アストロスケールが「ADRAS-J」実機を公開。カメラを使い分け「手が届く距離」までデブリに接近へ【宇宙ビジネスニュース】
【2023年9月9日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
9月7日、東京都墨田区にあるアストロスケールの本社にて、同社が開発する商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」の実機を報道陣向けに公開しました。
ADRAS-Jは、JAXAが民間事業者等と連携してスペースデブリ対策市場の創出を進める商業デブリ除去実証プログラム「CRD2(Commercial Removal of Debris Demonstration)」のフェーズⅠで開発された衛星です。
フェーズⅠでは、軌道上に残っている温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)を打ち上げたH-IIAロケット15号機の上段への接近・近傍運用の実証と長期にわたり放置されたデブリの運動や損傷・劣化状況の撮像を行います。今後事業者が選定されるフェーズⅡでは、デブリ除去技術の軌道上実証が行われる予定です。
アストロスケールの担当者によると、ADRAS-Jは宇宙空間に打ち上げられた後、H-IIAロケット15号機の上段(以下、対象デブリ)に、まずはGPSや地上で観測するSSA情報を使って数千km離れた地点から数百km地点まで接近します。次に数百kmから数km地点までは可視光カメラ、数kmから数百m地点までは赤外線カメラ、以降はLiDARを使用して対象デブリに「手を伸ばせば届く距離」まで接近するといいます。その後は、対象デブリを周回観測して、デブリの状態を観察するということです。
アストロスケールの担当者は、「このミッションの特に難しいところは、相手(対象デブリ)が動いているところを接近していくところです」と説明しました。
ADRAS-JはRocket Labのロケット「Electron」で打ち上げられ、約4カ月間にわたって運用される見込みです。