宙畑 Sorabatake

Tellus

50日間に及ぶ「Tellus SPACE xData Fes. -Online Weeks 2020-」ついに閉幕。イベントを通して語られるTellus今後とは?

「Tellus SPACE xData Fes. -Online Weeks 2020-」の締めくくりは今までのコンテンツを振り返り、あらためて本事業のコンセプトや今後衛星データビジネスを生み出していくためにTellusとしてどのような役割を果たしていくのか。立ち上げ時から事業に関わる山崎と小笠原に、BusinessInsider Japanの伊藤編集長が聞いていきます。

記事作成時から、Tellusからデータを検索・取得するAPIが変更になっております。該当箇所のコードについては、以下のリンクをご参照ください。
https://www.tellusxdp.com/ja/howtouse/access/traveler_api_20220310_
firstpart.html

2022年8月31日以降、Tellus OSでのデータの閲覧方法など使い方が一部変更になっております。新しいTellus OSの基本操作は以下のリンクをご参照ください。
https://www.tellusxdp.com/ja/howtouse/tellus_os/start_tellus_os.html

9月1日に最終回を迎えた「Tellus SPACE xData Fes. -Online Weeks 2020-」。
50日間に及び開催されてきたイベントの最後の締めくくりは「Space Biz For SDGs×Tellus SDGsに対して宇宙産業ができることとは」と「Tellus SPACE xData Fes.-Online Weeks 2020-を受けて、これからのTellus」のトークセッション2本立てでした。

今回は、2本目の「Tellus SPACE xData Fes.-Online Weeks 2020-を受けて、これからのTellus」の内容を紹介していきます。

ファシリテーターは7月16日の「2020年宇宙産業の今 -課題と役割についてステークホルダが語る-」でも進行を務めたBusinessInsider Japanの伊藤編集長、登壇者はTellusの事業を立ち上げから関わる以下の2名です。

・さくらインターネット株式会社 事業開発本部 クロスデータ事業部 山崎 秀人
・さくらインターネット株式会社 フェロー 小笠原 治

【本イベントのポイント】
・期間中のYouTubeの再生回数は延べ15,000回以上
・日本だけじゃなくアジア圏でビジネスが生まれやすくするために、知識がなくても使えるプラットフォームを目指す
・大きなスケールで「できそう」と思わせること、小さなスケールでも「これならできる」とすぐにできるように環境を整えることの両方が必要
・どこかの企業が成功することのインフラにTellusがなることが理想

イベントのアーカイブ動画はこちらから視聴することが可能です。

1.あらためて「Tellus SPACE xData Fes. -Online Weeks 2020-」とは?

司会:それでは、「Tellus SPACE xData Fes. -Online Weeks 2020-を受けて、これからのTellus」をお送りしてまいります。よろしくお願いいたします。

まず初めに、今まで開催してきた「Tellus SPACE xData Fes.」について、簡単にご紹介をさせていただければと思っております。

「Tellus SPACE xData Fes. -Online Weeks 2020-」は、7月14日から9月1日までのちょうど50日間20コンテンツのイベントを開催しました。

司会2019年の2月に開催したTellusローンチのイベントでは250名のご参加をいただいたのですが、今回はオンラインで20コンテンツのイベントを行うということで約2,200名の方にライブで視聴をしていただきました。

また会期中の総視聴回数に関しましては、アーカイブデータも公開しておりますので、イベント開催後から9月1日までの合計値になるのですが、15,000回以上観ていただいてTellusをさまざまな方に知っていただけたのではないかなと思っております。

併せて、このようなセミナーコンテンツだけではなくて、ワークショップをやったりであるとか、私どものオウンドメディアの「宙畑」のコンテンツとしてTellusを学ぶような講座を7週連続で行わせていただいたりであるとか、さまざまなコンテンツを行わせていただきました。

このイベントの様子はYouTubeチャンネルにて、各コンテンツを配信中ですので、是非チャンネル登録の上ご覧いただければと思います。
今のところアーカイブ動画は2021年3月31日まで公開する予定をしております。

2.Tellusプロジェクトへの想い

司会:ここからはBusiness Insiderの伊藤編集長をファシリテーターとしてお迎えいたしまして、さくらインターネットから小笠原、山崎、この3名でスタートさせていただきたいとに思います。よろしくお願いいたします。

伊藤:よろしくお願いいたします。50日やり続けるってかなり大変だったと思うんですけど、このOnline Weeksイベントの最終セッションをお声がけいただいて、ファシリテートさせていただくことになりました。よろしくお願いいたします。

Tellusは実はまあまあ最初のほうから小笠原さんから話をお聞きしていて、ここまで来たなとわりと感慨深い想いがあって、そこも含めて掘り下げをしたいなと思って今日はいろいろ準備してきましたので、よろしくお願いいたします。

伊藤:今回、私以外の小笠原さん、山崎さんは、Tellusの仕掛人である事業責任者ポジションの方々なので、Tellusの中の人としてはこれ以上適任の方はいらっしゃらないと思います。
ということで、そもそも宇宙データのプラットフォームというのをなんで始めたのか?というところを聞きたいなと思っています。

まず「Tellusプロジェクトへの想いとは?」というところで、特に是非お聞きしたいなと思ったのは山崎さんですね。

山崎さんは、経歴が面白く、もともとはJAXAにいらっしゃって経済産業省に出向しています。ご存じの方がいらっしゃるかわからないんですけど、普通に考えたらJAXAから省庁のほうに行くと考えたら文科省に行くはずなんですよね。

そこを経産省のほうに出向して、そこからさらにさくらインターネットにまで来てしまうという、かなり想いが強くないとやらないような動き方をされているなと思って。
山崎さん、そもそもなんでTellusをやってみようという話になったのかを含めて経緯を教えていただけますか?

宙畑メモ
日本の宇宙開発事業は、内閣府の宇宙開発戦略本部が制定する宇宙基本計画を基にJAXAが実施組織として中心に進めています。もともとは内閣府と文部科学省がJAXAを所掌していましたが、2015年度以降、内閣府と文部科学省のほか、総務省、経済産業省の共管法人となっています。参考:宇宙開発戦略推進事務局

山崎:もともと、経産省に行く前はJAXAの中でも宇宙科学研究所という、まさに宇宙科学をやっている部署にいまして、正直、経産省にポストがあるというのは当時知りませんでしたが、辞令で経産省に「行ってきなさい」ということになりお世話になることになりました。

宙畑メモ
JAXAは、2003年に宇宙科学研究所、航空宇宙技術研究所、宇宙開発事業団の3機関が統合し日本の宇宙事業の中心組織となっています。
参考:JAXAの沿革

経産省って文科省に比べると予算規模も人も少ないので、衛星・ロケットを全部ゼロから作っていくということはコストも掛かるし時間もかかるので、衛星データとか今まで溜まっているものを経産省のイニシアティブでクラウドコンピューティング上に開放したら新しいビジネスが起きるんじゃないかと思いました。

参入障壁が下がりますし、眠っているデータを生かすことで新しいバリューを生み出せるんじゃないかというような議論を経産省の中ではもちろん、あとは小笠原さんなど、いろいろな方々と出会ってお話しして政策として立ち上がりました。

立ち上がったところで経済産業省での任期は終わったんですけれども、JAXAに戻ってからも、縁があってさくらインターネットでのチャンスをいただいたので、今やらせていただいます。

伊藤:小笠原さんは、衛星データを使ってプラットフォームを作りませんか?という話の最初のほうからもう絡んでいらっしゃったんですか?

小笠原:そうですね。実際にはこの事業自体は公募事業なので、公募するというところから参加させてもらっています。

当時、宇宙産業というのが今ちょうど変わるタイミングなんだな、そういう潮目なんだな、それの軸になる1つがいわゆるデータをどう使っていくかであることを知りました。

地球全体で見たら40兆円ぐらい市場規模があって、日本は1.2兆円しかなくて、このうち8千億ぐらいが国の予算になっていてといったようにいろいろ調べていくうちに、日本に宇宙産業従事者って、9千人から1万人ぐらいらしいとか、宇宙産業の中で、ロケットの打ち上げ事業って実は6%ぐらいしかなかったんだとか分かってきて「あれ?これはすごいチャンスなんじゃないの?」というのがすごくシンプルに感じられ、これは他の人がやったら悔しいなみたいな感じで始まりました。

伊藤:そこがスタートだったんですね。
でも私が最初にお聞きしたときって「実はこういうこと始めようと思っているんだけど」「えっ!?衛星データとかどうやって使うんですか?」みたいな感じだったんですけど、こういうことだったんだなって今になってわかりました。

小笠原:「衛星データってどこで手に入るの?」っていう世界でしたもんね、あの当時。

伊藤:手に入ったとしても「何に使えるんですか?」というところで、とても民間の話だとは思えなかったですし、めちゃめちゃ高いものであって、そんなに気軽に使うもんじゃないよね、というところが当たり前の認識だったんです。

今はTellus Ver.2.0になって、アカウントも当然作って試しているんですけど、けっこう普通にメディアでも使えそうだなと思います。

やっぱりブラウザベースでとりあえずまず使うということができるというところが、すごく身近になったなという感じがとてもしますね。

3.日本で衛星データプラットフォーム事業を行う強みとは?

伊藤:実はちょうどこのイベントの開催と同じ日にBusiness Insider JapanでTellusさんの記事を公開していて、海外でのビジネス事例ってこういうものがあるというところとか、けっこう突っ込んでこのOnline Weeksの中でも何度かご登壇されていましたPwCの永金さんにお話をお聞きしたりしていました。

利用、無料。日本版衛星データプラットフォーム「Tellus」がすごい理由…“宇宙の視点”でビジネスはこう変わる

伊藤:そこでお聞きしたいんですけど、成功事例としてヨーロッパがやっているコペルニクスというのがあるじゃないですか。

衛星データプラットフォームって、地球上には他にもあるのに、そこであえて日本版を始める意味っていうのはどこにあるのでしょうか。

また、そのうえで、日本ならではの強みってどこにあるのか。例えばデータの豊富さとかではおそらくないだろうなと思うんですけどいかがでしょうか。

アジアの衛星データプラットフォームになり得るTellus

山崎:技術の面ではL-バンド SARという衛星搭載センサーで日本が伝統的に取り溜めているデータは他の国にはないのでこの蓄積したデータというのがあるというところがありますね。

宙畑メモ
日本は、1992年の地球資源衛星「ふよう1号」(JERS-1)以降、陸域観測技術衛星「だいち」、そして「だいち2号」とL-バンド SARのセンサーを搭載した人工衛星を打ち上げ観測データを提供しています。
海外の衛星ではLバンドではなく、XバンドやCバンドといった異なる波長帯で観測する衛星を運用していますが、地表面の観測に適しているLバンドの波長帯で長年観測データを撮りためているのは日本のみとなっています。

山崎:あと、日本で打ち上げている衛星は、日本の上空を有利に撮る軌道いるので、同時にアジア・太平洋地域がよく撮れているんですよね。
なので、ヨーロッパだとやっぱりヨーロッパ中心ですし、北米だとやっぱりアメリカを中心に撮っているので、データの溜まり方というのは、やっぱり各国で変わってくるというのもあります。

ただ、ユーザーの立場に立つと、どのプラットフォームにログインしても全部データが使えたら素晴らしいと思うんですよね。

じゃあ何が違いがあるかと言うと、やっぱり日本人だと日本語のインターフェースであるほうがいいし、わざわざヨーロッパでフランス語のインターフェースに入ろうというのはなかなかいないと思います。
でも暖簾くぐったらみんな混浴だった。じゃないですけど、みんな使えればいいなとやっぱり思いますし、宇宙ってそれができる領域のはずです。

宇宙開発はパートナーシップでやっているので、ハブ化はするでしょうけど、競合というよりもお互いの価値を高められるような目標に掲げると国際協力できていいんじゃないかなと思っています。

小笠原:今言われたように国際協力ができるだけのデータが日本は撮れている、撮っていこうとしている。パートナーシップというフェアな関係になるだけのデータ資源を今までの宇宙産業として作ってこられていた。

これが今みたいにインターネットが当たり前に使われるようになって、ネット上にデータが乗ることで、ゲームチェンジしそうとすごく感じますし、日本の強みというよりは宇宙産業全体の強みなのかもしれないなと思います。あとやっぱり僕はデータの地政学みたいなのがすごく気になっています。

伊藤:GDPR「General Data Protection Regulation(一般データ保護規則)」みたいな話ですか?

小笠原:そうですね。やっぱりデータを持っているもの同士がフェアにそれを使える環境をそれぞれプラットフォームとして作り、手を結んでいくということが宇宙はできそうだなと思います。

世界は大きく欧州、米国、中国、ロシア、アジア、インド、アフリカみたいな分類があるとおもいますが、日本は比較的アジアに対して衛星データという文脈でアプローチできるかなというふうにも思っているので、日本の強みというよりはアジアの強みを一緒に作っていけるんじゃないのかなというのも最初に想像しました。

伊藤アジアの衛星データがあるプラットフォームになるという期待感ですね。

小笠原:そこに向かいたいなという気持ちになりましたね。

それこそアジアでまだ一次産業に頼っている国があったとしたときに、日本で日本の衛星データを日本のクラウドを使いながら一次産業に対して取ったアプローチが、アジアのとある地域で同じことをを活かした事業になる、ということが起こると面白いなと思いますね。

まずリリースして使って、使ってもらいながら改善していくプラットフォーム

伊藤:今、Tellusを始められて3年目をやられているわけですけど、やっぱり民間がやることの意味ってこういうことかなと思ったのは、2年目にTellus OSのバージョンアップもしていて、ユーザーインターフェースの改善もすぐに行うっていうのをやっているじゃないですか。

1番いい状態でオープンするための設計をやっていると、改善をするところが残っているとなかなかオープンできないという状態になっちゃうと思うんですね。

だからまずオープンして、途中でも作りながらとにかく走ろうというところは、すごくインターネットっぽいというか、Webっぽいなと思いました。このへんはけっこう山崎さんも小笠原さんも、そうやって作って行こうという前提で始めているんですかね。

小笠原:最初からそうやってスタートはしていますね。
僕はどっちかと言うとどっぷりWeb側のほうの人間ですが、さくらインターネットもインターネットとは言えインフラをやっている会社じゃないですか。
なので普通で言うと途中でも走りながら作っていこうとするのはあり得ない側の会社です。

でもWebとかサービスとかを提供する側からすると、毎日裏側で改善していくというのは当たり前なので、そこらへんは感覚の違いとかはありつつですけど、関わってくれている人たちは本当に全力でやってくれていると感じながらやっていますね。

伊藤:山崎さんはJAXAや経産省の経歴から、さくらインターネットに来て、このサービスの作り方みたいなところの手応えってどんな感じですか?

山崎:Webのやり方ってJAXAのような航空宇宙業界ではないんですよね。
宇宙に飛ばしちゃうともう修理できないので、どっちかというと一つ一つのフェーズごとにアプローチして駄目だったらもう一回戻るというやり方をやっているんで、時間が掛かるんですね。

今までの経験を通じて今、両方の面を学べたので、いいとこ取りをしようかなと個人的には思っているので、すごく楽しいです。
あともう1つ思うのは、宇宙寄りでデータを語ると全ての研究者とかの要望に合わせなきゃいけないという要求がどうしてもあるので、インターフェースがめちゃくちゃ複雑になるんですよね。

Tellusってそういうところをいい意味で捨てているというか、1番使いやすいシンプルなフォーマットでデータを提供できているのも民間でやれていることのいい面なんじゃないかとは思っています。

伊藤:これからのプラットフォームを本気で考えていくと、すごく勉強しないと使い始められないというところは絶対に脱却しないと駄目だと思います。

最初の取っかかりの部分って簡単じゃないとさわってもらうこともできない。
そういう意味ではこのイベント期間中、宙畑コンテンツでやっていた「7日でマスター!基礎から学ぶ衛星データ講座」というのをやっていたじゃないですか。

あれを見て、めちゃめちゃわかりやすくて、そうやって使うといいのかというのが動画で観ていてわかって、あらためてTellusを使ってみると、「なるほどね、こういうふうに使うのね」と。あの簡単さ加減というのは、使ってもらうのためには大事なことだなと思っていました。

4.今後衛星データビジネスを生み出していくために何が必要か?

伊藤:では、データの話になったので次に移りたいと思います。すごく難しくて、でも大事なテーマである「衛星データビジネスを生み出していくために必要なのは何か」日本にスタートアップが使う衛星データビジネスってまだほとんどない状況だと思います。

そんな中、Ridge-iさん、akippaさんとさくらインターネットさんで実証の発表をされていましたけど、ああいうものが衛星データビジネスが新しくできるための段階があるうちの何段階目かだと思うんですよね。

衛星データの実用化を目指し、衛星データとAI画像認証を活用した駐車場用スペースの自動検出プログラムを共同研究開発 〜駐車場シェアリングサービスで活用へ〜

伊藤:このような事例を増やしていくって、言うのは簡単ですが、裾野をすごく広げないといけない。
そのときに何が必要なのか。そこのビジョン観は是非お聞きしたいなと思っています。山崎さん、このあたりどうでしょう。

企業が抱える課題を解決する方法の一つとしての衛星データ

山崎:akippaとRidge-iさんとのプロジェクトをやっていくうえで個人的に気を付けていることは、衛星データビジネスというアプローチはあまりしないようにしているというところです。

どちらかと言うと今あるビジネスに宇宙のデータを使ってもらうという発想なので、今のビジネスで困っている人たちに対して、どちらかと言うと困っていることを聞きたいといつも思っています。

というのも、我々は宇宙開発をしていましたがビジネスってなかなかできなかったと思っています。
ビジネスに利用するのに宇宙のデータってやっぱりみんな難しいと思いますし、敷居が高いと思っている人が多い。「ビジネスに利用できるので使ってください」という感じでやらないとたぶん使ってもらえないだろうと思っていました。

なのでいろいろな会社さんとミーティングするときって衛星データの特性の話はほとんどしないで打合せをしました。

例えばakippaさんでしたら営業のコストの面で、けっこう地道に足で稼いでいるということだったので、それだったら衛星でエリア全部スキャンして、機械学習をさせて、自動的に営業先となる駐車場の候補が出てくるようなものを作ったらコスト削減になりませんかね?という話とするという感じでした。

そういう課題を聞いて衛星データで解決できるところを探すというのを大事にしていますね。

アイディアを出していいという雰囲気づくり

伊藤:そこの課題解決のアイディアをいかに思いつくかのところって、たぶんプラットフォームを使った経験だとか、衛星データで遊んだことがあるという人が多い社会になれば、もうちょっと容易にできると思うんですけど、今はまだ何に応用できそうかっていうところが、まだこれからと思います。

衛星データに対する知識を持っている人がほとんどいないという状態なんで、ここをどう広げるかっていうところがポイントになってきますかね。小笠原さんはどう思われますか?

小笠原:ちょっと飛んじゃうかもしれないですけど、例えばアフェリエイトってデータありきで始まった商売じゃないんですよね。
「きっとこういうデータ取れるよね」という、なんとなくデータの存在を知っていてビジネスアイディアを出せる人たちというのを、いかに生み出していくかという、衛星データビジネスを生み出していくのも、ビジネスを生む1つ手前にアイディアを出せる人を増やすのが必要だなと思っています。

なのでさっきの伊藤さんが言ってくれていた、まず触れる、まず知れる、というところは絶対的に力を入れていきたいと思っています。

解析コードが書けなければ、よりもっと手前のノーコードで触れる必要もあるかもしれません。

例えばAdaloとかZapierとかAPPSHEETとかから、Tellusのデータが選べれば、アイディアが思いつく人っていっぱい出てくると思うんですよね。
思いついてもいいという雰囲気づくりも、大事だと思っています。

やっていいんだという雰囲気づくりみたいなところって「実際にどんなデータがある」「どんなシステムがある」と同じく大事なことだと思っているので、今回のオンラインイベントなんかも、「コロナで延期になったんだからオンラインで50日間やります」となりましたが、この期間中に衛星データの情報に触れてくれる人がもし10人でもいたんだとしたら、その10人は10年後、衛星に絡めた、データに絡めた、宇宙に絡めた、何かの事業で成功しているかもしれない。
だから僕にとって今大事なのは雰囲気づくりだったりします。

アイディアを生み出す人を増やすために課題を解決人材も必要

伊藤:必要とされている、やらなきゃいけないことってすごくたくさんあって、雰囲気もそうですよね。

僕、取材側として見ていると「何ができますか?」のところを形にしていくところがすごく伝えることが必要だなと思っていて、akippaさんのこの話って、「そういう使い方ができるんだ」って思ったんですよ。
そもそもakippaさんとRidge-iさんをつなげたのは山崎さんなんですか?

山崎:もともとakippaさんには本件とは別にお知り合いで、Ridge-iさんはもともと宇宙データを使ったAI事業をやってくれていたので、「こういう企画をやりたいんだけど」ということでご相談をして、ご了解をいただいたという感じですね。

伊藤:衛星のこともよくわかっていて、akippaさんみたいに衛星データを使ったら課題を解決できるんじゃないかといった事業者のほうも知っているというような、山崎さんみたいな能力のある方がいれば、こういう事例って増やせるのかもししれない。
ですが、形にしていくってけっこうパワーがいるというか、教育からやっていくという方向もあるとは思うんですけど、まず事例の数を増やしていかなきゃいけないと考えると、媒介になる人がすごくいるなと思うんですね。

「この課題だったら解決できるんじゃないか」って探していくというところ自体がかなり難しいと思っていて、ここの発掘というのは何かやりようがあるんですかね。

小笠原さんとか、投資家としても活動されていますけど、課題の見つけ方はどう思われますか?

小笠原課題を見つける人を増やす一方で両輪として必要なのが課題を解決できる人の存在です。
Tellusで行っていることでいうとコンテストとかでたくさん解決できそうな人が集まっていただけています。

開催中の第4回コンテストでは、9月1日現在で400人以上参加いただいています。ある問いに対してチャレンジする人はどんどん今リーチできてきているのかなと思っています。

The 4th Tellus Satellite Challenge:海岸線の抽出

小笠原:いわゆる機械学習を駆使して、ある問いにたいして挑んでくれる人たち。この人たちがいるってわかると、問いを発することもしやすくなると思うんですよね。

Ridge-iさんにあたる解決側も参加していただいていますし、課題がありそうなところはいっぱいあると思うので、課題を持つ側に話を聞きにいって提案できる人というのはいると思っています。

そういう人たちが、問いを聞き出して、解決側に投げられるという仕組みができれば、山崎さんまんまじゃなくても、業界を少し知っているだけでも事例を生み出していくことはできていくんじゃないかなと期待しています。

伊藤:コンテストのテーマの発掘って、山崎さんはどれぐらい関わって考えられているんですか?

山崎:今は官公庁系が多いのですが、いろいろな方々に技術課題を聞いて、それが今までのアプローチだとなかなか時間とか掛かっているんだったら、コンテストでやってみようというのが多いですね。

伊藤:それはTellusチームでそういう課題を聞いて回る人たちがいるんですか?

山崎:コンテストに関しては事業開発のグループがいるので、そちらがリーダーシップを取ってくれていますね。

伊藤:こういうのを盛り上げていくのって、最初のスタートの何回かはすごく大事かと思います。
こういう企業のこういう課題を解決できたよっていう事例がいくつか溜まってくると、「うちもいけるかも」とかってなってくるものなのかなと。

山崎:宇宙ビジネスに参加しようと思う方って、「知識がないといけない」という方がやっぱり多いので、そういうのはTellusで取り除きたいなと思っています。

イノベーションが起きる1つの要素として衛星データが使われるところが、僕は喜びなので、もうちょっと本当にカジュアルに使ってもらえるようになりたいと思っています。

小笠原:そのカジュアルなのと同時に、「ちゃんと国益を生もう」という軸でも頑張れと言ってもらっている状態だと思っています。

開催中のコンテストでは、海岸線の抽出を、LバンドSARのデータを使って挑戦してもらっています。

衛星データだけで海岸線の抽出ができたときに、「どんなビジネスがありえるか」とか。ビジネスのネタにすぐならなくても、「どんなことができたらいいですかね」という、その両方のアプローチをやっていくと、akippaさんとRidge-iさんのような実証例というのは、確実に増やせられると思っています。

コンテストのほうはちょっと無理筋でもいいと思うんですよ。
そこにみんながチャレンジすると。去年やった海氷の抽出だと、あれは85%ぐらいまで正答率がいったんですが、今までのやり方では全然そんな数字にならなかったんです。

でもコンテストを行って一気にみんなに「やってみて、データ出すから」ってやると、パーンと数字が上がることにつながった。
「それわかるなら、こんなことできる」っていう人たちって絶対にいるんです。

で、さっきの雰囲気の話に戻るんですけど、言っていい雰囲気を作っていきたいというのがあります。
まだまだそういうことがいえる雰囲気になっているかというとまだ言える雰囲気ではないんですよ。

伊藤:「衛星データわかっているから」って言えないと言っちゃいけないような雰囲気みたいなのはまだまだありますね。

小笠原:スタートアップの話になっちゃうんですけど、例えば京都の片田舎で「日本一のサービス作る」ってなかなか言えないんです。

一方で、東京で渋谷とか六本木で投資をするときは、みんな「日本で1番取ります」って言うんです。
そしてシリコンバレー行けば、「世界1番取って当たり前」という顔をしてみんなプレゼンしてくるわけです。

そこの雰囲気って僕は本当は大事だと思っていて。言っていい、チャレンジしていい、やっていい。だからちょっと浮かれていないと、そういう芽を全部潰してしまうんですね。

これ本当にしんどいんです。
自分の事業としての顔と、本当にその産業・業界を作っていくというときの絶妙な浮かれ感ってやっぱりどっちも必要です。

すごく難しいんですけど、事例を作るという地道なところと、それをできる人を増やすというところと、それを「やってほしい」「やりたい」と言える雰囲気づくりというのは全部セットなんです。

そこはけっこうすごい考えていかないといけないところだなと思っています。

伊藤:山崎さん、めちゃめちゃ頷いていましたけど、何か思うところが?

山崎:やっぱり大きなスケールだとかビジョンで引っ張らないと、人って集まってこないですし、非常に大事だと思います。

一方で、Tellusやっていて「ユースケースは出てきているの?」って聞かれることもやっぱりあります。

衛星データを使って事例を作れますというのを見せないと、利用者も離れていっちゃう部分はあると思って、今回akippaさん、Ridge-iさんのような事例創出もやっているんで、両輪かなと思います。

目指すビジョンはちゃんと示して、一方で足元でちゃんと事例もできてますというところは見せていかなければいけないかなというのは感じますね。

5.Tellusの今後の展望とは?

伊藤:ありがとうございます。そろそろ時間が来たので、締めっぽい話をしたいなと思っています。

やっぱり最後はTellusこれからどういうふうになっていくんだろうというところを聞きたいなと思います。
どうなっていきたい、ここを強くしなければならない、って考えていらっしゃいますか?

小笠原:あまり無責任に言うべきじゃないなと思っているんですけど、宇宙産業従事者というのは9000人ぐらいいるという中で、Tellusの登録者数をが1万7000人を超えています。
中でも登録者層は、20~30代が多いんですね。

この中には、宇宙産業に行きたかったんだけど行けなかった人、昔行きたかったなと思い出した人も多いんじゃないかなとかと思っています。

なので今の宇宙産業をずっと作り続けてきてくれた方々以外の人が参加しやすい、もしくは異業種の人たちが参加しやすいというプラットフォームになってほしいです。

宇宙業界の中で働いている人たちも、インターネットの人が衛星データをやっているではなくて、さまざまな業界から来てくれると感じていただきたいですね。

もともとインターネットの初期ってインターネットやっていた人はほとんどいなかったのと一緒だと思います。
他の業界の人たちが中にいられるという形のプラットフォームになれればいいなとすごく強く思っています。

伊藤:山崎さん、事業としてはどうですか?

山崎:2つの側面があるのかなと思っています。
1つは国の事業として国のデータをしっかりお預かりしてそれをユーザーに届けるというインフラの側面。
あとはいわゆる民間の側面。衛星データと相性のいいデータ、一緒に使ってみたいと思われるようなデータが載ってビジネスとしての新たなバリューが生み出していくような世界って、今後まさにプラットフォームとしての強みだと思うので、両輪を追及していくことを目指していきたいと思っています。

あとは衛星データの強みはグローバルというところがやっぱり大きいので、アジアのハブになっていきたいなというのがあります。

私がさくらインターネットのコンセプトでいいなと思っているのって、主役ってさくらインターネットの上にいるメルカリさんですとかマネーフォワードさんたちのようなユーザーさんなんですというところです。

お客様が成長することで我々も成長することができるというのが、非常にTellusにも合っているなと実は思っています。

異業種の方々がTellusを使って新たな価値を作って、成功していただいたら、我々にも収益が入りますみたいなビジネスモデルなので、一緒に二人三脚でやれるパートナーをどれだけTellus上に、政府であれ民間であれ集められるかでたぶん今後の事業展開って大きく変わるだろうなと思っています。

魅力ある場になって、最終的に目立つのは我々の顧客みたいな世界ができたらかっこいいなと思います。

伊藤:よくわかります。私も利用者が遊びでもっと使えるといいなと思うんですよね。
遊びで使うためにはで考えると、今まだTellusにはカバーできていないですけど、リアルタイムデータってけっこう大事なんじゃないかなと思っています。

8月に僕が書いた記事で、人工衛星「しきさい」のデータを使って日本がどれぐらい暑くなっているかっていうのが見られたというのがありましたが、なるべく最新のデータがあると「昨日とか一昨日めちゃ暑かったけど、実際どうだったんだっけ?」とかって遊べるし、そこに別のデータをかぶせてみようみたいなことってできますよね。
そこから僕らだったら記事を書いていくかもしれません。

そういう、みんな何かしら使ったことがあるというのが、それこそGoogle Earth並みの状態になってくると、爆発的に広がるだろうなと思います。

その状況にするためにはたぶん課題もたくさんあるかとおもいますが、使いやすさは可能性を感じているので、取材に使えるようなツールにもなってほしいなと正直思っています。

小笠原:あと、来るべきことがわかっている未来を前提としたプラットフォームになりたいというのもありますね。
ここからは先、衛星がたくさん上がって時間解像度が上がるのはもう来るべき未来になっている。

それが僕らのプラットフォームに置いてもらえるかどうかの問題だけであって、衛星が増えたみたいでTellusにデータも載っていれば、今、伊藤さんが言ってくれたような完全なリアルタイムはまだもう少し先だとしても、準リアルタイムで例えば昨日どうだったかなとか、何時間前どうだったかなみたいな世界はあり得るかもしれないと思っています。

伊藤:取れているなるべく最新のデータが載っていってほしいですね。

小笠原:そうなんですよね。そういう世界は全然実現していきたいと思いますね。

伊藤:ありがとうございます。皆さんお付き合いいただきましてありがとうございました。

6.まとめ

Tellus SPACE xData Fes. -Online Weeks 2020-」を締めくくった本トークセッションでは、Tellusの立ち上げ当初から変わらないビジネス創出を目指すプラットフォームとしての想いと今後の展望が語られました。

今後Tellusを使った衛星データビジネス事例を増やすために必要なのは、課題を解決する側の人材や企業の確保と同時に、課題解決のアイディアを生み出すための雰囲気作りが必要となります。

宇宙事業者が1万人以下という中で、Tellusはユーザー登録者数が現在1万7000人と越えていますが、まだまだ充分にビジネスを生み出しているかと言える状態ではありません。

衛星データを含む数々のデータを掛け合わせることで、世界に存在する課題を何かしら解決することができるかもしれません。

Tellus SPACE xData Fes. -Online Weeks 2020-」では、宇宙産業の現状のほか、衛星データビジネスの国内外の事例や、衛星データの知識や使い方を紹介するなど様々なコンテンツを発信してまいりました。

自社の事業になにか課題を持っている方、衛星データに関心がある方など、今まで配信してきたコンテンツを見返してみて、ぜひTellusや衛星データビジネスの今の雰囲気を感じ取ってみてはいかがでしょうか。

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