IoT衛星オペレーターであるOQ Technologyが省電力に関する米国特許を取得【宇宙ビジネスニュース】
【2022年2月21日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
世界的な5G IoT衛星オペレーターであるOQ Technologyが、同社のIoTの目覚まし(wake-up)技術でアメリカの特許を取得しました。この特許は同社がアメリカとEUで出している6つの特許のうちの最初の特許とのことです。
目覚まし(wake-up)技術は、OQ社の地上のIoTデバイスに搭載される省電力技術で、基地局となる衛星と通信するときだけ効率的に立ち上がるというものです。
この技術を使って、OQ社はナローバンドIoT(NB-IoT)の無線通信の規格である3GPPに対応します。通信しない間の待機電力を減らすことで、10年というバッテリー寿命を達成できることが期待されています。山間部や農地に設置するIoTデバイスは電力を気軽に得ることができません。そのため省電力技術は重要です。IoT事業者としては目覚まし技術を利用することで、IoTデバイスを設計する際に重要となる省電力技術を考慮する必要がなくなる利点があります。
同社の特許は他にも、周波数同期技術や、タイミング同期技術、地上端末の位置特定技術や衛星間通信技術、衛星と地上局の間のセルラーIoT通信のためのシステム設計やネットワーク構成などが含まれています。それぞれの内容は以下の通りです。
・地上端末の位置特定技術/“Terminal device localisation”
高価なGPSを用いず、衛星からくるデータを使って、地上端末の位置を特定する技術。
・衛星間通信技術/“Inter-satellite links”
基地局となる衛星間でお互いを認識し、接続可能な地上端末の記録を保持することで、衛星間でのハンドオーバー(地上端末との通信の途中で別の衛星に切り替えること)が容易になります。将来的には静止衛星も対象になる予定とのことです。
・周波数同期技術とタイミング同期技術/“Frequency synchronisation” and “Timing synchronisation”
地上端末と基地局となる衛星の間で通信を行う際、衛星が高速で移動しているために生じてしまうドップラーシフト(周波数のわずか変化)とタイミングのずれに対応する技術です。この技術により、データ伝送の質と速度が向上し、電力の消費を抑えることも可能となります。
創設者でありCEOのOmar Qaise氏は、「これらの特許で競合と差をつけ、知的財産を確保する。(中略)これらの技術を使って、3GPPに対応したNB-IoTの非地上ネットワークを提供するパイオニアとなる。」と話しています。
IoT衛星ベンチャーが増えていますが、通信サービスはコモディティ化しやすく、最終的には価格競争の世界に突入すると考えられます。そのような中で、同社の特許技術が他社との競争を勝ち抜くだけのコストダウンにつながるのか、注目です。
宙畑編集部のおすすめ記事:
Swarm TechnologiesがIoTデバイスと通信を可能にする商業衛星サービスを開始【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/02/08〜02/14】
IoT通信ネットワークの構築に取り組むSwarm TechnologiesがMomentusと契約締結【週刊宇宙ビジネスニュース 4/20〜4/26】
今週の宇宙ニュース
SpaceLinkが手掛けるISSと地上をつなぐリアルタイム通信サービスの実証パートナーとしてAxiomが参画【宇宙ビジネスニュース】
民間宇宙飛行「Polaris計画」、宇宙遊泳やStarship初の有人飛行を予定【宇宙ビジネスニュース】
参考:
US Patent and Trademark Office Grants OQ Technology its First Satellite IoT Patent
OQ Technology’s “wake-up” patent draws yawn from IoT smallsat rival