北緯68度の戦略拠点で衛星データ受信を大幅効率化|インフォステラがフィンランド提携【宇宙ビジネスニュース】
インフォステラとフィンランドの地上局サービスプロバイダーであるNorthBaseがMoUを締結し、北緯68度地上局をインフォステラのクラウドプラットフォーム「StellarStation」へ統合することで合意。北緯68度という高緯度の地上局が使用できるメリットについても簡単にまとめました。
2025年8月25日、インフォステラとフィンランドの地上局サービスプロバイダーであるNorthBaseがMoUを締結。NorthBaseの北緯68度地上局をインフォステラのクラウドプラットフォーム「StellarStation」へ統合することで合意しました。
高緯度地上局の運用性が向上することで、増え続ける地球観測衛星の観測データ受信効率の向上が期待されます。
インフォステラは周回衛星向けGSaaSプロバイダーです。クラウドベースの衛星地上セグメントサービスを提供する世界初のプロバイダーとして、2016年に設立されました。同社は地上局ネットワークを仮想化するクラウドプラットフォーム「StellarStation」を通じて、柔軟性と拡張性に優れた地上局ネットワークを提供しています。
宙畑メモ:”GSaaS”とは
Ground Segment as a Serviceの略称。従来は衛星事業者が自前で建設・運用していた地上局を、クラウドサービスのように必要な時間だけ借りられるサービス。初期投資を大幅に削減できる利点があります。
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NorthBaseはフィンランドの地上局サービスプロバイダーです。タンペレに本社を置く100%フィンランド資本の企業であり、2019年に設立されました。同社はフィンランド初の商用地上局を運用する企業として、ムオニオとタンペレの2拠点で事業を展開しています。
MoU締結により、高緯度 (北緯68度) に位置するムオニオのNorthBaseの地上局がインフォステラのネットワークに加わります。
地球観測衛星が撮影した画像データは、衛星から地上局へ電波で送信されることで初めて私たちが利用できるようになります。衛星は地球を周回しているため、地上局との通信は衛星が地上局の上空を通過する数分から十数分程度と限られた時間のみ可能です。衛星データを効率的に収集するには、衛星の軌道に沿って世界各地に地上局を配置し、通信機会を最大化することが不可欠です。
また、地球観測衛星は機数が増加し、性能も向上しています。そのため、地球観測衛星が取得するデータも年々増大しています。本観点でも、地上局との通信機会の確保は重要になります。
そのうえで、今回注目すべきポイントは、北緯68度という高緯度の地上局に関する契約だったということです。地球観測衛星は様々な軌道を航行しますが、地球観測衛星の多くは地球の南北極を通ります。

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そのため、南北極に近い地上局ほど通信機会が多くなり、効率的なデータのやり取りが可能です。北緯68度のNorthBaseの地上局は世界に存在する地上局の中で高緯度に位置します。
本提携により、インフォステラのユーザーは北欧の高緯度地上局にアクセス可能となり、地球観測衛星の運用効率をより向上させることができます。また、ヨーロッパにおける当社のプレゼンスを強化し、成長著しいヨーロッパ市場に向けてサービス提供の拡大を進める効果も見込まれています。
ちなみに、高緯度地上局の重要性は業界全体で認識されています。KSAT、SSC (Swedish Space Corporation)、AWS、Leaf Spaceなどの主要プレイヤーが高緯度地域での地上局ネットワーク拡充を積極的に進めています。RBC Signals、Atlas Space Operationsなども含め、高緯度エリアの争奪戦が激化しています。
NorthBase 会長のトミ・ラシア氏は、今回のMoU締結に対して次のように期待を表明しています。
「インフォステラとの提携は、当社にとってグローバルGSaaS機能の拡大に向けた重要な一歩です。両社のネットワークと専門性を融合することで、より機動的で信頼性の高い地上局サービスを、世界中の衛星運用者に提供できるようになります。」
インフォステラにとって、フィンランドという地理的に優位な立地での地上局アクセス権獲得は、欧州市場での競争力強化につながる重要な一手と言えるでしょう。
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