【宇宙滞在時代に向けて宇宙でのお酒造りが加速?】獺祭MOONプロジェクト、世界初の清酒醸造試験へ。宇宙でビールを作るプロジェクトも
日本から宇宙でのお酒造りに関するプロジェクトが続けて発表されました。日本酒とビール、それぞれのプロジェクトについて紹介します。
2025年10月9日、山口県の酒造メーカーである獺祭と三菱重工業は、宇宙空間での清酒醸造に挑戦する「獺祭MOONプロジェクト」の詳細を発表しました。
宇宙用に共同開発した醸造装置と清酒の原材料が、JAXAの新型ロケット、H3ロケット7号機で種子島から打ち上げられます(10月21日の打ち上げ予定は延期)。搭載先は新たに実用化される、国産の新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」です。
打ち上げ後は、国際宇宙ステーションISSの日本実験棟「きぼう」で、月面の重力(1/6G)を模擬した環境下にて世界初の清酒醸造試験が行われる予定。作業は油井亀美也宇宙飛行士が担当する方向でJAXAと調整が進められています。
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この試験は、2050年に月面で獺祭を醸造するという壮大な目標に向けた第一歩です。長期の月面滞在時において「お酒は生活に彩りを与えるもの」との考えから、月でのQOL(生活の質)向上を目指しています。米は軽量で月までの輸送効率が高く、月面の水資源と組み合わせることで、将来的に現地生産も視野に入れています。
今回のミッションでは、地上から送られる原材料(α化米、乾燥麹米、乾燥酵母、水)を、三菱重工が開発した宇宙専用の醸造装置に投入します。宇宙飛行士が水を注入することで、日本酒独自の「並行複発酵」が始まります。
およそ10日間の発酵を経て、アルコール度数15%を目指し、終了後は醪(もろみ)を凍結して保存します。早ければ2026年初旬に地球へ帰還し、回収後、半分は清酒として仕上げられ、「獺祭MOON-宇宙醸造-」として100ml・税込1億1000万円で販売されます。売上は全額、日本の宇宙開発支援に寄付されます。残る半分は世界初の宇宙で造られた醪サンプルとして、酵母の解析や各種成分分析がなされ、今後の宇宙開発のために役立てられます。
株式会社獺祭の代表取締役社長、桜井一宏氏は「もし月においしい酒があれば、月に暮らす人々のQOLが上がるのではないかと想像します。月に向かうのは、ストイックな求道者のような人ばかりとは限りません。私たちと同じように、おいしい酒でリラックスしたり、笑顔になる人も多いはずです。だったら、いまのうちから月面で酒をつくる準備をしておきたい。私たちは、そう考えました。人類ではじめて月面に降り立ったアポロ11号のニール・アームストロング船長は、「これは一人の人間にとっては小さな第一歩だが、人類にとっては偉大な第一歩である」と述べました。獺祭も、未来に向けた第一歩を踏み出す所存です。はじめの一歩を私たちとご一緒してくださる方がいるのならば、これに勝る喜びはありません。」とコメントしています。
また、獺祭と同様に、有限会社二軒茶屋餅角屋本店と、高砂電気工業株式会社も、共同で国内初の宇宙空間でのビール醸造に挑んでいます。なお、本プロジェクトはクラウドファンディングで資金を募っているというフェーズのようです。
これらのニュースから、人が月面で生活する未来に向けた準備が着々と進んでいることが実感できます。宇宙で飲むお酒、地上で飲むお酒とは一味違う楽しみがありそうですね。今後の進捗に注目です。
参考記事
ついに宇宙へ。獺祭MOONプロジェクト、世界初の清酒醸造試験~宇宙用醸造装置を10月21日に種子島より打ち上げ~ | 三菱重工

