宙畑 Sorabatake

宇宙政策

アンカーテナンシー、顧客創出、射場整備、JAXA強靭化。第1回航空・宇宙WGで議論された成長戦略【宇宙ビジネスニュース】

2026年1月、日本成長戦略本部の下で航空・宇宙WGが始動。第1回航空・宇宙WGで議論されたアンカーテナンシーや射場整備などの論点をまとめました。

2026年1月22日、日本成長戦略本部の下に設置された「航空・宇宙ワーキンググループ(WG)」の第1回会合が開催され、2月18日に議事要旨が公開されました。小野田紀美経済安全保障担当大臣が座長を務めています。

第1回ではispace代表取締役CEO&Founderの袴田武史氏らがゲストスピーカーとして参加しました。

航空・宇宙WGは、2025年11月に発足した「日本成長戦略本部」が定める17の戦略分野の一つを担う検討組織です。政府は2026年夏の成長戦略とりまとめに向け、投資内容・時期・目標額を明示したロードマップを各分野で作成します。

宙畑メモ:日本成長戦略本部とは
2025年11月に高市早苗政権の下で発足した、全閣僚で構成される政府の司令塔組織です。「危機管理投資」を成長戦略の柱に、日本経済の供給構造を抜本的に強化することを目的としています。

今回のWGでは、宇宙分野における日本の「勝ち筋」と「ボトルネック」を特定するための議論が行われました。

宇宙分野の官民戦略投資

混合資本とアンカーテナンシーで民間投資を促進

政府は令和8年度の宇宙関係予算を初めて1兆円を突破させました。2030年代前半に年間30機の打上げ能力を確保する方針も示しています。

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今回のワーキンググループのひとつの大きなテーマとして明確に意識されていたのは、SpaceXが世界最大の宇宙企業へ成長した背景には官民による「混合資本」があったと述べられたことでしょう。

SpaceXの混合資本の構成 Credit : SPACETIDE Source : https://www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/kokuuchu/doc/shiryo8.pdf

また、民間投資促進に向けて4つの視点を提言しました。

第一に、アンカーテナンシーについて制度設計のみならず実施時期や規模感を明示し、予見可能性を高めること。第二に、国内市場にとどまらず海外官需を獲得していくこと。第三に、サプライチェーン全体を支え、重要技術を国内で戦略的に育成すること。第四に、官の投資がどの程度国内に還流しているかを把握・管理することです。

宙畑メモ:アンカーテナンシーとは
政府が民間企業の製品やサービスを継続的に調達することで、産業基盤の安定化を図る手法。NASAがSpaceXなど米国宇宙ベンチャーの育成に活用し、大きな成果を上げたことで知られています。政府が大口顧客となることで、民間投資の呼び水となる効果が期待されます。

ispaceの袴田氏は、累計1,000億円超の資金調達を実現しながらも日本政府由来の売上は約2割にとどまる現状を指摘。月輸送分野で10年間2,000億円規模のアンカーテナンシーを示すことで民間投資を呼び込む「レバレッジ効果」が期待できると提言がありました。

提案①:政府によるアンカーテナンシー Credit : ispace Source : https://www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/kokuuchu/doc/shiryo7.pdf

上記に加えて、政府による債務保証制度の創設も提言が出されています。

提案②:月インフラ債務保証制度 Credit : ispace Source : https://www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/kokuuchu/doc/shiryo7.pdf

「顧客」が技術を牽引する。はやぶさと情報収集衛星の教訓

また、宇宙産業を継続的に成長させるためには「顧客」の創出が不可欠だとの意見が出されました。ここでいう顧客とは、明確な仕様を定義し技術開発を牽引する主体を指します。

成功例として「はやぶさ」計画と情報収集衛星が紹介されました。

はやぶさ計画では、科学的成果を強く求める研究者が厳格なスペックを設定し、それを実現するために工学側が挑戦したことで、低コストかつ高成果の技術が育成されました。

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情報収集衛星についても、防衛上の切実な必要性から高い要求仕様が設定され、その実現を通じて技術力が向上しました。

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顧客となりえる、今後期待される分野として挙げられたのは防衛と防災です。防災分野では「被害軽減を経済効果として評価し、企業収益に還元する仕組みが必要」との指摘がありました。

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輸送能力強化に向けた課題解決

日本は自国衛星の50%しか国内で打ち上げられていない現状の課題も示されました。

衛星打上げにおける保有国と打上げ国の関係 (自国衛星の自国ロケットでの打ち上げ割合は同図の右側に記載) Credit : 内閣府宇宙開発戦略推進事務局 Source : https://www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/kokuuchu/doc/shiryo4.pdf

また、直近ではH3ロケット8号機の打ち上げ失敗がありましたが、連続成功していたとしても初期段階では失敗は起こり得るため、失敗は一定程度織り込むべきとの意見が出されました。初期段階では厳格な成果要求を課さず育成する姿勢が必要とされていることが話されました。

「(宇宙戦略基金の目標にも掲げられている)2030年代前半までに年間30機の打上げを実現するには、50-60機程度の打上げに対応できる態勢が必要であり、現状の射場能力では難しい」との指摘もありました。

射場は空港整備と異なり、地域利便性の向上には直結せず、国全体の利便性向上に資するインフラであるため、国主体で整備することが重要であるとの意見もあげられています。

こうしたインフラ整備を含め、海外ではロケット開発と量産設備投資を同時並行で進める戦略がとられているとの指摘もありました。

Rocket Labの成長と企業活動(開発と量産投資を同時並行で進めた事例) Credit : SPACETIDE Source : https://www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/kokuuchu/doc/shiryo8.pdf

JAXA強靭化

JAXAについては、宇宙スタートアップを支える技術や人材の多くがJAXAから創出されてきた構造についての評価がありました。

大型衛星や基幹ロケットの開発、高リスク技術開発については引き続きJAXAが中核的役割を果たす必要があります。強みであるシステムインテグレーション技術の一層の強化が不可欠とされました。

加えて、将来重要性が高まる学術領域で世界のリーダーの一角を担う役割がJAXAには期待されています。「研究者が国際コミュニティの第一線に身を置くことで、将来有望な研究テーマの同定につながる」との指摘もありました。

閉会挨拶で内閣府は、尾﨑内閣官房副長官から3点の指示があったと報告しました。「勝ち筋の特定」「需要・市場創出と社会実装の重視」「自律性・不可欠性の実現」です。

アンカーテナンシー、顧客創出、射場整備、JAXA強靭化への対応。これらの施策が「勝ち筋」としてどのように具体化されるのか、夏のロードマップに注目です。

参考資料

航空・宇宙ワーキンググループ

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