SpaceX、再び連邦政府に訴えかけへ【週刊宇宙ビジネスニュース 5/13~5/19】
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最初は2014年、ULAがアメリカ軍の衛星を打ち上げられる唯一の組織であることに対して抗議。
ULAの打ち上げ価格が400億円ほどであるのに対して、SpaceXは60億円ほどで打ち上げられるにも関わらず、ULAが独占して打ち上げ続けていることに対して政府を訴えました。
余談ですがこの後、SpaceXはいくつかの案件受注に成功しています。
2回目は2019年、ULAがNASAの惑星探査ミッションの打ち上げを受注したことに対して抗議。
こちらもULAに比べてSpaceXの方が安く打ち上げられる、ということを主張していました。
1回目の際には、ULAのロケットの方が信頼性がある、という反論をULAはしていましたが、SpaceXも順調に実績を積み重ねていることもあり、信頼性という観点での反論も難しくなってきました。
2回目の訴えは、SpaceXにより引き下げられたようですが、5/17に3回目の訴えが。
同社の戦略に関わるということで内容は明らかにされていませんが、次のリンクに訴えた際の文章が公開されています。
近々、空軍が2つの大規模案件を公募にかける動きがあり、SpaceXが再びこの政府調達プログラムへと挑戦するため、訴えかけているのでは?と言われています。
昨年に空軍が掲げた高信頼性ロケットの案件にSpaceXは不合格となり、ULA、Northrop Grumman、そしてBlue Originが2000億円を勝ち取る結果となっていました。この一回目で不合格だったことが不利に作用しないように訴えかけているという見方がされています。
片やBlue Originは開発が遅れていることもあり、この公募を遅らせるように働きかけているのだとか。
技術が成熟し始めたことで、信頼性やコストだけでの競争ではなくなってきているようにも感じられます。
これをただ単純に健全・不健全という言葉だけで片付けるのは難しく、国の案件を受注してどうしても叶えたいロードマップのある企業が増えてきたことや、政治レベルでの競争ができるほどに分野として成熟してきたことの現れなのでしょう。
SpaceXのロードマップと言えば、通信衛星網を構築しようとしているStarlink計画。
自社で開発している60機の通信衛星を先週に打ち上げる予定でしたが、天候不良により延期に。今週に打ち上げられる予定です。
蛇足ですが、SpaceXに2度訴えられているULAは、ロッキード・マーティン社とボーイング社の合弁事業で、今まで政府案件を受注し続けてきました。
そのため、信頼性があることもさることながら、今まで国策を支え続けてきた同社を政府としても無下にできなかったという側面もあったのでしょう。
今ではロケットラボの小型ロケットを用いて空軍の衛星を打ち上げる、ということも当たり前にありますが、このような状況に至る一助にSpaceXの訴えが活きているのだとすると、(日本ではネガティブに捉えられがちですが、)訴えることも一つ有効な手段なのかもしれませんね。
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参考記事
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参考
Elon Musk's SpaceX Sues Government to Protest Military Launch Monopoly