宙畑 Sorabatake

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6月6日に月面着陸を控えるispace、2025年3月期の決算発表と最新の契約を立て続けに発表

2025年5月9日に発表されたispaceの2025年3月期の連結決算の内容と合わせて、直近の事業展開に関する複数のプレスリリースについても紹介します。

ispaceは、2025年5月9日に2025年3月期の連結決算を発表しました。決算発表の内容と合わせて最新の事業展開に関する複数のプレスリリースについても紹介します。6月6日にはミッション2の月面着陸でアジアでは初となる民間による月面着陸に、注目が集まっています。

(1)売上は倍増も販売管理費などの費用も増加──2025年3月期決算財務情報ハイライト

2025年3月期の連結売上高は47億4,300万円と、前期比で約101%の増収を達成しました。これは、ミッション3関連のペイロード契約が前年度を上回る推移で推移していることや会計基準の変更によりミッション2のペイロード売上が大幅に前倒しで計上されたことが背景にあるとしています。

一方で、営業損失は約97億9,500万円、経常損失は約113億3,400万円、最終損失は119億4,500万円と赤字額も拡大しています。要因としては、研究開発費が77億3000万円と、前期比で2倍以上になっており、ミッション2の打上げに伴う費用の一括計上や、ミッション3・4に関わる開発投資が進捗していること、また、グループ全体の期中平均従業員数の増加、海外子会社の従業員数割合の上昇等により、前年同期比で給与及び手当が増加していることなどの販売管理費の増加が挙げられています。

ちなみに、2024年3月に5.8万人だった株主数は2025年3月には8.1万人と大きく増えていることも決算資料で発表されました。著名な経済アナリストの馬渕磨理子さんとの対談動画についても決算資料では紹介されており、あらためて宇宙ビジネスが投資の対象として認知が進んでいることを実感させられました。

(2)ミッション進行:ミッション2は順調に進捗、ミッション3は延期へ

ミッション2では、月面着陸船「RESILIENCEランダー」を搭載した打上ロケットを2025年1月15日にSpaceX社で打ち上げ、同年5月時点で月周回軌道への到達(Success 7)まで順調に進行中です。日本の民間企業3社、台湾の大学1校、スウェーデンのアートプロジェクト、計5件のペイロード(総額1,600万米ドル)を輸送しています。6月6日にの着陸の日が楽しみですね。

一方で、米国子会社が開発中の「APEX1.0ランダー」を使用するミッション3は、エンジン部材の納品遅延により、打ち上げが2026年から2027年に延期されることが決定。CLPS(NASA商業月面輸送サービス)契約や欧州企業のペイロード契約(総額6,500万ドル)は継続しており、追加契約金も獲得しています。

(3)宇宙戦略基金への採択とサーマルマイニング実証へ

決算発表以外にもispaceは事業の進捗を裏付けるいくつかのプレスリリースを出しています。

2025年3月、ispaceは「宇宙戦略基金」第1期において、中核的連携機関として「月面の水資源探査技術(センシング技術)の開発・実証」に採択されました。

また、高砂熱学工業と月面における「サーマルマイニング技術」の実証に向けた覚書も締結。高砂熱学工業は2019年12月から「HAKUTO-R」プログラムにコーポレートパートナーとして参画。熱利用および水電解技術においてispaceと協業し、世界初の月面環境下での水電気分解による水素・酸素生成の実証に取り組んでいました。最終的には、高砂熱学工業が研究開発を進める水資源採掘技術を、ispaceが開発する月面探査車に搭載し、実際の月面での水の採取・利用に向けた共同技術開発を目指すとのことです。

(4)今後の見通し

ispaceは2026年3月期の業績予想として、売上高62億円(前年同期比+30.7%)、営業損失115億円、純損失83億円を見込んでいます。引き続き損失は続く見通しですが、SBIR補助金を含む「プロジェクト収益」では倍増が見込まれており、事業規模の拡大傾向を明らかにしています。

月面産業の先駆けとして、官民連携による技術開発・商業化の融合を図るispace。今後の各ミッションの進捗や技術実証の成果が、月面探査における宇宙ビジネスの潮流を左右する存在となるでしょう。

参考

ispace IR情報

ispace が中核的連携機関として参画する研究開発課題が「宇宙戦略基金」事業に採択

ispace、高砂熱学工業と月面におけるサーマルマイニング技術実証に向けた 計画検討に関する覚書を締結