進む小型衛星の防衛利用検討【週刊宇宙ビジネスニュース 8/5〜8/11】
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世界最大の衛星画像販売企業、減益
既報(世界最高性能衛星、壊れる。損害額は膨大【週刊宇宙ビジネスニュース 1/7~1/13】)の通り、2019年頭に自身が保有する商用では世界トップの衛星画像性能を誇る衛星が軌道上で故障し使えなくなってしまった米Maxar Technologies社。
2019年第2クオーターの決算を発表し、前年同クオーターと比較し15.4%の収益減の約490億円の利益となることが分かりました。
主に、衛星製造などを担当する宇宙システム部門で約73億円、衛星画像部門で11億円の減損が原因とのこと。一方で、衛星故障にかかる保険料の支払いも同クオーターで行われています。
Maxar Technologies社の主な顧客はアメリカ政府とカナダ政府で、特に衛星画像部門に関してはアメリカの防衛分野と密接な関わりを持っており、すでにNRO(アメリカ国家偵察局)次世代のシステム”Rapid Access Program”の研究を始めています。
小型衛星のカンファレンスがアメリカで開催、目立つ防衛利用
Maxar Technologies社は比較的大型の衛星に力を入れていますが、衛星画像ビジネスにおけるもう一つの勢力として小型衛星が上げられます。
1機の性能は大型衛星には劣るものの、その分早く安く製造できるため、衛星の機数を多くし、観測機会を増やそうという狙いがあり、アメリカの防衛分野も注目しています。
そんな小型衛星のカンファレンス”Small Satellite Conference”が先週、アメリカ・ユタで開催され、小型衛星関連の様々な発表が行われました。
小型衛星の防衛利用を意識したものだと、衛星から地上の電波監視を行うサービスを計画するKleos Space社が、海上の船舶から発する信号を収集して可視化するSpire Global社とのコラボレーションを発表しました。
両社はそれぞれが持っているデータを統合して、政府や海洋関連機関向けに海洋監視サービスを提供する計画です。
また、同じく衛星から地上の電波監視を行うサービスを計画するHawkEye 360社は、シリーズBとして約70億円の投資を獲得したことを発表しました。
同社は、以前に獲得している30億円と合わせて100億円規模の資金を得たことになり、これを原資に衛星製造を進めていく考えです。
このように、政府向けのサービスを提供するベンチャーに投資が集まるのは、計画が遂行されサービスが提供された場合、政府が顧客となることを明言しているため、と言われています。
電波を使った撮影を行う小型SAR衛星の観測ネットワークを構築しようとしているCapella Space社もアメリカ国防総省から契約を受けて開発を進めているベンチャー企業の一つです。
Capella Space社は先週、よりよいサービス提供のため、中継衛星を使用する計画を発表しました。
これにより、今までは地球上のどこかに設置された地上局の上を衛星が通る時しか撮影の指示が送れなかった(そしてそれは通常4~8時間程度待つ必要がある)のに対し、いつでも撮影指示が送れるようになったと同社は説明しています。
普通のカメラと同様に太陽光の反射を利用して撮影する光学衛星と異なり、SAR衛星は衛星から電波を発射し、その跳ね返りを見ているため、大きな電力が必要となります。
したがって、地球を周回している間常に撮影をすることは、電力が足りなくなってしまうため難しく、撮影地点を絞って撮影していくことになります。
その撮影地点のリクエストを如何に柔軟にギリギリまで対応できるかということをアピールしたのが今回の発表ですが、これは防衛での利用を強く意識したものだと考えられます。
また、アメリカ空軍は自身も強く小型衛星利用に興味を示しており、8月8日に宇宙ミサイルシステムセンターとして初めて、ロケット相乗りによる超小型衛星の打ち上げを行いました。
アメリカでは国や政府機関が古くからの技術を大切にしながら、積極的に新しい技術を取り入れていく姿勢が見られますね。
今週の週刊宇宙ビジネスニュース
競合多くひしめく小型ロケット業界の話題続々と【週刊宇宙ビジネスニュース 8/5〜8/11】
参考
Maxar Sees Decrease in Q2 Revenue
HawkEye 360 raises $70 million Series B financing
Thornberry bill would help venture-backed startups compete for DoD small business awards
Capella plans to speed up tasking with Addvalue Data Relay
Air Force cubesat successfully deployed from Atlas 5 upper stage