【津波や高潮の早期検知の実現へ】アークエッジスペースがみちびき利用実証事業に採択〜IoT衛星で高精度な潮位観測へ~【宇宙ビジネスニュース】
アークエッジスペースが令和7年度「みちびきを利用した実証事業」に採択されたことを発表しました。採択されたのは「アジア太平洋地域向けMADOCA-PPP潮位観測ブイにおけるIoT衛星活用事業」という実証です。その概要を紹介します。
2025年8月21日、アークエッジスペースは、令和7年度「みちびきを利用した実証事業」に採択されたことを発表しました。
アークエッジスペースは、超小型衛星の開発・製造、運用サービスを提供するスタートアップです。2025年2月にはシリーズBラウンドで総額80億円の資金調達を発表するなど、衛星コンステレーション構築を加速させています。
宙畑メモ:準天頂衛星システム(みちびき)
既存のGPS衛星網では、山間部や高層ビル街で電波が遮られ、正確な位置を計算できない課題があります。「みちびき」は、日本が独自に構築を進める測位衛星です。一部の衛星が日本上空に長時間とどまるよう設計された「準天頂軌道」を活用することで、常に最低1機の衛星が日本の上空に位置し続けることになります。
常に真上から安定して電波を送ることでGPSの情報を補完し、測位の誤差を数cm単位で実現する高精度な測位を実現します。
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Credit : アークエッジスペース
今回アークエッジスペースが採択されたのは「アジア太平洋地域向けMADOCA-PPP潮位観測ブイにおけるIoT衛星活用事業」という実証です。これは、日本の衛星測位システム「みちびき」が提供する高精度測位補強サービス「MADOCA-PPP」と、低軌道のIoT衛星通信(アークエッジスペースが開発・運用)を組み合わせ、アジア太平洋地域の沿岸に設置したブイで高精度な潮位観測を行うというものです。

宙畑メモ:MADOCA-PPP (Multi-GNSS Advanced Orbit and Clock Augmentation for Precise Point Positioning)
内閣府・JAXAが開発した、みちびきのL6信号によって実現されるマルチGNSS対応のリアルタイム高精度測位補強サービスです。ユーザーはL6対応受信機を活用することで、GNSS単独で水平・垂直方向ともに10 cm以下の位置情報を得ることができます。
宙畑メモ:IoT衛星
IoT衛星とは、世界中のあらゆるモノ(IoTデバイス)をインターネットに接続するために、地球を周回する多数の小型通信衛星のことです。携帯電話の電波が届かない山奥や海上、砂漠など、これまで通信が困難だった場所でも、上空の見通しさえあれば、センサや機器からデータを送受信できるのが最大の特徴です。大容量ではなく、センサーの計測値といった少量のデータを送受信するのに特化しています。
以前までは、cm級の高精度な位置情報を取得するには、基準局からの補正信号を受け取るために、比較的大型で消費電力の大きい受信機が必要でした。また、洋上のような不安定な場所からデータを送信するのに、適切な通信手段も課題となっていました。
MADOCA-PPPを活用した本実証では、みちびきからの補正信号を受け取るだけで、小型かつ低電力の機器で高精度な潮位(海面高さ)データを取得することができます。更に、IoT衛星通信を介することで、リアルタイムに状況を把握することが可能になります。これにより、津波や高潮の早期検知といった防災対策や船舶の安全運航など、多様な分野での活用が期待されます。
今回の実証実験の開始は、2025年11月を予定しています。アークエッジ・スペースは、超小型衛星の開発に加え、IoT・VDESなどの通信技術の実用化を進めており、本実証を通じて、アジア・太平洋地域における海洋観測事業の拡大を目指します。
参考記事
アークエッジ・スペース、「みちびきを利用した実証事業」に採択決定 ~アジア太平洋地域向けMADOCA-PPP潮位観測ブイでIoT衛星活用事業の国際展開を推進~
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