オープンデータ活用事例28選とおすすめのデータセット、都道府県別サイト一覧【オープンデータの基本から解説】
増え続けるオープンデータについて、興味深い活用事例を厳選し、また、オープンデータセットを宙畑でまとめてみました。
「【事例付き】ビッグデータ時代に持つべき”データ活用に必要な視点”とは」にて、オープンデータの今とこれからをオープンデータ伝道師の福野さんにインタビューした内容を掲載しました。
本記事では、オープンデータについてさらに調査を進め、どのような活用事例があるのか、また、世の中にどのようなオープンデータがあるのかをまとめました。
無料のオープンデータがビジネスをアップデートする、その面白さをご紹介できればと思います。
(1)オープンデータとは
まず、本題に入る前にオープンデータとは何かという定義から紹介します。
「OPEN DATA HANDBOOK」を見ると、オープンデータとは、「自由に使えて再利用もでき、かつ誰でも再配布できるようなデータのこと」とあります。また、オープンデータとして「利用できる、そしてアクセスできる」「再利用と再配布ができる」「誰でも使える」の3つが特に重要であると述べられています。
つまり、オープンデータとして公開されているものは、誰もが自由なアイデアをもって利用でき、付加価値をつけることでサービスやビジネスを始められるとも言えます。
※オープンデータを扱うにあたっていくつかルールもあるため、詳しくは第3章で解説します
では、2009年にアメリカとイギリスで始まったと言われるオープンデータを活用した事例は現在どのようなものがあるのか。次章では宙畑が100以上の事例を見て、他の業界でも応用できる可能性がある、もしくは、ビジネスとして面白いと思ったものを厳選して紹介します。
(2)100以上もの事例から宙畑編集部が厳選!オープンデータ活用事例28
オープンデータ活用事例を紹介するにあたって、本記事では活用事例を以下の4つのグループに分類しています。
1.オープンデータを基盤に新規サービス創出(新価値創造型)
2.既存サービスにオープンデータをプラス(ビジネスアップデート型)
3.地域観光・地域行政を変えるオープンデータ活用事例
4.宙畑レコメンド! ユニークなオープンデータ活用事例
それではさっそく事例を見ていきましょう。
■オープンデータを基盤に新規サービス創出(新価値創造型)
①新型コロナダッシュボード
タイトルの通り、日本国内の新型コロナウイルスの感染者数、病床数とその使用率を47都道府県ごとに一覧で確認できるダッシュボードです。
各地方自治体が出している新型コロナに関するデータを元に作成されています。
このダッシュボードを作成している福野さんにインタビューを行っていますのでこちらもぜひご覧ください。
②Beyond Floods
アメリカで展開されているWebアプリで、アメリカの95%の住民が自分が住んでいる場所の洪水リスクを把握することができます。リスクの判定には米国勢調査局、ニューヨーク市情報技術局、米海洋大気庁などが提供する標高データ、過去の洪水被害に関するオープンデータが使われています。
また、このデータは保険料の推定にも利用されているようです。
③Viomedo(臨床試験マッチング)
ドイツの臨床試験登録台帳オープンデータを利用した臨床試験と臨床試験の条件に合う患者とをマッチングさせるプラットフォームです。
新しい治療方法や新薬の開発にあたって、臨床試験の必要がある一方で、臨床試験に必要な患者が見つからずに進捗が悪くなるという課題があり、本サービスが生まれました。
患者にとっても自身の抱える病気をいち早く直せるかもしれないというニーズをかなえられる、まさにWin-Winのサービスと言えます。
利用しているデータはシンプルで、患者が臨床試験を見つけやすいように情報を整理したことでサービスに昇華した、というまさにオープンデータの活用事例としては理想形のひとつでしょう。
④Spotify
多くの人がその名前を聞いたことがあるであろう音楽ストリーミングサービス「Spotify」も実はオープンデータが利用されています。
Spotifyの音楽に関するメタデータ(アーティスト名、タイトル、言語、日付、国、バーコード、フォーマットなど)はオープンデータで、MusicBrainz提供のものが使用されています。
MusicBrainzは、音楽作品のウィキペディアのようなもので、有志で音楽作品のメタデータが投稿されて公開されています。
⑤Fooducate(食品の栄養価を評価)
米国労働統計局、食品栄養サービス(MyPyramid Food Raw Data、Food-a-pedia)が提供する食品の総カロリー、食べ物と飲み物のカロリー含有量などのオープンデータを利用したスマートフォンアプリで、食品のバーコードをスキャンするだけで含まれている栄養価を調べることができます。
また、栄養価を調べた上で、その商品よりも栄養価が高い代替品がある場合それをレコメンドしたり、また、目標を設定して摂取カロリーと体重をウォッチする機能もついているようです。
⑥カーリル
各自治体の持つ図書館蔵書データベースを束ねることで、全国6,000以上の図書館の蔵書情報と貸出状況を簡単に検索が可能になったサービスです。
利用者は本のタイトルを入力すれば、現在地から近い図書館の蔵書・貸出状況を確認することができ、Amazon等の書誌データベースと連携しているため、すぐに欲しい場合は購入もしやすく導線が設計されています。
この事例も地方に点在していたオープンデータを一か所に集めて検索ができるように整理することでひとつのサービスが出来上がったというオープンデータ活用事例の理想形と言えます。
⑦Young Europeans
ヨーロッパの家族、仕事、自由時間、勉強、インターネットに関する統計データを用いて、16 歳から 29 歳の若者が、さまざまな指標で自分自身を EU の平均的な若者と比較できるサービスです。
日本でも他人と比較するというのは人気サービスでよく見られますが、ヨーロッパでも平均との比較というサービスが生まれているのは興味深いですね。
⑧全球変化検出サービス「GRASP EARTH」
全球変化検出サービス「GRASP EARTH」は、衛星データを用いて任意の場所の地理空間情報を「地球上のあらゆる地点で」「同品質のデータを」「時系列に」比較できるサービスです。GRASP EARTHを用いれば、2020年のコロナ下で世の中がどのように変化したのかを全球規模で確認することができます。
GRASP EARTHを開発したのは株式会社Ridge-iで、Ridge-i社は駐車場のシェアリングサービスを行っているakippa社、衛星データプラットフォーム「Tellus」の事業を行うさくらインターネットの3社で「駐車場スペースを衛星データで自動検出する共同研究開発」にも取り組んでいます。
【関連記事】
・全球変化検出サービス「GRASP EARTH」とは?
・駐車場に使える場所を衛星データで自動検出。akippa、Ridge-i、さくらインターネットが取り組むサービス化の課題と改善点
■既存サービスにオープンデータをプラス(ビジネスアップデート型)
⑨Coaido 119
119 番通報をしながら現在地周辺の必要な施設、人にSOSを発信できる緊急情報共有アプリです。AEDの設置箇所のオープンデータが使用されており、利用者は現在地周辺のAEDマップをすぐに閲覧することができます。
⑩不動産選びxオープンデータ
不動産xオープンデータ事例は探してみると様々なものがあり、面白いと思ったものを3つ紹介します。
・不動産仲介サービスに校区情報をプラス!
株式会社駅前不動産が提供する物件探しサービスには、校区情報のオープンデータが利用されており、今見ている物件がどの公立学校の校区内なのかを合わせて見ることができます。
子育て世帯が引っ越しをする際に役に立つと好評のようです。地理空間データと相性の良いオープンデータは、私たちの住居探しをするうえで痒いところにも手が届くサービスの発展に繋がるため、どんどん増えてほしいですね。
・NeighborhoodScout(その土地の様々な観点からの評価)
アメリカで利用されているWebアプリですが、犯罪発生率、住宅価格、学校の質などの様々なデータを元に今見ている物件の周辺地域の住みやすさを可視化し、評価をするサービスです。
引っ越しは、物件そのものではなく、周辺環境の変化の方が住みやすさを決めると言っても過言ではありません。引っ越しする前に周辺環境がどうなのかということを知ることができるのはとても良いサービスですね。
・スマイティ「住みやすい街」
日本版「NeighborhoodScout」とも言えるのが株式会社カカクコムが提供するスマイティの「住みやすい街」です。このサービスでも犯罪率や人口データといったオープンデータが活用され、住みやすい街の評価を行っています。
⑪komoot(アウトドアアドベンチャーのルート検索とナビゲーションを支援)
アウトドアを楽しむ人のため、その人に合わせたのルート検索とナビゲーションを行うアプリです。オープンデータとしてはアウトドアスポット情報、人工衛星から取得した標高データ、Open Street Mapが用いられており、利用者は目的地点までの最適なルートやその行程の起伏などを閲覧することができます。
⑫ruprun
ランニングのモチベーションを高めるため、ユーザーの希望に沿ったランニングコースを提案するアプリです。本サービスでは銭湯の場所や観光施設、公衆トイレなど、主に公共施設のオープンデータが使用されています。
夜道が心配、休みながらランニングしたいといったユーザーの不安ニーズにも応えられるような設計がされています。
⑬いこーよ
おでかけスポットやイベントの検索と、おでかけスポットの口コミ投稿を共有できるサービスです。おでかけスポットやイベント情報として、自治体が提供するオープンデータが利用されており、いこーよを見ればその地域のおすすめのスポット・イベントをすぐに確認できます。
⑭Zaim
500万人以上の方が利用する家計簿・会計アプリ「Zaim」にもオープンデータが活用されています。
利用されているオープンデータは国や各自治体が提供する給付金・手当・控除情報。例えば家計簿をつけながら医療費控除を受けられる可能性がある場合はレコメンドをしてくれるなど、普段自分から申請しなければ得られずにもったいない思いをしていたものも漏れなく知ることができます。
⑮LIVE JAPAN
「LIVE JAPAN PERFECT GUIDE」もオープンデータを活用して観光に便利な情報を集めたサービスで、様々な企業が参画して運営されています。
データとしては、文化財一覧、観光施設一覧、公衆無線LANアクセスポイント一覧、公衆トイレ一覧、AED設置箇所一覧など、日本のことを知らない訪日外国人の方が観光を楽しむため、万が一のために必要な情報を集約しています。オープンデータを最大限活用することでスマホ一台で日本観光を安心・安全に楽しむことができるようになった良事例でしょう。
■地域観光・地域行政を変えるオープンデータ活用事例
⑯chariP naVi
駐輪場一覧、京都市認定レンタサイクル店一覧、観光施設情報のオープンデータを用いた、住民や観光客が京都の歴史や文化、伝統的な美しい街並みを自転車で楽しむための京都案内サービスです。
利用者はアプリを確認するだけで自転車を借りる場所、停める場所、観光できるスポットを一挙に閲覧できるため、京都を楽しむことに集中できます。
アプリの提供者は「京の歴史と街並みをつたえ隊」とその名前から京都を思いっきり楽しんでほしいという気持ちが伝わります。
⑰Bmaps/Wheelog
障害者、高齢者、ベビーカー利用者など、階段やエスカレータといった設備を移動の際に利用できない方のためのオープンデータを活用したサービスが複数あります。本記事では「Bmaps」「Weelog」の2つを紹介します。
・Bmaps
文化施設におけるエレベーター、多目的トイレのバリアフリー情報のオープンデータを用いたバリアフリー地図アプリです。
地図としての機能だけではなく、店や施設の快適さに関する 5 段階評価の「スポットレビュー」と、「入口の段差」の数といった情報もアプリ内で得ることができます。
・Wheelog
車いすの利用者同士が、GPSを活用して車いすで移動したルートを地図に記録し、車いすが通行できる道を共有できるアプリです。また、移動ルート以外にも施設のバリアフリー情報も投稿可能で、利用者が増えるほどバリアフリーマップが完成していくサービスになっています。
ユーザーの投稿するデータもオープンデータとなることでより大きくて細かなところにも利用者のサポートができるサービスとなっていきます。
⑱My City Report
利用者が地域の公共インフラに関する問題を投稿すると該当地域の担当課に連絡が届き、対応の実施有無をアプリ内で確認ができるサービスです。
元々はちばレポという千葉市の取り組みから始まったものですが、現在は「My City Report」と名前を変え、複数の地方自治体で利用されています。
【関連記事】
千葉市民の“困った”を直接行政に届ける「ちばレポ」! 行政xオープンデータ先行事例の今
⑲バスロケ(バスロケーション)
停留所情報(名称・緯度経度)、運行系統、系統番号、現在位置、遅延情報、行先情報(リアルタイム情報)などのデータを用いて、事務所での正確な運行管理を実現するシステムです。現在ではバス利用者向けにも必要な情報を公開しています。
※現在複数の地域でバスロケのサイトが展開されているようです
システムを構築できたことで、乗客からの問合せに対して、バスの通過時間と速度などを1秒単位で調べて回答が可能。バスロケで得られた情報は、次期ダイヤ改正にも役立てられているとのこと。
㉙除雪車ナビ
バスロケの事例とも似ていますが、市道除雪路線データ、除雪車走行データを用いて除雪車が今どこにいるかを把握できるサービスです。会津若松市では除雪に関する問い合わせや苦情が市民から毎年1,000件以上寄せられていたとのことですが、走行状況を把握できるようになったことで除雪の最適化と苦情の削減につながったとのこと。
㉑交通事故予防のためのオープンデータ活用
オープンデータを用いた交通事故予防の取り組みも進んでおり、本記事では2つ紹介します。
・セーフティマップ
HONDAが取得する急ブレーキの発生個所のデータと自治体の交通事故情報、ゾーン30(生活道路における歩行者や自転車の安全な通行を確保することを目的とした交通安全対策の一つ)のデータを用いて事故多発箇所や要注意箇所を地図上に提示するサービスです。
・交通事故予測アプリ
こちらは実証実験段階ですが、セーフティマップと同様にNTT 西日本香川支店の社用車のドライブレコーダで記録した、急ブレーキや急ハンドルなどの「ヒヤリハット」データ約 2 万件と香川県警が保存している過去 5 年分の交通事故データ、 高松市の教育・福祉施設の場所やイベント情報などのオープンデータを用いて交通事故を予測するというアプリの開発も進んでいるようです。
㉒全国避難所ガイド
全国の避難所、広域避難場所、一時避難場所、帰宅困難者一時滞在施設、津波避難施設等に関する情報のオープンデータを集約し、近くの避難所の把握と非常時におけるルート案内を提供するサービスです。
本アプリを入れておけば全国の避難所を一挙に確認できるため、非常時のために入れておきたいアプリの一つでしょう。
㉓Intelligent Zoning Engine
ベルリンでは人口構成が急速に変化、小学校区の設定は非常に困難な問題となっているようで、その問題に対応するために作られたのが本サービスです。ベルリン市が提供する全住所データ、人口統計情報、小学校の住所データなどを用いて、の小学校区を最適化してくれます。
日本でも人口が急激に動く地域があるため、同様のアプリケーションのニーズはあるでしょう。
また、人口や街の変化に対して、校区のみではなく特定の事象を最適化するという観点では様々な応用が考えられます。
■宙畑レコメンド! ユニークなオープンデータ活用事例
㉔ザ・地域統計パワーバトル
まずはサイトを訪れて触って欲しいサービスです。
サイトを訪れるとすぐに2つの任意の地域を選ぶよう誘導されます。
2つの地域を選択してバトルスタートというボタンを押すと、人口データ、男女比データなど主に行政が提供するオープンデータを用いて2つの地域を比較し、勝者の地域を教えてくれるというシンプルなものです。
地元や今住んでいる場所、引っ越しを検討している場所がどんな場所かを把握できます。
㉕ビブリオマップ 神戸版
青空文庫が提供する著作権が消滅した作品や著者が許諾した作品のテキストオープンデータを用いて、神戸の地名に関するテキストが登場する書籍をレコメンドするサービスです。
アプリ開発の背景として「街が潜在的に持っているイメージ」を可視化しようという試みだったとのことですが、観光者向けにその場所をより楽しむためのサービスとしても活用ができそうで、ぜひ神戸版に限らず全国版ができるとよいなと思います。
㉖JITOZU
画像ポータルサイト「flickr」の画像を鉄道地図の上に配置して楽しめるプラットフォームサービスです。マップ上の鉄道路線に沿って多数の鉄道写真が掲載されており、鉄道写真の閲覧をするだけでもよし、自分が撮影したい鉄道写真のロケハン代わりに使用するもよしと、鉄道写真に限らず様々な横展開が考えられるサービスです。
㉗Silhouette Guessr
Silhouette Guessrは、国土交通省が進める3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化のプロジェクト「PLATEAU」のデータを用いて作られた、一人称視点の街の景色から自分がどこにいるかを地図上で当てるゲームです。
今回事例を厳選するにあたって以下資料、サイトなどを参考にさせていただきました。
・オープンデータ活用事例集(平成31年3月)
・オープンデータ100
・オープンデータ利活用ビジネス事例集
・オープンデータ活用調査報告書(各自治体のオープンデータ活用事例集)
㉘国会議案データベース
衆議院、参議院の過去20年分以上の議案のデータ、計約1万8,000件を収集、整理の上、オープンデータ化してGitHubで公開されています。提供開始したのは、スマートニュース株式会社のシンクタンクである「スマートニュース メディア研究所」で、主に報道機関や研究者向けに無償で公開されています。
これらの情報は、国会の回次ごと、また議案ごとにページが分かれて掲載されているため、すべての期間を通じて、集計や検索、一覧を行うには、合計で1万ページ以上のデータを収集する必要があったとのことで、「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」をミッションに掲げる同社は「選挙や政治のデータを始めとした、公益性の高い情報を、より多くの方へ分かりやすく届けていきます」とプレスリリースで語っています。
分散した情報をデータベース化して整理して検索性を高めるという、素晴らしいオープンデータ活用事例です。
⇒国会議案データベース(衆議院・参議院)を見る
※プレスリリースを見る
(3)オープンデータを利用する前に知っておきたい「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」
オープンデータの活用事例を知ったところで、さっそくオープンデータを使ってみたい!と思われるかもしれませんが、まずはオープンデータの利用ルールを把握しましょう。
ルールと言っても基本的にはデータをオープンにしてより多くの方に使っていただきたいというのがオープンデータですので、あくまでもオープンデータを安心・安全に活用していただくために押さえておくべきポイントとしてご覧ください。
まず、「オープンデータ基本方針」によると、下記の3つの項目全てに該当するものがオープンデータと定義されています。
1.営利目的、非営利目的を問わず二次利用可能なルールが適用されたもの
2.機械判読に適したもの
3.無償で利用できるもの
では、どのようにオープンデータかどうかを判別すれば良いのでしょうか。データには「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)」というデータの著作者がデータの扱いについて意思表示をするための国際的な著作権ルールがあり、CCライセンスを確認すれば、オープンデータか否か、また、そのデータの利用ルールを確認することができます。
CCライセンスには4種の条件があり、その組み合わせで以下6種のライセンスがあります。
※「総務省 ICTスキル総合習得教材」「クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは」を参考に作成
つまり、オープンデータのサイトを見たときに、CCライセンスが「CC BY 4.0」「CC BY-SA 4.0」となっているものはオープンデータの定義に沿うもので、それぞれの利用ルールに沿って営利目的に使え、改変も許されているデータとなります。
また、出所表記不要の利用形態として、「CC0(パブリック・ドメイン)」というものがあり、これについてもオープンデータの定義にあてはまるものと考えられています。
以上、オープンデータを利用する際に知っておきたい「CCライセンス」について紹介しました。また、CCライセンスの記載がないものもありますので、その際は利用規約をきちんと確認しましょう。いずれにせよ、ルールに則り、オープンデータを思う存分活用いただければと思います。
(4)オープンデータのデータセットまとめ
では、いよいよ世の中にどのようなオープンデータがあるのかについて、本章で紹介します。
本記事ではオープンデータをその出所を基準に以下3つに分類し紹介します。
①国内外の国家機関・国際機関発のオープンデータ
②地方自治体発のオープンデータ(日本のみ)
③民間企業発のオープンデータ
①国内外の国家機関・世界機関発のオープンデータ
■国(主に日本政府)が主導して提供するオープンデータ
まず、日本のオープンデータは「データカタログサイト」というポータルサイトに各省庁の出すデータがまとめられており、「e-Stat」には政府統計情報がまとめられています。また、2022年1月11には、総務省がデータサイエンスのオンライン講座「誰でも使える統計オープンデータ」を開講し、オープンデータに今後も力を入れていく姿勢が見受けられます。
本記事では、数多あるオープンデータのなかでも、よく利用されているだろうオープンデータを紹介します。
・国勢調査
国勢調査は、年齢別の人口、家族構成、働いている人や日本に住んでいる外国人などのオープンデータを確認できます。国勢調査は5年ごとに実施されています。
・気象データ
その名の通り、日本全国の過去の気象データがオープンデータとして公開されています。特定地点の特定時期の気象を知りたい、使いたいというときに利用できます。
・農林水産省統計表
日本の農林水産業の各分野の主要な統計について、農林水産省の統計調査結果を主体に他府省、各種団体などの統計調査結果をまとめて確認できるオープンデータです。
農家数及び世帯員数や就労形態、収入状況、耕地面積など、一次産業における様々なデータを閲覧したい場合はぜひここからデータをご確認ください。
・犯罪発生情報
全国の都道府県警察が出しているもので、犯罪が発生した場所と犯罪の概要が確認できるオープンデータです。
オープンデータ活用事例でも住みやすさの評価などに利用されているほか、犯罪発生予測によるパトロール強化地域のレコメンドに利用されています。
・歩行空間ネットワーク
データカタログサイトで最もアクセスが多いオープンデータが「歩行空間ネットワーク」です。
特定地域の段差がある場所や幅員などのバリアフリーに関連する情報がオープンデータとして公開されており、歩行者の利便性向上に使用されています。
・衛星データ
衛星データも現在は一般の人が無料で使用できる形で公開されているものがあります。
ただし、一部データ(landsatなど)を除いて有償利用については許諾が必要なものが多いため、オープンデータの定義からは外れますが、無償での利用においてはある程度の自由度があるため、ぜひ本記事で他のオープンデータと組み合わせて触ってみてください。
衛星データを閲覧したい場合は衛星データプラットフォーム「Tellus」「Google Earth Engine」「EO Browser」をご覧ください。
・PLATEAU
PLATEAUは、国土交通省が進める3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化のプロジェクトです。日本の都市をオープンデータとして公開することで個人や企業、自治体が自由に利用し、様々なユースケースを見つけていくことが狙いで、2021年9月時点では、24都道府県の複数都市のデータが公開されています。
⇒PLATEAUを見る
・国外のデータポータル
これまで主に日本のオープンデータを紹介しましたが、もちろん日本以外の各国も様々なオープンデータを提供しています。本記事ではアメリカとEUのオープンデータポータルとアジア開発銀行のデータライブラリを紹介します。
■世界機関が提供するオープンデータ
国際連合や世界機関が出しているデータについては、「総務省統計局」のサイトを見るとまとめられています。そのなかからいくつか興味深いものを厳選して紹介します。
・国際連合の人口・人口動態データ
国際連合では「人口統計年鑑システム」「人口・人口動態報告」「世界の推計人口」と様々な世界の人口に関するデータが公開されています。
・国連食糧農業機関(FAO)の出すオープンデータ
FAOでは全世界の「世界森林資源評価」「農作物・畜産に関する統計」「漁業・養殖業統計」のオープンデータが公開されています。国別の生産量も確認できるため、テーブルデータの可視化を切り口を変えて見せるだけでも興味深い示唆が得られそうです。
・貿易統計データベース(Comtrade Database)
1962年から現在まで、国連加盟約200の国や地域の統計機関によって報告された輸出入統計のオープンデータです。
サイトを見るとすでにデータを用いたビジュアライゼーションの一例も公開されており、世界の貿易状況を知ることができます。
・世界銀行
世界銀行は業務の透明性と説明責任を向上するため、「オープンな開発」を推進し、実際にこれまで積み上げてきた約8000の開発指標や1万件以上の調査研究等を無料公開しています。
その分野も「貧困」「経済」「環境」「教育」「保健」「ジェンダー」「気候変動」と幅広く、一見の価値ありです。日本語のサイトもありますので、まずはこちらからご覧いただいてもよいかもしれません。
・ユニセフ
全世界の子供に関するデータをユニセフでは公開されています。子供の死亡率や栄養失調など、日本にいるだけでは触れることがないだろう世界の状況を知ることができます。
②地方自治体発のオープンデータ(日本のみ)
次は「【事例付き】ビッグデータ時代に持つべき”データ活用に必要な視点”とは オープンデータ伝道師インタビュー」でも紹介した消火栓のオープンデータのように地方自治体が出しているオープンデータを紹介します。
■推奨データセット
地方自治体のオープンデータには、「推奨オープンデータ」という政府として公開を推奨するデータと、データ作成にあたって準拠すべきルールやフォーマット等を取りまとめたものがあります。
まず、データセットとして推奨されているのは以下のデータ群で基本編と応用編と別れており、それぞれ以下のような説明がされています。
■基本編(オープンデータに取り組み始める地方公共団体向け)
推奨データセットの対象データの中でも、特にオープンデータに取り組み始める地方公共団体の参考となるようなデータを基本編として位置付けています。
■応用編(地方公共団体・民間事業者向け)
推奨データセットの対象データの中で、基本編以外のデータを応用編として位置付けています。応用編では、地方公共団体に限らず、民間事業者の保有するデータについても対象としています。
AED設置箇所一覧はオープンデータ活用事例でも紹介した「coide 119」で活用されていましたが、その他のデータもオープンデータ化することでどのようなサービスに取り込まれるのかについての資料も以下のようにまとまっています。
ご覧いただくと分かる通り、様々な著名サービスに地方自治体のオープンデータが取り込まれていることが分かります。
実際に推奨データセットがあるか否かは、各地方自治体のHPを訪れて確認してみましょう。
★47都道府県のオープンデータを閲覧できるリンク一覧
以下、47都道府県のオープンデータを閲覧できるサイトのリンク一覧です。
※市区町村のHPでも各自治体がオープンデータカタログを運営しているケースが増えています。市区町村のオープンデータもぜひ確認ください。
▼北海道・東北地方
北海道・青森県・秋田県・岩手県・山形県・宮城県・福島県
▼関東地方
東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県・栃木県・群馬県
■中部地方
愛知県・静岡県・長野県・岐阜県・山梨県・新潟県・石川県・富山県・福井県
▼近畿地方
大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・滋賀県・和歌山県・三重県
▼沖縄・九州地方
福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県
■ユニークなデータセット
続いて、地方自治体のオープンデータとして、推奨データセットには入っていないものの、ユニークなオープンデータを紹介します。
※何をもってユニークかについては宙畑編集部の主観になります
・さばえ検定100門
鯖江市に関する検定で出題された問題、選択肢、回答のオープンデータです。このように問題がオープンデータとなることで様々なジャンルのクイズアプリを簡易に作れる可能性があります。
・ダム貯水量
ダムのある各地方自治体はダムの貯水量データをオープンデータ化しており、福岡市ではリアルタイムに確認することができます。
気象情報や衛星データと組み合わせることで災害対策やその他ダムが必要なスポット、不必要なスポットの選別ができるようになるかもしれません。
・魚群速報
地方自治体によってデータを公開する頻度や内容は異なりますが、水産資源管理のため、沿岸部の魚群情報を記録して公開する地方自治体があります。
衛星データと重ね合わせることで海釣りの際の漁場ポイント最適化の精度アップにつながるかもしれません。
・自治体が所有する車両(バス、ゴミ収集車、除雪車)のドライブレコーダー
これはまだオープンになっておらず、実証実験として利用されている事例がほとんどですが、自治体が所有する車両のドライブレコーダーのデータがオープンになると様々なサービスへの活用が考えられます。
例えば、毎日同じ道を通るバスのドライブレコーダーがあれば道路の変化や危険運転の多い道路の発見にもつながるかもしれません。
より街の状況を把握できる自治体所有車両のドライブレコーダーのデータは自治体にとって貴重な資源です。
③民間企業発のオープンデータ
地方自治体でも国主導でも世界機関主導でもなく、民間企業がオープンにしているデータがあります。
「【事例付き】ビッグデータ時代に持つべき”データ活用に必要な視点”とは オープンデータ伝道師インタビュー」でもコンビニのデータがオープンデータとして公開されるとより地図アプリの機能がアップデートされるだろうという話がありましたが、現時点では例えば「Twitter」「Instagram」といったSNSサービスはAPIを提供しており、様々なサービスですでに利用されている他、民泊サービス「Airbnb」は非商用のものではありますが「Inside Airbnb」というサービス名でAirbnbの利用状況をオープンデータ化して提供しています。
最近は「常識の範囲でご自由にお使いください」というただし書き付ではありますが、スタジオジブリが過去のアニメ作品の作中カット画像の無料提供を開始しました。今後ますますの民間企業のオープンデータ推進が期待されます。
また、本記事では紹介できておりませんが、「オープンストリートマップ」のように国家や地方自治体、民間企業主導ではなく、一般の力を合わせてひとつのオープンデータを作り上げるプロジェクトも存在します。ぜひ様々なオープンデータを探して、触れてみてください。
(5)まとめ
以上、本記事では、衛星データプラットフォーム「Tellus」の公式メディア宙畑がオープンデータの理解を深めるため、オープンデータの活用事例から現時点で公開されているオープンデータセットまで調査を行い、面白いと思ったものを紹介しました。
調査をしてみて、オープンデータの活用事例はひとつのデータでサービス化まで至れることは少ないように感じました。衛星データも、宇宙から取得できるデータということでそのデータ一つで素敵なことが可能になるという印象を持たれやすいデータですが、衛星データの価値はその他のデータや実際の現場の経験と掛け合わせることで本当にその価値を発揮します。
ぜひ衛星データと今回紹介したオープンデータを組み合わせることで何か新しいサービスが生まれないか読者の方が考えていただけたら幸いです。
また、本記事について、事例にしても、データセットにしても、私たちが紹介したのはオープンデータの世界のほんの一部です。ぜひ本記事をきっかけにオープンデータを見て、触って、今回紹介した以外のオープンデータについても調べ、実際のビジネスやご自身の生活に活用されてみてください。今後も調べを進めていく中で、本記事に活用事例やデータセットを追記していく予定です。
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