に受け入れられない場合もあるものの、法的な議論の視覚化を助ける補助手段として使用されることがある
・なぜならば、環境汚染の刑事訴追では、「故意、無謀、または重大な過失」で行われた行為であることを証明する必要があるが、衛星画像は行為(結果)のみしか記録できないからである
・また、衛星画像は複雑なデータサプライチェーンの最終アウトプット、つまり、大量のデータが収集/処理された結果であるため、衛星画像とデータの信頼性と正確性に関する懸念が提起されている
・よって、衛星画像を証拠として利用する際には、査読付き科学雑誌の引用や権威ある科学者の証言など、追加情報を提供することで証拠として確立しようとする必要がある
Long-term ice mass changes in Greenland and Antarctica derived from satellite laser ranging
【どういう論文?】
・過去の研究ではGRACEミッション以前のデータが不足しており、SLRデータ(地上のレーザー観測所から衛星にレーザー光を発射し、その反射光を再び地上で検出すること)の重力場モデルの解像度も低く、氷床質量(グリーンランドや南極大陸に存在する巨大な氷の塊の総重量)の変化推定の品質が低かった
・本論文では、SLRデータを用いた新たな方法を開発し、GRACEよりも長期間にわたる氷床質量の変化を推定する手法を提案する
【技術や方法のポイントはどこ?】
・SLRは地球を周回する衛星へのレーザー距離測定を利用する方法であり、本手法を利用することにより、1995年から2021年までの長期間にわたる重力場の変化を分析することを可能である
・そして、地球の重力場は地球上の質量分布によって決定されるため、地球の重力場を計算することで、最終的に氷床質量の増減に関して把握することができる
・今回は、様々な衛星(高軌道のLAGEOS衛星と低軌道のStarlette、Stella、AJISAIなど)からのSLR観測データを利用する
・重力場重力場の計算で生じる方程式の集合(正規方程式)を、より小さい部分に分割して解き、その後再結合した
・上記により、計算の安定性が向上し、特に観測データが少ない月や高次の重力場係数で見られるノイズが減少した
・具体的には、全体の正規方程式を、例えば10次までの重力場係数に関するものと、それ以下の次数のものに分割し、それぞれを解いた後に結合することで、より安定した解を得ることができた
【議論の内容・結果は?】
・以下は複数のSLRに基づく氷床質量の変化推定間の違いである
・以下は2002年4月から2021年10月までの期間における地球の重力場の長期変化をEWH(地球の重力場の変化を水の量の変化に換算した値)の観点から示している
・2002 年から 2021 年までのグリーンランドの平均傾向は、以下の表に示すように、約 -108.8 Gt/年 (SLR S) および -110.7 Gt/年 (GRACE) の一貫した氷塊減少を示してる
・この傾向は IMBIE と密接に一致しており、大規模な氷塊の変化を捉える上で SLR が有効であることを示している
・SLRとGRACEは西南極で一貫した傾向を示しており、SLR S は -92.9 Gt/年、GRACE は -105.0 Gt/年である
・特に西南極に関する結果は、まばらな観測やデータノイズなどの課題にもかかわらず、極地における氷塊の変化を追跡する SLR の能力を実証している
Mapping cropland abandonment and distinguishing from intentional afforestation with Landsat time series
【どういう論文?】
・本論文では、Landsat画像を用いて土地被覆変化を追跡し、NDVIの変化の勾配を利用して耕作放棄地とスペクトル的に類似した他の土地被覆変化を分離することで、放棄された耕作地を正しく特定する手法を提案する
【技術や方法のポイントはどこ?】
①データ収集と前処理
・複数のLandsat衛星(TM、ETM+、OLI)から取得した表面反射率データを収集する
・画像の大気補正、放射補正、BRDFモデルによる方向性効果の軽減、CFMASKによる雲/雪/氷のマスキングを行う
・センサー間のスペクトル反射率の差異を線形変換により調整する
②トレーニングサンプルの選定
・GlobeLand30、FROM-GLC、ESA WorldCover、Sentinel-2画像、Google Earthの超高解像度画像を利用して、2001年から2020年までの期間にわたり一貫性のある土地被覆を持つトレーニングサンプルを割り当てる
③土地被覆確率の予測
・ランダムフォレストを用いて、2001年から2020年までの各年における土地被覆クラス(耕作地、森林、草地、低木、裸地、建設地、水域)の確率を予測する
④確率時系列の時間的セグメンテーション
・LandTrendrアルゴリズムを使用し、土地被覆クラスの確率時系列を時間的に分析する
・土地被覆クラスメンバーシップ確率(あるデータポイントが特定のクラスに属する確率や程度を示す指標)の時間を通じた変化を検出し、重要な変化点でデータをセグメントに分割する
⑤土地被覆変化のマッピング
・LandTrendrによるフィット確率を基に、最も高い確率を持つ土地被覆クラスを年ごとに割り当て、土地被覆変化を作成する
⑥耕作放棄地のマッピング
・森林、草地、低木という3つに分類されたカテゴリー(クラス)を「自然植生」という一つのカテゴリーに集約する
・土地被覆変化とNDVI変化を組み合わせて(実際の)耕作放棄地か人為的な植林地(自然植生[森林・草地・低木])かを区別する
(耕作地では自然な植生の回復が起こるため、基本的にNDVIは時間とともに徐々に増加するが、人為的な植林地では植物が植えられた後、より速いNDVIの増加が見られる)
⑦生成した土地被覆マップと最終的な耕作放棄地マップの検証方法
・1,516の検証ポイント/ピクセルをランダムに選択
・耕作地290点、森林600点、草地275点、低木171点、裸地60点、建設地60点、水域60点が含まれる
・各年度ごとに混同行列(True Positive、True Negative、False Positive、False Negative) を作成し、生産者精度(TP / (TP + FN) )、ユーザー精度(TP / (TP + FP) )、全体精度((TP + TN) / 全サンプル数)を計算する
【議論の内容・結果は?】
・耕作地、森林、裸地、建設地、水域のユーザー精度と生産者精度は83%以上
・2001年から2020年の土地被覆分類の全体的な精度は90%以上
・耕作放棄地と人為的な植林の分類精度は以下の図の通りである
・耕作放棄地のユーザー精度と人為的な植林の生産者精度は、SLOPE閾値(地表の傾斜度)が400から480に増加するにつれて低下した
・一方で、NDVI閾値が5,100から5,500に増加するにつれて、耕作放棄地の生産者精度は増加し、人為的な植林の生産者精度は減少した
・2001年-2002年に耕作されていた土地の約15.43%(約368,000ヘクタール)が2018年までに放棄されたことがわかった
・平均的な年間耕作放棄率は、2003年から2010年の間は1.38%/年、2011年から2018年の間は0.45%/年であった
Geodetic imaging and dynamic modeling of saline mudflat using time-series InSAR in Howz-e-Soltan Salt Lake, Qom, Iran
【どういう論文?】
・塩類土壌は、温度や湿度の変化によって体積が増減する性質を持っており、大きな建造物や家々が建てられている地域で、土壌が膨張したり収縮したりすると、地面が不均一に動き、建物に亀裂が入ったり、最悪の場合は崩壊するなどの地質災害が起こる可能性がある
・本論文は、時間系列InSAR変形を推定し、塩類泥地の動的進化メカニズムの理解を助ける手法を提案する
【技術や方法のポイントはどこ?】
①SAR画像の前処理
・コアジストレーションという、複数のSAR画像をピクセル単位で正確に合わせる処理を行う
・同一地点の異なる時点での変化を比較できるようになり、変形分析の精度が向上する
②インターフェログラムネットワークの構築
・2枚のSAR画像を重ね合わせて、地表の微小な変位を示す干渉パターン(インターフェログラム)を作成し、地表の変化を可視化する
・MCF (Minimum Cost Flow) 位相展開法を用いて、インターフェログラムから位相情報を展開し、より正確な変動情報を抽出する
・SRTMデータとGACOSサービスを用いて、地形による影響や大気の影響を除去し、より正確な地表の変動情報を得る
③モデルによる変形の解析
・地表の変形が単純な直線ではなく、季節によって変わるなど複雑な動きをするため、多項式(地表の変形を時間の関数としての多項式で表現)や三角関数、環境要因を考慮したモデルを構築する(以下は各モデルの結果画像)
・最小二乗法を用いてデータに最もよく合うモデルを見つける
④位相誤差の修正
・大気やその他のランダムノイズから実際の変動信号を分離する
⑤実際の変形情報の抽出
・一定期間にわたる地表の総変形量と、年ごとの変形速度を計算し、地表の変動の大きさと速度を明らかにする
⑥環境因子を考慮した動的モデリング
気温や降水量などの環境因子を考慮に入れ、それらが地表の変形にどのように影響しているかをモデル化する(以下は各因子モデルごとの結果画像)
【議論の内容・結果は?】
・塩湖周辺では上昇傾向(最大+10 mm/年)、塩湖から離れた地域では沈下傾向(最大-15 mm/年)を観察することができた
・季節的変動においては、夏から秋にかけて最大30 mmの上昇、冬から春にかけて最大30 mmの沈下を確認することができた
InSAR time series analysis of natural and anthropogenic coastal plain subsidence: A case of Hangjiahu plain
【どういう論文?】
・本論文は、SBAS-InSAR技術を用いたSentinel-1Aの画像データ分析を通して、地下水利用による広範な地盤沈下問題と、地下水利用に対する政府の制限が表面沈下にどのような変化をもたらしたかを研究する
【技術や方法のポイントはどこ?】
◾StaMPS-SBAS
①小さな基線セット
・SBAS方法では、複数の衛星画像をペアにして干渉図を作成する
・ここで「基線」とは、2つの衛星画像が撮影された位置の間の距離を指す
・「小さな基線セット」とは、この基線の距離が比較的小さい画像ペアを選択することを意味する
・これにより、画像間の位相の一貫性が保たれやすくなり、地表変形の検出がより正確になる
②振幅-位相偏差指数とSDFPピクセルの選択
・SBAS方法では、画像の振幅(明るさ)と位相(地表の高さや変形を示す情報)の情報を利用する
・「振幅-位相偏差指数」とは、画像の振幅と位相の変化を分析することにより、地表の変形や特徴を正確に捉えるピクセルを選択するための指標である
・「ゆっくりと相関が低下するフィルターされた位相(SDFP)ピクセル」とは、時間が経過しても位相の一貫性が保たれる、つまり地表の変形を反映している信頼できるピクセルのことを指し、このようなピクセルを選択することで、時間をかけての地表変形を正確に追跡することができる
【議論の内容・結果は?】
・年平均速度標準偏差分布は 1.39 mm/yr から 4.89 mm/yr の範囲にある
・したがって、Sentinel-1A の画像データを基にSBAS-InSAR 手法を適用した対象地域の地表沈下結果は信頼性が高いと言える
・55箇所のレベリングポイント(地表の高さを測定するための参照)を使用して、SBAS-InSARの結果と比較分析を行なった
・比較の結果、InSARモニタリング結果とレベリング結果は高い一貫性を示し、相関係数は0.77となった
・しかし、2つの技術によるモニタリング結果には避けられない誤差も発生しており、特に、いくつかのモニタリングポイントでは最大で5.9 mm/yrの大きな誤差が観察された
Satellite remote sensing can provide semi-automated monitoring to aid coastal decision-making
【どういう論文?】
・本論文は、塩性湿地の範囲をマッピングするために、Landsatデータとランダムフォレストを用いた時系列解析の手法を提案する
【技術や方法のポイントはどこ?】
・Landsat-5 TM、Landsat-7 ETM+、Landsat-8 OLIの表面反射率データを使用する
・植生指標(NDVI、mSAVI2)と水域指標(NDWI)を計算し、塩性湿地と非塩性湿地エリアの違い(SIs)を強調する
・過去の塩性湿地調査から得られたデータを使用して、画素を「塩性湿地」または「非塩性湿地」とラベル付けする
・モデルは、全モデル(Landsat-5、Landsat-7、およびLandsat-8の組み合わせ)、
TMモデル(Landsat-5のThematic Mapper (TM) とLandsat-7のEnhanced Thematic Mapper Plus (ETM+) センサーという似たようなバンド構成の組み合わせ)、OLIモデル(Landsat-8のOperational Land Imager (OLI) センサーからのデータのみを使用)の3つを用いる
・GEE内でランダムフォレスト分類器を訓練し、年次平均スペクトル指標(Normalized Difference Vegetation Index (NDVI)、Modified Soil Adjusted Vegetation Index (mSAVI2)、Normalized Difference Water Index (NDWI))を特徴量として活用して、塩性湿地の範囲を分類する
【議論の内容・結果は?】
・3つのモデル(全モデル、TMモデル、OLIモデル)の精度評価では、全体的な精度が91%〜92%と高く、各モデルはほぼ同等の性能を示した
・TMモデルが最も効果的であると判断された
・セヴァーン河口における6つの地域のうち3つ(CL、S、UM)で、1985年から2020年にかけて塩性湿地の面積が有意に増加した
・特にCL地域では、面積が136.0ヘクタールから141.0ヘクタールに増加し、年間+1.0ヘクタールの増加傾向が見られた
・一方、W地域では面積が減少し、唯一減少した地域となった
Feasibility of monitoring floodplain on-farm water storages by integrating airborne and satellite LiDAR altimetry with optical remote sensing
【どういう論文?】
・本論文は、(灌漑・畜産・魚の養殖などに利用される)小規模の水貯蔵施設に関して、容量計測、建設/解体年月の特定、蒸発損失の推定、および容量変化の監視が難しいという問題を解決するための衛星画像とLiDAR高度計の活用方法を提案する
【技術や方法のポイントはどこ?】
◾️ユースケース
①Digital Earth Australia(DEA)によって提供されるWOsデータ(Landsatデータを基に作られている)から、mNDWIを用いて滞留水を検出してFoFWSの位置と表面積を特定する(以下はFoFWS仕様例)
②光学衛星画像を使用してFoFWSの建設日と廃止日を推定する
③CMRSET(CSIRO MODIS Reanalysis of Terrestrial Evapotranspiration)という植生の蒸散量(ET)を推定するために開発されたモデルを用いて、EVI (植生の健全性や活動度を示す指数)とGVMI (植生の水分状態を示す指数)からETを推定する
④高解像度のLiDARによるDEMを使用してFoFWSの体積を取得し、関連する標高-面積-体積の関係を導き出す
⑤GEDIとICESat-2からのLiDARデータを使用してFoFWSの滞留水の水位を観測する
◾️手法
①FoFWSの特定
・Digital Earth AustraliaのWater Observations (WOs) データを使用してFoFWSの位置を特定する
・水平方向に1mの解像度を持つデジタル標高モデル(DEM)を使用して、FoFWSと思われる「シンク」(低地)を「充填」し、その後で元のDEMから差し引く
(対象場所のシンク[穴]は水貯蔵施設によって形成されているという想定の元、「充填」プロセスでは、これらのシンクを仮想的に水で満たし、水が溢れるまでの高さに達するまで地形を「上げる」ことをシミュレーションする)
・差分は、各ピクセルにおいて充填によって追加された仮想的な「高さ」を示す
・各ピクセルの高さの差分をピクセルの面積と乗算して、ピクセルごとの容積を得る
・その後、Landsat画像を利用して水と植生間のコントラストを強調し、FoFWS/滞留水の存在を検証する
②FoFWSの建設と廃止年月の推定
・Landsatの立水面(水が特定の場所に存在するかの)データが欠落している月を調査する
・少なくとも(シンク全体に対して)30%の水がFoFWSに存在し、この30%の閾値が少なくとも3か月連続で達成された場合に「実際に建設が行われた」という前提のもとで年月を推定する
・上記の推定方法を用いることで、一時的な洪水や大雨による水溜りによって誤って建設年を推定することを防ぐ
・一方で、12か月以上FoFWSエリアの30%が「水」で満たされなくなった場合、そのFoFWSは廃止されたと考えて廃止年月を計算する
③④FoFWSの滞留水蒸発量、及び標高-面積-体積関係の推定
・DEMデータやシンク内の水量変化から計算を行う
⑤-1: FoFWSの水位推定(GEDIを使用した水位推定)
・質の高いデータのみを選別するために、特定の基準(’quality_flag’ = 1 および ‘num_detectedmodes’ = 1)を用いて、水面などの平坦な表面からの信号のみをフィルタリングする
・楕円体高度から地球の重力モデルに基づく高さ(正射高度)への変換を行う
⑤-2: FoFWSの水位推定(ICESat-2を使用した水位推定)
・信頼度の高いフォトン(’signal_conf_ph’ = 4)のみを選択する
(ICESat-2では、地表や水面などのターゲットにレーザー光を照射し、その反射光(フォトン)を検出して距離や高さを測定する)
・GEDIの際と同様に、正射高度への変換と実際の水位をより正確に反映するための追加の調整を行う
⑤-3:検証
・GEDIおよびICESat-2から得られた高さを、1m解像度のLiDARから得られたDEMで得られた高さと比較して精度を検証する
【議論の内容・結果は?】
・検出されたFoFWSは以下の通りである
・以下の図のb-dはWOsデータによる2010年から2015 年の水年度の滞留水の存在有無、e-gはDEMデータの差分計算などを通じて得られた体積を表している
・以下の図は、建設年 (赤の縦破線)、30% の面積しきい値 (黒の横破線)、および最大 FoFWS 面積を示している
・1988年から1996年にかけてFoFWS(数/面積)が急激に増加していることを観測できた
・以下の図は、蒸発散量が体積単位(MCM/月、水色)と深さ単位(mm/日、濃い青)の両方を示しており、年間の表面水面積との相関係数はr2=0.95であった
以上、2024年1月に公開された論文をピックアップして紹介しました。
皆様の業務や趣味を考えた時に、ピンとくる衛星データ利活用に関する話題はありましたか?
最後に、#MonthlySatDataNewsのタグをつけてTwitterに投稿された全ての論文をご紹介します。
来月以降も「#MonthlySatDataNews」を続けていきますので、お楽しみに!