2025年5月22日、宇宙用電子機器を開発するFrontgrade Technologies（フロントグレード）と、耐放射線の半導体開発に強みを持つVORAGO Technologies（ボラゴ）が、戦略的パートナーシップを結んだことを発表しました。

Frontgrade Technologies（以下、Frontgrade）は、宇宙でも使用可能な電子機器を専門に開発する米国企業で、宇宙・防衛分野のミッションに多く採用されています。関連会社のFrontgrade Gaislerは、ヨーロッパの宇宙機関（ESA）などと協力し、人工衛星などに搭載される高性能マイクロプロセッサ（小型コンピューターの頭脳）を開発した実績があります。

VORAGO Technologies（以下、VORAGO）は、特に放射線に強いチップを得意とする米国企業です。代表的な製品にVA7230プロセッサという最新チップがありますが、こちらは従来のチップと異なり、1秒あたり100億回の演算を省電力で実行できることに加え、宇宙の放射線環境にも耐える設計がされています。これにより、人工知能（AI）や画像処理など、より高度な処理を宇宙空間で実行することができます。

両社は宇宙空間で自律的に（人間の指示なしで）作動する、人工衛星や探査機向けの次世代コンピューティング技術の開発を進めていく予定です。

今回の提携について、Frontgradeの最高成長責任者であるTommy Reed氏は
「今回の共同取り組みは、Frontgradeの革新への取り組み、そして協業の力を信じる姿勢を反映しています。VORAGOの放射線耐性プロセッサアーキテクチャを活用することで、商業および政府の宇宙ミッションの進化するニーズに応える、拡張性と宇宙対応を兼ね備えたコンピューティングプラットフォームの展開を加速できると考えています。」とコメントしています。

また、VORAGOのビジネス開発および製品担当副社長であるKen Obuszewski氏も「宇宙システムがますます自律的かつデータ集約型になるにつれ、信頼性が高く高性能なコンピューティングへのニーズは飛躍的に高まっています。Frontgradeのような業界のリーダー企業と協力することで、宇宙探査や商業宇宙インフラの未来を支えるソリューションを生み出すことが可能になります。」とコメントしています。

FrontgradeとVORAGOは、数か月以内に新製品の開発成果を順次発表するとのこと。両社の提携により、人工衛星や探査機の計算能力や信頼性が向上し、状況に応じた自律的な動作を放射線環境で実行できるようになり、今までできなかった複雑な宇宙ミッションの遂行や、火星などの深宇宙探査における信頼性向上も実現できると期待されるでしょう。

【参考】
・Frontgrade Technologies and VORAGO Announce Strategic Collaboration to Advance Space Computing Solutions for Autonomous Applications | Frontgrade
・Klepsydra AI and Frontgrade Gaisler Collaborate to Expand Microprocessing Versatility in Space Missions Through AIKlepsydra AI and Frontgrade Gaisler Collaborate to Expand Microprocessing Versatility in Space Missions Through AI | Frontgrade
・Frontgrade Gaisler Leads the Way in RISC-V Processor Development for Space ApplicationsFrontgrade Gaisler Leads the Way in RISC-V Processor Development for Space Applications | Frontgrade
・VORAGOテクノロジーズ
・VA7230 Edge Computing Microprocessor for Space ApplicationsEdge Computing Microprocessor | VORAGO Technologies