宙畑 Sorabatake

衛星

Rocket Lab、JAXAとElectron 2機の打上げ契約を締結。革新的衛星技術実証4号機を2025年12月に打上げ予定【宇宙ビジネスニュース】

Rocket LabはJAXAの「革新的衛星技術実証4号機(RAISE-4)」を2025年12月に打ち上げると発表。宇宙実証のスピードを重視する背景とは。

JAXAの実証衛星、Electronで年内打上げへ

Rocket Labは2025年10月10日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と小型ロケットElectron(エレクトロン)による2機の専用打上げ契約を締結したと発表しました。

そのうちのひとつはJAXAの「革新的衛星技術実証4号機(RAISE-4)」で、2025年12月にRocket Labのニュージーランド射場・マヒア半島から打上げ予定となっています。

RAISE-4(Rapid Innovative payload demonstration SatellitE-4)は、民間企業や大学、研究機関が開発した8種類の新技術を宇宙で実証する衛星で、JAXAが進める「革新的衛星技術実証プログラム」の一環として開発されました。

革新的衛星技術実証プログラムとは?

同プログラムは、民間事業者や大学の新しい技術を実際の宇宙環境で動作実証することで信頼性を証明し、事業化や海外展開につなげることを目的としています。

地上試験ではなく「宇宙で動いた」という実績を重視し、それが海外企業からの信用獲得にも直結する点が特徴です。

実際に宙畑がPale Blueの創業者である浅川さんにお話を伺った際も「実際に宇宙空間でしっかり動作したというのは非常に大きな転機でした」と回答されていたことが印象的でした。

JAXA公式サイトでも「民間事業者、大学等の新たな知見を獲得・蓄積し、将来ミッションや民間宇宙実証ビジネスの確立に繋げる」「新規技術を反映し、政策課題の解決や国際市場でのシェア拡大に繋げる」とあり、宇宙実証の機会は事業の拡大という観点では非常に重要です。

Electron採用の背景にある実証機会の提供スピードの加速

今回のElectron採用の背景には、打上げスピードの確保があります。

JAXAの衛星打上げはこれまで主に国産ロケット(H3・イプシロン)で行われてきました。しかし、イプシロンSロケット(小型衛星打上げ用の固体燃料ロケット)の開発が見直し中であるため、打上げ空白を回避する目的で海外ロケットの利用を決定したとみられます。JAXAが9月29日に公表した「資料99-4_基幹ロケットの開発状況」では、イプシロンSロケット第2段モータの燃焼試験で異常が発生し、原因調査に時間を要していると報告されました。 そのため「小型衛星打上げ需要への迅速な対応が難しい状況」と明記され、早期に実証衛星を打ち上げる方策の検討が行われていました。

8つの技術実証を軌道上で

RAISE-4には、民間企業や大学が開発した8つの新技術が搭載されます。これらは衛星通信、観測、材料、構造、AI制御など、多分野にわたり、今後の日本の宇宙機開発に直接貢献する要素を含みます。Electronによる打上げは、「速く、確実に宇宙で試す」ための最短ルートとして期待されています。

RAISE-4は、AI制御技術や新素材など8項目の民間開発技術を軌道上で検証する。 Credit : ©JAXA Source : https://www.kenkai.jaxa.jp/kakushin/kakushin04.html

Rocket Labと日本のつながり

Rocket Labは日本市場との関係を深めており、過去にはQPS研究所、Synspectiveといった民間企業の衛星もElectronで打上げています。今回のJAXA契約により、同社は「日本の公的・民間宇宙プロジェクト双方を支える打上げパートナー」としての地位を強化することになります。

ピーター・ベックCEOは次のようにコメントしています。
「(今回のリリースは)日本の宇宙産業の成長を支えるというエレクトロンの世界的な重要性を示すものであり、私たちはその任務を託されたことを誇りに思います。」

【参考資料】

Rocket Lab Secures Multiple Launches with Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA)

文部科学省「科学技術・学術審議会 第99回 資料99-4 基幹ロケットの開発状況について」(2025年9月29日)