宙畑 Sorabatake

Tellusのアップデート

衛星データを学ぶ!「Tellus Satellite Boot Camp東京」イベントレポート

2019年10月26日-27日に開催された、Tellusでの衛星データ解析を学ぶための講座「Tellus Satellite Boot Camp」のレポートをお届けします。

記事作成時から、Tellusからデータを検索・取得するAPIが変更になっております。該当箇所のコードについては、以下のリンクをご参照ください。
https://www.tellusxdp.com/ja/howtouse/access/traveler_api_20220310_
firstpart.html

2022年8月31日以降、Tellus OSでのデータの閲覧方法など使い方が一部変更になっております。新しいTellus OSの基本操作は以下のリンクをご参照ください。
https://www.tellusxdp.com/ja/howtouse/tellus_os/start_tellus_os.html

「Tellus Satellite Boot Camp」は、日本発の衛星データプラットフォームである「Tellus」を使って衛星データの解析を学ぶための講座です。

この記事では、2019年10月26日、27日に開催された、「Tellus Satellite Boot Camp」のレポートをお届けします。

Tellus Satellite Boot Campとは

Tellus Satellite Boot Campとは、衛星データプラットフォーム「Tellus」を使って衛星データの解析を行うために、基本的な使い方から実践的な手法までを学べる講座です。

2日間のBoot Campを通じて、衛星データ解析と機械学習を利用してデータ解析人材を育成し、衛星データを利用したビジネスの創出を図ることを目的としています。

衛星データを活用したビジネスの可能性は感じるものの、いったいどこから取り組めばいいかなかなか分かりにくいものですよね。そんな、衛星データの未来にワクワクしているエンジニア向けに、経済産業省主催で、さくらインターネット株式会社、株式会社SIGNATE、一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)の3社が共同で運営しているハンズオンのセミナーが「Tellus Satellite Boot Camp」です。

「衛星データと機械学習」と聞くと、「難しそう」と不安に思われる方も多いかと思いますが、講座受講前には、プログラミング初心者向けの事前学習プログラムについてe-Learningで事前学習を受けることができるので安心です。Pythonにおける画像処理の基礎を動画教材で学んだうえで、当日に衛星データの利用方法や解析の仕方を学ぶことができます。そのためプログラミングにあまり自信がないという方も安心して受講することができます!

そもそも「Tellus」とは

Tellusとは、日本発の衛星データプラットフォームで、これまで研究者など限られた人にしか関係ないと思われていた衛星データを、民間企業や研究機関、大学、個人まで、誰もが手軽に自由に利用できるようにしました。光学だけでなくSAR衛星の画像データ等も搭載されていて、地上データを含めアーカイブデータが無料で公開されています。このアーカイブデータの解析を通して、構築した解析モデルの妥当性を検証しながら開発を進めることができます。

現在、宇宙ビジネスの国際市場は約38兆円と言われています。Tellusは、今後さらに市場の拡大が期待されている宇宙ビジネスに向けて、衛星データだけでなく地上データも合わせて提供することで、利用を促進していくことを目指しています。

また、非宇宙産業でも、衛星データを利用して事業の効率化を図ったり、独自のビジネスを展開したりするなど、宇宙ビジネス業界は今後ますます多岐にわたって利用されると見られています。

Tellusは、このような背景から日本政府がもつ衛星データを利活用したビジネス創出を支援することを目的として誕生しました。Tellusはユーザーがビジネスを創出しやすいよう、日々使いやすさを求めて開発が進められています。

Tellus Satellite Boot Campで学ぶこと

では、Tellus Satellite Boot Campのレポートに戻りましょう。2日間に渡って行われるプログラムでは学ぶ内容が盛りだくさんです。

Tellus Satellite Boot Camp概要
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▼1日目
・10:00-10:30 Tellus Satellite Boot Campについて
・10:30-11:30 衛星データの基本的知識
・12:30-15:30 Jupyter Notebookを使ったTellus上の衛星データ画像解析演習
・15:40-17:00 衛星データ×機械学習概論
・17:00-18:00 Tellus相談会

▼2日目
・10:00-11:00 機械学習における物体検出概論
・11:10-13:00 物体検出演習①
・14:00-17:30 物体検出演習②
・17:30-18:30 受講者発表
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一見すると「難しそうだ」と感じる方もいるかもしれません。けれども先ほどご紹介したように、参加者はPythonを使った画像解析や機械学習について事前学習で準備を行うことができるので、安心して参加することができます。

Tellus Satellite Boot Camp1日目

1日目の会場の様子

さて、いよいよTellus Satellite Boot Camp1日目です。参加者は20代~30代が多い印象ですが、年齢層はまちまち。和やかな雰囲気のなかでイベントがスタートします。

Tellus Satellite Boot Campについての説明

まずは、このBoot Campの目的や内容についての説明を受け、衛星データの活用が進んでいる背景などについて説明を受けます。現在は、民間でも数百機以上の衛星が打ち上げられていて、民間で最も高分解能な衛星では、車の向きや横断歩道を渡っている人影まで明確に把握することができます!

各国でも政府衛星データの民間への無償公開が進んでいて、アメリカ、中国、欧州でも定期的に広範囲を観測する衛星データは無料で公開されています。以前は衛星データといえば研究者など限られた人材にしか扱うことができないと思われていましたよね。それに高価で手間と規模が必要なものだというイメージがありました。

でも、時代が変わり衛星データは無料で公開され、さらにその他のさまざまなデータと組み合わせて使えるような時代がきたのです。これまでは莫大な費用と手間がかかった解析や調査も、衛星データを利用して機械学習やAIと組み合わせれば、容易に行うことができるようになったということですね。

実際、衛星データをビジネスとして行うスタートアップも増えてきているのがトレンドになりつつあります。

私達は、Tellusのおかげで衛星データを気軽に活用することができるようになりましたが、これって10年前に衛星データを扱っている人から見たら、ひっくり返ってしまうほどすごいことですよね。

衛星データの基本的知識

さて、衛星データの基礎知識や背景を理解したところで、次に衛星データを使った機械学習で何が出来るのかについて教えてもらいます。

まずは「一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)」のご担当者から「リモートセンシングについて」説明を受けます。

「リモートセンシング」とは、簡単に言うとリモート(離れたところ)からセンシング(状態を検知)すること。衛星データというと難しく感じることも、「リモートセンシング」という言葉で置き換えると、とても分かりやすくなります。

衛星データは、可視光、赤外線、レーダー波などが地表から反射された成分によって得られるものですが、機械学習やAIなどを組み合わせることで、従来は検知できなかった、もしくは、多大な手間が必要であった状態の変化を検知することが可能となります。

この「リモートセンシング」がリモート(遠隔)による、センシング(探査)であることを理解し、そのうえで衛星データを利用して「何を検知したいのか?」を明確にすると

  • ・可視光、赤外、レーダーなどどの波長のデータが必要か?
  • ・情報の範囲はどのぐらい必要か?
  • ・更新される頻度の許容範囲は?

といった課題も明確になり、それに該当する衛星データを探したり、組み合わせたりという方法があることを理解できるようになります。

いろいろな衛星データがありすぎて、それぞれのデータをどう使い分けすればよいのか分からないという方も、この説明で衛星データの種類と意味について理解することができるようになるはずです。

Jupyter Notebookを使ったTellus上の衛星データ画像解析演習

次に、Jupyter Labを使ったTellus上の衛星データ画像解析のハンズオンです。

Jupyter Labとは、プログラムの実行結果を記録しながら、データの分析作業を進めることができるツールです。

事前にJupyter Labで開くことができるデータが配布されるので、それぞれ何をしているのかを説明してもらい、そのうえで一通りサンプルコードの実行をして、何ができるのかを理解するための演習を行います。

開発系のハンズオンは、「講義を受けながら1度やっただけ」だと、理解しているつもりになってそこで終わってしまうことが多いのですが、Tellus Satellite Boot Campでは書かれたコードを利用しながら、少しだけ前提条件を変更して、実際に自分で確認しながらコードを変更することもできます。そしてそのコードが何をやっているかを確認しながら作業することができるので、より理解度が深まることになります。

衛星データ×機械学習概論

一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)のご担当者から、これまでのリモートセンシング業界と近年の業界の流れについての講義を受けます。ポイントは「オープン化」と「実用化」。

従来は高額な大型衛星を各国の政府が運営しているのが主流でしたが、近年は民間の会社がより少ない予算で製造できる小型の衛星を数多く運営するようになったということです。

衛星データのビッグデータ化が促進、さらにデータが「オープン」でフリーのものも増えたことと、衛星データを扱えるプラットフォームも登場したことによって、誰でも衛星データを気軽に扱えて分析可能な環境になったということですね。

そのデータと機械学習やAIを組み合わせ、衛星データを用いたリモートセンシングがビジネスとして成立し、いよいよ「実用化」のフェーズに入ったわけです。

Tellus Satellite Boot Camp2日目

さて、2日目は顔なじみも増えてさらに和気あいあいといった雰囲気のなかで講義がスタートです。

機械学習における物体検出概論

株式会社SIGNATEの高田さん

まずは、株式会社SIGNATEの高田さんと青井さんによる「機械学習における物体検出概論」です。

はじめに、今回取り組む「高分解能光学衛星データを用いた水域における船舶検出」の前に、「物体検出」という技術の理論的な話を伺います。

物体検出に関する基本的な知識を獲得し、衛星データを活用する為の素地を作ることがゴールです。

「物体検出」という言葉から何となくイメージが沸くと思いますが、実際は次の3つのタスクの積み重ねとなります。

  1. ①画像に何が写っているか?(画像分類)
  2. ②画像のどこに写っているか?(物体検出)
  3. ③画像のどこに何が写っていて領域はどこまでか?(画像セグメンテーション)

たとえば監視カメラの映像では、せいぜい自分の周り数10m程度の人間と似たような視界になりますが、衛星データを使うことで、もっと広い範囲の視界を得ることができます。

ただし、人間の能力で広域な衛星データの視界チェックするには限界があります。そこで、その視界の中でも「何を検出するか?」ということを明確にしてから「物体の検出」を行います。

これらのテクノロジーは日々進化していて、物体検出には多くのアルゴリズムが開発され、どんどん公開されています。

物体検出演習

株式会社SIGNATEの青井さん

「物体検出概論」が理解できたところで、いよいよ「物体検出演習」です。

Jupyter Labを使って、実際の衛星データから船舶を検出します。今回のお題は、「ASNARO-1から得られた衛星データを活用し、水域における船舶の位置を識別する」です。

事前に配布されたJupyter Labのファイルで、衛星データの画像から船舶であろう物体を検出するPythonのコードを学びます

用意されたJupyter Labのファイルを実行していくと、最後に学習モデルが「results.json」というファイルで出力されます。この学習モデルをSIGNATEサイトに用意されたイベント用のコンペにアップロードすると、評価点がもらえます。

今回は物体検出モデルとして、SSD(single shot multi-box detector)モデルを用い、予測時の水増しなどの検出精度を上げるための方法の検討を行い、誰が一番高い点数を取れるかを競争しました。

筆者は最高で0.44533。これは、参加者37人中23位という成績
ちなみに、トップの方は0.61200でした

この演習で、人間が見えない光を衛星は捉えることが可能であり、人間が到達困難なエリアも衛星で確認可能であることを体感しました。

今からでも学べる!衛星データ×機械学習!

以上、Tellus Satellite Boot Campのレポートをご紹介しました。

2日間のTellus Satellite Boot Campに参加したことで、これまでは漠然と理解していた「衛星データ」というものを深く理解することができ、「リモートセンシング」というキーワードによって、具体的にどのように利用するか、今後どのように活用していけるか、そして、そのためにはどんなスキルが必要なのかを学ぶことができます。

あらためて、衛星データを利活用するためのポイントを上げてみると、

  1. ①衛星データによってどんな変化を取得したいか?
  2. ②それは、どんな情報の組み合わせで取得できるのか?
  3. ③時間・画像分解能的に、元のデータにどこまでの精度が必要なのか?
  4. ④それを検知するための仕組みはどのようにつくるのか?
  5. ⑤検知の正確性はどれぐらいなら使えるのか?
  6. ⑥検知したものは、どのように出力するか?

といったことを考えながら、用意できるリソースと結果を照らし合わせてビジネスを考えていくことが大事なのではないでしょうか。

いずれにせよ、衛星画像と機械学習は相性抜群です。そして、衛星データの利活用は、世界的に見ても今後ますますスピードを上げ増えていきそうです。

誰でも簡単に衛星画像を解析できる時代になったからこそ、Tellusを活用して一緒にビジネスチャンスを掴んでいきましょう!

Tellusへの登録方法とe-learningの開始!

Tellusへの登録は、以下のユーザーマイページから開発環境の申し込みを行うことができます。「Jupyter Lab」の「仮想環境プラン」を選択し、申し込みを行ってください。不明点があれば、お気軽にお問合せください。

▼Tellus 公式サイト
https://www.tellusxdp.com/ja/sign-up

そして、このTellus Satellite Boot Campの内容が、e-learning形式で提供されることになりました!

「データサイエンス/AI入門」から、「Jupyter Labを使った衛星データ画像解析方法」「物体検出演習」など、衛星データやプログラミングの基礎知識、Tellusを使った衛星データの解析手順、分析実践などについて、動画教材を通じて効率よく無料で学ぶことができます。

「衛星データに関する知識を身につけたい」「衛星データをビジネスに活かしたい」という方は、ぜひお申込みください。

▼衛星データ活用技術者育成e-Learning「Tellus Trainer」お申込みページ
https://tellustrainer2019.peatix.com/