宙畑 Sorabatake

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Assure Spaceが衛星衝突の保険取り扱いを中止【週刊宇宙ビジネスニュース 3/9〜3/15】

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Assure Space、軌道上での衛星の衝突が保険の適用外に

3月9~12日の期間にワシントンで開催された”SATELLITE Conference & Exhibition2020”にて、Assure SpaceのマネジメントディレクターのRichard Parker氏が、同社が軌道上での低軌道衛星の衝突リスクをカバーする保険プランの提供をやめた事を発表しました。

Assure Spaceは、2011年に設立された宇宙保険を扱う引受保険業者です。Assure Spaceは2016年以降ニューヨークに拠点を置く多国籍損害保険会社であるAmTrustの傘下でビジネスを行っています。

Assure Spaceはこれまでに、ロケット・静止衛星・低地球軌道衛星・ISSミッションへの保険を多数提供してきました。しかし、既存のクライアントが保険を更新する際、衛星衝突に関する要項を削除しているとのことです。

Assure Spaceロゴ Credit : Assure Space

 Parker氏は以下のコメントを発表しています。

“I won’t pay in the event you have a collision in any circumstance. It would not matter whether the client’s satellite was involved in a collision or was hit by debris from a collision that occurred months ago.

(訳:どんな状況でも衝突が発生した場合は補償額の支払いは行いません。クライアントの衛星が衝突に関与した場合でも、他社によって誘発された宇宙ゴミに衝突してしまった場合でも、関係ありません。)

昨年9月にESAのAeolus衛星とSpaceXのStarlink衛星が衝突の危険性がありましたが回避に成功しており、軌道上で衝突が頻繁に起きているわけではありません。

しかし、今後衛星の数はどんどん増加していくと思われます。以下の図は、テキサス大学オースティン校の学生であるJames Yoderさんが作ったStuff in Spaceというサービスで表示された画像です。赤い点全てが人工衛星であり、現時点でもかなり多くの人工衛星が地球を周回していることが分かります。

今回のAssure Spaceの対応変更により、デブリ除去に取り組む軌道上サービスや、衛星やデブリの監視サービスを手がけるLeoLabsの重要性がより増してくるのではないでしょうか。

Stuff in Spaceで見た、軌道上にある衛星や宇宙ゴミの分布図 Credit : Stuff in Space

SpaceXが連邦通信局の予算に入札予定か

連邦通信委員会(FCC)は、農村地域にも通信インフラを整備させるプロジェクトに160億ドルの予算をつけていますが、そこにSpaceXも入札予定であることが分かりました。アメリカ国民の通信料によって捻出されたこの160億ドルという資金は、今年10月のオークションで、高品質な通信サービスを提供する入札者に支払われる予定です。

SpaceXが手がけている衛星通信網”Starlink”ですが、通信網として完成させるには12,000台の通信衛星が必要で、100億ドル近くの費用がかかると言われています。Starlink通信網が構築されると、世界中のあらゆる場所へ高速インターネットサービスを提供できるようになります。

しかし、SpaceXが入札に参加することに、競合他社は厳しい意見を投げかけているようです。光ファイバーケーブルを介してブロードバンドを提供する電話会社や電気会社は、SpaceXのStarlink衛星に、公的資金を投下することはギャンブルと同じであると批判的です。

それに対しSpaceXはFCCに対して、SpaceXが通信衛星システムで高速インターネットを提供できることを実証したことを主張する通達を送ったとのことです。
ウォールストリートジャーナルによると、SpaceXが入札に参加することに対して議会の側近やロビィストが、SpaceXをオークションに参加させないようにFCCに圧力をかける方法についての議論をしているとのことです。

同記事によると、議会の補佐官の一人が、以下のようなメールを送っていることも分かっているようです。

“This will be a political disaster if Elon F’ing Musk gobbles up billions of dollars of the public’s money,

(訳:Elon F’ing Musk(皮肉)が数十億ドルの国民のお金を飲み込んでしまうと、政治的大惨事になるだろう。)

今回の入札において、宇宙ベンチャーとしてではなく、通信業者として競合と争うことになるSpaceX。今回の入札を勝ち取ることに成功すれば、SpaceXとしては勿論、民間宇宙産業全体としても、大きな一歩になりそうです。

昨年5月のStarlink衛星の打ち上げで使用されたロケットのフェアリング Credit : SpaceX

ボーイングの株価が急落

宇宙大手企業のボーイングの株価が急落しています。
報道によると、昨年の事故以来生産停止中のボーイング737Maxの生産開始に向けて融資を行った金額が、枯渇するかもしれないとのことです。

ボーイングは、航空機や防衛部門だけでなく、宇宙部門でも様々なプロジェクトを受け持っている企業です。

Boeingのwebサイトに掲載されている宇宙部門 Credit : Boeing

スターライナー・SLS・アルテミスなど、有人宇宙探査にも遅れが発生するなどの影響があるかもしれません。

以下、同じく航空宇宙産業大手のロッキード・マーティンと比較してみました。

ボーイングとロッキード・マーティンの直近5年の株価変遷 Credit : NYSE

直近の下落はCOVID-19による影響かと思われますが、昨年からロッキードは右肩上がりな中で、ボーイングは右肩下がりに推移しています。

ボーイングの経営状態がうまくいかないと、さまざまな宇宙プログラムに遅延が生じるのは必至です。2019年末にCEOが変わったボーイング、果たして今後株価がどのように推移していくのか。技術的な動向と合わせて気にしたいポイントです。

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Assure Space won’t cover collision risk in low Earth orbit

Musk’s SpaceX Looking to Compete for $16 Billion in Federal Broadband Subsidies

SpaceX Seeks $16 Billion in Government Subsidies for Satellite Internet Project