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日本初!IDDKが衛星による「宇宙バイオ実験ユニット」の実証実験へ。独企業と共同で【宇宙ビジネスニュース】

【2024年2月24日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。

IDDKは2月21日、無人で自動作動する宇宙バイオ実験装置「Micro Bio Space LAB(MBS-LAB)」の試験ミッション「MBSLAB-ZERO」を地球低軌道(LEO)で実施することを発表しました。本ミッションは、ドイツの宇宙スタートアップATMOS Space Cargo(アトモス・スペースカーゴ 以下、ATMOS)と共同で行われ、MBS-LABをATMOSのカプセル「PHOENIX」に搭載し、2025年4月にSpaceXのFalcon 9ロケットで打ち上げられる予定です。

ATMOSは2021年に創業した企業です。今回のPHOENIXカプセルの打ち上げおよび運用はテスト飛行にあたり、地球を2周してから大気圏再突入を試みる計画です。民間企業による宇宙再突入は、欧州史上初となる見込みです。

Credit : ATMOS Space Cargo

PHOENIXカプセルの初期モデルは、最大100kgまで搭載可能ですが、将来的には、ロケットステージを含む数トンの大規模なペイロードも搭載させられるよう大型化を図ります。

IDDKは、同社による顕微観察技術「Micro Imaging Device(MID)」を搭載した実験ユニットを用い、宇宙環境での顕微観察を含む機能動作試験を行います。これにより、衛星を活用した宇宙バイオ実験の実現可能性を検証し、創薬やアンチエイジングなどライフサイエンス分野の研究を推進することを目指します。なお、この取り組みは2024年にCAMPFIREで実施されたクラウドファンディングの支援を受けているということです。

Credit : IDDK
Credit : IDDK

MBS-LABの中核技術であるMIDは、従来の顕微鏡のような対物レンズを必要とせず、軽量かつ省スペースで高精細なリアルタイム観察が可能です。宇宙ミッションでは機材の重量やサイズがコストに直結しますが、MIDの活用により、打ち上げコストを抑えながら効率的な研究を実施できます。無人の小型装置で微小重力下の細胞や小型生物の応答を観察できるため、宇宙環境でのライフサイエンス研究の新たな可能性を広げます。

今回の「MBSLAB-ZERO」ミッションでは、以下の3点を目的としています。

・オートメーション運用の実証
LEOの微小重力環境下で、電源供給やデータ管理を含む自動化システムによる連続的な顕微観察が可能であることを確認します。

・リアルタイムデータ取得の実証
MIDや各種センサーを用いた微小重力下でのデータ取得の精度を検証し、生物サンプルを活用した多様な研究への応用を目指します。

・ISS以外での宇宙バイオ実験の可能性を実証
人工衛星を利用した宇宙バイオ実験プラットフォームの構築可能性を示し、ISSに依存しない研究環境の選択肢を提供します。

ISSの運用終了が迫る中、IDDKは人工衛星を活用した新たな研究プラットフォームの確立を目指しています。MBS-LABは宇宙飛行士による操作を必要とせず、自動運用が可能なため、人的リソースの制約を受けません。また、様々な生物種に対応する観察ユニットや培養チャンバーなどのオプションを拡充し、研究者の自由な発想に応じた実験ができるよう設計されています。

さらにIDDKは、2026年の商用フライトミッションを計画しているということです。将来的には、研究機関や企業向けに低コストかつ高頻度で利用できる「軌道上実験サービス」の提供を目指し、創薬、再生医療、材料工学、食品生産など幅広い分野での宇宙環境を活用した研究支援を目指していきたい考えです。

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参考

2025年4月 日本初、人工衛星による地球低軌道での宇宙バイオ実験ユニットの実証実験へ

ATMOS To Become First Private Company in European History to Attempt Space Re-Entry.

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