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体験型ストア「b8ta」に宇宙関連製品が大集結!ISSに搭載されたシャンプーシートなど8点【宇宙ビジネスニュース】

【2023年4月3日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。

JAXAの新事業促進部は、3月30日から4⽉30⽇までの1カ月間、体験型ストア「b8ta Tokyo – Yurakucho」にて民間事業者7社と共同で宇宙関連商品等を展示するイベントを開催しています。

展示の様子 Credit : b8ta Tokyo – Yurakucho / JAXA

b8taで宇宙イベントが開催

b8ta(ベータ)はサンフランシスコ発の店舗で、ベータ版の商品やスタートアップ企業で生まれたばかりの商品を体験することができます。「b8ta Tokyo – Yurakucho」は2020年8月にアジア初の店舗としてオープンしました。

JAXAが企業と共同で展示しているのは、宇宙⽣活の課題から宇宙と地上双⽅の暮らしをより良くする研究開発や新規事業創出を⽬指す事業共創プラットフォーム「THINK SPACE LIFE」と、JAXAの成果を活用した商品やJAXAとの共同研究により開発した商品などをブランド化した「JAXA LABEL」の関連商品です。

花王が開発「スペースシャンプーシート」のこだわり

関連商品のなかで今回宙畑編集部が注目したのは、「宇宙きぶん スペースシャンプーシート(以下シャンプーシート)」です。

内覧会にて撮影

このシャンプーシートは、2022年10月から2023年3月まで宇宙飛行士の若田光一さんがISSに滞在している間、ISSに搭載されていた「3D Space Shampoo Sheet」を商品化したもので、水なしで簡便に頭皮や髪の汚れを拭き取ることができます。

どのようにしてこの商品が開発されたのか。シャンプーシートを開発するに至った経緯を花王 ライフケア事業部門 へルス&ウェルネス事業部長 寺田 英治さんにうかがいました。

花王 ライフケア事業部門 へルス&ウェルネス事業部長 寺田 英治さん

「(開発が始まった当初は)私はヘアケア研究所に所属していました。最初から宇宙での利用を念頭に入れていたというよりは、髪を洗いたくても洗えない……例えば入院しているときや災害時、そういう場面でお役に立てないかと考えたことが最初の起点でした。そんなときに、たまたまJAXAさんの公募のプログラムを見かけて、『もしかすると一番困っているのは、宇宙飛行士の方たちなのではないか』と気づき、少し方向を変えて開発に取り組みました」

シャンプーシートの特徴は、シートに突起がついていることです。

「普段、頭を洗うときは、指の先を使いますよね。ただ、シートは平面なので、髪の生え際の頭皮を拭き取るのがすごく難しいんです。それで突起にこだわりました」

シャンプーシートは洗浄液で湿っている状態でパッケージに入っています。

「初めのプロトタイプ品の段階では、突起型シートと洗浄液を分けていました。なぜかというと、洗浄液に浸すと突起が柔らかくなって、潰れやすくなってしまうからです。ところが、宇宙飛行士の方の話をうかがうと、微小重力環境下でシートに洗浄液をかけて使うことは現実的ではないことがわかりました。それでやっぱり洗浄液を浸した仕様にすることになりました」

突起を潰れにくくするために固くプレスすると、洗浄液を吸収しづらくなるという課題がありました。そこで寺田さんらは、三層の異なる素材を重ねてプレスすることで、宇宙で使えるシャンプーシートを実現させました。

宇宙飛行士の若田さんはシャンプーシートの使い心地について「お風呂やシャワーのない宇宙ステーションでも本当にすっきりするなという感じがします。凹凸が付いていてマッサージをするように汚れをふき取ることができるので、本当に根元からすっきりするという感じですね。とても爽快な感じが残ります」と述べています。

このシャンプーシートはECサイト「楽天市場」内の店舗「FUNTECH Lab&Biz」にて数量限定で発売されます。地上においても、アウトドアや忙しい時の気分転換などでの利用が想定されているといいます。

JAXAプロデューサーに聞く、2023年度の展望

事業共創プラットフォーム「THINK SPACE LIFE」の取り組みは、花王の「宇宙きぶん スペースシャンプーシート」のほか、衣料品メーカー・ワコールと靴の素材を扱う専門商社・大裕商事が共同開発した身体がブレない靴「ichi-ho(イチホ)」の商品化にも繋がっています。

宇宙開発で生まれた技術を用いて生まれた地上向けの商品はこれまでもありましたが、生活や暮らしを焦点に当てて開発した商品が増えていることで、宇宙をより身近に感じる人も増えていきそうです。

今後はどんな取り組みを計画しているのでしょうか。THINK SPACE LIFEを担当するJAXA新事業促進部 宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)プロデューサー 中島由美さんにうかがいました。

JAXA新事業促進部 宇宙イノベーションパートナーシッププロデューサー 中島由美さん

「現在はISSの課題がまとめられていて、それに対するソリューションを開発しています。『フォアキャスティング』と言われる、現時点の課題を一個ずつ潰していく取り組みだと思います。

一方、『こういう世界を目指します』『世界がどうなるといいのか』という議論はまだされてないのが今の課題です。例えば『2030年代の宇宙ホテル中のアメニティは?』『洗濯は?シャワーはどうしているの?』など。今はISSにはシャワーがないという前提のもとで製品が作られていますが、そもそも宇宙空間のシャワー設備はどんなものかを思い描く。『こんな世界であってほしい』をバックキャスティング的に取り組んでいく取り組みも2023年度は進めていきたいです」

宙畑編集部が撮影した会場の様子を紹介します。

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参考

【JAXA×BIZ NEWS】民間7社と共同で、体験型ストアb8ta(ベータ)にて初の「宇宙イベント」開催!宇宙関連商品が⼤集結