中国が軌道上で3Dプリンターの実験に成功し深宇宙探査にまた一歩前進【週刊宇宙ビジネスニュース 5/4〜5/10】
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中国が宇宙空間での3Dプリンターの実験に成功
中国が独自の宇宙船を打ち上げ、無事に帰還
中国の宇宙産業の一翼を担っている国営企業である中国航天科技集団(CASC)は、長征5Bの打ち上げ成功を5月6日に発表しました。
ここ最近ロケット打ち上げ失敗のニュースが続いた中国ですが、中国の有人宇宙開発の軸となる長征5Bの打ち上げ成功は喜ばしいことです。
長征5Bは、地球低軌道(LEO)に22tのペイロードを軌道投入できる、中国のロケットのシリーズの中でも最大級の打ち上げ能力を持つロケットです。長征5Bは4基のロケットブースターを有する単段ロケットです。多段式のロケットではないことから構造がシンプルにはなりますが、精確な軌道投入を実現するには高度な制御・誘導技術が求められます。
今回長征5Bが打ち上げたのは、中国が開発する新型の有人宇宙船のプロトタイプです。2種類ある宇宙船の内、今回打ち上げたのは深宇宙探査用の21.6tの宇宙船です。
今回の宇宙船は全長8.8m・最大直径4.5mの大きさで、独自の推進力を使用し高度8000kmの遠地点まで到達しました。軌道上での様々な性能を試験したのち、5月8日に地球に帰還しました。
帰還の際も、新しい熱シールドを用いた高速再突入・パラシュートの展開・クッション性のあるエアバッグの着地などの様々な観点で検証を実施しました。
以下の画像が宇宙船の打ち上げ前後の比較です。
宇宙空間での3Dプリントに成功
今回の宇宙船にはなんと3Dプリンターが搭載されていました。
https://www.youtube.com/watch?v=lKssSDbOKpg
宇宙空間での3Dプリントの実証実験は、アメリカの宇宙ベンチャーのMade in Spaceが既に成功させています。しかし今回の中国の試みは、炭素繊維強化ポリマーの3Dプリントであり、世界初の事例となりました。過去にISSで宇宙飛行士が3Dプリントの実証試験を行った時と異なり、今回は全ての工程が無人で自動制御されていた点も重要な意味をもちます。
今回は、炭素繊維強化ポリマーを用いた3Dプリントで宇宙船の構造で重要なハニカム構造とCASCのロゴを軌道上でプリントし、地球に持ち帰っています。
炭素繊維強化ポリマーは現在、高い強度がある材料として、航空機やロケットの主要な材料となっています。今回はまだ実証実験ですが、炭素繊維強化ポリマーの宇宙空間での3Dプリント技術が確立すれば、軌道上での大型構造物の建設など、人類の宇宙開発の発展の観点から非常に重要な意義を有しています。
今後の中国の有人宇宙探査に引き続き注目です。
OneWebが所有する周波数の行方
3月に破産申請したOneWebは、債権者の補償のために同社が保有する周波数をオークションで競売にかける予定です。
Space Intel Reportによると、中国の2社・Eutelsat・Amazon・SpaceX・Cerberus Capital Managementが入札を検討しているようです。しかし、SpaceX CEOのElon Musk氏はTwitterで、SpaceXがOneWebの周波数をめぐる競売には参加しない意向の発言をしています。
Amazonは、完全子会社であるKuiper Systems LLCと共に、衛星ブロードバンドサービスの独自計画”Project Kuiper”を進めていますが、衛星の打ち上げや具体的なサービスインのスケジュールは一切発表されていません。
また、SpaceXは4月17日に、Ku-バンド・Ka-バンドのStarlink衛星のうち2824 機のStarlink衛星の軌道高度を1100~1330km から 540~570km に下げ、総衛星数も削減することを要求する申請書を提出しました。
その申請書に対し、Amazonは5月1日に抗議の文書をFCCに提出したことが分かりました。文書内でAmazonは、Starlink衛星に対して、運用が継続できている衛星の割合や数、承認されている内容について十分なデータを公表していないと指摘しています。
これを踏まえてFCCは、5月6日に、SpaceXに追加情報の提出を求める文書をSpaceXに対して送っています。同文書内で以下の情報の提出をFCCは求めています。
- ①Starkink衛星が軌道遷移が不可能な条件下で、NASAのデブリ評価ソフトウェアを用いた、Starlink衛星の軌道上衝突リスクの算出。
- ②ライセンスを取得済み或いは今後運用予定の他の人工衛星との衝突リスクへの取り組みについて、SpaceXがこれまでに実施した事例についての説明。
- ③これまでに打ち上げたStarlink衛星のうち、予定軌道高度で半永久的に機能を喪失した事例と該当高度についての明示。
- ④15年間のFCCのライセンス期間中に打上げられるStarkink衛星数の概算と1衛星あたりのミッション寿命の明示。
今後、複数の企業が衛星通信コンステレーションに参入することでしょう。軌道上での衝突リスクを定性的に評価するためにも、より詳細な情報開示が今後求めらることになりそうです。
トム・クルーズ氏がNASAと協力し宇宙での映画撮影へ
NASA長官のJim Bridenstine氏がTwitterで、トム・クルーズ氏がISSでの映画撮影にNASAが協力していることを明かしました。
https://twitter.com/JimBridenstine/status/1257752395750289409
この新作映画のタイトルや詳細は現在明かされていませんが、「ミッション・インポッシブル」シリーズとは別の作品になると見られています。
2020年の初めに、SpaceXはAxiomと、民間人の有料観光客3名をISSに運搬する契約を結んだことを発表しています。そのミッションは2021年後半に実施予定で10日間の宇宙への旅路となる予定です。もしかしたら、その3人のうちの一人がトム・クルーズ氏かもしれません。しかし、このプロジェクトにSpaceXが関わっているかというCNBCの問いに対しては、NASAはコメントを避けています。
宇宙産業の中で、エンタメ利用という切り口は注目されています。
AxiomとSpaceXが提供するISSへの滞在サービスは、一人当たり5500万ドルほどの費用感ではないか、と言われています。対して、トム・クルーズ氏が主演した映画であるミッション・インポッシブルや宇宙戦争の興行収入は2億ドルを超えています。敵役や撮影スタッフなど何名一緒に行くのか、というのにも依りますし、その他の場面の製作費等も考慮する必要はありますが、映画がヒットすれば5500万円(3名なら1.6億ドルほど)は十分に回収できそうな費用感に見えます。今回の結果によっては、トム・クルーズ氏に引き続き、他にもエンタメ領域での利用が続くかもしれません。
数々のアクション映画で世界中のファンを魅了してきたトム・クルーズ氏の宇宙空間での演技は、宇宙空間でのエンタメ利用の動きを加速化させるのではないでしょうか。
エンタメ文脈での宇宙利用にも引き続き注目です。
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