NTTとKDDIが宇宙ビジネスの新しい事業構想を発表!両社の事業概要を簡易比較
KDDIとNTTが発表した各社の宇宙ビジネスにおける新事業戦略について、事業概要と簡易な比較を行いました。
国内の通信キャリアがこぞって宇宙ビジネスに参入しています。2024年5月30日にKDDIが、2024年6月3日にはNTTが宇宙ビジネスの拡大に向け、新たな事業戦略をそれぞれ公表しました。
両社の取組みの概要とそれぞれの比較、今後への期待について解説します!
(1)NTTが発表した新ブランド「NTTC89」とは
NTTは、宇宙ビジネスを取り巻く環境を踏まえ、以前に発表した宇宙統合コンピューティングネットワーク構想の実現に向けて、注目領域を定めて事業開発の加速するとともに、宇宙ビジネスの拡大のために、ブランド「NTT C89」を立ち上げると発表しました。
宙畑メモ:宇宙統合コンピューティングネットワーク
2021年にスカパーJSATと共同で発表した構想。 高高度プラットフォーム(HAPS)、静止軌道衛星、低軌道衛星を統合し、それらと地上を光無線通信ネットワークで結び、分散コンピューティングによって様々なデータ処理を高度化する、宇宙の新たなICTインフラ基盤構築を目指す。
参考記事:https://sorabatake.jp/20296/
この構想においては、(1)自社の技術的な強みを活かし自前化を目指す領域と、(2)新たな技術開発を行いつつ、パートナーとの連携でサービス化を加速する領域を戦略的に定め、市場拡大を目指して事業・技術開発を推進していくとのこと。
(1)自社の技術的な強みを活かし自前化を目指す領域
・ GEO衛星を活用した領域
・ 観測LEO衛星および観測データPFを活用した領域
・ HAPSを活用した領域
(2)新たな技術開発を行いつつ、パートナー連携でサービス化の加速する領域
・ 通信LEO衛星を活用した領域
さらに、NTTは、グループ各社の宇宙分野における事業を連携し、宇宙分野におけるシナジー効果創出や新たな市場開拓を目指して、「NTT C89」を立ち上げました。今後は、このブランドの元、HAPSを活用した通信サービスの提供開始や、地球観測事業者向けの衛星間通信(光データリレーサービス)の提供を国内外に提供していくと発表しました。
(2)KDDIが発表した宇宙共創プログラム「MUGENLABO UNIVERSE」とは
KDDIは、多様なアセットにより宇宙事業の参入障壁を下げ、地球課題の開発を目指す宇宙共創プログラムとして、MUGENLABO UNIVERSEを発表しました。このプログラムでは、宇宙空間を活用した実験環境、支援メンター、参画する大企業とのオープンイノベーションにより、KDDIが掲げるスローガンでもある地上のLX(Life Transformation)の実現を目指すとのこと。
特にスタートアップ向けには、以下の3点からスタートアップと大企業が連携してイノベーションを創出することを後押しするとのこと。
(1) 多様な実験環境(宇宙スタートアップのプラットフォームを活用)
(2) 大企業との事業化検討(関西電力やスカパーJSAT、三井住友海上などと連携)
(3)ナレッジシェアリング(ispace CEOの袴田さん、宇宙エバンジェリストの青木さん、SPACETIDE CEOの石田さんをはじめとした有識者の知見を共有)
5月30日から募集を開始しており、月次勉強会や有識者メンタリングを開催し、2027年度に低軌道上、2030年度に月面上での共創達成を目指すとも発表しています。
(3)両社の簡易比較と今後への期待
ここまでNTTとKDDIのそれぞれが発表した宇宙産業に関わる大きな事業構想を紹介しました。NTTの取組みは、グループ会社内での結束を強める部分と、自社技術を強みとする取組&パートナーと連携した新たに技術開発を行う部分の切り分けていることが特徴的です。
一方のKDDIの取組みでは、スタートアップと大企業との事業連携を目指しており、KDDIがハブになりつつ、宇宙スタートアップのプラットフォーム活用や有識者からの知見をもらうことで、イノベーションを起こそうしています。
NTTは自社のバックグラウンドを束ねて宇宙ビジネスを加速しようとする一方、KDDIは自社を軸に、大企業とスタートアップの橋渡しをすることで、新たなイノベーションを起こす土台作りをしているのだと感じました。
また、両社のプログラムで取り組みが進む宇宙産業の中での注力分野にも違いがあります。
NTTは、HAPSや光通信を用いた通信サービスの展開などに主軸を置いており、通信インフラを通して、私たちの生活を豊かにしてくれるでしょう。
一方のKDDIは、宇宙スタートアップと様々な業界の大企業との連携により、月面探査や宇宙利用など、新たな価値の創出に主軸がおかれており、これまでなかった革新的なサービスを提供することで、私たちの生活を拡張していく期待感があります。
民間企業を中心とした宇宙開発が進む現在では、事業競争や技術開発のスピードが各段に早くなっているため、このような様々なリソースを束ねるプラットフォームは求められると感じています。両社が進める今後の活動に注目です。