Withコロナ時代における「xData」の可能性とは?NewsPicks×Tellusコラボ対談レポート
新規ビジネスを生み出す上でデータの活用が注目されています。その中で衛星データがもたらす可能性とは?Withコロナ時代に必要になるデータの活用法とは?NewsPicks×Tellusのコラボ対談をご紹介します。
8月27日に開催された「Tellus SPACE xData Fes. -Online Weeks 2020-」のスペシャルコンテンツはNews PicksとTellusのコラボイベントです。
「ビジネスにおける、xDataの価値とは?」をテーマに、新規ビジネスの可能性やWithコロナ時代におけるデータ活用法についてディスカッションを行いました。
本イベントのポイント
・衛星データと地上データ両方の掛け合わせで無限大の可能性が広がる
・ビジネスに限らず、誰もが利用できるからこそ生まれるデータ利用の多様性
・Withコロナ時代で変わった世界の状況は衛星データだからこそ調べることができる
・これから先、最適な生活を選択する根拠に衛星データが貢献できるかもしれない
こちらのイベントの様子もYouTubeで配信しています。ぜひご覧ください
1.登壇者の紹介
今回のトークセッションの登壇者は以下の皆さまです。
・NOSIGNER 代表 太刀川 英輔 様
・アウトブレイン ジャパン株式会社 顧問 本間 充 様
・さくらインターネット株式会社 フェロー 小笠原 治
ファシリテーターは、タレントとして宇宙の魅力を発信する宇宙女子、黒田 有彩 様が務めます。
黒田:皆さん、こんにちは。黒田有彩です。本日はTellusとNewsPicksの共同制作によるオンライントークセッションを行いたいと思います。
さっそく、豪華ゲストをご紹介させていただきます。
さくらインターネット株式会社フェローの小笠原治さん、よろしくお願いします。
小笠原:ありがとうございます。さくらインターネット小笠原です。さくらインターネットではTellusという衛星データと他のデータを組み合わせていろいろなビジネスに価値を生んでいこうとプラットフォームを開発しています。よろしくお願いします。
黒田:お願いします。続いてNOSIGNER代表の太刀川英輔さん、よろしくお願いします。
太刀川:よろしくお願いします。デザイナーなので門外漢かもしれませんけど、今日は楽しみにしてきました。よろしくお願いします。
黒田:そしてアウトブレイン顧問、アビームコンサルティング顧問の本間充さんです。
本間:本間です。どうぞよろしくお願いします。いろいろな会社に属しているんですけど、実は東大の大学院の数学の先生だったりするので、今日はデータの話をたくさん聞けると思って楽しみにしております。最後までよろしくお願いいたします。
2.「衛星データとは?」「xDataデータとは?」「Tellusとは?」
黒田:お願いします。それでは早速、本テーマに入る前に「衛星データとは?」「xDataデータとは?」「Tellusとは?」についてご案内いたします。
今、さまざまな情報が収集・解析され、ビッグデータとして社会の中で活用されています。そんなビッグデータの1つとして衛星データが注目されています。
こうした衛星データをはじめとした、さまざまなデータを誰もが使いやすい社会、これを実現するため経済産業省の政策として、さくらインターネットが開発・運営しているのが、ユーザーに原則無料でデータを提供する衛星データプラットフォームTellusです。
Tellusは「衛星データを誰もが手軽に自由な利用を」というビジョンを掲げ、新たなビジネスマーケットの創出を目的とする衛星データをクラウド上で分析できる、日本発の衛星データプラットフォームです。
黒田:「衛星データ」と言えば、定期的に上空から地上の様子を撮影したデータのことなんですね。
例えば災害時の被災状況を把握したり、熱帯雨林の増減を調べたりすることができます。衛星データにより、陸域・海域・空域の多くの事象や状況を世界中どこでも把握することができます。
観測するセンサーにより上限はありますが、広範囲を周期的に、かつ長期間観測可能なのは人工衛星だけなんですね。
黒田:衛星データは、すでに海流による漁場予測や樹種・樹高判別、地盤沈下の検出など、さまざまなところで活用されています。
さらにTellusには衛星データだけではなく、地上データなども搭載されており、複数のデータを統合的に解析することで経済動向の把握や店舗出店の効率的な立地の選定などへの活用が期待されています。
しかし、これまでの日本では衛星データは一般的に利用しやすい環境にはなく、衛星データの加工には高い専門性や高価な処理設備・ソフトウェアが要求されることから、産業利用は限定的な状況でした。
Tellusはこうした利用者の衛星データ利用への参入障壁を取り除くため、衛星データおよびその分析アプリケーションなどの開発環境を原則無料で提供し、学習からビジネス創出まで一気通貫で提供しています。
黒田:またユーザーは、Tellusを特定のソフトをインストールすることなく、クラウドコンピューター環境で利用できます。
そしてマーケットでは、利用者はデータ、アプリケーション、アルゴリズムなどのツールを売買できるように今後なる予定です。解析や分析に必要なデータの購入や、完成したプロダクトを販売することも可能となります。
オウンドメディア『宙畑』では、衛星データに関する話題の紹介をはじめ、Tellusの使い方やデータ解析事例を随時ご紹介しています。
また、Tellusの利用を増やすためにハンズオンでのセミナーやイーラーニングの提供、衛星データ解析アルゴリズムコンテスト『Tellus Satellite Challenge』も実施しています。
Tellus利用者限定のコミュニティイベント『Tellus Satellite Cafe』も実施中なんですね。
小笠原さんにお伺いしたいんですが、今Tellusのユーザー数ってどれくらいなんでしょうか。
小笠原:2020年6月時点で1万6,000人ほど利用者として登録していただいています。
Tellusのローンチ後だいたい5,000人ぐらい登録いただいて、これが月にだいたい3%ぐらい成長する形でユーザーがどんどん伸びています。
この1万6,000人という数字はかなり、この業界にとっては大きな数字なのですが、そもそも宇宙産業は世界中でどのぐらいの市場規模があると思われますか?
黒田:世界中ですか?日本のJAXAの予算がだいたい2000億円いかないくらいですよね。
小笠原:そうですね。
黒田:なので、その10倍ぐらい?ちょっとわからないですね。
小笠原:世界中で見ると、宇宙産業って40兆円あるんですね。比較的、市場規模としては大きいです。ただ日本では、先ほどJAXAの予算という話もありましたけど、1.2兆円です。
これを1万人以内ぐらいの宇宙産業従事者の方たちが支えている。大半は研究分野です。
世界的に見ると、データの利活用というのが産業の市場規模の中ではかなりの割合を占めているんですけど、日本ではなかなかまだそういう状態にはなっていない。
宙畑メモ
宇宙業界の市場規模を詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。
宇宙ビジネスとは~業界マップ、ビジネスモデル、注目企業、市場規模~
小笠原:その中でTellusでは、データの利活用というところに1万6,000人ユーザーがいます。
さらに、25歳~44歳、いわゆる若手から中堅層がユーザーの大半を占めていてこれから新しい活用をやろうと感じていただいている気がしています。
黒田:本当に積極的なユーザーが1万6,000人という感じがしますね。ありがとうございます。そして、こちらなんと言っても、原則無料で提供されていると。こんなことが実現可能なんですね。
小笠原:無料というのをきちんと説明すると、まず政府衛星データのオープン&フリー化という、経済産業省の施策の中で生まれたというのが1番大きなポイントです。
今では宇宙基本計画という国の定めた計画の中にデータの利活用を、Tellusを使ってやっていこうと記載していただいていて、これからも政府衛星データは基本的に無料で提供していきます。
宙畑メモ
内閣府は、「宇宙基本計画」として、宇宙開発や宇宙の利活用、宇宙産業の育成など、日本が宇宙分野に今後数年どのような計画で施策を打っていくのかまとめています。2020年度更新され、安全保障の確保、防災や地球規模課題への対策、宇宙市場の拡大などの方針が明記されています。詳しくはこちら。
小笠原:ただ、我々はTellusマーケットというデータの売り買いできる場所もありますので、ここには地上空間のデータとか、衛星データ以外のデータも入っています。無料の衛星データと地上空間データを掛け合わせて分析をやっていただけるように、頑張って作っているところです。
黒田:そうなんですね。本間さんいかがでしょうか。
本間:お話を聞いて面白かったのは、僕は大学で数学も教えていたりすると、なかなかデータって一般には公開されていなくてうまくやれていませんでした。一般公開しているデータはすごく興味があることと、あとTellus Satellite Challengeという、Tellusのデータを使ったチャレンジプログラムが用意されているのは非常に興味あります。
これっていわゆるデータを活用したい人たちが、何かお題を与えられて皆さんで一緒にプログラミングとかデータ分析をするといった、大会みたいな感じなんですか?
小笠原:そうですね。基本的に我々で用意しているのは、テーマを出させていただきます。例えば1回目だと土砂崩れの検知だったり、2回目だと船舶の検知と識別の分類、3回目が流氷の検知というのをやってみたんですけども、衛星データから85%の精度で検知ができるようになっています。
合計、この3回で6,000件以上のアルゴリズムを投稿していただいているので、かなりの熱量で皆さん参加していただいている感じがありますね。
本間:データに興味がある人が集まったり、分析技術をどんな人がどんなところに持っているかってわかるので、とても面白い取り組みですよね。とても興味があります。
黒田:ありがとうございます。本日はこの日本発のクラウド環境で分析ができるオープン&フリーなプラットフォームTellusを軸に、衛星と地上の複数のデータを掛け合わせた新たなビジネス創出の可能性を議論していきたいと思います。皆様よろしくお願いします。
3.Tellusを活かした新規ビジネスとは?
黒田:それでは早速、1つ目のご質問をさせていただきます。Tellusを活かした新規ビジネスとはどういうものがあるんでしょうか。本間さんからお願いできますでしょうか。
本間:普段、科学とマーケティングと両方やっているので、非常に興味のあることはたくさんあるんですけど、1番最初に衛星データの利用で思いついたのは、実はサンフランシスコのナパバレーっていうワイナリーの話です。
サンフランシスコのナパバレーというワイナリーが実は衛星データを使って、どの畑にどんなものを植えたらいいかっていうのを大学生と一緒に取り組んでいて、ナパバレーのワインがフランスのワインと同じくらいのクオリティになったって有名な話があるんですね。
本間:日本もだんだん農業って法人化され始めているので、また大規模農業が復活しているんだと思うんですね。
そうすると衛星写真で見たときに、たぶんこの場所にはこんなものを植えたほうがいいだろうだとか、ここの丘陵地帯にはこういうものを放牧したほうがいいだろうっていうデータが、今まで以上に使えるんじゃないかなと思っています。
衛星データという極めて先進的なデータを使いながら、第一次産業という産業をもっとイノベーティブにやることはできると思います。
また、都市においても、今かなりテレワークにフォーカスがあたっているので、衛星データと携帯のデータを組み合わせて、例えば都市の熱量を測ることによって、本当に活動的な都市なのか活動的じゃないのかがわかったり、携帯電話の電波が使われているかどうかってわかると、日中人口みたいなものをアクティビティから測定できたりっていうこともわかると思うんですよね。
それから先ほど流氷の話もありましたけど、地球ってかなりの海洋部分が大きいので、海洋部分の測定をすることによって、広大な魚群探知みたいなビジネスって出てくるんだと思うんですよね。
衛星データを使ったデータビジネスって可能性があって楽しみだなって思います。
小笠原:一次産業と衛星データはやはりマッチングしやすくて、いろいろ取り組みはありますし、スタートアップも出てきています。
ただ、衛星データはどんなデータなのかということを知られていないっていうのが、いろいろなアイディアが浮かばない源泉だと思うので、僕らはそれをなるべくわかりやすく、データのオペレーションシステム「Tellus OS」を提供しながらやっていこうとしています。
例えば、先ほど言われた農業で言うと、地表温度とか、土壌水分量とか、こういったもので収穫時期をある程度予測して品質を保っていくことができます。
また、海で言うと、海にセンサーを置くってなかなか難しいので、海の状況を調べるのは衛星が得意です。こういう「一次産業×衛星データ」というのはわりと取り組みが多いところなので、もっともっと精度を上げていきたいですね。
黒田:ありがとうございます。太刀川さん、いかがでしょうか。
太刀川:やっぱり衛星データって面白いですね。僕もTellus登録してちょっと見ていたりします。
そもそも宇宙のコンテンツが好きで、衛星データを使った照明のデザインをしたりとか、インスタレーションのデザインをしたりとか、いろいろやっていたことがあります。デザイナーで門外漢ではあるんだけど、すごく好きな分野なので楽しみだなと思っています。
太刀川:衛星データは、皆さんよくご存じのことだから改めてということはないと思うんですけど、非常に使えるいいデータなんですよね。
なぜなら僕らって因果関係を理解するときに、目に見える周りのものってすごくわかるんだけれども、例えば風が吹いて桶屋が儲かるまでの認知を得られるデータってすごく得難い。
衛星が出る前というのは、神様が天災をもたらせてしまったから雨ごいをして防ぎましょうみたいな話だったけれども、今ではデータから天災が発生したつながりもわかったりするわけで、こういうことって衛星で空からの視点でデータを見られるようになったからだと言えると思うんです。
さっき皆さんもおっしゃっていたように、農業の分野の利活用ってすごく面白そうですね。
どこの土壌ないし、どこの地域がこの農作物に向いている、向いていないみたいなこととか、気候変動が進んでいくと変わっていってしまうので、例えば、新潟がお米を作るのに適しているのだと思っていたら、ロシアが実はお米を育てるのに最適かもしれないみたいなことがどんどん起こっていってしまう可能性があるわけですよね。
あと僕の関わっているプロジェクトだと、東京防災のプロジェクトであるとか災害ものが多いんですけど、突発的な豪雨でいきなり災害になってしまうようなことって事前に予測がすごくしづらいんですよね。
ただ、ここの海面温が上昇していたら災害につながる豪雨が起こりやすいっていう因果関係って、衛星データじゃないとつかめないわけです。
衛星データをうまく使うことで事前にアラートが出せるようになるかもしれないとか、そういったことも実現できると思いますね。
また、衛星で撮りためたデータを継続的にAIに食わせることができる。これはすごく大きいですよね。
データをAIに食わせ続けると、どんどん精度の高い予測につながっていく。しかもオープンデータとして無料で使えるというのはすごく価値のあることかなと思います。
でも僕個人的には、ビジネスの話だけにとどまらなくて、かねてより作りたいなと思っていたものがあるんです。
SDGsカードゲームってやったこと皆さんあります?
小笠原:聞いたことあるけど、まだないですね。
太刀川:SDGsカードゲームってどういうゲームかと言うと、カードを引いてお金稼ぐ人、地球環境を良くする人みたいに参加者の役割や、割り当てられる時間やお金が決まって解決する課題に取り組んでいくゲームです。
これを何度かやっていると、世界の状況メーターという経済と環境と社会を点数で表すパラメーターが変わっていきます。
「今、環境負荷がすごい高いけど、お金はめっちゃ儲かっている」とか、「社会を置き去りにして、やっぱりお金は儲かっている」みたいなことが可視化されるんです。
何が言いたいかって言うと、現実世界にそれがないんですよ。現実世界に「今めちゃめちゃお金は儲かっているけど、それは環境負荷をめちゃくちゃかけている」っていうことの尺度を普通に生活していると判断できないんですよね。
そういう情報って、衛星データがうまくアラートを出してくれると思っています。
例えば、世界の人々の消費量が、1年間に地球環境が生産できる自然資源の量を上回ってしまう「アース・オーバーシュート・デー」みたいな「今、地球環境はこういった状況です」っていうような情報って、すごいざっくりにしか僕らのところに伝わってこないですけど、それが「今ちょっと横浜市やばめ」とか、それぐらい身近な解像度で伝わってくると、経済に対してすごくインパクトがあると思うんですよ。
それに則っていないと環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なうESG投資は受けられません、といったことになってくると、「衛星データが世界を救う」じゃないけど、近しいことがあるのかなと。
そんな景色が見られると、Tellusみたいなものが出てきた価値が、普通の人にもわかってもらえるようになってくるんじゃないかなと思いますね。
小笠原:いいですね。ありがたいですね。
実は僕は京都芸術大学というところで、最新の技術とデザイン力で社会課題を解決するための人材を育てるクロステックデザインコースというのをやっていて、僕の生徒にはさくらのVPSっていうサービスにマインクラフトのワールドを、立ち上げられるスクリプトを提供しているんですね。
それでマインクラフトの話をしているときに、たまたま学生にTellusの話をしたら、世界中の変化を衛星データから可視化してマインクラフトのワールド作るというのをやりたいという話があって、すごくやりたいんですよね。
例えば、どこかで山火事がありました、もしくは大雨で洪水がありましたというのをマインクラフトの世界の中で見に行くことができます。
マインクラフトのブロックがちょうど衛星データで言う1ドットぐらいになりそうだなと思っていているんですよね。
そういう形で子供たちにも世界の変化を何か見やすい形にして伝えられるようにするというのは是非作りたいなと思いました。
太刀川:それめっちゃいいですね、そういう接点ってもっと身近にあったほうがいいからゲームってすごくいい接点になりますよね。
黒田:確かに、『あつまれ どうぶつの森』みたいに大人の人がハマるゲームとかにもなりそうな気がしますね。
小笠原:例えば駐車場の混み具合など、衛星データで調べることができるので、ある場所に行くとものすごい車が停まっているということが、パッと視覚的に見えるってけっこう大事だと思うんですよね。
黒田:まだやっぱり建物の中っていうのは解析はできないんですか?
小笠原:そうですね。建物の中はそれこそ衛星で見るというより、地上空間のデータとして組み合わせるべきデータになります。
例えば今、Tellusにはドコモ・インサイトマーケティングさんの人流データも載っていっていますけども、俯瞰的に見る衛星からのマクロなデータと、人がどれぐらい動いたかを調べることで、例えば人流データと衛星データで見たCO2の相関性が見えたときに、人流データまでは使わなくても大枠での予測がCO2だけでできるかもしれない。そういうデータの組み合わせというが今は1番楽しみですね。
黒田:確かに、その掛け合わせは無限ですね。
小笠原:そうなんですよ。
太刀川:掛け合わせが起こって、例えばここの海面温度が上がってリスクがあるっていう因果関係があるいは相関関係が見えたときに、それらがレポートされてくると、みんな探していたりするので、Tellusを使った価値ってまさにそこにあると思いますね。
これからのアップデートで「Tellusから見つかった因果関係」みたいなことがいろいろわかったら面白そうな気がしますよね。
本間:今まで日本国内において衛星データって気象データに使っていることが圧倒的に多かったじゃないですか。
気象庁って国土交通省配下で国の河川だとか道路が破壊されないかという予防のために衛星データを使っていたというのが今までの日本国内のデータの活用例なんですね。
ところが、Tellusのように日本国内での衛星データの民間開放って初のケースになってくるんだと思うんです。
今までの天気予報の掛け合わせと全然違う掛け合わせの仕方、もっと言うと誰も考えたことがないやんちゃな掛け合わせをどれだけみんなが考えらえるのかっていうのが1番すごい重要なところだと思うんですよね。
新オープンしたお店の周りと車の流れのデータや人の動きを組み合わせてみるだとか、いろいろな掛け合わせで今まで見たことがない世界をどれだけ僕たちが体験できるかが1番重要かもしれないですね。
黒田:それが生まれるためには例えば主婦の方だったり、おじいちゃんおばあちゃんだったり、いろいろな方が興味を持ってもらったら、いろいろな掛け合わせができそうな気がしますよね。
本間:おっしゃる通りですよね。
4.Withコロナ時代のデータの活用法
黒田:それでは2つ目の質問に行きたいと思います。
Withコロナ時代のデータの活用法とはどういうものがありますでしょうか。こちら小笠原さんいかがですか。
小笠原:そうですね。Withコロナ時代と切り分けるかどうかっていうのはありますけど、先ほど言っていたような、人はどれくらい動いているのかの予測みたいなところで言うと、これもうちの学生がこの秋にあるお店を開くんですけど、Googleマップの混雑度とかで、競合店の来店とかを調べつつ、どういう形でお店を運営していこうかみたいなことを考えていました。
ただ、今回のコロナの状況になったことによって、これまでのデータは使えないんですよね。
お店をオープンして今までの世界と同じように売り上げのために混雑させてしまってはいけないので。そういったところもどういうふうに違う予測をしていくか考えていく必要があると思います。
それに対してこの半年ほどではありますが、衛星データで世界中の動きというのは取れている。この世界中で取れているということが大事で、日本でどうだっただけではなくて、いろいろな国でこういう動きがあったというのが取れていると、予測に使えるデータになり得ます。
当然日本の衛星だけで世界中見えるわけではなく、米国であればAWSがデータを提供していたり、欧州ではコペルニクスというプロジェクトでデータを提供していたりします。
日欧提携のような形でヨーロッパのデータをTellusを通じて手に入れられるような状態にできれば、これからどんどんデータそのものがインターになっていく、世界中のデータが繋がる時代が来ると思います。
Withコロナに特化した話ではないんですけども、いろいろな地域でのデータがこれからの予測に使える、そのための方法を提供していくというのが、今僕らの考えていることですね。
Withコロナに関しては、今日お二人にもお聞きしてみたいですけども、広くアイディアを求めて、僕らがそれを実装できる環境を作っていくというふうにやっていけたらいいなと思っています。
黒田:ありがとうございます。太刀川さんいかがですか?
太刀川:Withコロナで僕が思っているのが、今だって何十万人の方が亡くなってしまっているという、すごくネガティブな状況なんだけど、中国がロックダウンをしていた最中に、ものすごい勢いで生態系が回復したんですよね。大気汚染の回復であるとか、そういった状況が見えたというデータってすごい貴重なものだと思うんですよ。
「世界を止めて」って言って止められることなんて通常はできないから、世界を止めるとどうなるということがデータを分析することによってわかったんですよね。
太刀川:身近なところでも、気のせいかもしれないけど「夕日きれいだな」とか、特に都会に住んでいたりするとそういう気がしません?こういった普通には得難い情報が得られた。衛星データで得られた。なので、これ分析すると面白いと思っています。
そしてWithコロナって、コロナも生態系の一部であるとしたら、やっぱり生態系との共生の話だと思うんですよね。
基本的にはスペース場所を取りすぎであるというのが我々人間だと思うので、自然と人間の関わる距離感がわかったと思うんです。
サービスというよりは地球の未来のために衛星データを使うと、すごく価値のあるプロジェクトを起こせるかもしれないという期待をしています。
そういう意味で僕はすごくTellusに心意気と意義を感じています。
あとそれとは別に衛星データと関わるところで言うと、どういう状況で住んでいくのが我々のWithコロナ時代における最適な住まい方、ないし生き方なのかということを考えるようになったと思います。
3密な状況で住むということは感染媒介を増やすということも改めて分かったことですが、オープンスペースが必要だったということを、我々は改めて理解した。
今までは都市の効率を上げるには過密にしていくのが良かったと信じていたんだけど、コロナで難しくなってしまった。
じゃあどういうぐらいのバランスの街が良かったのか。そういうのって衛星データを分析すると、今はシャッター街になっちゃっているかもしれない地方都市とかが、実はめちゃくちゃ将来的な不動産価値がある、みたいな話が顕在化するかもしれない。
そうすると、値段が高くなりすぎている都心中心部みたいなところに比べて、めちゃくちゃ地方がお得かもしれない。そのロジカルな裏付けとして、衛星データが使われるというのは、実は地方が活性化していくことにもつながったりするかなと思ったりします。
黒田:ありがとうございます。それでは本間さんいかがでしょうか。
本間:今ちょうど太刀川さんも言及しましたけど、おそらくコロナによって暮らし方が変わりましたよね。
今までは都市型生活者の方たちというのは、昼は出勤場所というオフィス街に行かれて、夜は住居地に戻るという暮らしだったと思うんですけど、昼通勤っていうのが徐々になくなり始めている中で、もう一度街っていうものの再定義が必要になったタイミングだと思うんです。
本間:おそらくいろいろな街がいろいろな取り組みをしていくと、昼夜人口があまり違わない街って生まれそうな気もするんですよね。
それを衛星データで見て「ここって昼も夜も同じ人が住んでいる」ってわかると、そこで起きていることを調べるのに今度は小さなデータであてていく、そして理由を見つけて、「ひょっとしたら近未来の私たちの生活の仕方にふさわしいかも」というヒントが出てくるかもしれません。
生活でいうと、おそらく日用雑貨品の買い方ですら変わり始めていて、昔だとスーパーに行って買うっていうのが普通だったと思うんですけど、今は通信販売で買うっていうのが普通になってきていますよね。
実は通信販売の商品を最終的に届けてくれる宅配便会社さんの宅配ネットワークって最適化されているの?って言うと実はそうでもないんです。空いているスペースを見つけて、あったから入っているっていう実態なんですね。
衛星データと、トラックの配送計画、ジオメトリーのデータ、それから住居データを組み合わせると、もっと最適な配送ロジックの仕方ってあるはずです。
もしかしたらスーパーに買い物に行ったほうがエネルギー量が少ないとか、宅配されたほうがエネルギーが少ないかもしれないっていう、検証ができるようになります。
コロナの先にある僕たちの進化した生活に向けて、多少妄想をして夢を見た計画を衛星データで実現できそうかという確認していくのがこれからのWithコロナかもしれないと思っています。
そんなデータ分析をしてくれる人も欲しいので、さっきちょうど黒田さんが言ってくれていたように、今までデータと疎遠だったという人がやんちゃなアイディアを言ってくれたら、逆にやんちゃなアイディアを証明したい分析者もたくさんいると思うので、全体のエコシステムが今回のTellusのデビューと共にできるとすごくいいですね。
そういう意味でも、Tellus Satellite Challengeというのは、今まではTellus側がお題を提供していたと思うんですけど、これからはいろいろな人たちが「こんなことできないの?」って投げてくれたら、Tellusのコミュニティの人たちが「いや、いけそうだ!」ってやってくれると、本当に見たことがない新しい日本の暮らし方とか、世界の暮らし方ができるんじゃないかなと思います。
Withコロナ、Afterコロナというよりは、夢のあるワクワクした将来像をTellusのデータで作れたらいいんじゃないかなと思いますね。
小笠原:ありがたいですね。正直、Withコロナっていう話を振られたときに、ちょっと困ったなと思ったのが、実はWithコロナというきっかけで、これまでも課題だったことに取り組めるようになっただけのことってけっこう多いんですよね。
例えば、日本の空室率っていうのは2033年に30%を超えると言われています。これはおそらく田舎が50%空室で、都心部は10%空室とか、極端なことになりやすかった。また、そこに対して何か考えを変えるきっかけもなかった。
でも今ならそれを、データを使ってこういうふうに社会的に変わるよ、世界的に環境が変わるよという予測をしていくことができるかもしれないですよね。
それが先ほどのSDGsみたいなところにつながっていくかもしれないです。
SDGsに関しても今、宇宙産業を盛り上げるべくSPACETIDEをやられている石田さんとか、SYNSPECTIVEをやられている白坂さんとかを中心に、「宇宙×SDGs」、その中でも「衛星データ×SDGs」という取り組みをしていこうという動きも出てきているので、期待していただきたいですし、僕らもその期待に応えられるように動いていきたいなと思っています。
5.xDataへの期待とTellusの展望
黒田:ありがとうございます。それでは最後に、本日の感想を皆様にお伺いできればと思います。太刀川さん、いかがでしょうか。
太刀川:ありがとうございます。すごく勉強になってお得だったなと思います。というのと、さっきの本間さんもおっしゃっていましたけど、すごく刺激的な問いかけをどうやって見つけていくかっていうのが大事です。
要するにデータはそのままではただのデータですから、そのデータを組み合わせたときに見えてくる相関関係や因果関係がセットでデータの扱い方ですよね。
そのときに、たくさんの方が見つけたものを共有されていくといいんだろうなと思ったんです。
因果関係・相関関係を発見したときに、それがアーカイブとして例えばTellusで「地球環境によさそうなデータがあった場合にはここに」とか「この地域がいけているというデータがあった場合にはここに」とか集まっている場所があって、自分でもちょっと調べてみようかなって思わせるような仕掛けがあると、そのデータがデータのままではなくて、意味を持ったデータとしてそこから抽出できるようになるんじゃないのかと思います。
それはブランディングだったり、デザインの話につながってくると思うんですよね。
僕も今データサイエンスのスタートアップのブランディングとかしているので、将来がマシになりそうなデータをどんどん見つけてやるぜ!っていう人たちがいると、一緒に何かをやれるかもしれないです。
きっと小笠原さんなんかも、どういう未来を作ることができるんだろうと考えながらTellusをやっているんじゃないかという感じが今日の話からもしたので、いろいろなデータがどういうふうに世の中に広がっていくのかが楽しみになる対談でした。
黒田:ありがとうございます。本間さん、いかがでしょうか。
本間:まず、今日このトークセッションを見られた方はすごく贅沢な時間だったんじゃないかなと思います。というのは、たぶん本当に新しい夜明けというか、新しいシーンの入り口に皆さん立ってられているんじゃないかなと思うんですね。
実はTellusを展開するさくらインターネットさん自身が「インターネット」とついているように、実はインターネットの歴史自身がこういう歴史だったと思うんです。
もともと軍事技術だったインターネットという技術で、アカデミックしか利用できなかったものが、今は商業ベースで利用できることになって、皆さんハッピーにインターネットを使っている。
衛星も同じように、もともと軍事技術としてしか使えていなかったものが、科学利用が進み、そして今、データが民間開放されるようになった。
そのことにより、インターネットで得られた僕たちの幸せと同じくらい、たぶん衛星を使ったデータ、衛星によって撮られたデータによって僕たちの新しい幸せな生活って作れるんだと思うんですね。
ただ、何が幸せなのかっていうのはみんなで考えなくちゃいけない。
そこは頭の悩ませどころなんですけども、明らかに新しい衛星データの利活用の入り口に皆さん立たれたので、ここからはアイディア勝負で、みんな同じスタートラインに立って、先ほど太刀川さんが言ったように楽しみながら、ワクワクする将来のためにデータ活用をしていければいいんじゃないかな。
僕も数学者なので、お手伝いしたいなと思いました。ありがとうございました。
黒田:ありがとうございます。
小笠原さん、本日の感想とそしてTellusの展望もお聞かせいただければと思います。
小笠原:今日は楽しかったです。ビジネスっていうお題がついているので今日はなかなか出せませんでしたが、衛星のデータとか宇宙のデータを使ったデザイン、アート、この分野はこれからものすごく開けていく気がしていますので、このあたりの話も機会があればディスカッションできたらと期待しています。
あとは僕自身、今までデータというのが個別最適化のための使われすぎてきたという課題感があります。
Tellusに関わる前は、ものづくりIoTというところを主戦場にやっていましたので、個別最適化にものすごく向いた仕事をしていました。
Tellusに関わるときに「衛星データも、IoTみたいなものでしょ?」と言われて、確かに衛星ってセンサーだねってなったんです。
その視点で見たときに、地球全体のために最適化を考えられるデータなんじゃないかなということで、当時それまでは宇宙なんて全くの素人だったんですけど、この世界に飛び込むことになりました。
Tellusはまず基本的な機能の整備とデザインっていうところは、Goodpatchさんとも一緒にやらせていただいて進めてきました。
ここにあとデータですね。もっとデータを増やさないといけない。そのデータが利用者が使いたいものにつながるか想起してもらえるようにしていかないといけないと思っています。
また、Tellusのコアコンピタンスとしては、データ、コンピューティングリソース、APIなので、このコンピューティングリソースをいかに使いやすく提供するか、ここに力を入れていかないといけないと思っています。
例えばJupyter Notebookみたいなすぐに解析を始められるような開発環境をクラウドで提供していますので、それこそ本間さんの周りの方にも使っていただいて、数学者がなんらかビジネスのきっかけを見つけるみたいなことがあってもいいな、というようなことを期待していたりします。
黒田:ありがとうございます。本当にTellusがユーザーの方と一緒に作られるサービスなんだなということを、本当に今回改めて感じました。より良い未来のために、たくさんアイディアが出てくるといいですよね。
ということで、皆様本当に有意義なお話、優位意義なお時間、そして貴重なお話ありがとうございました。
6.まとめ
Tellusに搭載されている衛星データや地上空間データから生み出される無限の可能性について、また、Withコロナの時代によって今までと変わってしまった世界とこれからの暮らし方について衛星データが貢献できることについてディスカッションしていきました。
自分の周りの状況だけではなく、世界中の状況を調べることができる衛星データだからこそ、今まで考えられなかった利用方法を再発見し、新たなビジネスチャンスを生み出すきっかけを作ることができるかもしれません。
また、コロナの状況によって、今までと違う生活様式に徐々に変わろうとしていく中で、どう生活していくことが最適なのか、分析する上で利用できる一つのデータとして衛星データが貢献できることにも今後期待が高まってきているといえるのではないでしょうか。
誰もがデータを使い、新たなアイディアを生み出すチャンスが広がっていく中で、どのような人によってどのようなアイディアが生まれてくるのか楽しみです。
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