宙畑 Sorabatake

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スペースシフト社、シリーズB資金調達を完了!衛星データ利用の社会実装を加速するSateLab(サテラボ)も始動!

スペースシフトのシリーズBの追加資金調達完了と衛星データ事業共創プログラム「SateLab(サテラボ)」のオープンについて、その概要をまとめました。

5月28日、スペースシフトより、シリーズBの追加資金調達が完了し、衛星データ事業共創プログラム「SateLab(サテラボ)」を始動したと発表がありました。

(1)スペースシフトの事業戦略とシリーズB資金調達の用途

スペースシフト CSOの中村さんより、同社の戦略とシリーズBの資金調達状況について説明がありました。

スペースシフトでは、衛星ハードウェアを持たず、世界中の利用可能な衛星データとAIを活用することで、顧客の課題を解決する戦略を取っているそう。

具体的には、以下の図のように、高い情報解像度(縦軸)と高い観測頻度(横軸)を実現して、競合に対して優位性獲得を目指すと話しました。

今回のシリーズBの資金は、そのための技術である、RAWデータ解析とバーチャルコンステレーションのアルゴリズムを完成させる目的に利用されるとのことです。

宙畑メモ:バーチャルコンステレーションとは
複数の企業や機関が運用するそれぞれの人工衛星を、仮想的に一つの観測網とみなして利用すること。2020年代後半には、小型SAR衛星網が150~200機体制になり、世界中リアルタイムに観測可能になる見込み。

スペースシフト社の衛星データ特徴
(左下の赤枠が同社が実現を目指す領域)

また、今回の資金調達には計7社が出資しており、その内の1社であるスパークス・アセット・マネジメントは、2020年に発足させた宇宙フロンティアファンド(1号)を介して、スペースシフトに出資をしており、今回は初の追加投資となっているそうです。

スパークス・アセット・マネジメントの大貫さんは、今後の投資について、以下のように話しました。

「2 号ファンドは3 月の末に設立されておりまして、宇宙の投資にこだわった形で、今後も宇宙のエコシステム拡大、あるいは日本の宇宙産業が強くなるようにということで、投資を進めてまいりたいと思っております。」

(2)SateLab(サテラボ)とは

スペースシフトCEOの金本氏からは同社の新たな取り組みである衛星データ事業共創プログラム「SateLab(サテラボ)」の紹介がありました。

SateLabでは、顧客の問い合わせ窓口となったり、世界・日本でどういう形で衛星データが利用されているかを紹介したりと、衛星データの活用を考えるきっかけ作りの場として、様々なコンテンツを用意しているそう。

SateLabイメージ図

また、衛星データ利用を導入し、協業に至るまでのステップとして、以下の4点が説明されました。

1.ヒヤリング・要件確定
SateLabをきっかけに、各社の困りごとややりたいことをヒヤリング
それに合わせて、選択する衛星データや利用頻度、データ処理の流れなど、要件を確定する
2.共創パートナー登録
共創パートナーとして参画し、共同でニュースリリースやサイトで発信
(新たな顧客獲得の機会や企業価値の向上が期待できる)
3.ソリューション開発・実証
豊富な衛星データの中から、顧客のニーズに合うものを選択し、同社の持つ高性能な自動解析アルゴリズムを用いて実証を行う
4.社会実装・応用
実証したソリューションを導入し、事業へのフィードバックを繰り返す

衛星データ利用の現状について、金本さんは、以下のように述べました。

「(現時点では)世界的に衛星データを使って、革新的な何かができました。とか、業績が 10 倍になりました。とか、そういったものがまだまだ起きてない状況です。そういった状況の中で衛星のデータはどんどん増えていますし、我々が作るアルゴリズムを使うことで、衛星データを理解してなくても、自動的に自分が欲しい情報に変換されると、そういう時代が既に来ています。」

また、上記のような社会実装が進まない現状を踏まえ、この取り組みは、スペースシフトをはじめ、民間企業主導で進めることを掲げられていました。

SateLabを通して、一般企業が衛星データを気軽に利用できるようになることで、社会実装や実ビジネスの成長を加速させる狙いがあるそうです。既に、IT企業や製造業など様々な業界の会社(現在11社)とパートナーシップを結んでいると紹介もありました。

(3) Satelab実用例の紹介

以下、Satelabに参入している企業数社から実例の紹介内容です。

三井住友海上火災保険は、損害保険業務の効率化のために、災害状況の早期把握や浸水領域の把握に取り組んでいるそう。

一方で、衛星データやAI活用にあたっては、セキリティの確保やプライバシーの侵害など新しい課題が浮上しています。今後は、それらの社会に与えるリスクの評価・マネジメントに取組む予定とのことでした。

三井住友海上火災保険株式会社のSateLabでの取り組み

また、ジオテクノロジーズからは、地図サービスへの活用事例について紹介がありました。

地図作成の課題として、すぐに情報が古くなってしまう点が挙げられます。道路工事や建物の建設・取壊しなど、日々変化が起きているため、タイムリーに変化を捉える必要があります。

一方で、同社執行役員 マップディベロップメント統括の佐々木さんによると、地図データに必要な高解像度の衛星画像の課題について述べられていました。

「地図のメンテナンスをするときには、航空写真や衛星写真を使うんですけれども、非常に高解像度 20cm、30cmくらいの解像度のものでないと、なかなかメンテナンスに適していないんですが、そういった写真っていうのはまだ高価なんですね。コストが非常にかかって、そういった画像を日本全国揃えるとなると、本当にもう何億円あっても足りないという現状でございます。」

ジオテクノロジーズ社のSateLabでの取り組み

今回、無償のSARデータをスペースシフトのAI解析技術にかけることで、費用を抑えつつ、日本全体の変化点を観測できるようになったそうです。昨年度に実用化ができ、今年度からは実際のメンテナンス作業に活用する見込みとのことでした。

(4)質疑応答・終わりに

最後に、CEOの金本さんとCSOの中村さんを交えて、質疑応答がありました。

一例として、スペースシフトが掲げる衛星データ解析の強みについて説明がなされました。

RAWデータ解析は、衛星データの高解像度化につながる技術であり、同社では、SARを使った電波で地上の変化やものの変化を見る技術(SAR干渉解析)を開発しており、画像データそのものより高い識別能力を実現できるようになったそうです。

また、全世界で100機程度の衛星が利用可能な状況にあるので、それら全ての衛星データを利用する(バーチャルコンステレーション)ことで観測時間も長くできるということでした。

SAR衛星のデータ・原理については以下が参考になります。

また、衛星画像の分解能と回帰日数(観測頻度)に関する説明については、以下が参考になります。

これから衛星データの量が増え、これまでの技術では実現できなかった衛星利用が増えることが期待されます。今後、Satelabから生まれる新たな事例やスペースシフトの動向にも注目です。