ICEYEと独防衛企業のRheinmetall AGが新会社設立、欧州の主権的な防衛能力の確保へ
世界最多の小型SAR衛星コンステレーションを構築するICEYEと防衛事業を手がけるRheinmetall AGとが新たな合弁会社を設立するというニュースについてまとめました。
2025年5月8日、ドイツに本社を構え、防衛事業を手がけるRheinmetall AG(以下、ラインメタル)と世界最多の小型SAR衛星コンステレーションを構築するICEYEが、衛星製造のための合弁会社を設立を予定していると発表しました。

もともとラインメタルは、防衛事業でのICEYEとの連携を積極的に進めていました。2024年6月に、ICEYEのSAR衛星事業への参画を表明したことを発端に、同年9月にはドイツとハンガリー市場における軍や政府向けのSAR衛星の独占販売権を確保し、11月にはウクライナに偵察用のSAR衛星を提供するための契約を、ドイツ政府の支援のもとで締結しています。
新たな合弁会社の会社名は「Rheinmetall ICEYE Space Solutions」となり、ラインメタルは60%の株式を保有して過半数株主となり、ICEYEは40%を保有します。なお、設立の前には最終的な契約締結と関係当局からの承認が残っているとのことです。
新会社「Rheinmetall ICEYE Space Solutions」は、ドイツでの新たな宇宙防衛事業「ラインメタル スペースクラスター」の活動として、今後はSAR衛星の製造を開始し、宇宙ソリューションも展開していく予定で、衛星製造は2026年第2四半期からドイツのノイスをはじめとする各拠点で開始される予定とのこと。
ラインメタル CEOのアーミン・パッペルガーさんは、今回の新会社設立について以下のように期待を寄せています。
「この新しい合弁会社の設立により、当社は宇宙分野へのさらなる進出を果たします。これにより、世界中の軍隊や治安部隊における宇宙利用の偵察能力に対する需要の高まりに応えるだけでなく、技術拠点としてのドイツの維持・拡大にも貢献します。ノイス拠点の優秀な従業員たちには、将来に向けた有望な新しい展望が開かれます。実績のあるパートナーであるICEYE社との協力を拡大できることを喜ばしく思います」
また、ICEYE CEOのラファル・モドジェフスキさんは、以下のようにコメントしています。
「ICEYEは、同盟諸国に対し、情報・監視・偵察(ISR)のための重要インフラの主要プロバイダーとなることを目指しています。ラインメタル社との合弁事業設立を通じて戦略的協業を深められることを大変嬉しく思います。この合弁事業は、世界の防衛市場のニーズに応える宇宙技術の開発と、欧州の主権的な防衛能力の確保という我々の重点戦略をさらに強化するものです。」
SAR衛星には、雲の有無や昼夜を問わず地表をモニタリングできる利点があります。その上で、ICEYEのSAR衛星が提供する画像は、非常に高解像度であり、地表の微細な物体までも識別可能で、防衛の観点からは、対象地域の監視や目標捕捉、偵察、対象の位置把握といった点で大きな優位性が得られます。
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今回の協定によって、ラインメタルの長年培ってきた防衛・製造技術やグローバルなネットワークを元に、ICEYEのサービスが更に強固になっていくことが予想されます。