光学機器のプロに訊く、ハイパースペクトルが変えた地上ビジネス事例と衛星搭載による新たな未来_PR
ハイパースペクトルカメラを含む光学機器全般を取り扱うケイエルブイ株式会社にハイパースペクトルカメラの地上利用の実例と人工衛星×ハイパースペクトルカメラの可能性をうかがいました。
私たちの目では分からない微妙な光の違いを見分けるハイパースペクトルカメラが私たちの生活に徐々に浸透し、新しいビジネスが生まれていることをご存知ですか?
現在、ハイパースペクトルカメラは、プラスチックや繊維のリサイクルのための分別や癌細胞の自動検知など、研究からビジネスレベルでの活用まで広く利用されています。
また、最近ではハイパースペクトルカメラがさらに小型化されてきたことで、ドローンに搭載され始めて活躍中。さらに、衛星にも搭載されての活用が期待されています。
今回、宙畑では、ハロゲンランプの輸入から始まり、今ではハイパースペクトルカメラを含む光学機器全般を取り扱うケイエルブイ株式会社(以下、KLV社)の村田さんと栗山さんに、同社の歴史やハイパースペクトルカメラの地上での活用事例と、新たに衛星事業参入を進めるうえでの宇宙分野への期待についてお話をうかがいました。
■KLV社のHP
https://www.klv.co.jp/
(1)証券会社の営業マンが気付いた、光学機器が拓く日本の未来
宙畑:はじめにKLV社の原点について、1979年 の会社設立に至った背景について教えてください。
村田:創設者で現相談役の川岸が会社を設立した当時、日本製のハロゲンランプはフィラメントの精度があまり良くなかったと聞いています。顕微鏡などの分光分析に使用するハロゲンランプは、フィラメントの位置や寸法など、その発光点が精密に作られている必要がありますが、その精度が低いと分光分析の結果のずれが発生してしまいます。
当時、川岸は証券会社の営業マンで、お客様から精度の高いハロゲンランプを取り寄せられないかというニーズを聞き、技術的に優れていた欧米諸国の海外製のハロゲンランプを購入するために単身でドイツにわたり、フィラメントの輸入販売の交渉をしたそうです。その後、海外製のハロゲンランプを国内メーカー様向けに輸入する商社として販売をはじめ、それ以降も需要に応じて、低圧水銀ランプや赤外線ランプ、放電管用電源などの光源を中心に、国内メーカー様のニーズに合う光学機器の取り扱い製品を拡大してきたというのがKLVの沿革になります。
宙畑:証券会社の営業マンとして顧客のニーズを把握できる立場にいらっしゃったということですね。
栗山:川岸は証券会社で敏腕営業マンだったと聞いています。その後、世の中のより大勢の人の役に立つような仕事がしたいと考えるようになり、目をつけたのがフィラメントだったそうです。
ちなみに、当時のドイツはベルリンの壁で東西に別れていた時代で、簡単に入国もできない状況だったそうです。川岸も大使館に並んで、ドイツ製のハロゲンランプを日本で売りたいと熱弁してなんとか入国許可をもらったという話も聞いています。
宙畑:創設者の強い思いと熱量があって、現在の事業に繋がっているんですね。これまでの歴史を振り返ると分光分析の技術やそれに対するお客様からのニーズはどのように変化していったのでしょうか。
村田:分光分析の原理は、昔と今とで技術は大きく変わっていません。変わったのはセンサーや光源の性能だと考えています。性能が上がったことで、当時と比べて分析できるものの範囲が広がりました。
ニーズとしては、赤外領域が見えるようになったことで成分の違いを見たいという需要は増えていますね。人間が目で見ている世界を可視領域といいますが、可視領域で見れるものは主には色の違いです。可視領域から少し上の1,000nm以降が赤外領域ですが、その領域では形や、色味がまったく一緒な薬が2つ並んでいても、それぞれの成分の違いを見分けることができます。このように赤外領域が撮影できるとなると、利活用の可能性はぐっと広がります。最近のトレンドとしては、成分の違いを見分ける用途として、プラスチックのリサイクル工場でプラスチックの選別などが増えていますね。
宙畑:光学機器の専門商社であるKLV社の強みはどこにあるのでしょうか?
村田:海外の先端技術を活用して日本をより良くしていきたいという思いを持った人たちが多く集まっていることだと思います。そのような光オタク達が集まり、毎日世界中の技術情報をチェックしています。光についての見識が深い社員による技術的なサポートは1つの強みだと考えております。
例えば、ハイパースペクトルカメラは、通常のカメラと違って、構成やセッティングなど細かな調整が必要になります。撮影した後も、複数の解析手法が世の中にあるため、適切な解析手法やソフトウェアを判断するのが難しいと、初めてのお客様から言われることが多くあります。弊社ではデモ機も多く持っているので装置の導入前後で、ユーザー目線で技術的なサポートができます。
栗山:顧客から「こういうことをしたい」「こんな機器が欲しい」という声を受け、そのようなご意見を頭に入れながら海外の展示会におもむき、この技術や商品だったらお客さんのニーズをかすりそうだなと感じたものを持ち帰って紹介もしています。私たちは顧客のニーズも随時キャッチアップしながら、海外の開発状況も把握しているので、両者をうまく繋げられるることが弊社の強みであり、価値だと考えています。
(2)すでにビジネスのフェーズへ。ハイパースペクトル分析は命を助け、産業発展にも寄与している!
宙畑:実際にハイパースペクトルカメラが活用されている分野と事例について詳しく教えていただけますか?
村田:特にニーズが広がっているのは工業分野で、具体的な用途としては品質管理がキーワードになっています。先ほどプラスチックの選別について触れたように、素材の選別や異物混入を徹底しなければならない工場で使われることが増えています。
例えば、プラスチックのリサイクルについては、ハイパースペクトルカメラの市場として、すでに研究段階は終えてビジネスが始まっているフェーズです。人間の目には全て透明なプラスチックに見えますが、スペクトルの吸収をみると、PET、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどはそれぞれの材質の分子構造の違いで光の吸収が変化し、違うものとして見分けることができます。具体的には以下の画像のようにハイパースペクトルを活用してリサイクルできるものとできないものを見分けています。
その他にも、EUでは繊維のリサイクルにも利用されています。例えば、洋服に使用されているコットンも、様々な色に染められた結果、見た目で繊維を見分けることが難しくなっていますが、それを赤外線領域で繊維の成分の違いを見分けることができます。
宙畑:繊維は、手触りで判別できるかもしれませんが、一つひとつを触って確認するような時間がない工場ラインで使用されているということですね。ほかにもハイパースペクトルカメラが活躍している分野はありますか?
村田:医療分野でも活躍しています。例えば、ハイパースペクトルカメラを使用して、皮膚がんの検査を行い、正常な皮膚と色素性皮膚病変がある皮膚の良性と悪性を見分けるといった事例があります。
また、脳腫瘍の例としては、手術中の腫瘍マーキングを目的に、リアルタイムの癌マップを得るためにハイパースペクトルカメラを使用するようなものも研究レベルで始められているような状況です。
栗山:ほかにも、防衛の分野では古くから活用されています。その一例としてはノルウェーの軍用射撃場で「残置爆薬」を検出した事例があります。射撃場で爆弾が飛び散っている土壌に対して、どこにどれぐらいの爆薬が飛散しているかをハイパースペクトルカメラで見分けるというものです。土の上に残っている爆薬のスペクトルをカメラで撮影して、爆薬の分類をピクセルレベルで検出することに成功しています。
宙畑:今後もハイパースペクトルカメラの地上での利活用は進むのでしょうか?
村田:少子高齢化の進行による日本の人手不足という社会情勢を踏まえると、ハイパースペクトルカメラのニーズは今後さらに高まると考えております。例えば、インフラの点検においても、ハイパースペクトルカメラを使うと定量的に劣化状況を把握することができます。これまではコンクリートの劣化状況を、熟練者が叩いて音を聞いて判断するような手法が主でしたが、今後は新入社員でもハイパースペクトルカメラの使い方を覚えれば診断ができる世界になるでしょう。
医療分野での活用事例でもそうですが、癌組織がどこにどれぐらい広がってるのか判別できることで、診断ミスを防止し、より効率的に手術ができるようになると考えております。ハイパースペクトルは今後の日本の社会問題を解決に導く鍵になると強く思っています。
(3)ハイパースペクトルは最初はいぶかしがられた? 技術進化と「できるかも」の循環
宙畑:ハイパースペクトルカメラの地上における活用事例は、宇宙・衛星分野での事例や利活用のフェーズが異なり、とても勉強になりました。KLV社の中で、ハイパースペクトルカメラの取り扱いを始めたきっかけは何かあるのでしょうか。
栗山:営業部長が、10年以上前からハイパースペクトルに目をつけていました。当時はハロゲンランプの販売を中心にしていたなかで、営業部長はこれからはハイパースペクトルの時代が来る、もっと先端技術をやっていかないと駄目だと社内で主張し続けていたと聞いています。
ハイパースペクトル技術に注目した背景は、当時の光学機器市場の状況と直結しています。具体的には、当時の産業や研究分野で、従来の分光器だけでは捉えられない情報を得る必要性が高まっていました。当初はバイオテクノロジーや医療業界を想定していましたが、徐々に環境モニタリング、農業、工業、インフラ、防衛など広い分野で高感度かつ詳細なデータが求められるようになっていきました。
宙畑:営業部長の方がその需要を見つけた当初は、近赤外線領域が見れれば足りるんじゃないかというようなご意見も多い環境ではなかったのでしょうか。そのなかで、本日のお話をうかがい、すでに地上ではハイパースペクトルカメラがなくてはならないという世界に変わったように感じました。
ハイパースペクトルカメラの事例については、昔から技術的にできることはわかっていたものが、これまでにうかがった光学技術と性能が上がってきたことで現実的になったものなのでしょうか。技術の進化と事例創出の経緯を教えてください。
村田:昔から用途がわかっていたというより、光学技術の進展と共に、利活用の研究も同時に進んでいたと理解しています。昔の光学機器はもっと大きく高価でした。今では性能の向上と合わせて小型化して価格も下がってきたこと、光学機器の使い方も良くなってきたことで研究が進み、同時に「こんなことにも使えるんじゃないか」というアイデアが同時進行的に生まれたと考えています。
宙畑:技術的な進化と事例の創出、それがミエル化されたことで新しい事例のアイデアが生まれるという良い循環が回っているのですね。
栗山:かつてのハイパースペクトルは一部の研究者たちしか使っていない、ニッチな分野でした。以前は3,000万円もするような大きい装置を背負って山に登ったなんて話も聞いたことがあります。最近では価格も500万円前後になってきたので、利用者の裾野が広がってきているように感じています。
宙畑:なぜ技術的に小型化することに成功し、価格も安価になってきているのでしょうか。
村田:分光器(分光素子)の小型化が一番大きいと思います。分光器は測定したい光を各波長に分け(分光)、検出器で受けることで強度を計測する装置をいいますが、その小型化によって装置全体も小型化できました。小型化されたことでドローンに搭載して、リモートセンシングに利用するケースが増えています。
(4)ドローンに普及した背景は小型化・DJIの普及・社会情勢
宙畑:ドローンへの搭載が進んだ背景と、利活用事例についても教えてください。
栗山:分光器の小型化、そしてDJIの普及がハイパースペクトルカメラのドローン搭載が進んだ背景にあると考えています。特にDJIの製品は、高性能なドローンでありながら、安価で使いやすいため、広く普及しました。日本でもDJIを利用しているお客様が非常に増えていますね。
これまで空から撮影するとなるとセスナ機を借りた航空撮影しかありませんでした。最近ではドローンに搭載可能なハイパースペクトルカメラも出てきており、選択の幅も広がっています。ドローンの普及に合わせて各メーカーも、ドローンに搭載可能なハイパースペクトルカメラを作り始めて小型化が進み、その部品やソフトを作る業者も増えています。弊社でもドローン搭載型ハイパースペクトルカメラの販売実績も多くなっています。
宙畑:地上での利用と同様にドローンが普及したことで「これができるのであれば、次はこっちもやりたい」というニーズも湧きやすくなっているように感じました。そのようにアイデアと技術が循環して、ニーズが高まってきているんですね。
栗山:そうですね。加えてドローンが普及した背景に、社会情勢もあるように考えています。利用事例としても農業における圃場の分析をひとが見回りに行かずともできるようになることといった少子高齢化による人手不足や、技術者や熟練者の不足などの社会情勢も相まって普及しているように思います。素人であっても、ハイパースペクトルカメラで撮ってもこのデータを使えば、誰もが解析できるニーズが高まっている背景もあります。
(5)エアコンが効いた部屋でデータ取得:ドローンよりもさらに広く、定期的な観測ニーズも!
宙畑:今後、衛星にもハイパースペクトルカメラが搭載されるニーズを見据えて、衛星用のハイパースペクトルカメラの取り扱いを決めたとうかがいました。衛星から取得できるハイパースペクトルカメラの画像を分析をしたい需要や用途はどこにあるのでしょうか。
栗山:ドローンよりも広い土地を対象にしたハイパースペクトルカメラによる観測の価値については、鉱山の探査があると考えております。特に、鉱山鉱物のデータ取得について、海外、特にアフリカでは大きな需要の1つになっています。
地球のどこに、どの様な鉱物があるかをマッピングしたい場合に、最近ではライダーを使用した3Dマッピングと、ハイパースペクトルカメラを組み合わせて、鉱物分布のマッピングを効率的に作成する需要があります。これはマルチスペクトルでは難しく、ハイパースペクトルを使わないとできない分析です。
宙畑:ドローンでも分析ができるようにも思いますが、衛星である価値はどこにあるのでしょうか。
村田:地質学分野など人間がまだ行けていないところの需要はあるでしょうね。
これまでのハイパースペクトルカメラは、三脚を用いた装置やドローンであっても現地まで人間が持って運ぶ必要がありました。カメラを衛星に搭載できれば、時間分解能の制約はあるものの、人間が現地に行くことなく冷房が効いたデスクから撮像を依頼して、定期的に衛星からデータを収集できる様になると思います。現地に直接出向かずともセンシングが可能である事が、地上でのリモートセンシングとの大きな違いであると認識しています。
また、地上でのリモートセンシングは、ドローンのバッテリーや飛行能力、データ容量から広大な範囲を一度に撮影することが難しい場面もありますが、、衛星からの撮影であれば広大な範囲を一度に撮影出来る点は大きな違いです。将来的な業務効率などの観点でも、衛星に搭載する需要があると考えており、期待をしている領域になります。
宙畑:人工衛星用のカメラを取り扱うことに対しての第一印象はどのようなものでしたか。
村田:最近では小型衛星の打ち上げハードルが低くなってきて、より小型の地球観測衛星が取得した衛星データの活用は一般的なものになってきていますよね。今後、地上での利用が拡大したようにハイパースペクトルカメラの衛星への搭載や利用機会も増えることを期待しています。
また、ハイパースペクトルカメラで得た情報を元に防災や事故を未然に防ぐ研究や動きも見られており、ハイパースペクトルカメラの普及が間接的であっても人命救助や世の中に役立つ事を期待しております。
(6)光オタク集団KLV社が見つけた、ハイパースペクトルカメラの強み:歪み補正◎、トレーサビリティ◎
宙畑:今後取り扱い予定のNEO社の人工衛星用ハイパースペクトルカメラ「HyperNOR」についてうかがう前に、これまでのNEO社との取り引きのきっかけや、Hyspexシリーズの取り扱いの経緯について教えてください。
村田:NEO社はノルウェー最大の独立研究機関で、取り引き開始のきっかけは、Hyspexシリーズが持つ高い技術的専門性と市場における影響力が背景にあります。
NEO社はすでに世界的に評価されるハイパースペクトルカメラのメーカーとして、優れた性能と信頼性で市場での地位を確立しています。特にドイツ航空宇宙センター(DLR)との協力関係を通じて、地球観測、環境保護、リモートセンシングの分野での実績を持っています。
宙畑:具体的にNEO社のハイパースペクトルカメラの技術的な強みについて教えていただけますか?
栗山:NEO社の強みは大きく2つです。「①スマイル現象とキーストーン現象を考慮した歪みの少ない画像であること」と「②トレーサビリティを用いた高いカメラの品質」です。
ひとつめの歪みが少なさについては、Hyspexシリーズではスマイル値とキーストーン値を用いて歪みが少なさを定量的に表されています。
スマイル現象とは、分光の過程で波長が空間に対して歪がむ現象を指します。異なる位置で波長の中心のズレが発生し、スペクトル解析の精度に影響を与える現象で、以下の図のように歪みが笑っているように見えることからスマイル現象と名付けられています。
また、一方のキーストーン現象は、同じく分光の過程で起こるものなのですが、以下の図のように空間的にずれが発生する現象です。
これらの値が良くないものは画像を形成した際に歪んでしまいますが、Hyspexシリーズではスマイル現象とキーストーン現象を定量的に評価することで、この歪みが抑えられ綺麗に画像化できる強みを持っています。この点は他社製品ではブラックボックス化している部分でもあり、スペック上の分解能と出力値が異なるものもありますが、NEO社は細かく歪みを調整しています。
また、NEO社のトレーサビリティとは、ハイパースペクトルカメラの課題である分光器の個体差を解決するものです。一般的には2台の同じカメラを購入するとそれぞれの個体で若干出力値が変わり、メーカーによって出力値の補正はオプションサービスになっていたり、補正できなかったりする場合もあります。
一方のHyspexシリーズではすべての商品でトレーサビリティがとれており、どのカメラでもロッド差や個体差がないことが特徴です。カメラを構成するすべてのセンサに対して、国際機関の規格を満たした機械を使用しており、どのハイパースペクトルカメラで撮っても同様の出力値となるよう品質が担保されています。
宙畑:地球観測衛星も小型の衛星を複数機打ち上げることで観測頻度を上げるというトレンドなので、その強みはありがたいですね。そのうえで、人工衛星用ハイパースペクトルカメラ「HyperNOR」について、取り扱いの背景とポイントを教えてください。
村田:これまでも長年取り引きをしてきたNEO社になりますが、今回ノルウェー宇宙センター及び欧州防衛庁(EDA)の支援を受けて衛星用ハイパースペクトルカメラを開発していることを聞きました。
「HyperNOR」は、50kg未満の小型衛星に適合したカメラである事と高い空間分解能を有している事をコンセプトに開発が進められています。その分解能は、短波赤外領域(SWIR範囲:1000〜2500nm)で30m、可視から近赤外領域(VNIR範囲:400〜1000nm)で10mとなっており、現在開発が進んでいるハイパースペクトルカメラを搭載した衛星のスペックとしては最高の精度です。
宙畑:編集部ではその分解能を実現する「ダブルスリット」という技術が気になっていました。具体的にどのような技術なのか教えてください。
村田:「HyperNOR」では、ラインスキャンという撮像方法になっており、同時刻で分光と情報を取得をするためラインごとの波長撮像について時間差がありません。そのうえで「ダブルスリット」によって1つのラインを2回撮像し、2つを合成することでより解像度の高い画像を生成することができると期待されています。新規製品をきっかけに新しい領域に着手しながら、光学機器に関する知見をさらに深めていきたいと思っております。
(7)まとめ
今回は衛星事業へ参入を目指すKLV社について紹介しました。インタビューの途中では、ホワイトボードも使いながらご説明いただき、ご担当者の知識量と専門性の高さに驚かされました。
宙畑では宇宙分野でのハイパースペクトルをこれまで多く取り上げてきましたが、今回は地上でのハイパースペクトルカメラの利活用の現状を学び、中長期的な宇宙業界でのハイパースペクトルセンサのポテンシャルを強く感じることができました。特に地上の世界ではすでにパイパースペクトルカメラが社会実装されており、工業や医療などで役に立つ事例が実際に生まれていることを知りました。
これからハイパースペクトルの時代がくると信じていたKLV社の当時の営業部長の方のように、ハイパースペクトルセンサが宇宙分野で役立ち、そこから新しい好事例が生まれる好循環が生まれることが期待されます。
また、KLV社のように様々な企業が宇宙業界に関心を持ち、実際に参画することでこれまでなかった新しいアイデアやコラボレーションが生まれることを願っています。
■KLV社へのお問い合わせはこちらから
https://www.klv.co.jp/contact/