米政府、SLS・オリオン宇宙船・ゲートウェイの終了を提案。Landsat計画も再構築と予算削減の方針【宇宙ビジネスニュース】
【2025年5月5日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
アメリカの行政管理予算局(Office of Management and Budget、通称OMB)は5月2日、2026会計年度(2025年10月〜26年9月)の予算要求を発表しました。
NASAの予算は、2025年度の約249億ドルから、2026年度は約188億ドルへと、約24%(約61億ドル)の大幅な削減が提案されています。
アルテミス計画の中核であるSLS(スペース・ローンチ・システム)とオリオン宇宙船の開発をアルテミスIIIミッションをもって終了させる計画や月周回有人拠点「ゲートウェイ」の終了などが提案されています。

また、科学ミッションや地球観測などの分野においても大幅な予算削減が提案されました。気候監視のミッションについては優先度が低いと明言され、予算削減を求められているほか、2030年後半から2031年初頭にかけて打ち上げが予定されているLandsat Nextの計画についても言及されています。1972年から続く、オープンデータとして利用できた一定の品質の地球観測の維持が、政府の資金ではなく商業用途での拡大を見込んだ予算の出どころの再構築でまかなえるのか、注視したいポイントのひとつです。
一方、有人宇宙探査への投資が大幅に増加しており、特に月および火星への探査ミッションに重点が置かれています。
トランプ政権は、中国より先にアメリカの宇宙飛行士を再び月に送り、さらには火星に人類を送りこむという目標のもと、優先順位の低い研究開発を削減したい考えです。
例えば、SLSについては「SLSの1回の打ち上げ費用は40億ドルに上り、予算を140%超過しています。予算案では、SLSとオリオンの月探査ミッションを、よりコスト効率の高い商業システムに置き換えるプログラムを資金提供し、これにより、さらなる野心的なその後の月探査ミッションを支援する予定です」と記載されています。
なお、アメリカの予算は議会の審議を経て正式に決定します。過去には、前回のトランプ政権時代にあたる2018年会計年度の予算案で、NASAの教育プログラムの廃止と地球科学ミッションの終了が提案されましたが、議会によって否定され、予算が維持されたケースがあります。
NASAの予算をめぐる動きは今後も注視していく必要があります。