宙畑 Sorabatake

宇宙ビジネス

参入チャンス! 衛星を支える地上システムまとめ~構成、企業、法規制~

宇宙というと、ロケットや衛星など華やかな世界をイメージしがちですが、それらを支える地上側のビジネスをご紹介します。

「地上システム」
この言葉から、皆さんはどんなものを想像されるでしょうか。

宇宙ビジネス以外では、ほぼ全ての「システム」は地上にあるので、「”地上”システム」という言葉は不思議な印象を与えるかもしれません。

本記事では、宇宙にある衛星を運用するためになくてはならない縁の下の力持ちである「地上システム」について、掘り下げます。

(1)衛星を動かす、地上システム概要

地上システムという聞きなれない言葉を理解するために、まずは衛星やロケットを取り巻く全体の構成を理解しましょう

・軌道上システム
├ 無人システム:人工衛星、探査機、
└有人システム:ISSなど
・宇宙輸送システム
├ 打上げロケット
├ 宇宙往還機:HTVなど
└ 軌道間輸送機
・地上システム
├ 打上げシステム
├ 追跡管制システム
└ 運用システム
(宇宙工学入門、茂原正道、培風館、1994より)

宇宙開発と言って、よくイメージされるだろうロケットや衛星はそれぞれ、宇宙輸送システム、軌道上システムという部分に当たります。

今回ご紹介する地上システムはそれらを支える地球上にあるシステムを指します。

軌道上にある衛星や宇宙ステーションに、コマンドを送りミッションデータを入手するためのシステムです。

さらに、地上システムは、打ち上げシステム、追跡管制システム、運用システムに分けられます。

・打ち上げシステム

第9回:イプシロンロケットの運用と施設設備(1)全般
http://www.isas.ac.jp/j/column/epsilon/09.shtml

打ち上げシステムとは、ロケットを打ち上げるための地上側の設備のことで、種子島宇宙センターなどをイメージしていただくと良いでしょう。

ロケットが打ち上げられる前の調整や、打上げ後のロケットの軌跡を追いかけ、ロケットが正常に動作をしているか確認を行うシステムです。

・追跡管制システム (Tracking & control system)

追跡管制システムは人工衛星を打ち上げた後に、人工衛星の回る軌道を確認したり、衛星とのデータの送受信や監視制御を行っています。

https://track.sfo.jaxa.jp/project/index.html

小型衛星など精密な軌道決定を必要としない場合には、北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)から公開される軌道情報を使用し、このシステムは省略される場合もあります。

・運用システム ( Operation system)

運用システムは、文字通り衛星を運用するためのシステムのことで、日々衛星と通信を行い、今後衛星が行うミッションの内容を決めたり、衛星が撮影したデータをユーザーが使えるようにしたりします。

本記事では「運用システム」を主に紹介していきます。

運用システムは、衛星の基本的な部分であるバスの運用を行う「衛星管制システム」と、観測結果を受信する「データ受信システム」でそれぞれ分けて考えられます。

・衛星管制システム

Source : https://jpn.nec.com/techrep/journal/g11/n01/pdf/110114.pdf

衛星管制システムの構成例を上図に示します。
ここでの機能は大きく分けて3つに分けられます。

  • (1)衛星へコマンドを送信する

衛星をにミッションの指示を出すために、地上からアンテナを使って衛星と通信する必要があります。

衛星管制部で生成されたコマンドはデータ伝送ネットワークを通じて送受信局の中のコマンド処理部に送られ、電波に載せて送れるように変調され、アンテナから衛星へ送信されます。

  • (2)衛星からのテレメトリ(データ)を受信する

反対に、衛星からは、衛星の状態を示すデータが送られてきます。これをテレメトリと言います。テレメトリの中には、衛星の電圧や温度情報などが含まれています。

テレメトリはアンテナで受信されたのち、私たちが分かるような形に復調され、テレメトリ処理部に送られます。その後、データ伝送ネットワークを通じて、衛星管制部で、衛星の状態に問題がないか確認を行います。

  • (3)アンテナを制御する

コマンドを送信したり、テレメトリを受信したりする際に、アンテナを衛星の方向に向ける必要があります。

軌道に依りますが、衛星の中には地球の周りを秒速7km(時速25,000km)という非常に早い速度で回っている種類の衛星もあるため、正確に衛星の軌道に合わせてアンテナを動かします。

運用管制局でいつどの軌道の衛星と通信するか計画を策定し、衛星から来ているGPSデータなどを元に詳細な軌道決定を行います。軌道の詳細データはデータ伝送ネットワークを通じて送受信局の中の制御部へ送られ、アンテナを計算通りに動かします。

また、衛星管制システムについて、物理的に設置されている場所という意味では2つに分けられます。

地上局(Ground station)

全体の中で、アンテナからデータ伝送ネットワークにつながる部分までは、アンテナが設置されている場所に構築されることが多く、これを「地上局(ground station)」と呼びます(上図中では「送受信局」となっている部分)。

例えばJAXAでは、勝浦や臼田、また海外ではスウェーデンやチリなどに地上局を持っています。

JAXA追跡ネットワークセンターの拠点一覧

運用管制局(Operations Control Center)

データ伝送ネットワークから先にある、上図中では「運用管制局」となっている部分は、衛星運用者の拠点に設置される事が多いです。近年ではクラウド化が進んでいる部分でもあります。

JAXAでは、衛星運用拠点であるつくばに運用管制局の中枢機能があります。

データ受信システム

Source : https://jpn.nec.com/techrep/journal/g11/n01/pdf/110114.pdf

データ受信システムは基本的な流れは衛星管制システムと同じですが、衛星へコマンドを送信する機能は有していません。

また、受信するデータは衛星からのテレメトリではなく、ミッションを実施したことで生じたデータ、つまり、地球観測衛星であれば衛星画像です。

ミッションデータは、テレメトリと同様に復調されますが、その後さらに「前処理」が行われ、データ伝送ネットワークを通じ、ミッションデータが必要なユーザーへ配布されることになります。

衛星データの前処理については、詳しくは以下の記事でご紹介しています。

(2)地上システムのスペックを決める3要素

地上システムのスペックので押さえておきたいポイントとして以下の3つがあります。

・使用する周波数
・アンテナの設置場所
・地上局ネットワークのカバレッジ

本章では3要素のそれぞれについて解説します。

使用する周波数

もっとも重要な要素として、地上局と衛星間の通信をどの周波数で行っているかという点があります。

どの周波数を使用するかは目的別に利用できる周波数が無線通信規則によって定められており、利用者が自由に選べるわけではありません。衛星通信でよく用いられる周波数は以下の通りです。

帯域の名前 周波数 利用用途
UHF

(Ultra High Frequency)

300MHz~3000MHz アマチュア無線帯を用いる衛星(大学で作っている衛星など)
S 2GHz 衛星の追跡管制用

帯域幅に制限があり、大量のデータの伝送には向いていない

C 4~5GHz 商用の通信衛星で利用
X 7~9GHz 商用衛星でミッションデータのダウンロードで利用
Ku 10~15GHz 商用の通信衛星で利用
Ka 17~30GHz 商用の通信衛星で利用

商用衛星でミッションデータのダウンロードで利用

・必要周波数帯幅

電波の周波数帯域は高くなればなるほど、通信に使用できる帯域幅が広くなるため電波に載せられる情報量が多くなります。

Sバンドで伝送できる帯域幅は通常3MHz帯以下しか許容されておらず、大きなデータをダウンロードする周波数帯としてはあまり向いていません。

地上局の設置場所

次に重要な点は「地上局が地球上のどこに設置されているか」です。

衛星はその軌道によって、地球のどの地点をよく通るかが異なり、適切な地上局の位置も変わってきます。

地球低軌道(LEO)

上記動画のような、極軌道と呼ばれる北極と南極を通る軌道の場合、地球は自転しているので、衛星から見て低緯度地域はどんどん変わってしまいますが、北極と南極付近は毎周回通ります。

したがって、北極と南極付近に地上局をおけば、より多く衛星とコンタクトすることができます。

KSATの地上局の配置。世界中にあるが、北極圏や南極、南米の最南端にも地上局がある。 Credit : KSAT Source : https://www.ksat.no/services/ground-station-services/

KSATというノルウェーの地上局サービス会社は、世界中に地上局を持っていますが、その中でも北極圏にあるスバルバードや、南極にまで地上局を持っています。


国際宇宙ステーション(ISS)の軌道。どんなに周回しても北極は通らない。

一方で、極付近を通らない赤道面側に傾いているような軌道(軌道傾斜角が小さい軌道)を選択している衛星の場合、極は通らないので、低緯度地域や中緯度地域に地上局を用意する必要があります。

静止軌道(GEO)

静止軌道の場合、地球のある地点からみた時の衛星の場所は絶えず固定されているため、衛星からみた時の可視範囲内に地上局があれば常に通信していられるということになります。

地上局のカバレッジ

地上局の数も重要なポイントです。

静止軌道以外の衛星は常に地上局と通信していることはできません。軌道500kmの低軌道周回衛星の場合、地上局上空を通過する間に通信できる時間は10分ほどです。

衛星との通信頻度を高くしたり、データをたくさん衛星からダウンロードしてくるためには通信する地上局の数を増やす必要があります。

例えば、日本の衛星運用者が日本に1局しか地上局を持っていない場合、衛星が軌道を1周する間、衛星が地上と通信できるのは日本の上空にいる間だけですが、他にも地上局を持っていれば、コンタクトの回数を増やすことができます。

(3)地上システムの市場規模

Source : https://www.pwc.fr/fr/assets/files/pdf/2019/06/fr-pwc-main-trends-and-challenges-in-the-space-sector.pdf

2019年6月にpwcが出した「Main trends and challenges in the space sector」というレポートによると、本記事で扱う地上システムはMID STREAMに相当し、その金額は2016年時点で3兆2,000億円(1ドル=105円)と算出されています。

2019年12月に出ている別のレポートでは、地上局関係の設備の市場規模として、2024年までに12兆5,000億円(1ドル=105円)になると予測しています。

pwcのレポートとの整合性が分かりづらいですが、こちらはハードウェア関係が主ということで、上図の「Ground infrastructures and operations」の中の一部と、「Consumer equipment」が合算された値と見ることができるのではないかと考えられます。

市場の中心となっているのはアメリカ、イギリス、中国ですが、2019年から2024年までの間で最も成長率が高いのはアジア太平洋地域であると述べられています。

(4)地上システムに関する法規制

地上システムは技術的な問題だけでなく、法規制とも密接な関係があります。

国際周波数調整

小型衛星通信網の国際周波数調整手続きに関するマニュアル第 2 版 Source : https://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/freq/process/freqint/001.pdf

地上および宇宙空間で通信のために電波を使いますが、いずれもライセンスが必要となります。これは、各々が勝手に電波を使うと混線して使い物にならなくなってしまうためです。

どの周波数の電波を誰がどんな用途で利用するかは、国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)によって管理されており、日本では総務省が管轄しています。この調整手続きのことを「国際周波数調整」といいます。

小型衛星通信網の国際周波数調整手続きに関するマニュアル第 2 版 P18 Source : https://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/freq/process/freqint/001.pdf

上図で示すように、ITUへ事前資料を提出してから、他国との調整を行い、実際に周波数が使用開始できるようになるまでには最短でも9か月が必要となります。

また、利用を開始した後も、他国の新しい衛星計画で今度は自分たちが使用している周波数帯に影響がある可能性があるので、衛星の運用を終了するまで、周波数調整は継続して行っていくことになります。

さらに、これとは別に日本国内の無線局の免許申請も行う必要があります。これは先ほど説明した国際周波数調整が完了する、もしくは完了する見込みがある場合に免許が与えられるため、こちらの申請時間を考慮しておく必要があります。

詳しくは、総務省のホームページに掲載されていますので、興味のある方はご覧ください。

小型衛星通信網の国際周波数調整手続きに関するマニュアル第 2 版
https://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/freq/process/freqint/001.pdf

宙畑でも法律的な観点で詳しく解説しています。
3つのケースで考える衛星データビジネスと法実務~実践編~
(2) 2.電波法
https://sorabatake.jp/13002/#2%E9%9B%BB%E6%B3%A2%E6%B3%95

各国の国内法遵守の難しさ

このように、電波の利用に関しては国際的な取り決めと、国内で守るべき法規制の両方を確認し進めていく必要があります。

前章で説明した通り、地上局を世界中の様々な場所に持つことで衛星との通信時間は増え、多くのデータを得ることができますが、地上局を設置した国の数だけ、その国の国内法との調整が発生し、なかなか衛星運用企業1社での調整は困難となります。

実際に、衛星を数多く運用しているPlanet社と地上局サービスを展開するKSAT社がカナダでの周波数利用のライセンス取得をしようとした際は、2017-2019の2年を要したという事例があります。

(5)地上システムのバリューチェーンと国内外のプレーヤー

地上システムのバリューチェーン

そもそも地上システム自体が人工衛星に関するバリューチェーンの一角ではありますが、MARKET PERSPECTIVES OF GROUND SEGMENT AS A SERVICE, Elisa Carcaillona, Berylia Bancquartbによると、地上システムの中でもバリューチェーンに分けることができます。

Upstream/インフラ Midstream/運用 Downstream/データ利用
  地上局開発 地上局運用 データ蓄積
  データシステム開発 宇宙機運用 データ前処理
  地上ネットワーク 信号ダウンリンク データ解析サービス

Upstream/インフラ

Upstreamは必要な地上システムのハードウェアとソフトウェアを開発するパートです。

アンテナやモデムなどの地上局の開発やメンテナンス、また地上局や衛星自体のミッション計画を行うシステム、それらを繋ぎ合わせるネットワークの構築を含みます。

Midstream/運用

Midstreamでは、Upstreamで開発・メンテナンスしているシステムを動かし、衛星を運用するパートです。

地上局を制御し、衛星と通信を行うことで、衛星にコマンドを送ったり、衛星の内部の状態を表す信号(テレメトリ)や衛星が撮影したデータを受信したりします。

Downstream/データ利用

DownstreamはMidstreamで地上に持ってきたデータのそれ以降の部分を指します。

衛星から取得されたデータは、適切な場所に保管されます。衛星データはユーザーが使える形になるように前処置(エラー訂正やタイムスタンプの付与等)され、さらにデータ解析までサービスが提供される場合もあります。

地上システムの国内外のプレーヤー

宇宙ビジネスの中ではあまり目立たない存在である地上システムですが、日本を含めて世界中にプレーヤーが存在します。

地上局メーカー

Upstreamを担うのはいわゆる製造を専門とする企業です。人工衛星開発の歴史と同時に始まっている歴史のある分野ですが、近年は人工衛星側で起こっている小型化の流れに合わせて新しい企業も登場しています。

代表的な企業

  • ●Safran(旧Zodiac systems)

https://www.safran-electronics-defense.com/earth-observation-solutions
-フランスの企業
-50年以上の歴史を持ち、100機以上の衛星をサポート
-低軌道周回衛星・静止衛星
-取引実績:CNES(フランス宇宙機関)、ESA(欧州宇宙機関)など

地上局システム Credit : Safran
  • ●Kratos Defense & Security Solutions, Inc.

https://www.kratosdefense.com/systems-and-platforms/space-systems/turnkey-ground-station
-アメリカの企業
-30年以上、300ミッションの実績を持つ

Credit : kratos Source : https://www.kratosdefense.com/-/media/kisi/pdf/datasheet-turnkey-earth-stations.pdf

●Orbital systems

http://www.orbitalsystems.com/
-アメリカの企業
-タイやプエルトリコなどでの地上局の設置実績あり

Credit : Orbital systems Source : http://www.orbitalsystems.com/installation-galleries/university-of-puerto-rico-mayaguez/
  • ●三菱電機

http://www.mitsubishielectric.co.jp/society/space/control/
-日本の企業
-ひまわり8号・9号の地上設備や準天頂衛星の地上設備を担当

  •  ●NEC

https://jpn.nec.com/solution/space/index.html?
-日本の企業
-追跡管制、ミッション運用、観測データ提供、アンテナ、地上ネットワーク 等

  • ●ISIS

https://www.isispace.nl/products/ground-stations/
-地上局一式で1,000万円程度
-2006年創業の比較的新しいオランダの企業
-低軌道周回軌道で、アマチュア無線の周波数帯を利用する小型衛星向けの地上局

地上局一式で1,000万円程度 Credit : ISIS Source : https://www.isispace.nl/product/full-ground-station-kit-for-vhfuhfs-band/
  • ●GOM Space

https://gomspace.com/shop/subsystems/ground-systems/default.aspx
-2007年創業の比較的新しいデンマークの企業
-低軌道周回の小型衛星向けの地上局を提供

Credit : GOM Space Source : https://gomspace.com/shop/subsystems/ground-systems/nanocom-as2000.aspx

地上局オペレーター

1970-1980年代に衛星開発が始まったころ、地上局を運用していたのは、人工衛星を所有する各国の宇宙機関や、通信衛星を所有しサービスを行っている企業でした。

しかし、衛星運用を開始してみると、地上局は世界中に複数持ちネットワークとして運用できた方が、衛星との通信時間が増え、効率的な運用を行うことができることが分かって来ました。そこで、90年代には地上局の運用を専門とし、ネットワークを世界中に広げる企業(KSAT、SSC)が登場します。

また、近年では人工衛星の小型化や民間化、多くの機数を投入するコンステレーションの計画など、多様化する衛星運用のニーズに合わせて、より柔軟で安価に地上局サービスを提供する企業が現れています。

これらの企業のことを、ITビジネスでの潮流になぞらえてGround Segment as a Service、略してGSaaSと呼ぶ動きもあります。SaaSと同様に、利用者はインターネットを介して利用し、利用した分だけ支払う方式で、衛星を運用する企業からすると、地上局を整備するために必要な初期投資を抑えられる利点があります。

また、最近ではAWSに続いて2020年10月にMicrosoft Azureが地上システムへの参入することを発表するし、ITジャイアントの参入が相次いでいます。AWSやMicrosoftは自社でクラウドやデータセンターなどのアセットを有しているため、バリューチェーンのMidstream/運用だけでなく、Downstream/データ利用までを見据えています。

Microsoft Azure Spaceのコンセプト図 Source : https://youtu.be/0qBeNqkgtMY
Credit : MARKET PERSPECTIVES OF GROUND SEGMENT AS A SERVICE, Elisa Carcaillona, Berylia Bancquartb, IAC2020 Source : https://drive.google.com/drive/u/1/folders/17Ll821RDkpHLGwJFKJoopXW1C_cpT85L
  • ●KSAT(Kongsberg Satellite Services)

https://www.ksat.no/
-長い歴史を持つノルウェーの地上局サービス企業。
-北極圏を含む多くの地域に地上局を持つ。
-大型衛星向けに地上局をそのまま衛星運用企業に貸し出す「専有貸し」を行っていたが、近年の潮流に合わせて、小型衛星運用企業向けのKSAT Liteというサービスもリリース。

  • ●SSC(Swedish Space Corporation)

https://www.sscspace.com/
-長い歴史を持つスウェーデンの地上局サービス企業
-自社での地上局および他社の地上局を借りてサービスを提供。
-KSATと同様、近年の小型衛星の動きに合わせてSSC Infinityというサービスをリリース。

  • ●AWS Ground Station

https://aws.amazon.com/jp/ground-station/
-ITジャイアントが手がける地上局サービス
-AWSのデータセンターに衛星から取得したデータを保管する。
-取得したデータの前処理や解析などダウンストリームも手がける。

  • ●Leaf space

https://leaf.space/
-小型衛星向けにサービスを提供する2014年創業の比較的新しいイタリア企業
-利用者は制約条件を入力するだけで、Leaf Space側で衛星の最適な運用計画を策定してくれる。

  • ●インフォステラ

https://infostellar.net/infostellar-jp
-小型衛星向けにサービスを提供する2016年創業の比較的新しい日本企業
-自社では地上局を所有せず、衛星運用企業が所有する地上局の空き時間の時間貸しを行う。

  • ●RBC Signals

http://rbcsignals.com/
-2015年創業のアメリカ企業
-米空軍やエクアドル宇宙機関とMoUを締結するなど、公的機関との活動も活発
-AWSとも提携し、データストレージを提供

  • ●Atlas Space Operations

https://atlasground.com/
-2015年創業のアメリカ企業
-アメリカ政府と契約を締結
-AWSとも提携し、データストレージを提供

(6)地上システムの今後

衛星ビジネスの隆盛に伴い、活気づく地上局サービスですが、今後どのようになっていくのでしょうか。

最後にいくつかのポイントで考えて行きたいと思います。

周波数の調整と光通信技術の発展

本記事でも説明した通り、周波数を使用するためには世界中の関係者と調整を行う必要があります。

衛星の打ち上げ数が増えていく中、ますます周波数調整は難しくなっていくことが予想されます。

そんな中で期待されている技術が「光通信」です。

「光通信」は文字通り、光を使った通信方法です。ここまで話していた電波と異なり(厳密には光も電波の一種ではありますが)、光は直進性が高く混信しづらいこともあり、2020年11月時点では光を使った通信はITUの周波数調整の対象には入っていません。

さらに、周波数が電波の中でも高いため帯域幅も広くなり、通信できる量も多くなります。地上でも光回線が早いのと同じ仕組みですね。

一方で、光であるため天候が悪くなると通信することができないという欠点もあります。したがって、まずは衛星同士が宇宙空間で通信をすることが行われるのではないかと言われています。

通信衛星を数多く打上げることを計画しているSpaceXのStarlink計画でも衛星間での光を使った通信が予定されています。

地上と衛星間の通信を光で行うことを目指したデンバーの会社もあるようです。

日本ではJAXAの技術試験衛星9号機(ETS-9)にて、静止軌道と地上間で上り下り10Gbps級の光衛星通信を実証予定です。

ETS-9*衛星通信プロジェクト | NICT
https://www2.nict.go.jp/spacelab/pj_ets9.html

フラットパネルアンテナ

Credit : Kymeta

もう一つ鍵となる技術がフラットパネルアンテナです。

フラットパネルアンテナは、コンピューターで電磁的に制御でき、アンテナを駆動させる必要がないアンテナです。

海上や航空など物理的にアンテナを動かすのが難しい場所での利用に注目が集まっています。

地上局サービスで考えると、複数の衛星運用企業が入れ替わりで運用するので、切り替えが容易なフラットパネルが使われることも考えられます。

現時点では、まだ高額であり極域など過酷な環境での利用に向かないとする見立てもあり、今後の技術の発展に注目が集まります。

法規制は緩和の方向へ進むか

地上局ビジネスでは法規制との関係が切り離せない問題です。

現時点では、ライセンスの枠組みが世界的に共通化されていませんが、これが共通化されると地上システムの構築は、ずっと楽になると考えられます。

アメリカの連邦通信委員会(FCC)はライセンスの合理化や、様々なライセンスの提供方式を検討しています。

衛星の数は増加する中で制度が進化しなければ地上局の建設はさらに大きなハードルになることが考えられ、衛星運用企業が自社で用意することが困難になれば、GSaaSと呼ばれる専門企業の価値が相対的に上がる可能性があります。

(7) まとめ

本記事では、普段あまりスポットの当たることのない、縁の下の力持ちである「地上システム」について、その機能や市場規模、関連する法規制とバリューチェーンを担うプレーヤーについてご紹介しました。

宙畑でも数多くご紹介している通り、これから宇宙ビジネスでは衛星数が増えていくことは確実で、それに伴って、地上システムに関係するビジネスも伸びていくことは必至です。

宇宙空間に持って行くシステムである衛星やロケットと比較して、地上システムは宇宙以外の先端技術やITトレンドを取り入れることが容易であり、他業界からの参入による急成長が期待できる分野とも言えるでしょう。