【2025年12月】衛星データ利活用に関する論文とニュースをピックアップ!
2025年12月に公開された衛星データの利活用に関する論文の中でも宙畑編集部が気になったものをピックアップしました。
2025年12月に公開された衛星データの利活用に関する論文の中でも宙畑編集部が気になったものをピックアップしました。
・A high resolution urban and rural settlement map of Africa using deep learning and satellite imagery
(ディープラーニングと多様な衛星データを統合し、2016年から2022年までのアフリカ全土を対象とする10m解像度の都市/農村マップ(HUR: High-Resolution Urban-Rural dataset)を生成する)・Sea surface suspended concentrations prediction based on pre-trained transformer
(限定的な衛星データ(小規模データセット)を用いて、高精度かつ汎用性の高いSSSC再構成(データ欠損の補完と予測)モデルを構築する)・Improved YOLOv9-based remote sensing image detection method
(リモートセンシング画像における物体検出の精度と効率を向上させるため、最新のAIモデルであるYOLOv9を改良する)・Integrating geochemical analysis and geospatial techniques to assess groundwater quality and health risks in Wadi Feiran Basin, Southwestern Sinai, Egypt
(地形(水の流れやすさ)・水質・健康リスクを個別に扱うのではなく組み合わせて「どこで、誰が、どれくらい危険か」を統合的に評価する)
宙畑の連載「#MonthlySatDataNews」では、前月に公開された衛星データの利活用に関する論文やニュースをピックアップして紹介します。
実は、本記事を制作するために、これは!と思った論文やニュースをTwitter上で「#MonthlySatDataNews」「#衛星論文」をつけて備忘録として宙畑編集部メンバーが投稿していました。宙畑読者のみなさまも是非ご参加いただけますと幸いです。
2025年12月の「#MonthlySatDataNews」「#衛星論文」を投稿いただいたのはこの方でした!
Earth Observation and Geospatial Analysis for Fire Risk Assessment in Wildland–Urban Interfaces: The Case of the Highly Dense Urban Area of Attica, Greece https://t.co/LdlvHSPMLT #mdpiremotesensing @RemoteSens_MDPIより #衛星論文
ギリシャにおいて都市計画と火災リスクの関係性を分析— たなこう (@octobersky_031) December 27, 2025
それではさっそく2025年12月の論文を紹介します。
A high resolution urban and rural settlement map of Africa using deep learning and satellite imagery
【どういう論文?】
・アフリカは2050年までに都市人口が約9億5,000万人増加すると予測されているが、GHSL-SMODやGRUMPといった既存の全球データセットは解像度が1kmと粗く、小規模な集落やインフォーマルな居住区を見落とす傾向がある
・本研究では、ディープラーニングと多様な衛星データを統合し、2016年から2022年までのアフリカ全土を対象とする10m解像度の都市/農村マップ(HUR: High-Resolution Urban-Rural dataset)を生成する
【技術や方法のポイントはどこ?】
◾️先行研究の課題
①空間解像度不足(混合画素問題)
・先行研究(GHSL-SMODなど)の1km解像度では、1つの画素の中に「東京ドーム約21個分」の面積が押し込められている状態であり、つまりは小さな集落が見えない場合がある
・また、衛星データは1km四方の平均的な色として出力するため、小さな集落(建物)の反射と周囲の土や草の反射が混ざり合ってしまっていた
②都市と農村の定義のゆらぎ(ルールの不一致)
・アフリカでは、電気が通っていないが人口が密集している非公式な都市(スラムなど)や街灯だけが明るい「主要道路沿いの村」が多く存在している中で、どれが都市でどれが農村かをルールベースで識別するのが難しかった
◾️本研究のアプローチ
①空間解像度不足(混合画素問題)
・10m解像度のアプローチを採用する
②都市と農村の定義のゆらぎ(ルールの不一致)
・特定の数値ルール(人口や光の強さ)に頼りすぎず、画像から得られる「見た目の特徴」をAIに学習させることで、大陸全体で統一されたより客観的な分類基準を利用する
◾️主なデータセット
・Landsat-8:30m解像度
・VIIRS 夜間光データ:人間の活動強度(光の強さ)をモデルに組み込み、都市と農村の活動レベルの差を補完する
・ESRI Land Use Land Cover:10m解像度、中間ターゲット(訓練ラベル)としてディープラーニングモデルが「正解」として学習する地表被覆データ(LULC)
・DHS(人口保健調査)データ:検証データ
◾️技術
・モデル構成はDeepLabV3とResNet-50を用いる
※DeepLabV3・・・ASPP(空洞畳み込み)という仕組みが組み込まれており、ある対象と周りに何があるか(道路か、森か、農地か)という文脈を理解することができる
※ResNet・・・50層もの深さで画像を分析し、「ここは角ばっている」「ここはザラザラしている」といった地表の質感や形を見分ける
・高画質だがラベルがついていない衛星画像(10mデータ)に、画質は悪いがラベルがついているデータ(1kmデータ)を合体させ、ラベル増強を行う
・アフリカ全土では非居住地が圧倒的に多く、都市は極めて少ないというデータの偏りを解消するため、重み付き損失関数(Weighted Loss)を用いて、めったに出現しない「都市」の問題を間違えたときは、通常の何十倍も重みを付けるように設計
【議論の内容・結果は?】
◾️定量評価
・本研究のHURマップは全体精度(OA)65〜66%を達成し、比較手法のSMOD(OA 56〜57%)を大きく上回る結果となった
・特に都市クラスにおいて、SMODは再現率(Recall)が91%超と高い一方で適合率(Precision)が44〜46%と低く、都市を過大評価(空き地なども都市と判定)していたが、HURは適合率を54〜57%まで改善し、より「建物の実態に近い」都市範囲を特定できている
◾️視覚的検証
・実際の地図上での見え方をブルンジ、ルワンダ、リベリアの3カ国で比較する
・ブルンジやルワンダのような、農村部にも家々が密集する地域では、SMOD(1km)はすべてを巨大な塊として塗り潰している一方で、HUR(10m)は村々の細かな境界線を維持し、都市の中心部と周辺の村を明確に区別できている
・リベリアのように集落が点在する場所でも、SMODは広い範囲を農村と誤判定しがちだが、HURは建物のフットプリントに即した判定を行うことができている
#都市農村分類 #セマンティックセグメンテーション #DHS #混合画素 #SDG11 #アフリカ #Landsat-8 #VIIRS #夜間光 #DeepLabV3 #ResNet-50
Sea surface suspended concentrations prediction based on pre-trained transformer
【どういう論文?】
・海面の懸濁物濃度(SSSC:海水の濁りの原因となる砂や泥の濃度)のモニタリングは、港湾輸送、海洋生態系、環境保護において極めて重要である
・本論文では、限定的な衛星データ(小規模データセット)を用いて、高精度かつ汎用性の高いSSSC再構成(データ欠損の補完と予測)モデルを構築する
【技術や方法のポイントはどこ?】
◾️先行研究の課題
①定式化問題
・従来手法(線形補間や統計モデル)は、現象が「正規分布に従う」などの数学的な仮定に依存しているが、海流や風で複雑に動く懸濁物(SSSC)は非常に不規則(非線形)で、数式で単純化することが難しい
②空間解像度の不足
・点での観測を面(広域)へ広げる際、複雑な沿岸部の地形や潮流の相互作用を再現しきれないという課題がある
③既存の深層学習(CNN等)の限界、過学習
・CNNなどの画像認識モデルは、数万~数百万枚のデータで本来の効果を発揮できるものの、衛星データは雲による欠損などが多く、過学習にもつながっていた
◾️本研究のアプローチ
①ドメインを跨いだ転移学習
・文章(テキスト)で学んだGPT-2を海(物理量)に利用するという、ドメインを大きく跨ぐアプローチをとる
②凍結戦略
・モデルの核心部(Self-Attention層)をあえて学習させず固定し、小規模データでの過学習を防ぐ
・GPT-2は本来12層以上の深いモデルだが、本研究では最初の3層だけを利用する
◾️データセット
・ビスケー湾(フランス西部、スペイン北部)のMERIS衛星センサデータ(2007年〜2011年の日次サンプル)を検証データとして利用
・MARS-MUSTANGモデルを数値シミュレーションによる正解データとして使用する
【議論の内容・結果は?】
・提案モデル(GPT2(3層))はRMSE 0.054を記録し、伝統的なOI(Optimal Interpolation:最適内挿)(RMSE 0.176)と比較して、誤差を約70%削減した
・OIや他のモデルと比較して、提案モデルでは濃度勾配が正解データと比較しても十分に再構成されている
Source : https://doi.org/10.1038/s41598-025-23682-9
・言語モデル(トランスフォーマー)のパラメータは、言語だけでなく「物理的な空間パターンの認識」にも有効な「世界の抽象的な表現」を獲得している可能性を示唆している
#SSSC #PreTrainedTransformer #GPT-2 #パラメータ凍結 #海面 #懸濁物濃度
Improved YOLOv9-based remote sensing image detection method
【どういう論文?】
・本論文は、リモートセンシング(人工衛星や航空機からの観測)画像における物体検出の精度と効率を向上させるため、最新のAIモデルであるYOLOv9を改良する
【技術や方法のポイントはどこ?】
◾️先行研究の課題
①小型物体の情報の消失
・従来のYOLOv9を含む多くのモデルは、画像の解像度を下げながら特徴を抽出するため、数ピクセル程度の小さな物体の情報が途中で消えてしまう欠点がある
②計算コストと精度のトレードオフ
・高精度を求めるとモデルが巨大化し、低スペックな環境やリアルタイム処理での運用が難しくなる
◾️本研究のアプローチ
①C3モジュール導入(処理の高速化と情報の劣化防止)
・C3モジュールは、特徴を深く理解する学習ルートと、元の情報を次へ運ぶショートカットルートを併用する
②SEモジュール導入(複雑な背景ノイズの除去)
・SE(Squeeze-and-Excitation)は、各チャンネルの重要度を調整し、重要でない特徴に気を取られにくくする注意機構(Attention)である
③P2検出ヘッド導入(数ピクセルの超小型物体の識別)
・従来のP3層より手前の高解像段階(P2層)に検出ヘッドを増設する
④GIoU損失関数導入(位置ズレの修正スピードと精度の向上)
・枠が重ならない初期段階でも学習が進むよう、枠の距離情報も含めて勾配を与える
【議論の内容・結果は?】
◾️総合性能
・提案モデルの精度はmAP@0.5で86.6%、mAP@0.5–0.95で71.5%を達成、ベースとなるYOLOv9(85.7% / 70.8%)を明確に上回るスコアとなった
・効率においては、パラメータ数を50.73Mから39.97Mへ21.2%削減できた
・速度に関しても、84.0FPSを記録(1秒間に84枚の画像を処理)、動画やライブ監視でも十分に使用可能な形となった
◾️カテゴリ別の成果(極小・密集物体への強さ)
・特に、衛星画像で識別が難しい小さく密集したターゲットで差が出た
・Car(94.8%)、Truck(88.8%)、Long Vehicle(87.2%) といずれもYOLOv9を凌駕、特に長い車両(Long Vehicle)ではv9の82.0%から5.2ポイントも向上している
#YOLOv9 #リモートセンシング #衛星データ #物体検出 #SIMDデータセット #C3モジュール #SEモジュール #P2検出ヘッド #GIoU損失関数 #mAP #FPS #リアルタイム検出 #小型物体検出
Integrating geochemical analysis and geospatial techniques to assess groundwater quality and health risks in Wadi Feiran Basin, Southwestern Sinai, Egypt
【どういう論文?】
・本研究は、水資源が非常に乏しい乾燥地帯であるエジプト・シナイ半島南西部のWadi Feiran(ワディ・フェイラン)流域を対象に、地形(水の流れやすさ)・水質・健康リスクをバラバラではなく組み合わせることで「どこで、誰が、どれくらい危険か」を統合的に評価する
【技術や方法のポイントはどこ?】
◾️先行研究の課題
・「地形解析のみ」「水の成分分析のみ」あるいは「(汚染源となる)洪水モデルのみ」といった個別的な評価に留まっており、地形によって地下水質や人間の健康リスク(HHRA)に影響を与えているかという連続的な視点が欠如していた
◾️本研究のアプローチ
・地表の地形データ(衛星データ)と、実際に井戸から採取した地下水の化学データを組み合わせる
・加えて、Nemerov汚染指数(NPI)という指標を用いて、多くの成分をまとめて「100点満点中の何点か」のように一つのスコアにする
・最後に、階層分析法(AHP)という手法を用いて、「汚染のひどさ」「人の多さ」「川からの距離」を重ね合わせ、重み付けを行う
◾️データセット
・30m解像度DEM (デジタル標高モデル)
・Sentinel-2 衛星画像(10m解像度)
・地下水サンプル(25箇所)
【議論の内容・結果は?】
①地形の分析結果(鉄砲水による水質汚染の危険)
・El-SheikhやSolafなどの上流地域は、起伏量(標高差,Relief)が1,400mを超え、地表の粗さを示すRn(Ruggedness number)が 1,200 以上の極めて高い値を記録した
・つまり、雨が降った際、水が地中に染み込む前に猛スピードで地表を流れ落ちることを意味しており、フラッシュ洪水(鉄砲水)、それによる水質汚染のリスクが非常に高いことが定量的に裏付けらされた
②水質の分析結果
・25箇所のサンプルのうち、60%(15箇所) が飲用不適合と判定された
・統計解析(PCA)の結果、汚染の約41.42%は岩石からの自然溶出だが、硝酸塩などの人為的汚染も大きな要因として特定された
③健康リスクの分析結果
・硝酸塩による健康リスク(HI: Hazard Index)をシミュレーションしたところ、子供の最大値は17.22 であった(基準値は1.0 なので、その17倍以上のリスクがあることを示している)
・AHP(階層分析法)を用いた地図化により、聖カタリナ周辺の東部・南東部が高リスク地点として明確に特定された
#ワディ・フェイラン流域 #地形計測解析 #地下水質 #硝酸塩 #健康リスク評価 #HHRA #NPI #ハザード指数 #階層分析法 #AHP #デジタル標高モデル #DEM
来月以降も「#MonthlySatDataNews」「#衛星論文」を続けていきますので、お楽しみに!

