宙畑 Sorabatake

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独スタートアップconstellrの熱赤外衛星の初画像が公開。注目は<東京・隅田川沿い>【宇宙ビジネスニュース】

【2025年3月31日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。

熱赤外センサを搭載した小型衛星のコンステレーション構築を目指すドイツ発のスタートアップconstellrは3月17日、同社のコンステレーションの1機目となる衛星「SkyBee-1」のファーストライト(初画像)を公開しました。

ファーストライトは夜間の東京の様子を捉えています。

Credit : constellr

夜間の東京を捉えた衛星画像。注目ポイントは?

constellrを取材すると、ファーストライトの撮影地が東京になったことについて、担当者は「最初の画像が東京であったことは非常に幸運でした。東京は動的で複雑な都市環境を表しており、私たちの熱観測技術を試すのに最適な場所です」と述べました。東京の広大なインフラ、様々な建材、そして自然要素が融合した景観は、熱の分布に多様性をもたらします。こうした複雑な温度のパターンは、SkyBee-1衛星の観測能力と精度を証明するものとなっているといいます。

ファーストライトのどこを注目して見るべきなのか、constellrに聞くと、「隅田川沿いの工業地帯」が挙がりました。このエリアは、断熱材や熱を反射する素材の使用により、周囲の地域に比べて夜間の温度が低く保たれています。また、太陽光パネルは夜間は冷たい状態になりますが、日が昇ると急速に温まります。このような詳細なデータは、より精密な都市計画に活用でき、冷却設備の設置や緑地の配置、エネルギー効率の高い建材の導入など、気候変動への対応力を高めるための戦略的な判断を可能するといいます。

constellr「日本との協力可能性を探りたい」

constellrは2020年に設立されたスタートアップです。2022年にISSでの技術実証を行い、2025年1月にSpaceXのライドシェアミッションTransporter-12で今回のファーストライトを撮影したSkyBee-1衛星を打ち上げました。今後は2025年に2機体制、2028年までに5機体制の衛星コンステレーションの構築を目指しています。

また、日本の宇宙産業との今後の連携や日本市場への期待についてconstellrに聞くと、以下のような回答がありました。

「私たち(constellr)は、日本を宇宙技術と熱環境解析の進化における重要な戦略的パートナーと考えています。日本の宇宙産業は革新の象徴であり、最近では世界初の木製の人工衛星『LignoSat』に非常に感銘を受けました。これは、日本の宇宙産業が持続可能性に対して強いコミットメントを持っていることを示しています。

constellrは、日本の産業関係者や政府機関との協力の可能性を探り、地域の課題に対する実践的なソリューションを提供することを目指しています。日本では、国民の約92%が都市部に集中しており、特に東京の23区は世界でも有数の高密度で開発が進んだ地域です。これにより、都市のヒートアイランド現象が発生しやすく、都市計画や公衆衛生に大きな課題をもたらしています。

私たちは、高解像度のデータを日本の専門知識と組み合わせることで、都市計画、インフラのモニタリング、環境管理において大きな進展を実現できると考えています。このような協力を通じて、地球観測分野における世界的なイノベーションを推進し、双方にとって有益なパートナーシップを築いていきたいと考えています。」

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参考

constellr Captures Tokyo’s Thermal Signature in Historic First Satellite Image